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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(2)

Journey through the Decade Re-mix 第九話 「警告:カブト暴走中」 フェーズ3

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 あれからきっちり二年ぶり。他のことにかかり切りで手つかずだったのもあり、作者自身が後の展開を忘れるという非常事態に陥ってしまいました。
 ので、断片的に残された情報から新たに箱書きを修正し、それに沿って執筆しています。
 なお、それに伴い、微妙に矛盾していた部分があったため、若干ながら修正をかけています。

 再三ここに記しておきますが、


 ※ 本世界にて描写される『マスクド・ライダー』、『クロックアップ』の設定は、本作執筆に当たって筆者が創作した架空のものです。

 公式及び仮面ライダーカブト本編の物とは大きく異なりますのでご了承ください。


これまでのあらすじ:渋谷に落下した隕石に依って、世界から切り離された独立国家・東京。地球外生物・ワームから国民を守る武装組織ZECTは、目的不明の旅行者たる光写真館の面々を敵と断じ、攻撃を試みる。
 マスクドライダー・ザビーとディケイドのカメンライドした『ファイズ・アクセルフォーム』による加速空間での対決は、突如乱入した赤きライダー・カブトによって水入りとなった。旗色悪しと判断し、撤収するZECT。だが、その水面下では『クロックダウン』なる恐るべき計画が進行しており――



 東京国・エリアZ。ワームの卵を孕んだ隕石の爆心地であり、七年の時を経てなお、破壊の跡が手つかずのまま残された秘境である。
 一般人が立ち入れば射殺も許されるエリア同士の境界線を、平然と越えてゆく一台のバイクあり。白茶の帽子を目深に被った彼の背には轡をされた少女が助手席に括り付けられており、同意の上の相乗りで無いことが窺える。

 男はひしゃげた『渋谷センター街』の看板を弾き飛ばすと、解れた金網戸の前で単車を停め、帽子のつばを上げて顔を見せる。侵入者の存在を検知し、サッカーボール大の球体が十数個、瓦礫の下から這い出した。タキオン粒子を噴射して浮き上がったそれは、妖しく光る紫紺のカメラ・アイを彼らに向ける。
 レンズの奥から放たれた赤外線の青い光が、ファッションショーのスポットライトめいて二人の身体に照り付ける。男は上げた手を後ろで組み、戦う意思が無いことを示して見せた。万一青色から赤に変われば、内蔵された12.7mm徹甲弾が一瞬の内に彼らを肉塊に変えることだろう。

 取り囲む十数個のうち、バイク後部に陣取る一体の動きがぴたりと止んだ。同時に、レンズの光が赤青の点滅を始め、周りの機体に伝播してゆく。
 途端に赤外線が消え、代わりに球体側部から銃口が飛び出した。最早これまでか。今まさに火を噴かんとした、その時。

『――流石は大泥棒、鮮やかな手並みに感謝する』
「君たちの世界じゃ恩人にさえ銃口を向けるのかい。暖かな歓迎、痛み入るよ」
『――思慮に欠けた行為はお詫びする。しかし我々とて必死なのだ。ここは……』
「解っているさ。絶対に落とされてはならない、人類の要……だろう?」

 無線越しの声が黙ると共に、赤く輝く球体の目から光が失せ、瓦礫の下へと去ってゆく。帽子の男――、海東大樹はうんざりとした表情で金網をどかし、再び単車を走らせた。

※※※

 金網を超えた先にある、三階建ての小さな廃ビル。赤ペンキで乱雑に『Z』と描かれたこの場所に、部隊員にすら秘匿された秘密の研究・開発施設が存在する。
 海東大樹とその連れは開いたままの自動ドアを抜け、奥にあるエレベーターで下層へと向かう。入ってすぐ目につく階段はまやかしだ。うっかり登ろうものなら赤外線センサーに絡め取られ、輪切りとなってワーム共の餌にされていただろう。

 一キロ程下ったところで扉が開き、暗がりの通路に光が点る。航空機を先導する路灯めいたそれに従い進む海東の目に飛び込んで来たのは、背中を裂かれ、『中身』を切り刻まれたワームの死骸であった。
(いやはや、悪趣味だね。こいつは)
 未だ息のある幼体を無言で捌く作業員らを横目に流し、海東は薄く顔をしかめる。動物性脂肪由来の腐臭が充満するここは、まともな職にありつけなかった者たちの墓場であろうか? よく正気を保っていられるな。彼の脳裏に様々な疑問が去来し、取っ掛かりを残すことなく消えてゆく。

 マスクド・ライダーの外装甲、武装、クロックアップ。それらは全て人類がワームの能力を分析して得た粗悪な模造品だ。人類の希望たる武具の出所が仇敵のお下がりと知れれば、不必要な暴動が国力に深刻なダメージを与えかねない。少なく見積もって未だ数千体はいると思しき敵に対し、此方の手駒は僅か二体。成る程、東京国が迂闊に鎖国体制を解けないのも頷ける。

