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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(2)

Journey through the Decade Re-mix 第九話 「警告:カブト暴走中」 フェーズ2

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 門矢士が仮面ライダーウィザードの世界に通りすがる記念急ピッチ執筆更新。

 ものすごくどうでもいいのですが、仮面ライダーガタックのライダーキックと、常用バイク・ガタックエクステンダーを用いた必殺技『エクステンドライダー落とし』の威力がどちらも19tってのはおかしいと思うの。



 なお、今一度ここに記しておきますが、
 ※ 本世界にて描写される『マスクド・ライダー』、『クロックアップ』の設定は、本作執筆に当たって筆者が創作した架空のものです。
 公式及び仮面ライダーカブト本編の物とは大きく異なりますのでご了承ください。



これまでのあらすじ:電王の世界に別れを告げ、人間に擬態する怪生物・ワームが跋扈する仮面ライダーカブトの世界にやって来た門矢士一行。ワームとの交戦中に偶然出会った少女に何らかのシンパシーを感じた士は、落とした学生証を届けるという名目で彼女の後を追う。
 一方、対ワーム組織「ZECT」の大隊長・天堂ソウジ/仮面ライダーザビーは、謎の男・鳴滝と共に秘密裏かつ不可解な実験を行なっており、妨害に現れるであろうディケイドを抹殺ターゲットに打ち据えていた
)


◆◆◆

 不快な空っ風の吹き荒ぶ東京国・エリアGの外れ。通報を受けて急行したZECT戦闘員・ゼクトルーパーの一団は、閑静な住宅街に似つかわしくない凄惨かつ不可解な光景の見聞を行なっていた。

 煉瓦造りの袋小路に散乱する黄緑色の体液に、四散しそこねた蛹ワームたちの手足の一部。幸いなことに人的被害は皆無だが、そうなると一つ疑問が残る。ZECTが後手を踏んで見聞を行なっているのなら、ここにいたワームを始末したのは一体何者なのか。

 東京国にZECT以外の軍隊は無い。警察や軍隊に幼体ならまだしも、クロックアップ能力のある成体ワームを倒すことなど不可能だ。ならば何故こうなったのか。

 現場を任されたZECT02小隊の若き副隊長・鍬形《くわがた》アラタは、明確な答えが出ずに歯噛みし、黄緑色の惨状を睨みつける。彼宛に本部からの通信が入ったのはその時だ。連絡して来たのは大隊長である天堂ソウジ。彼らしからぬ差し迫った口調からして、善いことで無いことは確かだろう。

「隊長、どうされたのですか、そんなに慌てて……」
「それほど重大な事態なのだ。今から指定する場所へ向かえ。現事案は放棄しても構わん」
「放棄、って」アラタは堪らず口を挟む。「マスクドライダーでも無い者がワームを殺したんですよ、放っておいても構わないと言うのですか?」

「あぁ、ゼクトルーパーたちに任せれば良い。それと今気になることを言ったな。我々以外の何者かがワームを屠った、と」
「えぇ。銃火器ではなく、打撃や斬撃の跡ばかり。軍隊や一市民にやれるものじゃありません。まるでそう、我々ライダー……のような」

「ライダー、ライダー……ね」ソウジは訝しむかのような口調をし、「なるほど」と言葉を継ぐ。
「既に手がかりを掴んでいたか、世界の破壊者・ディケイド……」
「ディケイド? 一体何の事です」
「こちらの話だ。貴様が知る必要は無い。不可解な殺しの話だったな。『奴』のことなら知っている。俺が追っているのもそいつだ」

「心当たりがあるのですか? 」
「あぁ。極めて凶悪なワームだ。人も同族もお構い無しに殺すほど獰猛な奴でね、数を殖やす前に殲滅せよと本部からのお達しだ」
「同族までも……」アラタは顎に指を乗せて思案を巡らせると、「仰ることは分かります。けれど、闇雲に探した所で見つかる訳が……」

「貴様は本当に運のいい奴だよアラタ。先ほど『そいつ』の潜伏先が特定できた。座標と奴の顔写真をそちらに送る。近隣の分隊と合流して囲い込め」
 ソウジが言い終えるのとほぼ同時に、蜂を模した小型メカがアラタの眼前に現れ、彼の掌にSDカードのような記憶媒体とインクジェットプリントされた写真を残して再び光の中へと姿を消す。
 マスクド・ライダーたちが変身に用いる「ゼクター」たちは、内蔵されたタキオン粒子によって空間を歪め、持ち主が何処に居ても瞬時にその場に移動する能力を持っている。今の蜂は天堂ソウジの相棒・ザビーゼクター。通話の最中に資料を纏め、アラタの元へ使い走らせたのだろう。
「了解しました、直ちに向かいます」
 アラタは受け取った端末データを他の隊員たちに送り、行くべき場所を彼らに告げる。彼はゼクトルーパーの一団が動き出すのを横目に、ソウジより託された写真をまじまじと見る。
「人殺しの化け物め……、一匹残らず駆逐してやる!」
 殺すべきワームの顔を目に焼付け、渡された写真を握り潰す。標的――門矢士のふてぶてしい顔を。


◆◆◆

 日本領東京国・エリアH。六年前に落下した隕石の爆心地より遠く離れていることもあり、他の地域より空を覆う塵や砂の層が薄く、人間が居住出来る数少ないエリアだ。

 寒々とした空っ風が吹き荒び、人影も疎らで活気のない商店街を、焦茶色のダッフルコートを纏った少女が早足で駆けてゆく。コートの下にはブレザーの学生服。丈の長いスカートの下に、黒いストッキングを穿いている。

