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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(2)

Journey through the Decade Re-mix 第八話 「超モモタロス、参上! 鬼ヶ島の戦艦」 三両目

 ←これから觀に行く上で(略)2014年度ベストテン →これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 2015年上半期号
前回の投稿から二年近く経ってしまって、最早仮面ライダーの二次創作がここに出て来ること自体違和感があるようにすら思えて来たのですが、元々うちのメインはこういうものでした。久々にバトルアクションマシマシのぎとぎととした二次創作が描けて、個人的には大変満足しています。
 続き物ですので、出来れば過去作から読んで頂けると助かります。

 ちなみに、直前のお話はこちらより。

 カブトの世界と並行して連載するという変則的な形を取っていた本シリーズですが、一応今話を読んで頂ければ、こういう形になった理由が分かってもらえるかなー、と思います。
 そこまで深ァい理由がある訳ではないのですけども。

これまでのあらすじ
 電王の世界にやって来た光写真館一向を待っていたのは、謎のイマジンに身体を乗っ取られた小野寺ユウスケ、ディケイドを敵と見なし襲い掛かる仮面ライダー電王、そして「何か」を狙って蠢く、「オニ一族」なる時の列車強盗団であった。
 強盗団の頭目の一人・銀のオニシルバラとの戦いでディケイドとクウガ(?)はデンライナーから投げ出され、またそのデンライナーも先頭車両を強奪され、時の砂漠に放り出されてしまう。
 一方、一人だけオニたちに拉致され、牢に入れられた光夏海を待っていたのは――、いたのは……、誰だ?


※※※

「誰、でしょう……って。分かりませんよ、そんなこと」
「ですよ、ねぇ……すみません、ヘンなこと訊いて……」
 自分より一回り小さい青年を見、夏海は口元をハの字にして考える。変に茶化したりふざけている様子は無い。自身が何で、どうしてこんな場所にいるのかを真剣に悩んでいるようだ。もしや、これは。
「記憶喪失……なんですか?」
「そう、なんでしょうか。えぇと、怪物たちに連れられて、この牢屋に入れられたところは、覚えているんですけど」
 彼の言葉から察するに、あの獰猛な連中によってここに幽閉され、記憶を奪われる程の「何か」を受けたのだろう。牢屋に自分たち以外の人影は無く、手当り次第に人攫いをしている訳では無さそうだ。
 ならば何故彼は囚われている? 自分はディケイドの仲間であり、いざという時の人質として生かされている。似たような理屈で囚われているとするならば、彼は一体何の仲間なのか。電王だとか言う怪人集団の一派――?
 こんな所で考え込んでいても仕方が無い。まずはここを抜け出さくては。自分たちを閉じ込める鉄棒に力を込めて左右に揺すってみるが、常人離れした力で嵌め込まれたそれを、人間である夏海に外すことなど不可能であった。
 それでも暫し抵抗を続けるが、無理なものは無理と半ば諦め、鉄棒を握ったままその場にへたり込んでしまう。

「ここで、手詰まりって訳、ですか……?」
 今まで、どんな危機が遭っても士が、ユウスケが自分の傍に居てくれた。しかし今はどちらも居ない。さながら、助けを待つだけの籠の鳥だ。
 否、こんなことで諦めてどうする、どうなる。士たちは必ず此処へ来る。あの怪物たちを放って置くわけがない。このまま囚われの姫を気取っていては、乗り込んで来た時彼らの邪魔になるだけだ。
「諦めて……たまるもんですか」再び棒を掴み、力一杯左右に揺する。たとえ無駄だとしても、何もせず黙って俯いているのは嫌だ。
「あの……」
「何ですか、今忙しいんですけど」
 夏海の様子が気になったのか、記憶喪失の青年が声を掛けてきた。ちょっとした気遣いなのかも知れないが、必死になって鉄棒を揺する夏海にとって、彼のおどおどした声は苛立ち以外の何物でもない。
「えっと、その。ここから出たいん、ですよね?」
「そうです、出たいんです。話しかけないでください、気が散るっ」
「いや。あの、でも」
「邪魔しないで、って言ってるでしょう!? もう少しで、もう、少しでッ!」
「ち、違うんです。『開きました』」
「は……、え。ええっ!?」

 耳を疑うような言葉に釣られ、横を向いた夏海の目に映ったのは、丁度ヒト一人が抜け出せそうな隙間である。鉄棒のうち一つをずらして作ったものだ。
「あ、あの。一体、どうやって……」
「幾ら棒を挿したって言っても、地面の方まで固くなる訳じゃない。だから、穴を掘って挿さっているところを削れば……」
「な、なるほど」
 簡単に言うが、棒を押せるほど穴を、しかも素手で掘るなんて普通じゃ絶対に不可能だ。彼は自分の悪態も気にせず、ただ黙々と穴を掘っていたと言うのか。対して自分はどうだ。棒にかじりついて必死に足掻いて、まるで檻に入れられた猛獣ではないか。光夏海は浅はかな己を恥じ、真っ赤な顔で項垂れる。

