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 ←Journey through the Decade Re-mix 第九話 「警告:カブト暴走中」 フェーズ2 →『ハートキャッチプリキュア!』二次創作 エコテロリストプリキュア! 4/4(完)
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「二次創作」
エコテロリストプリキュア!

『ハートキャッチプリキュア!』二次創作 エコテロリストプリキュア! 3/4

 ←Journey through the Decade Re-mix 第九話 「警告:カブト暴走中」 フェーズ2 →『ハートキャッチプリキュア!』二次創作 エコテロリストプリキュア! 4/4(完)
 最早ハトプリ要素が登場キャラくらいしかない件。
 前回分に大分詰め込んだ関係で、今回分は割と少な目です。



※※※

・AM.06:20

 東の空から昇る太陽が地上を照らし、生きとし生ける全てのものに活力を与える一日の始まり。ここ希望ヶ丘の街は異常成長・発達した植物たちに蹂躙され、不気味なほどに静まり返っていた。
 エコテロリスト・キュアノームが街を襲撃してからまもなく一日が経過する。植物たちによって住処を失った住民たちは学校や公民館など最寄りの避難場所に身を寄せ、溢れた者は出来る限り緑の少ない場所に身を潜め、事態の収拾を待っている。彼らはプリキュアたちがノームに倒されたことを知らない。目処が立つかどうかも分からないが、彼らには待つことしか出来なかった。

 近隣の発電所を破壊されて電力の供給を断たれた希望ヶ丘の街では、電気を必要としない石油ストーブが重宝され、それを持たぬ者及び、石油を切らした者たちの奪い奪われが横行していた。今はまだ石油の略奪止まりだが、この状況が長引けば略奪のターゲットは食料品に切り替わるだろう。既にそうした事態を見越し、コンビニやスーパーマーケットを牛耳る者たちも出て来ている。もしもそれが実現したならば――。ヒトとケモノにどれだけの違いがあるというのか。

 最も大きな電力被害を被っているのが街の総合病院だ。被害者は増える一方だと言うのに、受け入れる体勢は全く整っておらず、電力不足で手術はおろか簡単な治療すら満足に行えない。
 受け入れを拒否されて苦しむ者、重傷者優先で病室を追い出され、路頭に迷う者。どうにもならないことは誰しも理解している。だがそれで彼らが納得できる筈もなく、目の前に突き付けられた理不尽は、闘争の火種となり、暴動という形で一気に燃え上がる。
 怪我人を救うために在る場所で負傷者が増え続けるこの矛盾。皮肉で悪辣過ぎる光景に、端から観ているだけの人々は救いを求めて祈るばかりだ。
 この状況で誰に、何を祈るのか? 神はこの期に及んで静観を決め込んでいる。近隣地方の救助部隊は植物たちに阻まれ、希望ヶ丘の街に辿り着けないでいる。ならばプリキュアは。この街を護るプリキュアたちは――。

※※※

・AM.6:30

 希望ヶ丘総合病院の殺伐とした窓口を抜け、病棟内部。重症患者が次から次へと担ぎ込まれ、申し訳程度の治療を施され、病室に送られる。たちまちベッドは満杯になり、元居た軽度の入院患者は部屋から叩き出されてしまう。文句を言う者もいたが、消え行く人命を放っておくわけには行かない。
 一方で、他の患者を生かすため、手術その他で消費する電力を確保すべく、人工呼吸器などをつけた人々は切り捨てられた。これについて口を挟む人間はいない。家族は医者を相手に自分たちの心配をしていることだろう。