 何故、人のいない商店街を早足で歩かなければならないのか。彼女は追われているのだ。自分を執拗に尾けてくる、妙な男女の二人組に。

「士君……。彼女チラチラこっちを見てますよ、もしかしてバレたんじゃあ」
「そりゃあ、バレるだろうな。俺一人ならともかく、お前が一緒じゃ隠密活動なんてハナっから無理だ」
「なんですかその言い草! 失礼な!」
「失礼も何も、実際あぁやって感づかれてんだ。事実だろ」
「そもそも、何で尾行なんですか! 落とし物を拾ったのなら、すぐに返してあげればいいじゃないですか」
「アホだなお前。ンなことしてテキトーに話を打ち切られでもしたらどうする。俺たちゃこの世界ですべき事の手がかりすら掴んでないんだぜ、逃げ場を潰して洗いざらい吐いてもらうっきゃねぇだろう」
「相手は女の子ですよ? 手荒な真似止してください。さもないと……」
「言われなくとも穏便にやるつもりだ。分かったからその物騒な親指をしまえ、野蛮人」
「誰が野蛮人ですか、誰が!」

「あなた達、いい加減にしてください!」
 物陰に隠れつつも、自分たちの姿を隠そうともせず言い合いを続ける士たちに対し、少女の堪忍袋の緒が切れた。少女は臆することなく士の胸ぐらを掴み、少女らしからぬ腕力で絞め付ける。
「さっきから何なんですか! 私を尾けていることくらいお見通しなんですからね!
 言っておきますけど、私はまだ17歳。アイドル.ウェーブのスカウトなら対象外ですから!」
 アイドル.(ドット)ウェーブとは、東京国内を拠点に活動する大規模アイドルグループのことだ。国内放送番組の約四割近くに何らかの形で関わっており、天候不良とワーム被害で疲弊した国民にとっての溜まった鬱憤の捌け口にもなっている。
 メンバーは誰もが憧れる清純派から放送倫理に抵抗しかねない者まで幅広く、朝昼は大人しいが、深夜ともなるとメンバー主導のいかがわしい番組まで平然と流されている始末。要するに、門矢士と光夏海は、そうした破廉恥なスカウトマン・ウーマンだと勘違いされたのだ。
 二人はアイドル.ウェーブという言葉の持ち得る意味を知り得ない。しかし、赤面し、両手で胸を覆うその仕草から、『それ』がまともで無いことだけは辛うじて理解できた。

「何だか知らんがまずは落ち着け。こいつだこいつ。無くしちゃまずい類の代物なんだろ? 東京国立高等学校二年生の天堂マユさんよ」
「それって……、私の学生証!?」
 少女はすかさず自身の鞄とコート、制服のポケットまでを入念に探り、士が手にしているそれが自分のものであると気付いた。彼女は士の手から学生証を引ったくると、やや苦虫を噛み潰したかのような表情を見せ、抑えた低い声で言う。
「ありがとうございます、拾ってくれて……」
「なんだ、ちゃんと礼は言えるのか。それには及ばないが……、このままはい、サヨナラって訳には行かないだろう? この世界は何で、お前は何か。しっかりはっきりくっきり教えてもらおうか」
「……」少女――天堂マユは士の問いに答えず、踵を返して行ってしまう。
「待てよ。話はまだ途中……」
「おばあちゃんが、言ってた」マユは小声でそう言うと、右手人差し指を天に掲げて続ける。「『小さな親切を受けたら、大盛りで返しなさい』って。お昼ご飯、おごるわ。私のうち、料理屋さんだから」
「お昼……ねぇ」薄暗さで分かり難いが、もうじき正午になるらしい。自分と夏海の腹の虫がくぅと鳴った。聞きたいことは山ほどあるが、まずは腹ごしらえだ。「良いだろう。案内してもらおうか」