「……ごめんなさい。私、あなたにひどいことを」
「暗くて狭い場所にいきなり放り込まれたんです、気が立っちゃってもしょうがないですよ。さあ早く。見張りの怪物が来る前に……」
「は、はい」
 こんな状況で怒るどころか、自分を励ましてくれるだなんて。記憶が無くてこうなったのか、元からなのか、もしやこの優しさ自体が罠なのではないか。はっきりしたことは分からない。だが夏海は差し出された手を取り、隙間を潜り抜けて岩の入り組む粗末な通路に足を踏み入れる。
 牢を脱した以上立ち止まる訳には行かない。二人は慎重に辺りの様子を覗いつつ、壁伝いに足場の悪い洞穴を進む。
 道すがら、何体かの怪物たちとすれ違う。しかしその誰もが物陰に隠れた夏海らを見咎めることはなく、退屈そうに暇を持て余している。

「なんか、思ったよりも簡単に逃げられそうですね」
「ええ、僕たちに最初から興味がないみたい……」
 夏海を牢に閉じ込めるよう立案した男と、それを実行した男との意見の不一致が原因なのだが、当然彼女たちがそれを知ることはない。
 捕えておいてそれはどうかと思うが、何にせよ好都合だ。縦に細長い通路の先から光が灯る。後少しでここともおさらばだ。希望を抱いて先を急ぐ二人の若者の行く手を、眼前に現出した光のオーロラが阻む。

「――やれやれ、何故私に従おうとしないのだね、光夏海」
「あなた、は……!」
 オーロラをくぐり、此方に出ずる者あり。薄茶の帽子を浅く被り、同色のコートを纏った胡散臭い男、ディケイドを目の敵のように付け狙うあの鳴滝だ。
 鳴滝は牛乳瓶のような黒縁丸眼鏡の奥で憤怒の表情を作り、二人の前に立ちはだかる。
「前にも言っただろう。あの男は世界に災厄を振り撒く悪魔だ。一緒に居てはならない。これは、君のためなのだ」
「前にも、言った筈ですよね」夏海は物怖じすること無く鳴滝を見据え、語気を強めて言い返す。「士君は悪魔なんかじゃありませんし、あなたの言いなりになると言った覚えもありません」
「愚かな。私に歯向かうつもりかね」
「何度も同じことを言わせないでください」

「……仕方が無い」
 男は帽子を目深に被り、心底面倒臭そうに息を吐くと、夏海たちを見据えて指を鳴らす。「ならば、此方としても少々荒っぽい手段に出ざるを得ない。覚悟してもらおう」
 鳴滝が横に退くのと同時に、オーロラの先から人影が迫り出した。奴は一体何者だ。いや待てよ、このシルエットには見覚えがある。薄茶のかかった栗色の髪に、人を見下したかのような嫌味な目付き。忘れたくても忘れようがない。
 しかし、だからこそあり得ないのだ。光夏海は目を白黒とさせて、眼前に立つ「門矢士」の姿を見込む。


 眼前の男は無気味な仏頂面のまま眉一つ動かそうとしない。否、後ろ手で背中を掴み、肉を千切りながら左右に裂いているではないか。
「な、な……な!?」
 裂け目の中から薄い菜種油色の触手が波打って伸び出し、士の顔が平べったく広がってゆく。両の腕から力が失せ、文字通りの人の皮がずるりと滑り落ちる。怯え戸惑う夏海の目に映ったのは、触手と同じ色の外殻を纏い、髑髏めいた顔の怪物であった。
 今の彼女が知る術はないのだが、奴の名はフィロキセラ。人間に「擬態」して繁殖する異生物・「ワーム」の一種である。何処かで門矢士の姿をコピーし、彼に成りすましていたのだろう。

 鳴滝が右手を振り上げたその瞬間、怪物の右肩から伸びたる触手が槍めいて放たれる。わざと外して放たれたそれは岩の一部を砕き、小石の粒を夏海の右頬に叩き付けた。

「こいつは私の言いなりだ。君だってこんな所で死にたくはないだろう。余計な意地を張るのは止めたまえ」
「ぐ……!」
 変身できない夏海にこの化け物をどうにかする術はない。かと言って奴に頭を垂れて言いなりになるのは御免被る。二律背反する思いを胸中に抱き、夏海は歯茎を軋ませて睨み返す。
「あくまで頭を垂れるつもりは無いか。君のその目、父親そっくりだ」
 鳴滝は苦々しげな表情を浮かべて右手を上げる。髑髏の魔物は円を描いて頭を振り、右こめかみから伸びたる触手を鞭のようにしならせた。
 上体を大きく反らせて振り被り、風切り音と共に棘付き触手が夏海を襲う。だが、それが彼女の体を突付き、衣服を破ることは無かった。それまで聞き役に徹していたあの青年が、彼女と触手との間に割り込んだのだ。

 無論、ただの人間が怪物の力に対抗出来る訳がない。ひ弱な青年は両腕で触手に取り付いて押し止めようとするも、赤子の手を捻るように振り払われ、もんどり打って岩肌に叩き付けられる。

「あ、あなた。なんで……」
「い、行ってください。ここは、僕が食い止めます、から」
 青年は駆け寄って来た夏海の手を払い、触手の化け物に掴みかかる。そのまま羽交い締めにするが、容赦のない膝蹴りを腹に貰い、ずり下がって怪物に枝垂れかかる。
 だが青年は諦めない。痛みを推して上体を起こし、再び怪物の腰に腕を回す。今度は肘打ちを右肩甲骨に貰い、強引に引き剥がされてしまう。
 それでもなお彼は諦めない。再び夏海を標的に据えて歩き出した瞬間、両腕で足首を掴んで転ばせたのだ。
 腿から伸びた菜種油色の触手がしなり、足首を掴む青年の身体に出鱈目に打ち込まれて行く。だが彼は歯を食い縛っり、怪物をこれ以上先に行かせんと踏ん張っている。一体、何のために?