「……ここは、どこ?」
 来海ももかが目を覚ましたのは、三階の端に位置する窓際の病室であった。まだ朝日は昇り切っておらず、室内は少々薄暗い。友は無事であろうか。ベッド上で半身を起こし、辺りを見回す。
「あまり騒がない方がいいよ」
「……ッ!?」突如、暗がりの中から声がする。低く弱々しい男の声だ。ももかは自身の肩を抱いて声のする方向に目を向ける。
「誰ッ!? あなたは何なの!?」
「大丈夫、僕は何もしていない。君に部屋を貸しているだけさ」
「答えになってないわよ……、ここはどこで、あなたは誰なの」
 暗がりの中で、しかも驚かせるような登場をしたのがまずかったか、ももかは体育座りの体勢のまま、肩を抱いて震えている。暗がりの男――明堂院さつきは自らの非礼を詫び、掌を上げて害意が無いことを彼女に示した。
「ここは希望ヶ丘の病院で、君は電車の事故で頭を打って搬送された。僕はこの病室を先に使ってた患者だよ。名前は明堂院さつき。これで満足?」
「明堂院……って、ウチの学校の」
「そう。学長は僕のお爺様さ。妹のいつきがお世話になってます」
「……いつきちゃんの、お兄さんなの?」
「最近まで入院してたからね、知らないのも無理ないか。それはそうと、これで分かってもらえたかな?」
 ももかは頬を紅潮させ、首を縦に振る。「ごめんなさい、知らなかったとは言え……、ベッドも借りちゃったみたいだし」
「いいよ、どうせもうじき出て行くつもりだったから。けど君はもう少し安静にしといた方がいい。今外に出たら、他の患者さんがここに押し入って、君を乱暴に追い出すだろうからね」
「穏やかじゃないわね。病室なら他にもあるじゃない。どういうことなの?」
「そうだね、じゃあ一から説明していこうか。病み上がりには辛いことかも知れないから、聞きたく無くなったらすぐに言ってくれるかな」
 さつきは自分の分かる範囲で、この街を襲った出来事をももかに話し始める。電車の脱線、街を襲う植物たち、道路の断絶、発電施設の事故、外界から隔絶され、孤立無援と化した希望ヶ丘、機能しない病院に押し寄せる患者たち――。
 彼女の顔色を伺いつつ、一つ一つ順を追って説明するが、ももかに怯えや焦りは見られなかった。豪胆なのか理解の範疇を越えているからなのかは分からない。
 さつきが全て言い終えたのを見計らい、ももかは大きく息を吐いて目を伏せた。

「……寝起きドッキリや、エイプリルフールの嘘だとしても笑えないわね」
「ここまで聞いておいて信じないのかい? ならカーテンを開いて外の様子を」
「いいえ、信じるわ……。外の五月蝿さとこの頭痛は嘘じゃないもの」
 ももかはベッド上で体育座りの体勢を取り、表情をひた隠すかのように自身の太股に顔を埋める。
「……ねぇ、明道院君。なんであたしを助けてくれたの?」
「言うほどの理由は無いよ。人が人を助けるのに理由が必要かい?」
「筋が通ってないわよ。ならあたしでなくたって良かったんじゃない」
「痛いところを突いてくるね」正論に言い返せず、さつきはばつの悪そうな顔で頭を掻く。
「でも、本当に大した理由じゃ無いんだ。ただ、なんとなく……、君とは見えない何かで繋がっているように感じてさ」
「何それ、新手のナンパ? 可愛い顔して意外と積極的なのね」
「別にそういう訳じゃ無いんだけど……」
 二人は知らなかったが、両者共心の闇を砂漠の使途につけこまれ、デザトリアンとなった過去がある。さつきが感じた奇妙な既視感はそれに依るものなのだろう。
 ももかにも思うところがあったのか、彼女もそれ以上追求せず、面を上げる。

「あたしたち……どうなっちゃうのかな。電気は来ないし逃げ場も無いし、救いも何もありゃしない。国が助けに来る前に、あたしたちも……」
「確かに、絵に描いたような最悪の事態だ。絶望するしかないかも知れない。けど、君だって本気でそうは思っていないだろう?」
「そうね……、希望ならあるもの。大人たちには無理でも、あの子たちなら……」
「あぁ、『プリキュア』ならば、きっと……」
 二人は無力な己を悔やみ、救世主たるプリキュアに祈る。