◆◆◆

 マユに案内されてやって来たのは、『天堂屋』とだけ描かれた看板の小さな店舗。のれんで中は見えないが、鰹出汁の色々をそそる香りから、何らかの料理店であることは理解出来た。
 店の中では数名の客が黙々と食事をしており、奥に設置されたテレビの音以外は殆ど何も聞こえない。彼らの皿に盛られているのは……、おでんだ。美しい琥珀色のツユが中の具を輝かせている。ひと目見ただけでこのおでんを作った人間が只者ではないと分かる業前だ。
 カウンター奥の調理場から壮年の女性が顔を出した。顔中に年齢を示す深い皺が畳まれており、一見すると厳しそうな印象を受けるが、目元から覗く優しげな表情がそれだけの人物でないことを思わせる。
 おでん屋の店主は新たに入った客の中にマユの姿を見咎め、傍らに立つ二人に声をかけた。
「おかえり、マユ。そこの二人は誰だい? 国民学校の子じゃなさそうだが」
「おばあちゃん、この人たちは……」
「この娘がワームに襲われてたんでな。安全な場所まで一緒に逃げて来たんだよ。心配するな、追っ手は撒いてある」
「何だってェ……?」マユの祖母は訝しんで士を睨む。ヒトの身でワームと渡り合える者は居ない。自分の身を護るだけで精一杯の人間が見ず知らずの者を連れ、しかも無傷で逃げ切れるものだろうか。
「……何だよ、人の顔をじろじろ見やがって。別に怪しい者じゃないぜ」
「そうさね……」彼女はひとしきり士の顔を眺めると、マユの方をちらと見た上で踵を返す。「何であれ、うちの孫娘を助けてくれたんだ。相応の礼をしないとね。空いてる席にお座り。ウチ自慢のおでんをご馳走するよ」
「おでん……?」
 そこでマユが口を挟む。「本土と違ってここじゃまともな野菜やお肉が育たないから、加工品を使ったおでんの方が人気なの」
「そういうもの、なのか……?」士は手近なカウンター席に腰を下ろし、怪訝そうな顔で尋ねる。
「そういうものよ」
 納得出来ずに煮え切らない表情をしていると、士たちの目の前に二皿のおでんが置かれた。がんもどきと大根と玉子のみ。ずいぶんと寂しい中身ではないか。
「あの……」
「無駄口利くんじゃないよ」おでん屋の店主は夏海の問いを、右手を差し出して押し止める。「食べ物は出てきた瞬間が一番美味しいんだ」
「はぁ……」
 彼女に立ち向かっても無駄だろう。夏海と士は問うのを諦め、盛られた皿に口をつける。
「こいつは……」
 目前の料理の味を、なんという言葉で表現すれば良いか。士と夏海にはどうすることも出来なかった。これは何だ。具材を煮込んで作るただのおでんじゃないのか。
「馬鹿な、おでんが……おでんがこんなに美味いはずがない!」
「私、感動で涙が……」
「ははは。当然さね。うちのおでんは東京国はおろか、本土のにだって負けやしないんだ。なんたって、家族の愛情が込められてるんだからね」
「家族の愛情、ね」掴み所のない回答を返され、机に頬杖をついてため息を着く士。彼は食器を片付けて回るマユを手招いて寄越し、「それはそうと」と話を切り出した。
「さっきの続きだ。この世界は何で、お前は何なのか。そろそろ話してくれたっていいだろう」
「……意外としつこいんだね。いいよ、話してあげる。この世界は……見ての通り。隕石に巻き上げられた土砂のせいでお日様の光が殆ど入って来なくて、日中は寒くて薄暗いし、そこらかしこで病人が出てる。本土で暮らしたいけど、奴らのせいで私たち東京国民はこの国から簡単には出られない」
「擬態した人間が本土で殖えるのを防ぐためか 」
 マユは黙って頷く。「そして、奴らワームをこの世から消し去る為に世界各国がお金を出し合って作られたのがZECTという組織。ZECTがワームの能力や体組織を研究して作ったのがワーム殲滅用パワードスーツ、マスクド・ライダー。私のお兄ちゃん、天堂ソウジはマスクド・ライダー開発主任であり、試作零号機『カブト』の装着者だったの」
「カブト……だって?」士は色味の抜けたライダーカードを手の中で弄り回し、首を傾げて言葉を継ぐ。「隊長のことなら知ってるぜ。だが俺の見た『奴』はカブトじゃなく、ザビーってライダーに変身していたが」
「カブトは運用前に重大な欠陥があって破棄されたのよ。もうこの世には居ない。ザビーはマスクド・ライダー初号機。カブトの反省を元に作られた正式な運用機体なの」
「破棄された? カブトがか!?」士は驚きのあまり机を叩き、身を乗り出す。「馬鹿な。あり得ない。ならこの世界のライダーは誰だ。ここはカブトの世界じゃなかったのか!?」
「そんなこと、私に聞かれても……」
「士君、落ち着いてください。マユちゃんも……お店の人たちも怯えているじやないですか」
 夏海に宥められ、士は拳を収めて椅子に座り直す。マユはその様子を困惑した面持ちで見つめる。
「何と言われようがそれが事実よ。お兄ちゃんはその時の事故で右目を失い、……家にも帰って来なくなった。ワームを皆殺しにする。そのことだけに従事するようになって、私たち家族を……」
 マユのただでさえ暗い表情が更に陰り、彼らを中心として気まずい空気が流れる。士は咳払いで話題を打ち切った。
「分かった。分かったよ。後はお前の兄貴に直接問い質してくる。奴は何処に居るんだ」
「それは……」
 ――国民の皆さん、国民の皆さん……。ZECT本部より皆様に大切なお知らせがあります。
 二人の会話を遮るようにテレビ・ラジオから女性の合成音声が鳴り響く。テレビの液晶画面には「ZECT」のマークが一杯に映し出され、声は更に続く。
 ――現在、この国に第一級危険生物が上陸しました。『奴』はワームと同じく人間に擬態し、東京国内に潜伏しています。ですがご安心ください。我々ZECTは奴の居場所と顔を特定しました。国民の皆さんは奴を見付けたら近寄らず、ZECTの緊急連絡先への通報をお願いします。
 ――ご覧ください、これが第一級危険生物の『顔』です。重ね重ね言いますが、『奴』は人間ではなく怪物です。
 ――なお、エリアHに奴の潜伏先があると見られ、匿っている人間も協力者である可能性があります。彼らの顔を公開しておきますので、こちらも警戒を怠らぬようお願いします。電話番号は753の315、753の315……――
「な……」
「なな……!」
「何ィ……!?」
 テレビに映し出された顔写真を見て三人は唖然とした。それもその筈。液晶一杯に映し出された顔は門矢士その人だったからだ。しかもそれだけではない。ユウスケや栄次郎、夏海までもが「協力者」として指名手配されてしまったのだから。
 他のテーブルに座る客の表情が凍り付く。ワームと同等かそれ以上の化け物が目の前にいるのだ。怯えない方がおかしい。
「やってくれるぜ全く。向こうからお呼び立てしてくれるのはありがたいが……」
「私やユウスケたちも指名手配になってるんですよ!? 急いで助けに行かないと!」
「解ってるよ。俺たちだけならまだしも、爺さんを人質に取られたら困る。さっさと戻るぞ夏ミカン」
 二人は写真館に戻らんと席を立つが、同時に客たちの怯えた目と目が合う。そのうち一人が携帯電話を取り出した。国民の義務として通報しようとしているに違いない。居場所を特定されて囲い込まれては厄介だ。士は男から携帯電話を奪い取らんと手を伸ばすが、店内の隅々にまで響く「お待ち」の声によって双方動きが止まる。
 士と携帯電話をかけようとしていた男、いや天堂やに居合わせた人々の視線は否応無しにかの店主の方へと向けられる。
「いいかいみんな。よォくお聞き。世の中にゃ慌てて飲み込んじゃいけない物が二つある。テレビの言うことと正月のお餅さ。理由はどうあれ、彼はうちの孫娘を助けてここまで連れて来てくれたんだ。そんな奴をいきなり突き出すってのは、ちょっと不躾過ぎるんじゃないかねェ」
 マユの祖母の妙に説得力ある言葉に気圧され、客たちは携帯電話を下ろし何も言わず申し訳無さそうに俯く。店内を重苦しい沈黙が包む中、マユだけが彼女の言葉に異を唱えた。
「でもおばあちゃん。この人たちが悪くないって証拠は……」
「黙ンなさいマユ。いつも言ってるだろ、『ツユの味は見た目じゃ分からない』。見ず知らずのあんたを助けてくれたのはこの人たちじゃないか。疑うより信じてやりなさいな」
「……」
 マユは黙って頷き、それ以上何も言わなかった。士たちは改めて席を立ち、店の暖簾をくぐりつつ、店主に対し頭を下げる。
「助かるよ。恩に着るぜ婆さん」
「何、ZECTのやり方が気に食わなかっただけさね。お仲間が大変なんだろう? 駄弁ってないで早く行っておやり」
「そうさせてもらう。おでん、美味かったぜ」
 士は外に出ると共に手近な二輪車をマシンディケイダーへと変化させ、後部座席に夏海を乗せ、写真館へと戻って行った。