「長旅ご苦労。さあ、こちらにどうぞ」
「パーティー会場が血生臭い豚小屋とはね。観光客の誘致としちゃ落第点だ」
「必要あるまい。此処に立ち寄るのは武器商人とヒトに化けたワームだけだ」
 天堂ソウジの顔から笑みが失せ、一気に目付きが鋭くなる。実のない会話はうんざりというわけか。つまらない男だな。海東は心の中でそう毒付きつつ、へらへらとした態度を崩さない。
「それはさておき、滞りなく仕事を済ませてくれて何よりだ。例のものを、ここへ」
 ソウジは指を鳴らして部下に指示し、その場にアタッシュケースを持って来させる。流れるような動作でロックを外し、中に仕舞われた『それ』を海東に示して見せた。

「これが、ゼクターって奴かい」
「マスクド・ライダー四号機・ドレイク。蜻蛉の性能を持ち、水深千メートル化でも活動可能。遠距離での援護を想定し、デバイスとグリップを合わせることで、銃撃も……」
「もういい。ストップ、ストップ」海東は機関銃めいて放たれる仕様説明を途中で遮ると、柄型のグリップと蜻蛉のゼクターを手に取った。
「習うより慣れろ。細かいことは使いながら覚えるさ。スイッチは?」
「心配しなくてもじきに『目覚める』よ。ゼクターは装着者の"静脈"パターンを読み取って起動する」
「まどろっこしいね。もっとスマートに出来るだろうに」
「偽物が横行するこの国じゃ、声も指も顔も役に立たんのでね。個々人の体組織に頼るしか無いのさ」
「成る程、世知辛い」
 尾っぽの呼吸管に橙の光が満ち、虫の羽音にも似た駆動音が微かに響く。インストールは滞りなく進んでいるらしい。手持ち無沙汰となった海東は、神経質そうに此方の様子を伺う隊長に、それとなく話を振った。

「ところで。この世界にはマスクド・ライダー初号機――、カブトなる戦士が居たんだってね。彼は今、何処に?」
「実験中の事故でとうにオシャカだ。無い袖は振れんよ。残念だったね」
「解せないね。だとすればそれほど貴重なゼクターを取引材料にする理由は何だ? 最新型を犠牲にしてまで確保したこの娘に、一体どれほどの価値がある?」
「……何が言いたい」
「さて、何かな」

 会話はそこで途切れ、ゼクターのチャージ音だけが狭い室内に響き渡る。重苦しい沈黙とひりつくような空気。先に動いたのはソウジだ。懐から抜いたハンドガンを海東の額に向け、大樹もまた腰のホルスターから得物を抜く。互いの右腕がクロスを描いて重なった。
「成る程、最初からもてなす気など無かった訳か。酷い連中だよ」
「欲をかいたな小僧。無駄な詮索などせず立ち去れば良かったのに」
「おいおいおい、目の前のコレが見えないのか? 下手な真似すれば君の頭はキウイジャムになるんだぜ」

 互いの目に遊びは無い。いざとなれば相手の頭を容赦なく吹き飛ばすだろう。しかしてこれはどうしたことか。ZECTを束ねるこの男は、心許無いハンドガンで五十口径銃を相手取るこの男は、口角を不敵に吊り上げ急に笑い出したのである。

「馬鹿め、何の備えも無く部外者を招き入れると思うてか。マナーの成ってない客にはご退場願おう」
 二人の男は同時に引き金に指をかける。一方の弾はソウジの眼帯を掠め、壁の一つを千切り飛ばす。対して此方のハンドガンはどうだ。引きはしたが弾が出ない。不発か? 否、この「玩具」は銃ではない。施設内部に指示を飛ばす、文字通りのトリガー《引金》なのだ。
 肋骨めいて湾曲した六本の柱が、次の弾丸を撃たんとする海東を取り囲んだのはその時だ。放たれた次弾は緑色の奔流に呑まれ、立ち消える。
 床がゆっくりと回転を始め、地下の、更に地下へと降りてゆく。幾ら拳を打ち付けようとも、白色の柱は揺るがない。哀れ鼻持ちならぬ怪盗は、獲物を前に籠の鳥と言う訳か。
「その蚊トンボはくれてやる。税金対策に造った急造品故、クロックアップ機能は搭載されておらんがね」

 地下とを繋ぐシャッターが閉じ、光源無き暗闇と静寂とが六角錐の檻を支配する。いや、全くの闇ではないか。認証を終え、完全に彼の物となったドレイクゼクターが尾っぽを輝かせ、主人の周りを旋回し始めたのだ。
「泥棒が紛い物掴まされて檻の中とはね。笑えない冗談だ」
 士と違い、海東大樹は長い時間同じ世界に留まることは叶わない。近いうち、少なくとも衰弱し切る前にここを脱け出せる筈だ。取り乱すようなことじゃない。
 後は野となれ山と成れ。海東は目の前を無邪気に飛ぶ新たな相棒を煩わしく思いながら、帽子を目深に被り、柱に身体を預け、呑気に寝息を立て始めた。

※※※

 エリアDに居を構えるZECT小隊詰所に、肩を怒らせ突き進む者が一人。若干十八歳にして鋼の兵隊蟻たちを束ねる副隊長・鍬形《くわがた》アラタだ。
 鼻息荒く、いつも以上のしかめ面。すれ違いざまに隊長の行く先を聞いて回る様から察するに、何か良からぬ事態が進行しつつあるのは間違いない。