 そのプリキュアが、キュアノームに敗北したことを知らぬまま。


・AM.7:00

 希望ヶ丘の空で雲に隠れ、人知れずひっそりと浮かぶ小さな島。満身創痍のプリキュアたちはこころの大樹の生育するこの島へと逃げ込み、ダメージの回復に努めている。
 キュアブロッサム・花咲つぼみの傷は深刻だ。ノームの言った通り、つぼみはプリキュアの力によって辛うじて生きている。『プリキュアの種』が、潰れて動かない心臓の代わりを果たし、脳に酸素を行き渡らせているのだ。
「つぼみ! つぼみ! あたしだよ、えりかだよ! 起きてよ……、目ェ覚ましてよ!」
 キュアマリン・来海えりかが傍らに寄り添い、何度声を上げようとも、つぼみの意識は戻らない。彼女はこころの大樹の根に身体中を絡め取られたまま、微動だにしなかった。

「つぼみ! つぼみ、つぼみぃ……!」
「えりか……、いい加減になさい!」
 声を枯らし、涙と鼻水で汚れた顔で叫び続けるえりかを見かね、ゆりの平手が彼女の右頬に飛んだ。
「やめてよ……、邪魔しないでよゆりさん、つぼみは、つぼみは!」
「何度呼び掛けたところでつぼみが目覚めるわけないじゃない! 自分の顔を鏡で見てご覧なさい。そんな酷い顔でどうするの。あなたまで潰れたら、誰が街を護るっていうの!」
「そんなことない! つぼみはあんなヤツになんか負けないもん! こうして呼び続ければ、きっと!」
「あなたは……! どうしてそうも愚かなの!」ゆりの平手がえりかの左頬を打つ。二打目の衝撃でえりかの体が横に大きく仰け反る。
「祈りや願いじゃ人は甦らない。だからこそ命は尊く守り抜かなければならないものなの。
 そして今命の危機にさらされているのはつぼみだけじゃない。街のみんな……、あなたのお父さんやお母さん、ももかだってどうなってるか分からないのよ!?」
「ゆりさん……」
 目元に涙を溜め、震えながら続けるゆりを前にし、えりかは己の愚かさを悔いた。
 彼女――、月影ゆりはこころの大樹を巡る戦いの中で相棒の妖精と、大好きだった父を亡くしているのだ。大切な人を失う辛さなら誰よりもよく知っている。
 だからこそ彼女は心を鬼にし、えりかに辛く当たるのだ。『力』を持つ自分たちには鬱ぎ込むことなど許されない、その力でより多くの人々を救わねばならないのだと伝えるために。

 えりかの涙と泣き言がぱたりと止んだ。ゆりの気持ちが伝わり、自身らの使命を思い出したのだろう。しかし、だからこそ、えりかはつぼみの前から離れることは出来なかった。
「ゆりさんゴメン、本当に……ゴメン。もも姉やみんながピンチだってのは分かってる。街が今どんな状況で、自分が何しなきゃ行けないかも分かったよ。けど、あたし……。つぼみの傍を離れたくない。
 我が儘だって分かってる。許してもらえないのも承知の上だよ。けどさ、つぼみがこんなになっちゃって、蛇の生殺しみたいなの見せられて……。それでも戦えって言われても、あたしは……」
 うつ向いたまま、消え入りそうな声でそう語るえりかを、ゆりは悲しげな目付きで見つめていた。この大事にそんな泣き言が通るものか。両頬を叩かれた以上、今度は正面への拳骨か。えりかは追撃に備えて手で顔を覆うも、ゆりにそうした素振りは見られない。
「……怒らないの?」
「私に怒る資格なんてない。あなたの辛さは痛いほど分かるもの。無理強いしたところで足手まといにしかならないわ」
「……」足手まとい。言葉の重みが平手や殴打より重く深く、えりかの心にずしりと突き刺さる。弁明の言葉すら言い出せず、二人の間を気まずい沈黙が包み込む。