◆◆◆

 時を同じくし、エリアHの外れにある光写真館。士たちに置いてきぼりを食らったユウスケは、栄次郎・キバーラと共に客間で暇を持て余していた。
「士たち、何処に行っちまったんだ? 早く帰って来いよぉ、暇なんだよぉ、テレビだって面白いことやってないしよぉ」
 現在三杯目となる冷えたコーヒーに口をつけ、面白くなさそうにテレビのチャンネルを回す。写真館に来客があったのはその時だ。ソファに体を預けてテレビの前から離れないユウスケと、彼の頭上を飛び回るキバーラを横目に見つつ、館長の栄次郎は営業的スマイルを浮かべてドアノブに手をかける。
「……おい、ちょっと! なんなんだよ、こりゃあ」
 のんびりとテレビを観ていたユウスケの目に映ったのは、門矢士指名手配の報と、それに準じ協力者と目された自分の顔であった。予想だにしないものを見たユウスケは大変だと玄関先の栄次郎の元へと駆けるが、そんなことに最早意味はない。兵隊アリの面を被った武装集団が銃を構えて栄次郎を取り囲んでいたからだ。

「なな、なんなんだい君たちは……。写真が御所望ならその暑苦しいお面を取ってからお受けしますよ」
 アリ面の兵士たちは栄次郎の言葉を無視し、写真館に土足で強引に押し入ると、何かを探して客間を荒らし回る。ユウスケがうち一人に掴みかかるが、残りの人員に銃を突き付けられて止められる。
 兵士たちに続き、彼らと同じ制服を纏い、面をつけていない青年が写真館に足を踏み入れる。隊長格と思しきその男はユウスケと栄次郎に険しい顔つきで一瞥をくれると、そのまま居間まで歩を進めた。
 隊員のうち一人が青年――、隊長代理・鍬形《くわがた》アラタに敬礼する。「ターゲットの姿は見当たりません。もぬけの殻です」
「勘付かれたか……? 仕方無い、こいつら二人を本部まで連行しろ。『ディケイド』の情報を吐かせてやる。三人はこの建物の周辺で待機。俺の指示があるまでここを動くな」
 アラタの求めに応じ、四人のゼクトルーパーが栄次郎とユウスケを取り押さえ、三人が建物の外へと出て行く。残り数名のうち一人が、虫取り網の中に掌サイズの白い小動物を捕らえてアラタの元へと駆けてきた。
「隊長、妙な生き物を捕まえました。どうされますか」
「研究所に移送しろ。奴の所有物だ、検疫の後解剖して中身を確かめる必要がある」
「ちょっとォ、何よ何よその横暴! 若いコのくせに可愛くなァい! アタシはディケイドの所有物じゃないしバイキンなんて持ってないんですからねッ」
 アラタは喋る不気味なコウモリの言葉に耳を貸さず、残りの隊員たちに指示を飛ばす。彼とその部下の横暴さに、ユウスケの堪忍袋の緒が切れた。自分を押さえ付けるゼクトルーパーたちを力ずくで振り払い、栄次郎とキバーラを救い出すと、彼らを庇って壁まで後ずさり、新たに憤怒の目を向ける。
「黙って聞いてりゃ好き放題やりやがって……あんたら何様のつもりだ? 俺や士が何をしたって言うんだよ!」
「奴はワーム以上の危険因子だ。見つけ次第抹殺せよとの命が下されている。お前たちは最重要参考人としてZECT本部に連行する。奴の潜伏場所や目的を洗いざらい吐いてもらうから覚悟するんだな」
「答えになってねぇぞこの野郎!」
 もう黙っていられない。ユウスケは腹部に手を当てて変身ベルト・アークルを浮き上がらせると、右腰バックル部の突起物に手の甲を押し込み、クワガタを模した異形の戦士・仮面ライダークウガへと姿を変えた。
「成る程、ワームだったか。裁判の手間が省けて良かったよ。貴様はここで殺す。尋問はあの老人にすれば良い!」
 ――来いッ、ガタックゼクター!
 アラタの呼び掛けに呼応し、何処からともなく飛んできたクワガタムシ型のメカが彼の右掌に納まる。そこから間髪入れず、アラタはそれをベルトのバックルに嵌め込んだ。
 ――HENSHIN
 ――CHANGE・STAG BEETLE
 六面体の光がアラタの体を包み込み、銀と青の装甲となって定着する。鍬形の鎧に身を纏いし戦士、マスクド・ライダー ガタックの登場だ。
 クウガに変身したユウスケは有無を言わさずガタックに掴みかかると、頭突きで彼を怯ませ、写真館の外まで彼を引っ張り出す。そのまま馬乗りになって拳を打ち込まんとするが、両肩の砲塔・ガタックバルカンを至近距離で喰らい、光写真館の看板へと叩き付けられてしまう。
 クウガはすぐさま体勢を立て直すと、居間から栄次郎たちを連れ出して彼らを自身の背に隠す。
「栄次郎さん。キバーラを連れて逃げてくれ。ここは俺が食い止める」
「だがユウスケ君、一人でこれだけの数を相手にするのは」
「俺だって仮面ライダーなんだぜ。あんな奴らくらい一捻りさ。士と夏海ちゃんに宜しくっ。さ、ほら、早く!」
「ちょっと、ちょっと! ユウスケ君……」
 それでも尚ユウスケの身を案じ、この場から離れようとしない栄次郎だが、もう一人の同居人の白コウモリに急っつかれた。
「そーよそーよ。折角ユウスケが男を見せようって時なんだから、アタシたちおじゃま虫はさっさと退散しましょうよぉ。ユウスケならだーいじょうぶよ、ねっ、栄ちゃん」
「うむむ……」キバーラの言うことは尤もだ。ここに居座っていても足手まといになるしか無い。栄次郎は悩み抜いた末、クウガに背を向け走り出した。