「やめて……、やめてください! 見ず知らずの私のためにあなたがそんなことをする必要なんて!」
「そんなの、関係ないっ」足首に必死にしがみつきながら、青年は更に声を絞り出す。「痛みはいつか消えますよ。けれど、嫌なことをなあなあで済ませて先に進んだら、あなたはきっと後悔する。そんなの絶対に、駄目なんだ」
「そ、それは……」
 彼の言うことは尤もだ。しかしそれを、自分と何の関わり合いも相手に、ここまで身体を張るなんて。

「フン、無駄な足掻きを。始末せよ」
 青年のしぶとさに苛立つ鳴滝は、親指を立てて左腕を振り上げ、勢い良く下に向ける。菜種油色の怪物は再度青年を岩肌に叩き付けると、ふらつく彼の脳天目掛け、先の鋭く尖った触手を打ち込む。
 光夏海は見るも無残な光景を想像し、思わず目を瞑る。しかし、頭蓋骨を砕く鈍い音は彼女の耳には届かない。怪物の放った触手は、青年自身が人差し指と中指の間で挟み込み、頭に達する前に留めていたからだ。

「――良く言った。それでこそ我が家臣ぞ、リョウタロウよ」
 どこか他人行儀な口調の青年は、触手の先を指に挟んだまま立ち上がり、ゆっくりと顔を上げる。ひ弱で幸薄げな顔はそこには無く、『銀』の瞳は強い決意と怒りに燃えていた。
 青年は身体の心地を確かめるように何度か拳を握り開くと、背後で怯える夏海の方に首を向ける。
「そこの岩陰に隠れて見ておれ。この私が、あの獣を掃除するところをな」
「えっ……、えっ?」
 掃除する? 人の手であの怪物を? いや、それよりもあれだけの怪我を受けて何故平然と立っていられるのだ。考えがまとまらず困惑しきりの夏海を尻目に、銀の瞳の青年はズボンの尻ポケットから「パス」を取り出し、徐ろに怪物の眼前に掲げた。

 怪物が左手の触手を伸ばすと同時に、何処からともなく現れた銀のバックルがそれを弾き、青年の腹部に収まった。続いてベルト部が伸長し、列車の警笛を思わせる荘厳な調べが洞穴内に響き渡る。

 ――変身
 ――WING FORM
 手にしたパスをバックルにかざすと同時に、雪のように白い光が青年の身体を包み込む。白銀に薄黄があしらわれた鎧の頭頂部に鳥が降り立ち、電仮面となって顔と一体になる。これこそが仮面ライダー電王・第五の形態、ウィングフォームだ。

 電王と化した青年は両腰のデンガッシャーを手にして空に放る。宙に浮いたそれは一人でに連結され、ブーメラン型の刃と、片手持ちの手斧となって彼の手の中に収まった。
 白の電王は左の手斧で触手を払い、右手のブーメランを勢い良く投げ付ける。狭い岩場の中に放たれたそれは、ピンボール台のボールめいて反射を繰り返し、怪物の触手を次々と切り刻んでゆく。

「他愛無い。本気を出せ下郎、何もせず命を散らしたくなければな」
 得物の刃を研ぐように擦り合わせ、ゆったりとした動作で両手を腰に置く。挑発とも取れる動作に怒りを覚えたか、旗色悪しと判断したか、怪物は両手の甲より鉤爪を伸ばし、中腰から奇妙な構えを取った。
 奴の身体が一瞬ぶれ、忽然と消え失せた。同時に電王の身体が何らかの衝撃を喰い、背後の剥き出しの岩に叩き付けられる。
 体勢を立て直さんとする電王をさらなる一撃が襲う。右かと思えば左へ、左かと思えば上へ。予測出来ない縦横無尽の連撃に電王は反撃することすら許されない。

「ぬう……」一発一発は軽いものの、亀のように身体を丸めていては反撃すら叶わない。何一つ変わらないこの状況に業を煮やした電王は、敵の攻撃を掻い潜り、左手のブーメランを放った。
 くの字に曲がったブーメランは菜種油色の怪物を捉えることなく空を切り、壁を崩して小石を巻き上げて行くばかり。苦し紛れの悪手か? 否、電王の青い複眼から覗く輝きは、諦めに染まってなどいない。
 身体を丸めて敵の攻撃を受ける傍ら、彼は耳を澄ませて音を聴き、風の流れを読んでいた。そこにブーメランによって跳ね飛ばされた小石の礫《つぶて》が合わさり、風切り音に反響が重なり合う。移動の音、小石の音、反響の位置、タイミング。全てが繋がった。

「捉えた、ぞ」
 それまで丸めていた身体を伸ばし、右脇腹に手斧の刃を置いて力を込める。それまでリズミカルに響いていた風切り音が消えた。斧の切っ先からは黄緑色の体液が滴り落ちており、彼の目線の先では菜種油色の怪物が脇腹を抑えて蹲っている。
「ふむ、まだ浅いか。胴を真っ二つに出来ると踏んでいたのだが」
 電王は刃に滴る体液を拭い、ふらつきながらも立ち上がらんとする怪物をちらと見る。今のは何かの間違いだと言わんばかりに躰を震わせ、再び中腰を取るが、青複眼の戦士は興味が失せたと言わんばかりに踵を返し、鼻を鳴らす。