「えりか、ゆりさん! 只今戻りました」
 そこに、光のマントを羽織ったキュアサンシャイン――、明道院いつきが帰ってきた。戦う意思のないえりか、未だダメージの抜けきらないゆりに代わり、空から希望ヶ丘の様子を探りに行っていたのだ。
 彼女の登場で話は打ち切られ、えりかはつぼみの元へ戻り、ゆりは居住まいを正してサンシャインの方へと向き直る。
「お疲れ様。街の様子はどう?」
「えぇっと、ですね」サンシャインは場の異様な雰囲気を察したが、追求を避けて言葉を続ける。「ゆりさんの予想通りでした。電気、水道、交通――、ライフラインは尽く止まっています。ラジオで情報を聴いてきましたけど、救援ヘリの到着は早くても今日の夕方くらいになるそうです」
「無理もないわね。交通断絶で報道の入る余地無し、住民たちの様子や被害規模も分からないのだから」
「けど……」ゆりは腕を組み、苦虫を噛み潰したかのような顔で続ける。「入院患者たちはそうは行かない。電気が使えなくなって云々は勿論として、それを引き金にした暴力・暴動も見過ごせる問題じゃないわ。なんとか病院だけでも稼動させられないものかしら……」
 腕組みのまま、顎先に指を載せて思案するゆりに、サンシャインが「それならば」と声を上げた。
「……何か良いアイデアがあるのね?」
「病院屋上の太陽光発電パネルです。私の力でパネルを照らし続ければ、取り合えず急場をしのぐくらいには」
「成る程、ね……」ゆりは暫し沈黙思考した後、でもと返す。
「病院一つの電力を賄うには、尋常じゃないくらいのエネルギーが必要よ。それに、ノームがその隙を狙って襲ってくる可能性だってある。無謀だわ」
「承知の上です。こうしている間にも命の危機に瀕している人は大勢いるんですよ、そんな人たちを放っておいていいんですか!?」
「それは……」今の今まで、えりかを相手に人の命の尊さを解いていた身としては、サンシャインの言葉を否定できない。畳み掛けるように、マントから変異した妖精のポプリが言う。
「守りのことなら心配ご無用でしゅ! サンシャインの護りはこのポプリが務めさせていただきますでしゅ。任せてくだしゃい!」
「ポプリ。あなたまで……」
 ゆりは悩み、迷った末に、やむなく首を立てに振った。
「任せても……良いのよね?」
「勿論です」
「サンシャインのことならポプリにお任せでしゅ!」
 明道院いつきは覚悟を決めた。ならば自分の取るべき道は一つだ。ゆりは制服に忍ばせていたコンパクトにこころの種を填め込み、キュアムーンライトに変身した。
「病院の件はあなたたちに一任します。私はもしもの時に備えて避難路を確保して来るわ」
 いくら大型輸送ヘリが来ると言えど、一度に全ての住民を避難させられる訳ではない。少ない枠を取り合っての暴動は容易に想像出来る。陸路を植物たちから奪い返せば避難効率は格段に上がる。ノームの性格からして、二重三重の妨害は免れない。全て覚悟の上だ。
 サンシャインは全てを理解し、神妙な面持ちで頷く。
「……お気をつけて」
「あなたもね」
 二人のプリキュアは互いに踵を返し、背のマントをはためかせて希望ヶ丘の街へと飛んで行く。
 つぼみの前から一歩も動こうとしないえりかは、止めどなく溢れ出る涙を拭おうともせず、去り行く二人をずっと見つめていた。

「ゴメン……、ごめん、なさい……。こんなに弱くて、こんなに卑怯で……ごめんなさい……いつき、ゆりさん……」


・AM.08:00

 希望ヶ丘鋳造工場跡地。高度経済成長期に開発され、その衰退と「街の気風に合わない」との理由で打ち捨てられ、土地の買い手もつかず、誰にも顧みられること無く放置されたこの場所に、エコテロリスト・キュアノームは身を寄せていた。