 覚束ない足取りでコンクリート舗装の道路を駆ける栄次郎を、ゼクトルーパーの無慈悲な銃口が狙う。だが隊長であるガタックは隊員たちにそれを下ろせと手で合図を送る。
「敵方とは言え民間人だ。発砲は許可しない。お前たち全員で捕らえて連れ戻せ。こいつの相手は俺一人で十分だ」
「一人で十分? 言ってくれるねおぼっちゃん。士……ディケイド程じゃないが俺だって相当強いんだぜ」
「人間のフリが上手い奴だな。ZECTの監視網に引っ掛からず潜伏出来たのも頷ける。だがそれも今日限りだ。俺の鋏で貴様の命を断ち切ってくれる」
「馬鹿にしやがって……。ベソかいて地面に這いつくばらせてやる!」

◆◆◆

 門矢士と光夏海は自分たちの記憶を頼りに元来た道を戻り、写真館へとひた走っていた。途中から降り始めた冷たい雨が彼らの体から熱と体力を徐々に削いでゆく。
 赤煉瓦の立ち並ぶ住宅地まで差し掛かった辺りで見慣れた顔に出会した。写真館から逃げてきた栄次郎とキバーラだ。彼らも傘を持っておらず、全身しっとりと濡れている。
「おじいちゃん! どうしてこんなところに!」
 栄次郎は膝に手を当て、犬のように舌を出して呼吸を整える。「夏海と……士君か。どうもこうもないよ。アリみたいな顔の……兵隊が……ウチの中を、散々荒らし回っちゃって……」
「アリみたいな?」
「あぁそうだ。丁度……あんな感じ」
 未だ落ち着かない呼吸の中、栄次郎は士たちの背後を指差す。七・八人のゼクトルーパーが右手の銃を此方に向けて士たちを狙っていた。
 士は舌打ちをし、アリ面を苦々しげに睨む。「もう嗅ぎ付けて来やがったか。寄りにも寄ってこんな所で!」
「士君、前、前ッ!」
 夏海に促され、今度は自身の進行方向へと向き直る。栄次郎を追っていたと思しき一団が士たちの前に立ち塞がった。
 三人(と一匹)はあっという間に取り囲まれ、その全てに銃口を向けられる。彼らが何の力も持たない一般人であったならここで手詰まり、射殺されて全て結していたことだろう。しかし彼らは――門矢士は無力な一般市民などではない。世界の破壊者・仮面ライダーディケイドなのだ。
「しょうがねぇ。爺さんに夏ミカン、俺の傍を離れるなよ」
「士君、一体何をするつもりですか」
「良い機会だ。新しい力を試してやる」
 ――変身
 ――KAMEN RIDE 『DECADE』!!
 士はベルトを腰に巻き、流れるような動きでカードをバックルに投げ入れ、ディケイドに変身。ゼクトルーパーたちが待機状態で見守る中、ディケイドは腰のライドブッカーから一枚のカードを取り出した。
 ――KAMEN RIDE『DEN−O』
『電王』の電子音声と同時に何らかの警笛が鳴り響き、ディケイドの体に銀色の粒子が纏わり付いた。定着してスーツとなったそれの上に赤の装甲が上乗せされ、桃を模した仮面が頭部にくっつき、二つに割れる。
 ディケイドは剣を用いる赤の電王・ソードフォームへと姿を変えた。

「更に姿が変わった!?」
「これが天堂隊長が危険視する第一級危険生物の力の一端だと言うのか?」
 ゼクトルーパーたちが驚きどよめく中、ディケイドは更にもう一枚のカードを取り出し、彼らに見せつける。
「手始めに……これだ」
 ――ATTACK RIDE 『ORE−SANJYOU!』
 三度電子音声が鳴り響き、これから起こるであろう出来事に備えてゼクトルーパーたちは身構え、夏海と栄次郎はごくんと唾を飲み込む。
 しかしどうしたことか。驚き戸惑うのは彼らではなく、仮面の下で満足げな笑みを浮かべるディケイドの方であった。
 両手が全く動かない。「動け」という脳の指令を両腕の神経が全く受け付けないのだ。動かせないだけならまだ良い。硬直し、微動だにしないディケイドの両手はひとりでに伸び、何らかの構えを取り始めた。腕の動きと呼応し、両足も勝手に大股になって行く。勿論、ディケイドの意図したものではない。
 気が付くとディケイドは足を大股に開き、右手を広げて左手を突き出し、まるで自身の強さを誇示するかのような構えを取っていた。否、これは「構え」ではない。この動きには見覚えがある。わざわざ敵前で取るこのポーズ、声ばかりでかくて意味のない名乗り。そうだ、あれは――。
 ディケイドが「それ」を思い出した時には時遅し。彼は内なる激情に突き動かされ、自然と「あの言葉」を口にしていた。

 ――俺、参上!

 攻撃に備えて陣形を取って身構えていたゼクトルーパーも、何が起こるのか固唾を呑んで見守っていた光一家も、ディケイドのこの奇行には唖然とする他無かった。この場に居た誰もが同じことを考えたことだろう。
 ――この男は、一体何がしたいのか
 と。

 予想だにしない効力と、白けた空気の中、ディケイドは構えを解いてわざとらしく咳払いをし、仕切り直しだと別のカードを取り出した。
「なら、これだ」
 ――ATTACK RIDE 『KOTAE−HA−KITENAI!』
 今度のカードはリュウタロス/電王・ガンフォームの絵柄が描かれたものだ。ディケイドの纏うアーマーが空中で形状を変化させ、再び彼の体に纏わり付く。
 銃使い・ガンフォームとなったディケイドは、軽やかなステップを踏みつつ、ゼクトルーパーたちに右人差し指を突き付ける。
 ――答えは聞いてない!