「貴様の負けだ、獣よ。下郎の割には……なかなか楽しませてもらった」
 勝負はその瞬間に決した。加速の体勢を取り、周囲の警戒を怠っていた怪物は、未だ閉所を飛び交う刃の存在を完全に失念していた。くの字の刃は髑髏めいた化け物の後頭部を通って右目から右頬に掛けて切傷を作り、電王の右手へと戻って行く。

 一仕事終えた格好となった白の電王は、戻ってきたブーメランを優雅な動作で掴み取り、その切っ先を彼の元へ向けた。
「さあ、次は貴様の番だ。無様を晒したくなければ死ぬ気でかかって来るが良い」

「『駒』のくせに余計な真似を……、行きずりの優しさなどこの世界には不要だ。彼女の存在が何を意味するのか、解りもしないで!」
 鳴滝は苦々しく恨み言を呟くと、自身の背後に光のオーロラを生じさせる。駒を失って退散といったところか。
「光夏海、君はなんて愚かなのだ。君だけは、君だけは巻き込みたくなかったのに……」
「私、『だけは』?」
 夏海が問い掛けんとするより早く、帽子の男はオーロラに飲まれ、消え失せる。
 私だけは? 彼は自分の知り合いなのか? 馬鹿な、鳴滝なんて男は記憶にない。そもそも「巻き込む」とはどういうことだ。彼は、光のオーロラを自在に操るあの男は、ディケイドを目の敵にし、一体何を仕出かさんとしているのか?

「……私を前に考え事とは関心せんな」
「え、あ、ああ。ありがとう……ございます」
 改めて、自分を助けてくれた青い仮面の電王を見込む。妙に気取った口調、他を見下す傲慢なあの態度、流麗な戦いぶり。どれを取ってもかの少年とは似ても似つかない。これは、もしや。

「あなた、イマジン……ですか?」
「分類学的に言えばそうなろう。だが私には列記とした名前がある。『ジーク』という名がな」
「は、はあ」一緒に居ると疲れる類の者か。助けて貰ったのだし、余計な文句は言うまい。それよりも、「知り合い、なんですか? 彼――、リョウタロウ、さんと」
「うム、よォく知っておるぞ。下僕一人ひとりにまで気を配る。あるじとして当然のことだ」
「し、下僕……?」
 返ってきた予想外の答えに困惑し、頭を抱える夏海だが、当の電王はそんなことなどどこ吹く風ぞと流し、彼女をお姫様めいて抱き抱えた。
「ちょ、ちょっと!? 何をするんです!」
「『この男』たっての願いだ。記憶無き今なお私の力を跳ね除けるとは。全く持って面白い奴よ」
「それって、彼はまだ、生きてるってことですか?」
「生きているとは人聞きが悪い。意味もなく命を奪う下郎と一緒くたにされては困る」
「は、はあ……」
 何故そこで胸を張るのかは分からないが、敵で無いことはよく解った。余計な口出しをしても何の意味も無い。夏海は抵抗を諦め、尊大なイマジンの差し出す手を取った。

※※※

 混じり気無しの白砂に覆われた大地を、空にかかる虹色のグラデーションが不気味に染め上げる。時の列車・デンライナーは卑劣なるオニの強盗団の襲撃を受け、最前車両ゴウカを失い、時の砂漠の真っ只中に取り残されていた。
 先頭から数両後ろが騒々しい。乗組員総出で先の戦闘の後片付けに追われているためだろう。

「はぁあ、散らかっとる散らかっとる。俺の寝床まで丁寧に壊しくさってからに……」
「それもこれもぜぇーんぶ、あのディケイドってやつの仕業だよクマちゃん。だいたい、あいつらが散らかしたのに、なんでぼくたちが片付けなきゃならないわけ? 納得行かない!」
「文句はあいつら見つけてから幾らでも言えばえぇ。諦めて手を動かすこっちゃな」
「むー……」


「ナオミちゃん、どう? 繋がった?」
「駄目です、やっぱり繋がりませんー。ディケイドの一件でターミナルもてんやわんやみたいですねえ」
「あの僕ちゃん、派手にやってくれたものだよね。これじゃあ助けも呼べないじゃないか。バカンスでもないのに浜辺で日焼けは勘弁してほしいな」
「なんだいなんだい、結局あいつが悪いんじゃん。撃っちゃうけどいいよね? 答えは聞かないけど!」
 文句と愚痴と無駄足ばかりで、終わる見通しは未だ立たず。だが、けたたましい車内の中で唯一、落ち着き払って珈琲を啜る男がひとり。デンライナーを預かるオーナーその人である。

「ああ、一体どういうことなのか。何故イマジンが、『アレ』の存在を知っているのか……。あり得ない。伝説でしかなかったアレを、何故」
 否、落ち着き払っているのは間違いだ。カップの中でさざ波が立っており、妙に早口なその姿は明らかに普通じゃない。それでもなおポーカーフェイスを崩さない辺りは、流石は時の列車を預かるオーナー故か。