 錆び付いた工場内外には木の根や蔓が網の目のように張り巡らされ、侵入者が乗り込もうものならあっという間に絡め取られ、ノームの前へと突き出されてしまう。差詰め、忍者の鳴子のようなものだろうか。
 ノームは工場の中心部・生産ラインの中枢で胡座をかき、オレンジ色の容器の飲料――キュアフルミックスに口をつけている。邪魔な機械は自身と植物たちの手で薙ぎ倒され、鉄屑の山を築いていた。

「――そう、段取りは昨日教えた通り。大丈夫、あなたたちならきっと出来る。人間の手からこの星の支配権を奪い返すのよ」
 傍目には長々と独り言を述べているように見えるが、実際はそうではない。動植物と心で通じ会うキュアノームは、地下に張り巡らされた木の根を電話線代わりにし、街中の動植物相手に話をしているのだ。コンピューターでも処理に手間取りそうなほど膨大な情報量を一度に介しているが、ノームは涼しい顔で通話に応じている。常人には考えられない情報処理能力である。

 不意に、ノーム背後の木の根が小刻みに震える。侵入者感知の合図だ。直ちに植物たちが侵入者捕縛のために動き出す。
 だがここで、ノームや植物にも予想外の事が起こった。外敵を捕らえる筈の蔓や木の根が戦意を無くし、次々に項垂れてしまったのだ。倒されて反応が消えるのならまだしも、戦意を失うとはどういう訳か。ただの人間にこんな芸当は不可能だ。だとしたらプリキュアたちか。いや、彼女たちの動向なら把握しているし、ここを目指しているという情報もない。
 ならば誰だ。誰がやったというのだ。キュアノームが悩み抜き、一つの結論に至るのと、その人物がノームの元へと辿り着いたのは、全くの同時であった。

「……あなたが、キュアノームね」
「えぇ、お会いできて光栄です。伝説のキュアフラワーに……、大妖精のコッペさま」



※※※

 ――目を覚ませ。目を覚ますんだ、キュアブロッサム。
「……誰? 私を呼ぶのは……?」

 ――僕のことなどどうでもいい。キュアブロッサム、これが君の望んだ世界なのか? 君の言う『愛に満ち溢れた』人間たちが、地球に巣食う癌として、他の生物に駆逐されるこの現状が! 僕たちを宇宙に放逐してまで守りたかった未来だと言うのか?
「地球……、放逐……? あなたは、まさか……」

 ――質問に答えたまえ。君たちはそれでいいのか? この星を護るために、人間たちを「見捨てる」つもりなのかい?
「見捨てる……!? そんなつもりは……」

 ――結果的にはそうなる。奴は、キュアノームは人間全てを滅ぼして文明を奪い、動植物たちだけの地球を取り戻そうとしている。プリキュアの力を前に人間の文明などが太刀打ち出来る筈がない。奴を野放しにしておくということは、人間を見捨てるのと同じなのだよ。

「……私には、どうしていいか分からないんです。ヒトか動植物か、どちらが正しくてどちらが間違っているのか――。彼女の言うことが本当なら、人間は、物言わぬ動植物たちと如何にして接して行けば良いのか……」

 ――どうやら君は大きな勘違いをしているようだね。この世に正しさは無い。正義とは他人を蹴落とした強者の言い訳が民衆に受け入れられ、正当化されただけだ。
 ――君の愛する人間たちだって、自身の欲望のために動植物たちの命を操作して、自分たちの都合の良い生命を造り出して消費しているし、動植物たちだって自分たちが生きるためという大義名分のために、仲間や近種を切り捨てている。君たちが愛でている動植物は、他種を蹴落としてこの星に生き残った薄汚い連中さ。

 ――もう一度問うぞキュアブロッサム。善悪があやふやなこの世界で、君たちプリキュアは何の掲げる正義とは何だ、大義名分は何だ? キュアノームに頭を垂れるのを由としないと言うのなら、彼女の正しさを覆せる理屈を示して見せろ!
 