「私が、どうかしたか?」
 自動ドアを二つに割って、眼帯の男が姿を見せる。アラタを含め、この場全てを掌握する男、部隊長の天堂ソウジのお出ましだ。
「どうかしたか、じゃありませんよ。一体どれだけコールしたと思っているんです」
「丁度圏外の所にいただけだ。用件を聞こう」
「いいですか、落ち着いて聞いて下さい。マユが……、マユが」
「マユが、どうした? 先を言いなさい」
 ソウジの目に焦りの色は見られない。まさか本当に知らないというのか。アラタは困惑に息を詰まらし、咳払いで一呼吸置くと、絞り出すように言葉を継ぐ。
「マユが……。突然消えたそうです。エリアHに向かったっきり、戻らないと」
「そうか」
「そうか、って」たった一人の妹が、ワームのお膝元たるこの街で、行先も告げずに姿を消した。何故彼は取り乱さずいられる? 身の安全が羽根よりも軽いこの国で!
「行方が全く知れないんですよ!? 今日だけで出動案件が二つ、放っておいたら奴らの餌になるだけだ。早く捜しに行かないと!」
「アラタ、お前って奴は……」眼帯の隊長は険しい表情で俯き、がなる部下の胸ぐらを掴む。
「現在この施設は『クロックダウン』発動の為電力充填中である。何人たりともここを通すわけには行かん。我々マスクド・ライダー以外にここを守れる者など居ない。ワーム殲滅は全人類の悲願だ。辛いことだが、私情と世界平和。天秤にかけるほどでもあるまい?」
「……」
 空気中に霧散したタキオン粒子を除去吸収し、ワームたちから超加速を奪うクロックダウン計画。アラタ自身、ワームによって父母と弟を奪われた身だ。隊長の言わんとすることも、分からなくはない。
「貴様は別命あるまで待機。ワームの出現を警戒せよ。話は以上だ」
「ありません」
「宜しい。頼んだぞ、東京国民の未来はお前の双肩にかかっている」

 踵を返して去り行く隊長を目にし、アラタは何も言わず俯くことしか出来なかった。彼の言うことは正しい。大局的にものを見れば、口を挟むこと自体間違いなのかも知れない。
 だが――。


 ZECTの主要な建物は全て地下に建造されている。翅を持ち、徒党を組むワーム共に迂闊に侵入されないためだ。この小隊詰所も例外ではない。ワーム発生の報を受けた隊員たちは地下と地上とを繋ぐ水平開閉シャッターを通り、怪物の排除に向かう。
 赤青黄の回転灯が猥雑な光を放ち、隊員らに出動命令を下す。鍬形アラタがヘルメットを小脇に抱え、愛車・ガタックエクステンダーのハンドルを握る。一瞬で生体認証が通り、彼は九桁の数字を淀み無く打ち込んだ。
 軽快な排気音を響かせ、フロントライトが勇ましく輝く。カラカラと音を立ててシャッターが開き、相も変らぬ灰色の空がアラタ副隊長を出迎える。
 しかし、今日に限って彼を出迎えたのは埃交じりの空だけではない。通用口を塞ぐようにして立つのは四匹の蟻頭と、その頭目たる眼帯の隊長であった。

「お前には基地待機を命じていたのだがな。任務を外れて何処へ行く」
「このサイレンが聞こえないのですか? 俺は近辺のワームを斃す為に」
「つまらん言い訳だ」ソウジは芝居かかった口調と、大袈裟な手振りで続ける。「監視カメラにしっかりと映っていたぞォ、貴様が監視室のコンピュータに細工をし、誤報が飛ぶよう仕向けていた、一部始終がな」
「……」彼に向けられた銃口は四つ。生身で歯向かうには分が悪い。アラタは愛機のエンジンを切り、スタンドを下ろす。
「隊長、二三質問……宜しいでしょうか?」
「聞こう」
「クロックダウンが発案される前、もう一つ、対ワーム用の計画があったはずです。『アンチ・ミミック弾』、奴らの苦手とする物質を飛散させ、擬態を強制的に解除させる――。画期的な発明だ」
「……」
「副隊長権限で色々調べさせてもらったんですよ。評議会に掛け合って予算が下り、試作品が仕上がってたこともね。ですが二ヶ月前、計画は突然破棄され、弾丸も内々で処理された。それを指示したのは評議会のお歴々と、発案者である天堂ソウジ。あなただ。
 その後、代替案として議会を通過したのがクロックダウン計画。話が少々、出来すぎてるんじゃあないですか?」

 消えた弾丸、唐突な代替案、矢継ぎ早の実証実験。これら全てを繋ぐ答えは一つ。単純明快な答え故にアラタは『それ』を認めることが出来なかった。眼前に立つこの男が、『そうなる』訳がない。
 自分の推測は点で的外れだ。アラタも心の底では彼が笑ってそれを否定してくれることを願っていたのかも知れない。だがしかし、眼帯の隊長はそんな彼を嘲笑うかのようにしかめ面を崩し、代わりに不気味な微笑みを浮かべる。