「……俺たち、何か質問されたか?」
「いや、何も」

 聡明な読者諸氏ならばもうご存知であろうが、このポーズもディケイド自身の意思で取ったものではない。未知のアタックライドカードの効力によって無理矢理「取らされた」のだ。電王の世界のイマジンたちは誰も彼もが我の強い個性的な集団であった。彼らの影響を受けて生成されたカードが斯様な効力を持ったとしても何ら不思議なことではあるまい。
 とは言え、力試しどころか恥を晒すことになった門矢士――ディケイド当人はそうも行かない。彼は引き抜いたカードを握り潰し、マゼンタの仮面の下で怒りに唇を震わせる。
「あンの……アホ共が……ッ!」
「士君! あなたは一体何がしたいんですか!」
「俺に聞くなッ! えぇい、こうなったら力づくで……」
 力試しを諦め、武器を構えてゼクトルーパーへと飛び掛かるディケイド。だが彼は機銃による反撃を食うより早く、何らかの強い衝撃を受けて空中で「お手玉」にされた上、向かいの家のブロック塀に叩き付けられた。
 何が起こったかと半身を起こしたディケイドの目に映ったのは、黄と黒を基調とした蜂の鎧のマスクド・ライダー、隊長機『ザビー』の姿であった。
「まさか我が隊の中に潜んでいたとはな……。世界の破壊者・ディケイド。我々ZECTは貴様の存在を許さない。ここが貴様の死に場所だ!」
「また、か」ディケイドは起き上がりつつ、わざと聞こえるように溜め息を着く。「人気者は辛いねェ。何だ? また鳴滝の野郎の差し金か?」
「これから死ぬ貴様に知る必要はない。無駄口を垂れるくらいなら辞世の句でも詠んでいろ」
「ずいぶんと口が達者なようで。軍隊率いるより噺家やってた方が性にあってるんじゃあないか?」
「フン、無駄話は終わりだ。這い蹲れッ!」
 ――CLOOK UP!
 ザビーが右腰のスイッチに手を触れると共に、彼の姿が虚空へと消える。全身の噴射口からタキオン粒子を周囲に放出し、超加速空間を発生させたのだ。世界の破壊者・ディケイドと言えど、自身の知覚出来ない世界の住人を討つことは適わない。防御の姿勢すら取れぬまま、空中でお手玉にされるばかりだ。
 ディケイドの纏う電王・ガンフォームの装甲は度重なる殴打で惨たらしく凹んでおり、いつ崩壊してもおかしくない。ディケイドがダメージで立ち上がれないでいると、勝ちを確信したザビーがクロックアップ空間から戻ってきた。文言通り地べたに這い蹲るディケイドを嘲笑うためか。
「これで分かっただろう。クロックアップ出来ないお前など、俺の敵ではないとな!」
 ディケイドの背中を踏み付け、勝ち誇って高らかに笑うザビー。それに抗う事なく渇いた笑い声を上げるディケイド。手詰まり故の諦めか? 否、彼の目はまだ死んではいない。
「……何が可笑しい」
「クロックアップが使えるってだけで大層な自信だな。いいぜ、だったらその傲慢な鼻っ柱、俺が根本から叩き折ってやろうじゃねぇか」
「負けず嫌いもここまで来ると滑稽だな。地に伏した貴様に何が出来る?」
「お前を引き剥がすくらい、屁でもねぇ」
 ディケイドはベルト左腰からライドブッカーを取り外すと、一瞬でガンモードへと組み換え、後ろ手でザビーに銃撃を見舞う。狙いも何も無いが故に差したダメージを与えることは出来なかったが、邪魔臭いザビーの足をどかせることには成功した。
 起き上がって体中の汚れを払ったディケイドはブックモードへと戻したブッカーより二枚のカードを取り出し、ザビーに見せつける。
「だったら勝負だ蜂野郎。どっちが速いか、試してみようじゃねぇか」
 ――KAMEN RIDE 『FAIZ』
 カード装填と共にディケイドの体に赤のラインが走り、仮面ライダーファイズへと変化する。
「付き合ってやる。十秒間だけな」
 ――FORM RIDE 『FAIZ-ACCEL』
 続いて残りのカードをバックルに投げ入れる。カード効力によってファイズのアーマーにアップデート・データが打ち込まれ、胸部の装甲・フルメタルラングが開いて両肩に収まり、内部の電子機器が顕となる。
 同時に、内部機器に仕込まれていたロックが緩み、ファイズの力の源・フォトンブラッドの出力が増大。体中を流れる赤のラインが崩壊の危険を示す銀色へと変化し、複眼に赤のフォトンブラッドが流れ込む。
 仮面ライダーファイズの高機動形態・アクセルフォームだ。