「私は、私は……!」

・AM.08:05


「私たちを、知っているの……?」
「勿論。貴女方は歴史に残る英雄ですもの。力を失い、歳を経てもなお、こころの花の輝きは全盛期とまるで変わらない。『こころの大樹』から聞いた通り……、いや予想以上ね。尊敬しちゃうわ」
「あなたは、一体……」
「あぁっと、そうね。初めましてキュアフラワーさん、あたしはキュアノーム。この時代のずっと先、未来からやってきたプリキュアです」
「未来……ですって?」予想の範疇《はんちゅう》を遥かに越えた回答に、薫子は二の句を継げずに押し黙ってしまう。ノームは自慢気に鼻を鳴らして話を続けた。
「こころの大樹に刻まれた記憶の中からこの時代を選び出し、あたしの力をも合わせてここまで飛んで来たんです。信じられませんか? けれどあたしは今ここに居る。その事実だけは認識していただきませんと」

「そんなことはどうだって良い。こんなこともうやめて頂戴。同じ人間同士じゃない、暴力に頼らず、話し合いで解決しなくちゃ……」
「人間じゃない」ノームは目付きを細め、怒気を含ませて言い返す。「貴女方は人間でプリキュア。でもあたしはプリキュアでしかないの。お孫さんにも言ったけど、間違えないで欲しいわね」
「訳が分からないわ。プリキュアになれるのは清く正しい心をもった女の子だけの筈。ならばあなただって」
「だから、人間と一緒にしないで!」
 激昂し、正気を失ったノームは、怒りに任せて自身の右耳を掴み、そのまま一気に引き千切った。粘着テープを段ボールから無理に引き剥がしたかのような音と共に、千切られた耳が地面に落ちる。
 だが妙だ。耳にも、当然ノームの頭からも出血は見受けられない。苦痛に顔を歪ませることさえ無いのだ。困惑する薫子を尻目に、ノームはもう一方の耳をも引き千切り、彼女らの前に放り投げる。
 するとどうだろう。耳が無くなってつるりとした頭蓋の両側部から、折り畳まれていた「何か」が迫り出し、頭の上に伸び上がったではないか。手のひらくらいの大きさのそれは、時折ぴくぴくと震わせ、揺れる。それはまるでウサギか何かの動物の仕草ではないか。
 薫子が驚きで何も言えないのを良いことに、ノームは自身の眼元に手を当て、コンタクトレンズのようなものを取り外す。通常のコンタクトレンズと違い厚みは無く、瞳の光彩などが刻まれているだけだ。
 眼からレンズを取り外し、今一度薫子と向かい合うノーム。彼女の瞳は人間のものとは全く異なり、琥珀一色で光彩の少ない、まるで「妖精」のそれだ。
 これら三つの要素を踏まえ、薫子は彼女の存在について、一つの答えを導き出す。
「……ヒトであることを捨てて、こころの大樹の妖精になったのね。未来からやって来た、か。そこまでして私たち人間を滅ぼさんとする理由は何なの?」

「……復讐」ノームは少し俯き、ぼそりと呟く。
「外宇宙から飛来し、この星を砂漠化させようとした帝王・デューン。人類の有史以前からこの星を見守ってきたこころの大樹は、地球の生きとし生けるものを守るべく戦士・プリキュアを産み出しました。
 結果は貴女方も知っての通り。デューンの荒んだ心を慈愛で癒し、彼を他銀河に追放することで全てが終わったのです。
 貴女の孫娘、キュアブロッサムとその仲間たちは間違いなくプリキュア史上最強の存在です。新たな敵が現れようがなかろうが、それはきっと覆らないでしょう」
 そこで一拍置き、ノームの目付きが一気に険しくなり、口調にも怒気が強まる。