「確か君は、殺された父母らの為にZECTに志願したんだったな。蟲共の擬態を剥がし、奴らだけを殺せるアンチ・ミミック弾。喉から手が出る程欲しかったろう。ハハハ、全く持ってその通りだ」
「……何を、言ってるんです」
「あぁ、ああ。話が出来過ぎているとか、そんな話だったね。ここまで来たなら君も知っておくべきだろう」
 天堂ソウジは右手をさっと振り上げ、横に立つ蟻共に命令を下す。彼らは腕に装着されたマシンガンを使うでもなく後頭部に手を回し、蟻型のフルフェイスメットを脱ぎ捨てる。

「これが『答え』だ。理解して、貰えたかね」
 アラタは目を剥き、絶句する他無かった。そこに居たのは自分たちの部下ではなく、『評議会』を構成する四人の老人たちだったのだから。
 自分たち兵士を管理・統括する彼らが前線に出ることなどあり得ない。そもそも、彼らは隊長に付き従い行動している。つまり眼前に立つ者たちは――。アラタの疑念は最悪の形で確信へと変わった。

「この……野郎ッ!」
 怒りに任せ、虚空に向かい手を伸ばす。クワガタのゼクターがアラタの手に収まり、そのままベルトのバックルへと滑り込ませた。
 ――変ッ、身!
 CHANGE・STAGBEETLE

「正面突破で活路を見出すか」
 ソウジは迫り来る二本の刃を腰の動きだけで容易く躱すと、部下に『待て』を促し、懐より何らかの無線機器を取り出す。タバコの箱くらいの大きさで、赤色のボタンと電波送信用アンテナが備え付けられた粗末なものだ。
「本番前の肩慣らしだ。どうなるか試してみるか」
 ゼクターに頼るでもなく、部下の援護をも断って? 何かやばい。仮面ライダーガタックはクロックアップを発動すべく右腰のスイッチに触れんとするが、ソウジの方がコンマ数桁早い。
 スーツ内部に充実したタキオン粒子を解き放ち、全ての景色が鈍化する。何をしようが構うものか。眼前の男を殴り付けんと拳を振るうガタックの躰は、対ワーム用徹甲弾に貫かれ、反り返る。

 馬鹿な。俺は確かに加速した。銃弾の雨くらい容易く躱せなくばおかしい。鎧を貫き肉にまで達した痛みが鍬形アラタを現実に引き戻す。勝ちを確信して飛び込んだ自分が、大の字を作って仰向く無様な姿を晒していることに。

「クロックダウン・フェーズワン、完了。おめでとう、『君たち』は超加速領域から追放されたと言う訳だ」
「あんたは、一体……何しようってんだ」
「駆逐だよ。その対象がワームから人間に変わる、それだけのことさ」
 穴だらけとなったアーマーを踏み付け、眼帯の大将が高笑う。野望に燃える隻眼に、『緑色の輝き』が灯っているのをガタックは見逃さなかった。
 しかし、今の彼に何が出来よう。ライダーとて鎧を着込んだ人間だ。加速を封じられ、銃弾の雨に晒されれば命はない。
「お前にもう用は無い。退職金代わりに鉛玉をくれてやる」
 年老いた兵隊共の銃口全てが、うつ伏せのクワガタムシに向いた。嗚呼、ZECTの若き副隊長はこのまま成すすべなく、尊敬する上司の手で銃殺刑に処されてしまうのか?
 無論、答えは『否』だ。戦士たるもの、窮地は神ではなく自分の手で乗り切らなくてはならぬ。
 白熱の輝きがソウジの右眼を眩ませ、射撃の合図を取り止めさせる。不意を突くこの光は何だ。彼がその理由を知るより早く、蒼き閃光が兵のうちひとりを撥ね飛ばした。

(おのれ……、そう来たかッ)
 マスクド・ライダーの乗用バイクは、キーロックさえ外せば使用者の脳波コントロールで発進出来る。眼前の敵に釘付けとなり、背後に注意が回らなかったソウジ自身の失敗だ。
 光から解放され、即座に睨みをきかすも、そこにガタックの姿はない。彼の遥か後方に紅いテールランプが映るだけだ。

「私を出し抜いたつもりか……? 小賢しい真似を!」
 思いがけず無様を晒すことになった眼帯の隊長は、緑の血を噴いて横たわる隊員の顔の皮を剥ぎ、露わとなった化け物面を滅茶苦茶に殴り付ける。複眼部分が弾け、ソウジの拳がビリジアンに染まる。
「あぁ、あの虫けらを八つ裂きにして連れて来い。確実に殺すのだ!」
 猛り狂い、荒い呼気を漏らしつつ配下に命令を下す。残る三『匹』の老兵たちは自ら表皮を剥がし、悍ましき蟲となりて、満身創痍の裏切り者討伐に飛んだ。

※※※

「しっかしこりゃまあ、こっぴどくやられたもんだな、ええ?」
「口に気を付けろよ士。俺ァ負けてない。あっちが尻尾巻いて逃げたんだ」
「……でも、あの副隊長さん、『命令だから』って」
「だあぁ、俺はそんなの知らない。一言も聞いちゃいないッ」