 ――START・UP
 変化と同時に右手に備え付けられたリストウォッチ型起動ツール・ファイズアクセルのスタータースイッチに指を触れ、カウントが開始される。ディケイドが何らかの構えを取ったその瞬間、先んじてザビーが右腰のスイッチに手を触れた。降りしきる雨粒が空中で静止し、丸い水玉となって空中に漂う。
 クロックアップ空間を発生させたザビーは、凍り付いたディケイドに向かって駆け出し、彼の左こめかみ目掛け渾身の右拳を叩き込む。
 彼自身としてはこの一撃で奴の頭を打ち砕き、脳漿《のうしょう》をトマトのように飛沫させる心づもりであったのだが、その思惑は意外な形で外れることとなる。クロックアップの中で動くはずのないディケイドが、拳を鷲掴みにして止めたのだ。
 打ち損じた? そんな馬鹿な。ここは何もかもが静止した空間だ。放たれた拳を躱せる訳がない。これは何かの間違いだ。否、間違っているのはザビーの認識である。ディケイドの手はこの超加速空間の中で確かに動いた。彼の左手はザビーの拳を受け止めて無理矢理に下げさせ、自身の右拳をザビーの顎先に打ち込んだのだ。
 ザビーは防御の姿勢を取ることすら叶わず、強烈な一撃を貰って煉瓦塀へと突っ込む。固まっていた雨粒が割れたしゃぼん玉のように弾け、更に小さな水玉へと分解されて行く。砕けた煉瓦も同様だ。欠片や粉粒一つに至る全てが、スローモーション映像のように空中でダンスを踊っている。
 恐らくザビーには何故自分がこんな目に遭っているのか、それすらも未だ分かっていまい。ディケイドのカウンターパンチはそれほどに素早いのだ。壁に寄り掛かったまま尻餅をつく格好となったザビーは、反撃に備え素早く体を起こすも、ディケイドは既に目と鼻の先にまで迫っていた。体を大きく捻り、拳を後方に引いている。強烈な一撃の予備動作だ。
 溜めが必要な攻撃であったことが幸いし、ザビーは防御姿勢を取ることが出来た。両腕で顔面を覆ったお陰で無傷だが、殺し切れなかった衝撃が体中に響き渡る。
 ザビーは衝撃に耐えて壁伝いに横転し、追撃を避けてディケイドの右側部へと回る。左の拳で小突かんとした彼の腹部をディケイドの横蹴りが貫いた。未知の物質・ヒヒイロノカネで覆われた腹筋のアーマーに亀裂が走り、苦痛に呻いてたたらを踏んだ。
 足を下ろしたディケイドはすぐさまザビーの正面へと向き直り、左・右・左と拳の連撃を叩き込む。ザビーの体がくの字に折れ曲がり、苦しげな吐息が漏れる。
 とどめに放った正面蹴りによって、ザビーの体は煉瓦塀をも貫通し、ドーム状の家屋に叩き付けられる。ワームの攻撃をも防ぐ堅牢な外壁に亀裂が走る様は、さしずめヒビの入った殻付き茹で卵のようだ。
(馬鹿な! 奴は何故動ける!? 何故俺は反撃されているのだ!)
 理解不能ではあるが、納得する他無い。眼前の敵――仮面ライダーディケイドはこのクロックアップ空間の中で、自分よりも素早く動ける存在であると。ならばどうする? 戦わなくては。この空間の支配者は俺だ。奴を倒し、そのことを分からせてやらねばならない。

 ザビーは地団駄で怒りを紛らわした後、手の甲を見せてかかってこいと手招いた。彼には勝算があった。素の破壊力に速さが上乗せされて放たれた連撃を耐え切ったザビーにしか解らない対策が。
 そこからコンマ三秒、ディケイドは再びザビーの眼前へと踏み込み、速さの乗った右拳を仕掛けてきた。対するザビーの目に恐怖は無い。確信めいた何かを秘めた眼差しだ。

 ディケイドの拳がザビーの頭を砕かんと伸びる。だがその拳が捉えたのはザビーの装甲ではなく、彼の後ろにあるドーム状の外壁だ。接触するその刹那、ザビーは首を傾げてディケイドの拳を躱したのである。
 それならばと放たれた左膝蹴りがザビーの腹部を襲う。しかしこれも右腕によっていなされ、有効打には至らない。
 好機! ザビーはディケイドの左腿を掴んで片足立ちの状態にさせると、頭突きで彼を怯ませ、右フックでディケイドの脇腹を引っ叩く。ディケイドは左右に体をぶらしてよろけ、銀のフォトンスクリーンが僅かに軋む。
 ザビーは仮面の下で勝ち誇った表情を見せ、今までの出来事を頭の中で反芻する。止められるはずの煉瓦への空振り、あれほどの素早さを持ちながら、敢えてこちらの攻撃を誘うやり口。どこか雑な連撃。そこから導き出される答えは何か?
(やはり俺の見立てに狂いは無かった! 確かに奴は素早い。だが、その速さ自体に『思考』の方が追い付いていないッ!)
 仮面ライダーファイズ・アクセルフォームは通常の千倍の速さで活動可能な高機動形態だ。世界の垣根を超えたこの速さ比べは、ザビーの発生させたクロックアップ空間という不可侵のフィールドに、アクセルフォームという尋常ならざる力を強引に捩じ込むことで成立している。
 だが、オルフェノクが装着・運用することを前提に開発されたこのシステムは、常人である門矢士には制御仕切れない。加速した己を知覚し、操るだけの動体視力などヒトには備わっていないのだから。今の士は怒り狂う暴れ馬に跨がる幼子と同じだ。ギアのナビゲーション機能とこれまでの戦いで得た勘が無ければ、初撃を受けて殴り返すことすら叶わなかったであろう。
 敵が加速について来られない的であればそれでも勝ちを奪えただろう。だが目の前の相手は同速で動ける上にそうしたペナルティも無い。落ち着いて対応された時点で優位性はザビーに移っていた。
(もう慣れて来やがったか……。厳しいな)
 門矢士――ディケイドもその弱点を重々承知していた。だからこそカウンターパンチの後の重い一発で早々に決着をつけようとしていたのだ。最早速さによる優位性は皆無。まともにやりあえば勝ち目は薄いだろう。
 しかしディケイドに退くことは許されない。一度加速を解いてしまえばザビーのサンドバッグとなってお陀仏だ。自身の、光一家の命を守るためにも、戦って奴を圧倒しなくてはならないのだ。
(じっと待ってカウンターを狙えば勝てると思ってるんだろ。だったら……)
 ディケイドはバックステップでヒト一人分程の距離を取り、顔面狙いの右ストレートを繰り出す。ただの苦し紛れだ。避けた所で脳天にとどめの一撃を叩き込んでやる。ザビーはパンチの軌道を読み、首を僅かに傾けた。
 だが、カウンターを貰ってよろけたのはディケイドではなくザビーの方だ。顔面狙いと思われたそれは突如狙いを胸部に変え、無防備の鳩尾に突き刺さったのだ。敵の心理を巧みに利用したフェイントである。
(あり得ない! 体を動かすだけで精一杯の奴が、フェイントを仕掛けてくるだとォ!?)
 ザビーが取り乱すのも無理はない。今のフェイントは敵の次の行動を先んじて予測し、その通りになるよう狙いを誘導出来ねば成立しない。思考と行動とがズレにズレるこの空間でそれを成功せしめる辺りは、流石に場数を踏んでいるだけのことはある。
 だがこれに頼り続ける訳には行かない。一度使うだけでも集中力を激しく消耗するため、酷使すれば自滅は確実だ。