「けど、それこそが、あたしたちに繋がる地球にとっての悪夢の始まりだった。
 当面の危機を脱し、敵がいなくなったのをいいことに、人間共は地球資源を掘り尽くし、科学物質で大地や海を汚染し、自らの星を回復不可能なまでに破壊したのです。草木や動物たちはヒトに従順なものや、高い適応能力を持つもの以外切り捨てられ、あっという間に姿を消しました。
 それでもなおこころの大樹は信じていたのです。貴女の孫娘たちのような心の清い人間が現れ、デューンの時のようにこの星を救ってくれることを。
 けれどそれも無駄な足掻きだった。説法で多くの信者を獲得したプリキュアは他宗派の者共に殺められ、暴力で体制に歯向かったプリキュアはそれすらも上回る火力によって駆逐されました。そうしたプリキュアの活躍は、新たな争いの火種を産むだけ。時代の中で散発的に現れたプリキュアも、人間社会や国家に対しては全くの無意味だったのです。

 やがて、そうした争いの頂点、枯渇したエネルギー資源を巡っての世界戦争が勃発しました。その時代に産まれたプリキュアは争いを沈静化しようと奔走しましたが、ウイルスのように感染・拡大する憎しみに対して、一人二人のプリキュアでは全くの無力だったのです。
 あたしがこころの大樹からプリキュアになることを命ぜられたのはそんな頃でした。地球の約八割が生物の住めない環境へと変わり果て、ヒトの心に憎しみが蔓延したこの時代、こころの大樹は枯れ木と言ってもよいくらいに衰弱し、いつ腐り落ちてしまうかも分かりません。
 大樹はとうとう決断を下したのです。悪意を浄化するのではなく、災厄の原因たるヒトを全て消し去らなければ、とね」

 ノームは手元にあった桃色の飲料容器に口をつけ、その全てを飲み干すと、思い切り息を吐いて続ける。
「こころの大樹の生育する浮き島には、プリキュアになるべき少女たちが何人も育てられていました。それら全てが争いで身寄りを無くした子どもたち。もう帰ってこない親の名を呼んで泣いている子も沢山居ましたよ。
 その中であたしが選ばれたのは、あたしだけが親の顔すら分からず棄てられた子どもだったからだと聞かされました。ヒトを滅ぼすプリキュアに、ヒトへの情など必要ないのだと。
 一人前になったあたしは、火種を撒き散らす人間たちを片っ端から始末し始めました。半年の間に残りの人類のうち、半数くらいを処分した、のかなあ。
 けれど、もう手遅れだった。幾らヒトの数を減らしたところで、破壊し尽くされた自然環境は戻らない。劣悪な環境のせいで動植物たちの自己再生・環境適応能力が機能しなくなっていたのよ。
 最早この世界に留まっていても意味がない。だから、あたしは……」
「動植物にまだ元気があったこの時代に戻り、諸悪の根元たる人間を滅ぼそうと言うわけね。けれど解せないわ。ヒトを滅ぼし、動植物の世界を作りたいのなら、別にこの時代に来なくても……」
「そうね、その通り。ただ植物たちを生かしたいのならもっと過去に遡れば良いだけの話。けれど、それじゃあ意味がないの。
 貴女のお孫さん……キュアブロッサムの世代は、こころの大樹が記憶している限りでは最強のプリキュアよ。そりゃあそうよね、誕生のきっかけとなった砂漠の王を宇宙に放逐したのだもの。
 悲しいことだけど、ヒトである貴女やそのお孫さんたちはあたしのやることには賛同してくれない。だから倒すの。貴女たちの心を折って、邪魔しようだなんて考えられないようにさせるためにね。
 けど、けどね。あたしだって好きで貴女たちを殺したい訳じゃ無いのよ。同じプリキュアなんですもの、出来るならば手を取り合って仲良くしたい。キュアブロッサムの祖母にして彼女たちからの信頼も厚いキュアフラワー。貴女から頼み込んでくれれば彼女たちだって首を縦に振らざるを得ないはず。そうでしょ?」

「……断る、と言ったら?」
「断る? どうしてそうなるの?」
「貴女の主張には一理ある。貴女の境遇や怒りには同情するわ。けれど私も孫たちも、プリキュアである以前に人間なの。手を貸すことは……出来ないわ」