 怪我人の治療に追われる光写真館はいつも以上に騒々しい。仮面ライダークウガ・小野寺ユウスケは、貧相な上半身のあちこちに刻まれた打撲跡をガーゼで覆い、嫌味な相方の小言にしかめ面を作る。
 擬態したワームの隠れ家とされた写真館、それを殲滅せんと襲い来るZECT戦闘員と若き副隊長。一人この場に残されたクウガは超加速に翻弄され、寸でのところで隊長命令の招集に救われた。強がってはいるが、あと少し遅れたらどうなっていたことか。

「しかし、何故彼らは去ったのでしょう。士君が隊長さんを追い返したから?」
「確かに、腑に落ちないな。奴らにとって俺たち《ワーム》は害悪でしかない。放っておく理由がねえ」
 今にして思えば、用済みたるアラタを始末したいがための方便だったのかも知れないが、写真館の面々は知る由もない。
「どうだっていいだろ。理由が何であれ、奴らはケツ捲って逃げた。それで終いさ」
 これ以上自分の落ち度を穿《ほじ》られたくないからか、ユウスケは乱暴な調子で会話を打ち切り、勢い込んでソファに身体を投げ出した。直後に激痛がその彼を苛み、逆『ノ』の字に反り返る。
 進んで道化を演じるユウスケを見、誰もが笑い、館内の不穏な空気が溶けてゆく。弾丸めいた勢いで玄関に突っ込んだオートバイに遮られるまでは。


「な、な、なんだァ!?」
 ドアノブを境に真っ二つとなった扉が応接間に硝子の雨を降らせ、赤黒く染まった細腕が瓦礫の下から這い出して来た。狼藉者めと騒ぎ立てるのは後回し。文句は助けてから言えば良い。
 瓦礫を退け、怪我人を引っ張り出したユウスケは、血を流して突っ伏す男の姿に目を剥いた。彼こそ自分たちをワームと断じ、迫害せんとした蟻共の頭目・組織の若き副隊長だったのだから。

「お前! よくもぬけぬけと……」
「馬鹿、怪我人痛めつけてどうすんだ。抑えろ」
 先の恨みと拳を握り振り被るユウスケの頭頂に強烈な右チョップが飛んだ。士は苦悶に身を捩る彼を退け、怪我人の耳元で膝を折る。
「人ン家に突っ込んで出来た傷じゃない。ワーム相手に下手打ったか?」
「隊長が……裏切りを、クロックダウン計画……。この世界が……。マユ、俺は……」

「ユウスケ、これは一体」
「俺に解かるもんか」
 アラタは時折荒い呼気を漏らし、弱った身体で必死に事実を伝えんとするが、ZECT関係者でない写真館一行にとって、彼の口から飛び出す単語は未知以外の何者でもない。ただ一人、何時の間か窓の外に視線を移していた士を除いて。

「成る程。だいたい分かった」
 士の差した人差し指に向かい、皆の注意がそちらに移る。
 遠方に広がる薄暗いグレーの空に、一際黒く、膨張しながら渦を巻く箇所がある。雷の予兆か? 否、暗雲の中でエメラルドグリーンに輝くそれは、集束されて形を成すまでに至ったタキオン粒子である。
「あれを踏まえて一つ聞こう。『クロックダウン』ってのは、何だ?」
「……タキオンの発動を阻害する粒子を国内全土にばら撒き、ワーム共からクロックアップを奪う最終作戦。決まれば奴らは脅威ではなくなる筈、だった」
「なのにお前は組織から見捨てられ、手痛い仕置を喰らった。計画を乗っ取られ……。というより、それそのものがペテンだった、そうだろう」
 無言で頷くアラタの姿を見、士は更に思案を巡らせる。ライダーの無力化にしては仕掛けが大袈裟過ぎる。そもそも、僅か二体のハンターに、圧倒的多数の蟲共が怯えるというのも妙だ。彼の言っていることが真実だとすれば――。
「あんなアンテナぶっ立てて、やることがライダーを丸裸にするだけか? 有り得ない。タキオンの光で地球人類全部、時間の流れから追い出すつもりだな」
「何……だって!?」

「玄関ぶっ壊しておいて詫びも無いのは感心しないが……」士はバックルを腹部に押し当て、『マシンディケイダー』のカードを抜き出すと、「いいだろう。世界一つ、救いに行ってやるぜ」
 ようやっと分かり易い危機のお出ましか。腕が鳴る。闖入者のバイクを立て起こし、ハンドルに手をかける士だが、更なる地響きが彼のやる気に水を差す。