「どうしちゃったのさオーナー。アタリも来ないのに水面揺らして、ちょっとらしくないんじゃない」
「む……」
 青色の亀に動揺を勘付かれたオーナーは、俯いて暫し思案を巡らせると。
「救援が来るまで時間があることですし、話しておきましょうか」
 オーナーは人差し指と中指に力を込め、間に挟んだ糸でも引くかのようにぐいと曲げる。片付けもせず駄弁っていた龍と熊のイマジンはまるで腰に巻かれた帯を引かれるかのように、ひとりでにオーナーの元へと引き寄せられた。
「昔々、未だターミナルも『電王』も存在しなかった時代。統制を失い、好き勝手に過去を変えるイマジンたちに対抗すべく、二人の勇者が金と銀の鎧を身に纏い、立ち上がったのです。
 金の鎧の『ゴルドラ』は、手にした錫杖《しゃくじょう》でイマジンに掻き乱された記憶を接ぎ、銀の鎧の『シルバラ』は巨大な棍棒でイマジンの身体を構成する記憶を砕く。彼らはとてつもなく強く、乱暴で、疎まれた。時の列車が運行を始めた頃には二度と使われることが無いよう、ターミナルの地下に封印された、筈なのですが」

「それが、あのオニたちの親玉やってるってこと?」ウラタロスが怪訝そうな顔で問い、オーナーは険しい表情を崩さず頷いた。
「彼らが自分たちを『鬼』と名乗るのも当然でしょう。金銀の鎧は時の運行を守るためのものではなく、イマジンたちを『砕く』ためのもの。あなた達が電王になったとしても、恐らく勝ち目はありません」

「らしくないでェオーナー。そのくらいのピンチ、何度だって乗り越えて来たやろが」
「そうそう。オニたちなんて僕たちだけでばん、ばん、ばぁん! さ」
 深刻な口調で言葉を紡ぎ、いつになく弱気な態度を見せるオーナーに、二人のイマジンが噛み付いた。
「成る程、頼もしい」そう呟くオーナーの口調は重い。「奴らを倒すだけなら、あるいは」
「引っ掛かる言い方だね。まるで鎧なんか、どうでもいいみたい」
「あなたに嘘は付けませんね、ウラタロス君。確かに私が恐れているのは鎧ではありません。金と銀の鎧を携えし者のみが扱える『乗り物』――、それが再び解き放たれることに比べれば……」
「乗り物?」
「未だデンライナーの無かった時代、過去を飛び回るイマジンを追うために造られた伝説の『兵器』。その一撃は次元を穿ち、如何な敵をも粉砕したのですが……」

 ――勇者二人の死により乗り手を失ったそれは、彼らの生きていた時代で錆び付き、その威容から『鬼ヶ島』と呼ばれるようになった訳。


 今のは一体誰の声か。耳を澄ませ、声のする方へ顔を向けた彼らの目に映ったのは。
「や。暫くぶりだね、諸君」
 これまでの事件の元凶にして、かの鰐イマジンの契約者・海東大樹その人であった。
「おう、おうおう、鴨が葱背負って来たっちゅうやっちゃな。よう俺らの前に顔出せたもんや」
「逃がした魚をタモ網で捕まえようって訳。がめつい男は嫌われるよ」
「デンライナーどろぼー! こいつ撃ってもいいよね? 撃っちゃってもいいよね?!」

「まっ、そう邪険に扱わないでおくれよ」海東は強い敵意に満ちた青・黄・紫のイマジンたちを尻目に、開いたままの扉から客席へと潜り込む。
 最初に仕掛けて来たのはリュウタロスだ。手にした銃が火を吹いて、扉付近の窓ガラスに五百円玉大の穴を作る。
 怯んで屈んだところに、キンタロスの張り手が迫る。電車泥棒に遠慮は要らぬ。片付きかけた座席を散らし、闖入者目掛け繰り出される。
 だがしかし、渾身の突っ張りは目標を失い空を切る。大樹は扉の縁を蹴って飛び退き、白砂の地表へと降り立った。

「む……」キンタロスの口元が不快に歪む。客室を超え、時の砂漠にはみ出た両手は、瞬く間に白く染まってひび割れを起こし、砂となって地表と同化してしまったのだ。
「こうなるから、君たちはデンライナーの中から出られない。それくらいリサーチ済みさ。それに被害者って意味じゃ、僕も君らも似たような境遇なんじゃないかな」
 海東はイマジンたちから付かず離れずの距離を保ちつつ、不敵な笑みを浮かべて更に続ける。
「『取引』をしようじゃないか。君たちにとっても、悪い話じゃない筈だ」
「盗っ人猛々しいとはよく言ったものだね。釣り針にどんな餌吊るしてるか知らないけれど、竿握ってるのが君じゃあ……」
 冗談じゃない、まともに取り合うだけ時間の無駄だ。肩を竦め話を打ち切らんと背を向けるウラタロスだが、オーナーの威圧感ある声がそこに割って入る。
「いえ、話を聞くべきでしょう。物凄く、興味があります」
「じょ、ジョーダンでしょオーナー。こんな奴の安餌に乗るなんて、らしくない」
「それを判断するのは私です。聞くだけ、聞いてみましょう」
 ここまで言い切られてしまうと反論のしようがない。ウラタロスと残りの二人は苦々しげな表情を浮かべ、仕方なく引き下がる。
 海東は右手に構えた拳銃――GM−01で油断なく周囲を警戒しつつ、再び客車の中へと入り込む。乗り捨てた乗用マシン・ガードチェイサーから油断なく抜いていた代物だ。

「流石はデンライナーのオーナー。話が分かる」
「それはあなたの出方次第です。して、『交渉』とは?」
「『時を走る戦艦』行きのチケット、そいつを君たちに差し上げようと思ってね」