「そう……」ノームはぞっとするほど冷たい声で寂しげに呟く。「まぁ、そうなるよね。分かってたよ、分かってた。この時代じゃあたしみたいなのは人殺しの大悪党。仲間なんて……手に入りやしないんだ」
 おどけて、諦めの入った口調ではあったが、話している途中、ノームの頬に一筋の涙が伝っているのを薫子は見逃さなかった。時代の流れさえなければ、こうも屈折してさえいなければ。彼女もつぼみたちの良き友人になれたのではないか。薫子の脳裏に様々な思いが去来する。

 だが、その感傷がいけなかった。ノームのことを想うがあまり薫子は失念してしまったのだ。目的の為なら躊躇いなく人を殺せる人物を前にしていることを、そしてその人物が、この時代のプリキュアたちに見切りをつけてしまったということを。

「いくら頼み込んでもダメ、かあ。言って聞かせてダメってことはさあ。後はさぁ……、始末するっきゃ、ないよねッ!」
 ノームの体が薫子の視界から消えた。否、消えたのではない。地を蹴って一瞬のうちに彼女の懐に潜り込んだのだ。五本の指全てがぴんと伸び、薫子の喉元目掛けて迫り来る。感傷に浸っていた薫子はノームの唐突なる不意打ちに未だ気付いていない。空を裂く鋭利な手刀はそのまま一直線に喉元へと進み、彼女のものとも薫子のものでもない「別の手」によって寸前で留められた。

 手の主はコッペだ。人間に化身していた大妖精はそのまま元の姿に戻ると、雄叫びを上げて残るもう一方の腕でノームを殴り付け、彼女を薫子から遠ざける。ノームは丸太のように太い腕の不意打ちを喰い、自らが積み上げた鉄屑の山に叩き付けられた。

「コッペ……! ごめんなさい、私……」
 ノームが吹き飛ばされたことで薫子は漸く状況を理解し、自分に背を向けたコッペに謝辞を述べる。だがコッペは振り返らない。それとほぼ同時に、ノームが鉄屑の山から這い出、再び飛び掛かってきたからだ。

 コッペを明確に敵と認識したノームは、両の手をナイフのようにぴんと伸ばし、防御を捨てて勢い付いた手刀をコッペに見舞う。逆にコッペは逞しい両腕を十字に組み、敢えてノームの手刀を受け止めた。厚みのある掌に鋭利な手刀が深々と突き刺さる。
 だが、それでもノームは止まらない。コッペの掌に刺し入れた手に力を込め、彼の両腕を外側に開き始めたのだ。プリキュア筋力を最大限に発揮したノームの腕力は、さしもの大妖精・コッペでも止めきれず、彼の腕は鉄骨がひしゃけるような嫌な音を立てて折れ、ぶらりと力無く垂れ下がった。
 腕に本を潰され、猛獣のような悲鳴を上げるコッペ。ノームは上半身を反らし、勢いついた頭突きを見舞うと、折れた両腕を引き寄せ、後ずさったコッペの腹に膝蹴りを叩き込む。白目を剥いて意識を喪失したコッペから両手を引き抜き、ノームは一歩一歩、ゆっくりと薫子の元へと近付いて行く。
「直ぐには殺さない。あたしの言うことを聞くまで徹底的にいたぶってやる。そうすれば、あの子たちもあたしに逆らわなくなる筈よ」
「無駄よ。私にもあの子たちにも脅しなんて屈しないわ!」
「どうかしらね。やってみなくちゃ、分からないでしょう?」
 逃げる薫子の両足を植物の蔓で絡め取り、自身の手で彼女の両肩を掴み、床に叩きつけるノーム。背中を打たれたからか、薫子は痺れたかのような感覚に襲われ、言葉を発することさえ出来ない。ノームは左手で薫子の肩を掴んだまま右腕を振り被り、そして――。
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