「野郎。全部、始末したと思っていたのに……!」
 既に荒れ散らかった玄関先より、二本の触覚が獲物を捜して互い違いに揺れる。やがて赤色の複眼が士たちの顔を見据え、威嚇めいて激しく点滅し始めた。アラタを追って来たワーム、その最後の一体だ。
「やってくれるよ。玄関ぶっ壊した上お客様連れとはな」
 暗雲内の輝きが激しさを増している今、奴と遊んでいる暇は無い。士は油断ない目で周囲を見回し、呻くユウスケに言い放つ。
「後は任せる。夏ミカンと爺さん、しっかり護れよ」
「守れってお前……」
「出来るのか? 出来ないのか?」
「ぐ……」
 クウガである自分が、このシチュエーションで『できない』などと言える訳がない。相変わらず底意地の悪いやつだ。ユウスケは腹を押さえよろめきつつ身体を起こすと、
「どうせ、断ったって行くんだろ? 世界の崩壊、防がなきゃなんだし」
「そういうこと。言質《げんち》は取ったからな、出来なかったは無しだ」
 言うが早いか、士はディケイドへの変身を終え、近寄るワームを撥ね飛ばし、輝きの元へと駆けて行く。写真館には満身創痍の青年と無抵抗の光一家、そして良いとこ無しの仮面ライダーが残された。
 玄関口にめり込んでいた赤目のワームが、口角から薄紫の液体を滴らせつつ起き上がる。傷は負ったがまだ浅い。決定打を撃ち込み、息の根を止めなくては。

「夏海ちゃん、栄次郎さんを連れて奥へ逃げて。後は俺がなんとかする」
 どうするかなんて決めてないけど、という弱音を喉元で押し留め、腹部に浮かび上がった変身バックルに手を触れる。クウガとなったユウスケは、ようやっと体勢を立て直した化け物に向け、こっちに来いよと手招いた。
 ヒュン、という風切り音と共にワームの姿が消えた。同時に、見えない拳の一撃がクウガの右脇腹を突く。痛みによろける彼の左胸に、蹴りと思しき強烈な衝撃が襲った。
 苦しがり、たたらを踏みながらも、目と耳を澄ませ索敵に務めるが、細やかな羽音ばかりで相手の尻尾すら掴めない。己の眼前に加速空間から抜け出したワームが姿を見せる。逃がすものかと飛び掛かるクウガを、この虫は頭部の触覚で一喝し、再び加速世界へと消えてゆく。

 狭い自室で蚊と出会した場面を想像してほしい。目や耳で敵の位置を掴んでも、気配を感じて素早く離れてしまい、死角を突かれて意図せぬ所を吸われていることだろう。クウガ・小野寺ユウスケにとって、眼前のワームは部屋中を飛び回る蚊、そのものである。

「やめろクワガタ野郎、お前に奴は倒せない。さっき身を持って解っただろう!」
 アラタの言い分は尤もだ。先の戦いだって、招集がかからなければどうなっていたことか。ディケイド程器用に立ち回る術を持たぬクウガに、此の勝負はあまりに分が悪い。
 しかし、否、だからこそ、ユウスケは煩く囀る部外者を遮り、吠える。
「ジョーダンじゃない。ここで退いちゃあ、カッコ付かねェだろうが!」
「痩せ我慢でなんとかなる問題か?! お前に出来ることなど何もない! いい加減認めろよ!」
「いいや、俺にだってやれることは、ある!」
 クウガは腰のバックルに手の甲を当て、形態を赤から緑に入れ替える。超感覚で加速空間に潜り込んだワームを引きずり出そうと言うのか。
 無理だ。目や耳で捉えられてもクウガ自身が素早くなれる訳ではない。現に、彼の上体は左右に振られ、立派な装甲には所々に窪みが出来ているではないか。緑のクウガは他形態以上に衝撃に弱い。これまでの調子で打ち込まれ続ければ、体内外共に疲弊し尽くしてしまう。
 それでもなおクウガは諦めない。一体何故、こんな勝ち目のない賭けに頼るのか。
 賭け――? 本当にそうだろうか。彼の目に宿る輝きは破れかぶれなどでは無い。これまでの無駄ともいえる切り結びの中で、本当に突破口を見付け出したとでも?

(勝負は一瞬。チャンスは一度だけ。外せば、負ける……!)
 手にしたボウガンの弓を引き絞り、耳を澄ます。相手は捉えきれない程に素早い。それは認めよう。だが、奴とて仮面ライダーのバイクに轢かれてなお、無傷のままではいられない。
 ペガサスの超聴覚は、敵の足並みの乱れを聞き逃さなかった。右脚に比べ左の踏み込みが重い。加速空間を脱し制動をかける際、ダメージを庇ってふらつき、体勢を戻すためコンマ数秒無防備になっている。

 タキオンの流れが歪み、足音の感覚が狭まってゆく。加速空間を脱したワームが痛む脚を庇い、無理矢理に上体を持ち上げた。
 勝機! クウガは左脇からボウガンを通し、今まさに足を止めんとする背後のワームを狙い撃つ。
 水風船が割れ爆ぜたかのような音が響き、化け物が緑色の血を噴いて現れた。光家の窓硝子を撒き散らし、暗雲立ち込める道路へと叩きつけられる。
 緑のクウガはふらつく身体に喝を入れ、割れた窓を抜けて道路に出る。彼の一撃はワームの胸部を正確に撃ち抜いていた。狂ったように足をばたつかせているが、最早助かるまい。トドメとばかりに脳天目掛け二発の空気弾を放つ。髑髏めいた不気味な顔はトマトのように爆ぜ、深緑の返り血がクウガの身体を染めた。