 湧いて出たその一言に、客室乗務員を除く全ての者がざわついた。オーナーがオニたちを超える脅威として取り上げた奴らの居場所を、この男は知っているというのか。
「あれがオニたちの手に渡れば、この世界の時間は捻じれに捩れて崩壊する。それを分かっていたからこそ、持ち主たちは舵と鎧をどこかに隠した。尤も、既に両方奴らの手中だけど」
「……成る程。我々を執拗に襲い、ターミナルを混乱に陥れた理由が解りました。私たちに真の狙いを悟らせないため、ですね」
 眉間の皺がいつもより数本増え、オーナーは低く唸って俯く。海東大樹はあくまで無感情に「その通り」と話を継ぎ、懐から一枚のカードを取り出した。
「そこで、こいつさ。オニ共は大親分に取り憑いた鰐のイマジンに掌握され、奴の意のままに動いている。デンライナーが過去へ飛ぶ仕組みも知ってるよ。時間の日付が入ったチケットを、運転席に挿し込むんだろう?」
 彼の手にあるチケットには、先ほどデンライナーを襲った鰐イマジンの姿と、『1560年5月1日』という字が刻まれている。過去へ飛んだイマジンの居場所を示す道標だ。
「何故これを、なんて野暮なことは聞かないでくれよ。バケモノ相手の取引に保険は必要だろ」

 これ見よがしにチケットをちらつかせる海東に対し、オーナーは眉一つ動かさずに、何か思案するかのように溜息を漏らす。暫しの沈黙。それを破ったのは当然オーナーだ。意味深な咳払い共に「成る程」と次ぐ。
「あなたの言い分はよく解りました。魅力的な案です。故にお聞かせ願いたい、これを私達に渡す、その見返りは?」
 乗ってきたか。海東は座席の手を掛けて身を乗り出し、クッション部分を数度叩く。
「オニ共の討伐に僕も同行する。それだけさ。貧乏臭い君たちから金品を徴収するのは酷だしね」
「それだけ……」オーナーの目つきが更に細まる。「具体性に欠けますね。同行するには相応の理由がある筈です」
「裏切りに対する報復だよ。この稼業は嘗められちゃ立ち行かない。取り決めを破るなら徹底的に打ちのめしてどちらが上かを教えてやる必要がある。これで満足か?」


「ねえ、ちょっと」それまで黙って話を聞いていたウラタロスが、オーナーを手招き耳打ちする。「撒き餌にしたってあからさますぎでしょ。申し出受けるの、やめたほうが良いんじゃない?」
「でしょう、ね」オーナーは眉一つ動かさずこれに応じ、「彼は報復で動くようなタイプではありません。我々を利用して使い潰し、戦艦を奪取しようと言う魂胆でしょう」
「そこまで解っているのに、首を縦に振ろうってわけ? 馬鹿げてるよ」
「他に打つ手立てが無いのは事実です。オニたちが戦艦を手にすれば、間違いなくこの世界は崩壊する。彼が我らを利用すると言うならば、私たちも彼を利用する、それだけのことです」
「成る程、意地の悪いことで」

「ひそひそ話は終わったかい? 内輪で揉める時間は無いと思うんだけどな」
 対する海東は涼しい顔だ。彼らが自分の企みに勘付いたのは承知の上、と言ったところか。
 話はまとまった。元より、手を取る以外に道などない。双方握手を以って話を終わらせんとするが、紫のイマジンが待二人の間に割って入った。
「待った、待った待ったーっ。デンライナーは一両目を泥棒されて動かないんだよ。チケットがあったって、動かないんじゃ何の意味もないじゃないかっ」
 彼の言い分も尤もだ。デンライナーの制御機能は全て先頭車両の『ゴウカ』に集中している。それを奪われた今、デンライナーを動かし、過去に送る力など何処にもない。
 だがしかし、この車両を預かるオーナーは力強く鼻を鳴らし、リュウタロスをぐいと押し退けた。
「心配には及びません。ナオミ君、例のものを、ここへ」
「例のもの……って」普段にこやかな客室乗務員の顔が困惑に曇る。「オーナー、本気なんですか?」
「この顔が冗談を言ってるように見えますか? さあ、早く」
「わ、わかりましたあ」
 ナオミの姿が客室から消えたのを横目で追ったオーナーは、強く短い息を吐くと、首にかけた蝶ネクタイを外してテーブルの上に置き、上等な黒スーツを脱いで、流れるような動作でハンガーにかける。
 ワイシャツのボタンを正確かつ手早く外し、皺なく丁寧に折り畳む。白いタンクトップシャツの下には、余分な脂肪を全て削いだ、力強い肉体が躍っていた。

「オーナー、見つかりましたよう」
 着替えを済ませた彼の元に、自転車を担いだナオミが息を切らせて戻って来る。競技用と思しき頑健なフレームを持つそれは、女性の身では担いで歩くのも苦になる代物である。
 だんだんと、事の次第が見えて来た。

「オーナー……その自転車は、まさか」
「突っ込んでえぇもんか、困るんやが」
「それで走って、動かすの!?」

 一両目・ゴウカは時間移動の際、運転席を兼ねた二輪車・マシンデンバードによって動力を得、制御されていた。デンバードが無いのなら別の二輪車を運転席に繋いでやれば良い。理屈としては間違っていないが、自転車の運動エネルギーで電車を牽引出来るものか。海東大樹は真顔で事態を静観し、三人のイマジンと客室乗務員は困惑した目つきをオーナーに向ける。

「何か、問題でも?」
 自転車をイスルギの運転席に取り付けたオーナーは、周囲の不安をどこ吹く風と聞き流し、サドルに腰を下ろす。
 ペダルに足を載せ、力を込める。重さに耐えかね、荒い息を漏らし、ハンドルにもたれ掛かってのギブアップ――。ここにいる誰もがそう思っていた。