「やりやがった……。本当に、やりやがった」
 その一部始終を視ていたアラタは驚嘆に目を剥いた。クロックアップしたワームを加速無しに仕留め切るなんて。あり得ないが、認める他あるまい。彼は本当に、やってのけたのだ。
 しかし、勝利の余韻に浸るのもそこまでだ。対して自分はどうだ。声ばかりでかく、足手まといも良いところではないか。申し訳無さに駆られたアラタは痛む身体に鞭打って起き上がり、緑から赤に変わらんとするクウガの元へと伝い行く。
「すまない、あぁ、いや。何て言っていいやら……」
 一度は殺そうとした相手に平謝り? 馬鹿げている。ならばどうする。どうしようもない。考えが上手くまとまらず、言の葉もひらひらと宙を舞うばかり。
 アラタのもやもやとした気持ちを察したクウガは、何も言わず彼の眼前に拳を向け、親指をぐっと突き立てた。

「あ、あ……」
 古代ローマに於いて、『納得出来る行動』をした者に与えられるサイン、サムズアップ。難しく考える必要は無い。自分たちは今こうして生きている、それで良いではないか。
 気持ちが正しく伝わったかどうかは分からない。しかし、アラタの手は自然とクウガと同じサインを描き、その顔には優しげな笑みが浮かんでいた。


※※※

 エリアZに座する暗雲から数キロ程先。発生源たる某研究所目掛け、灰色の爆炎が順繰りに瓦礫を巻き上がる。
 これを読まれている方の中にタキオンの形造る加速空間を視認出来る者がいれば目に出来たはずである。ワーム除けの地雷を踏み抜き、一直線に研究所を目指す赤きマスクド・ライダーの姿が。

 ただならぬ気配を察知し、警護用のボール兵が金網前を取り囲む。しかしそれらは皆、弾幕を形成する暇も無く叩き壊され、鉄屑へと変えられた。


 ――カブト、エリアZ領内に侵入。あと55秒後でこのクロックダウン中枢に到達します。

 ――フェーズ2の進捗状況は。

 ――システム稼働率200%、電力供給率98。40秒後に起動可能かと。

 ――急げ、奴がここに踏み入ってからでは遅いのだ。

「んん、ん……」
 覚醒した天道マユが最初に目にした光景は、蛍光色に輝く電子機器類と白衣を纏った何十もの大人たちの姿だった。どうして私はこんなところにいるんだろう。確か、門矢さんたちの様子を見に外に出て、そこから――そこから、何だっけ。
 事態を把握せんと頭を振って周囲を見回す。彼女はここで自分が鉄の鎖で両手足を繋がれ、拘束されていることに気が付いた。
「何よ、……こんな! 離して、離してよッ」
 もがいてみても、鎖がじゃらりと重たい音を立てるばかり。途方に暮れる中、白衣たちを掻き分け、一人の男がマユの元へと近寄って来た。

「グッドモォオニィング・マユ。丁度良い時に目覚めてくれたものだ。よォく見ておけ、あのカブトが、我々の科学に屈服するその様をな!」
「お、兄ちゃん……?」
 数か月ぶりに再会した兄は、妹である自分が磔にされているのも意に介さず、訳の分からないことを叫んでいる。カブトを倒す? あれを廃棄せよと指示したのはあなた自身ではないか。よしんばそうでなくとも、あなたはあれの唯一無二の『資格者』だろうに。

 ――システム、電力供給率100! クロックダウン、起動!

 ――ひ、ひ、ひ。出るぞ出るぞォ、一本角に真っ蒼な目、来い、来い来い来い。

 集束された緑の雲が爆ぜ、輪となって東京国中に降り注ぐ。
 クロックダウン・フェーズ2。大気中のタキオン粒子がその活動を抑えられ、装置内に吸い込まれて行く。臨界にまで達したそれが再び放たれてしまったら。この星で生きとし生けるもの全てが、その活動を停止してしまうだろう。加速空間で自在に活動出来るワームたちを除いて。

 厚さ一メートルの扉に窪みが入った。一つ、二つ、三つ。水溜りを跳ねる雨滴めいて、無表情な鉄板に重低音を刻んで行く。
 衝撃に留め具が悲鳴を上げ、巨大な鉄の塊が吹き飛んだ。哀れな研究員が巻き込まれ、『緑』の血を流して壁や床に染みを作る。その先に立つのは赤きマスクド・ライダー。加速空間の住人たるカブトの姿が、とうとう白日の下に晒されたのだ。

「カブト……? そんな、嘘でしょ」
「は、はは。驚くのはまだ早いぞォ。そぉら、『資格者』様のおでましだ」
 アーマー内のタキオン粒子を吸い尽くされ、バックルに填まったカブトゼクターがベルトを離れた。同時に六角形の装甲が剥がれ、『中身』が糸の切れた人形めいて崩れ落ちる。


 マユの瞳から光彩が失せ、血の気が引いた。自分は悪い夢でも見ているのだろうか。こんなのってあり得ない。信じられる訳がない。
 カブトの鎧から抜け出た人物は、眼帯をしたこの兄と、判を押したように同じ顔をしているではないか。
 父母、そして兄と、科学者の家に育った自分は、ドッペルゲンガーなんてオカルトは信じない。つまり、これは。