 しかし、タンクトップ越しの背中で『鬼』が笑った瞬間、踏み抜かれたペダルは軽やかに円を描き、圧を受けた車輪がぐぐ、と動き出す。あり得ない。あり得ないことだ。それが今、現実に起こっている。彼は一体何者なのだ。

「さあ、時間がありません。急ぎますよ」
 イスルギの壁面に時間が書き込まれ、遙か遠方で時の『ゲート』が顔を出す。まさかオニたちも、こんなふざけた方法で時を越えようなどとは考えなかった筈。虚を突くなら今しかない。
 それぞれの思惑を乗せ、デンライナーは過去へとと飛ぶ。彼らの根城・戦国時代の日本へと。

※※※

 時の砂漠に夜は無い。絶え間なく降り注ぐ砂が大地を満たし、空を覆う虹の靄《もや》が合わさって、不気味な色合いを形作る。大凡、人の棲む世界とは思えない。
 時間とは人の記憶そのものだ。忘れ去られれば此の世の理からあぶれ、砂となって消えてゆく。無限に広がるこの砂漠は、行き場を失った時間の墓標なのだ。

 静寂に包まれた時の大地に砂塵が舞う。デンライナー時間跳躍の合図だ。門矢士と小野寺ユウスケ――に憑依したイマジンは空を見上げ、時のゲートを潜り行く列車の最後尾をただじっと見つめていた。
「行っちまったな」
「ああ、俺たちを放っておいて。薄情な奴らだよ」
 二人の声色に焦燥は見られない。走って間に合う距離なら悔しさも湧いただろうが、見付けた頃には豆粒みたいな大きさともなれば、怒った所で体力の無駄だ。
 否、今の今までひたすらに言い争いを続けた彼らには、喧嘩するだけの体力が残されていない。加えて、地平線の向こうまで広がるこの砂漠。怒りをぶつけ合ったところで意味を成すまい。

 会話はそこで途切れ、再び砂漠に静寂が戻る。互いが互いに足を引っ張りあった結果がこのザマだ。気まずさが先立つのもしようがない。
 沈黙はなおも続き、気まずさばかりが増してゆく。ユウスケに憑いたこのイマジンはとうとうこれに耐えかね、話を切り出した。
「……なあ」
「何だよ」
「あ。いや」間を置かず返された言葉に、イマジンは口ごもって押し黙る。話す内容にまで頭が回って無かったようだ。士の顔から興味が失せ、視線が砂漠の方へと逸れてゆく。彼は取り憑いた自分の身体を見回し、話を継いだ。
「なんで俺のことを怒らないんだ? 『こいつ』はお前の仲間だろ。そいつを危険に曝したうえに、今ここに取り残されているのだって」
「その言葉、そっくりお前に返してやるよ。『お前ら』はこうして生きてる。ならそれ以上咎めやしねぇさ」
 門矢士はぶっきらぼうに答えて見せ、言葉を次ぐ。「そもそも、手詰まりって訳でもない。キッカケなんざ、いつだって些細なもんだ」
 懐から取り出した一枚のカードを、手裏剣めいてユウスケに投げ付ける。表面に描かれていたのは、先の憎っくき銀鬼の姿と、『1560年5月1日』なる日付であった。

「お前、こりゃあ……!」
「この俺が、命乞いなんてしょっぱい真似すると思ったか? 一手二手、先を読まなきゃあな」
 手詰まりに癇癪を起こし、怯えたように見えたあの行為には理由があったのだ。敵の『座標』をチケットに記憶させ、居場所を特定するという理由が。しかし――。

「凄いとは思うが、これだけあっても何にもならねえだろ。電車は俺たちを置いて発車しちまったんだぜ」
「少しは頭使って考えろ。過去に飛べるのは、別にデンライナーだけじゃない、だろう」
「だけじゃない、って……」
 他に何があると言いかけたその時、イマジンは彼の考えんとすることを理解する。有るではないか、もっと手軽に、過去を行き来する方法が。

「もしかしてお前、そのチケットを道標にして、あいつの居所まで飛ぼうってのか?」
「そこに俺がタダ乗りする。これで万事解決だ。違うか?」
「バカ言え、ヒトの記憶ならまだしも、こんなもんを使って過去に飛ぶイマジンなんて聞いたことねぇよ!」
「これだって『記憶』だろ。印字されて固定された分、行き先のイメージはしやすい筈だぜ」
 滅茶苦茶な言い分だが、理には適っている。行き先さえしっかりしていれば理屈の上では「飛べる」はず。突飛過ぎて誰もやろうとしなかっただけだ。
 しかし、懸念もある。正論を突きつけられてもなお、彼が時間跳躍を躊躇う理由もそれだ。ユウスケに憑いたイマジンは頭を振って「駄目だ」と再度訴える。
「言いたいことは解ったよ。けど、タダ乗りなんて出来る訳がない。俺があっちに飛んでって、それで終わりだ。お前があっちに辿り着ける保証なんてねぇんだぞ」
「そいつが、片道切符を渋る理由か?」士は呆れ顔で溜息を一つ。「承知の上さ。こいつは俺の思いつき。駄目ならそれまで。旅の終着点だってすっぱり諦める」
「諦めるってお前……」一歩間違えば永遠にこの砂漠から抜けられなくなると言うのに、何故ここまで冷静でいられるのか。豪胆にも程がある。困惑で目を白黒とさせるイマジンに痺れを切らしたか、士は彼の鼻先に人差し指を突き立て、有無を言わさずまくし立てる。
「自分探しの旅は無茶や無謀の連続だ。行く手を何が阻もうと、答えが欲しけりゃ進むしか無い。諦めて立ち止まるのは勝手さ。だが後悔の愚痴を聞くのは御免だぜ
 そいつの身体と、オニたちの手に渡った夏ミカン。イマジン共にはどデカい借りがある。返して貰わなきゃあな。腹の虫が治まらん」

「借り、か」不確定要素に怯える一方だった彼の心に、ささやかながら火が点いた。断片的に残る記憶からして、オニ共と自分には何らかの繋がりがある。それを確かめもせず、諦めて尻尾を巻くだなんてどうかしている。
「俺もお前も、自分の正体を探して足掻いてる。協力しようじゃねえか。旅は道連れ、世は情けッてな」
「ハハ、ハ。成る程、違ェねえ」
 イマジンの目から迷いが消えた。士の差し出した手を握り、彼の持つチケットを引っ手繰る。

「お前ひとり取り残されても、知らないからな」
「上等」
 鰐イマジンの描かれたチケットを、沈むことなく居座り続ける太陽に掲げ、念を込める。彼らの頭上に瞼のような『孔』が出来たのはその時だ。濁った緑色の空間は掃除機めいて士たちを吸い上げ、周囲の砂ごと彼らを呑み込んでゆく。
 瞼状の孔は二人の男を吸い込んで閉じ、役目を終えたチケットもまた、塵となって時の砂漠の一部となった。
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NoTitle 

 諦めないでよかったなァ。

 どうもこんばんは。お久しぶりですね、イマジンカイザー様。覚えていらっしゃるでしょうか、“なろう”時代よりお世話になってましたトマトです。DCDRの人といえば思い出していただけますかね。

 正直なところ、上記の通り続きを諦めてました。私も同じく、リアルが多忙すぎて疲労が凄まじく、執筆に至ることができなかったので、イマジンカイザー様もきっとなぁ……と。
 でもほんと諦めなくてよかった。更新に気付いたのは最近で、本日久々の休みだったので感想を書き込みに参りました。



 今作ではちゃんとリョウタロウが存在するんですよね。逆に幸太郎がいないという。本来の電王編とは色々と差があり、またディケイドがどのように絡んでいくのかが楽しみです。特にリョウタロウが記憶喪失とは、これじゃジーク以外憑依できないじゃないか。
 更に、鳴滝さんの動向や言動も気になりますね。ただただ「おのれ○○ーッ!」って叫ぶだけのテレビ本編と異なり、きちんと存在意義と目的があるので、これまた興味津々です。他のユーザーさんの作品では、ある仮面ライダーの登場人物だったり、別世界の門矢士だったりと様々な答えが存在する中、イマジンカイザー様の鳴滝の正体に対する結論が今から楽しみです。とりあえず、召喚できるのはライダーだけじゃないんだね鳴滝さん。
 正体といえば、夏海もそう。その鳴滝が唯一、巻き込むことに躊躇を覚える存在、光夏海。仮面ライダーキバーラに変身できるだけしか正直それっぽさのなかった彼女に、いったいどんな秘密が隠されているのか。彼女はそこに注目ですね。

 さあ、龍騎の世界の“タイムベント”の時のような移動で時間移動。チケットだけで移動を実現させるとは、その案は本当に素晴らしい。こんなことよく思いついたなあ、と画面の前で思いました。
 物語も後半、カブト編と同様に続きをいつまでも待っていますので、それが掲載された時、またここに参ります。
 今回はありがとうございました――サムズアップです。

 

 大変、大変長らくお待たせいたしました。勿論覚えておりますよ。お読みいただき、本当にありがとうございます。


 そうして続きを心待ちにされていたトマトさんにはたいへん心苦しいのですが、実際自分も続きを諦めかけておりました。イマジンズの口調うんぬんで躓き、タイムトラベルの道標で躓き、三方向に分かれたキャラクタらの動きで躓き……。自分でもよくそれらすべてをまとめ切ったなあと褒めたくなってしまいます。
 こうなるんなら最初からカブト編を先にやっておくんだった……。

 やっぱり、後々のことを考えるとリョウタロウの存在って必要だと思うんですよ。とはいえ、メインで動いているのはモモタロスになりますが……。記憶喪失に関しては然程捻った答えはないので、期待したりしなかったりでお待ちくださいませ。
 鳴滝に関しては、カイジンライドなんてカードがあるのだから、彼だって出せるだろうって理屈ですね。同時に、カブトの世界にも被らせる問題として電王編構想時点から組み込んでいた話題でもあります。あれから気持ちや箱書きが二転三転したせいか、色々あやふやになっている感が否めないですが、なんだかんだでこちらもある程度の答えは用意する、つもりです。

 チケットでの移動は、理屈じゃそうだけどおかしいだろ!って突っ込みがありそうでちょっと不安でした。ご指摘の通り、そう言えば龍騎の世界もそんなだったなと……。引き出し少ないなあ毎回。
 やっと、ばらばらの点が線に繋がりそうなので、続きをごゆるりとお待ちくださればなと。


 とかなんとか言ってたら、遂にカブト編の続きが出来ちゃいました。
 久々に会心の出来!と言いたくなるようなお話になりましたので、楽しんで頂ければ幸いでございます。
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