「ひィさァしぃぶりぃぃ。この日が来るのをずぅっと待っていたぞカブトォ。あぁいや、『天堂ソウジ』だったかな」
 眼帯の兄がそうでない兄の背中を踏み付け、猫なで声で嘲笑う。憎悪と歓喜とが入り混じり、身の毛もよだつ不気味さだ。
「見給え、このシステムを! 君のその類稀たる頭脳が描き出したクロックダウンを! 『我々』を滅ぼすための機械で自分たちの首を締める結果になるとはな。全く持って滑稽だよ。これを因果応報と言わずして何とする!」
 拳を固く握り締め、熱っぽく語るその様は、マユの中にある『天堂ソウジ』とは似ても似つかない。ワームには擬態した対象の人格をコピーし、その通りにしか振る舞えないはずなのに。
「おっと、まだ絶望しきってくれるなよォ。君にはとっておきのサプライズがあるのだ。是非是非ご観覧願いたくてねェ」
 眼帯ソウジの異様な目付きがマユの方へと向いた。彼は地に這い蹲る『本物』を部下に任せ、磔にされた妹の眼前に立つ。
「目ン玉かっ広げて見るが良い、君が自分を犠牲にして護った、その結果をな!」
「お兄ちゃん、何するの!?」
 懐から取り出したダガーナイフをマユの胸元に突き立て、そのままゆっくりと、真一文字に刃を滑らせて行く。妹の涙も、「本物」の絶叫もお構いなしだ。
 身に纏う制服が裂け、赤い血が刃に糸めいた筋を作って滴り落ちる。床に付着したそれは、空気中の酸素と結合し『緑色』に染まる。

「え……!?」
 此の結果に驚いたのは、他ならぬマユ自身だ。そんな馬鹿な、認められる訳がない。『緑』の血液ということは、つまり。つまり――。
「んふふふふ、ちょいとばかし、反応が薄いようだねエ。ならばもう少し、派手に行くか!」
 ソウジは妹の切創に指をかけ、力づくで引きちぎる。紅く偽装された血液の下に隠された『萌黄色』の表皮が露わとなった。


 無理矢理皮膚を剥がされたショックか、湧いて出る真実に耐え切れなくなったのか、マユの脳裏に過去の記憶が走馬灯めいて去来する。産まれた時、兄との暖かな時間、生意気でイタズラ好きの幼馴染、父母の死、渋谷隕石、絶望し唇を噛む己の姿――。
 待て、待て。最後は何だ。走馬灯に何故自分の姿が映る。そもそもこんな場面、覚えが無い。これは一体、誰の記憶なのか。
 現世と夢の狭間で揺れるマユの目に、己の胸から滴り落ちる緑の血液が留まる。点在した疑問一つ一つが、最悪の形で繋がった。

「わたしもあいつらと同じ、化け物……!?」
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NoTitle 

 遅ればせながら、トマトです。カブト最新話も拝見させていただきました。こちらにも感想コメを送らせていただきます。



 ――トンボは見てくれだけのカザリかよ!!(笑)


 しょっぱなから腹を抱えての失笑。ドレイクこと風間さん涙目ですね。理由が税金対策って(笑)。ZECTも不況の荒波にのまれてるのか。ちゅーか(蛇フェノク風に)虫怪人も政治に関心示すんだ。彼らなら障害と判断したなら、抹殺して成り代わろうとしそうなものですが……。
 そして当作品では、ゼクターは資格者の静脈で判断するのですね。本編ではサーモグラフィーでワームと識別してるとかありましたっけ。
 ザビーとか劇場版ライダーは判断しやすそうですね。装着場所が手首位置ですし。逆に剣の柄とかについてるサソード……どうするんだろ?


 そしてガタックをはじめとする「マスクドライダーだけ」がクロックアップ使用不可。テレビ本編でも描写がありましたが、こっちの方がよりその恐怖というか、危険が伝わってきました。ワーム相手にクロックアップが使えないとこうなるんだな、と。
 そもそもクロックアップ使えないカブトライダーって、他の平成ライダーと比べても遜色ないんですよね。マスクドとライダーの二フォーム使い分けるぐらいかな? ならば、後半のユウスケが用いたペガサスフォームとかの方がワーム撃退には適してるといえますね。だからこそのアラタの小説内での発言だったのだと思いました。対抗策ないと怖いもんね、クロックアップなんて。
 早い話が、ユウスケ活躍して良かったね。テレビ本編じゃ「萌え」しか印象に残ってないし。クウガファンとしても非常に嬉しい限りです。


 そしていよいよマユの正体が露見。テレビ本編では、ワームであるとしか描写されず、経緯などが曖昧だったので、ソウジさんからの説明に来たいです。ちゅーか(Part2)痛ェ、胸にダガーナイフ突き立てて横に裂いてワームと証明するって普通に痛いですよソウジさん。
 朝八時には絶対にできない描写ですね。でもそういったことができるのが小説の利点だと思います。より凶悪さが出ていてすごいと思いました。


 いよいよラストパートですね。マユ達の説明、ライダーの戦闘、物語の結末等を期待して、また続きを待たせていただきます。
 それではまたどこかでお会いいたしましょう。最近、オダギリさんがクウガを語ってくれて嬉しさ満開、ハッピーなサムズアップです。
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