 互いの戦力は完全に互角。何もかもが止まったこの世界で、いつ止むとも知れぬ殴り合いは延々と続く。
 命の削り合いをし始めてからどれほどの時間が経っただろうか。肉体的精神的に限界が近付いた二人は、互いに右手に武器を持ち、ヒト三人分程の距離を保って睨み合う。いよいよケリをつけるつもりらしい。
 ディケイドはパンチングユニット・ファイズショットを、ザビーは蜂の巣型グローブ・ハニーボマイザーを構えて腰を落とし、強化アスファルトの床を強く踏みつける。
 先ほど飛び散った汚染フォトンブラッドの雫が水玉に混じって空気中に消えて行く。双方これを合図とし、腰を捻り駆け出した。
 ――FINAL ATTACK RIDE『Fa-Fa-Fa-FAIZ』
 ――RIDER PANCH
 雨粒を押し退け飛び交ったそれは、拳同士でぶつかり合い、赤黒い爆発を起こして双方を塀に叩き付けた。用いた武器は爆発と共に中破し、根本からぱちぱちと火花を上げている。
(く……おぉ、おぉおッ! おのれ、おのれェッ!)
 先に半身を起こしたのはザビーだ。だが、立ち上がる際に発した悲鳴はどうみても勝者のそれではない。ザビーの武器・ハニーボマイザーはファイズショットとの衝突の折、内蔵された火薬が誘爆し、右腕に重篤な火傷を負ったのだ。
(効いてるみたいだな。あぁ糞ッ、こっちも右手が痛ェ)
 遅れてディケイドも体を起こして立ち上がる。武器の破損だけで済んだため、彼に目立った負傷は無い。今度こそ終わりだ。近付いてそう言ってやろうとしたその時、ザビーの体はディケイドとは別の方を向いていた。
(貴様とまともにやりあって勝ち目がないなら……せめてこいつらの命だけでも頂いて行く!)
 ザビーはゼクターの羽根部分を弓の用に引き絞り、尻の毒針数発を「止まったままの光一家」に向けて放った。ワームに当てれば溶解させるだけの代物だ。人が受ければどうなるか、改めて説明する必要はあるまい。
 ディケイドは気付いて駆け出すが、針は既に夏海たちの目と鼻の先まで迫っている。今から走った所で間に合わないだろう。

(夏海! 爺さん! 避けろ!)
 声にならない叫びを上げ、間に合わないと分かりつつも針に向かい尚も駆ける。あわや針が夏海の首筋に突き刺さりかけた、まさにその時。
 夏海たちの眼前に何者かが立ち塞がった。それはディケイドでも、ましてやザビーでもない。赤の鎧に顔を覆う青の複眼、額から立派な一本角を生やした別種のマスクド・ライダーだ。
 赤いライダーは手にしたクナイで全ての針を叩き落とすと、ディケイドに一瞥をくれた後、一瞬でザビーの懐へと飛び込んで彼の胸部を袈裟に引き裂いた。
(貴様は、まさか! ぐゥーッ!)
 これまで積み重なったダメージが限界を迎え、ザビーの腕からゼクターが外れ、別次元へと消える。同時にアーマーが原子分解され、彼が作り出していたクロックアップ空間が消滅し、止まったままの雨粒がアスファルトを濡らす。
 ――THREE……TWO……ONE…….TIMEOUT.
 クロックアップ空間消失と同時にアクセルフォームの加速時間が終了し、ディケイドもこの世界に戻ってくる。そこに赤のライダーの姿はない。彼の姿は忽然と消え失せていた。

 変身を解除したザビー―、天堂ソウジはよろけた体を部下たちに支えられ、鬼の形相でディケイドを睨みつける。
「撤退だ……」
「は?」
「こんな状態で戦闘続行など不可能に決まっているだろう! 撤退だ!」
「ですが……」
「直ちに基地へと帰還し、体勢を整える! 俺に同じことを二度言わせるな!」
 ソウジの恐ろしい剣幕に圧倒され、部下のゼクトルーパーたちは彼を担ぎ、ディケイドたちを背にして去って行く。敵が皆退却したのを見計らい、ディケイドは変身を解いて光一家の元へと駆け寄った。
「爺さん、夏ミカン。怪我は無いか」
「えぇ、私たちは、特に何も」
「ありゃりゃ、あのマスクの人たち、もう帰っちゃったのかい? 人の家に勝手に押し入っておいて、礼儀知らずの連中だよ!」
「それだけ文句が言えれば上出来だ」
 二人の無事に安堵しつつ、門矢士は湧いて出た疑問に思案を巡らせる。
(夏海たちを助けたあのライダー……間違いなくカブトだ。奴は廃棄などされちゃあいない。この世界で生きて、ワーム相手に戦っていたじゃないか。
 だったら、破棄されたなんて嘘を吹聴したのは何故だ? ザビーに変身し、居る筈の無い仇に執念を燃やすあの眼帯男は一体何者なんだ?)


◆◆◆

 士たちがZECTの手荒い歓迎を受ける少し前。天堂マユは彼らの通った道を辿り、光写真館へと急いでいた。彼らの境遇と祖母の言葉に影響され、士たちの安否を確かめたくなったのだ。
 マユには「勘」としか言えない何かがあった。士たちの痕跡を辿り、見ず知らずの道を抜け、写真館へと近付きつつあった。

 閑静な住宅地に不気味な打撃音が響いている。間違いなくあそこに彼らはいる。早足で駆け出したその瞬間、マユは何者かに背後から薬を嗅がされ、抵抗する間も無く意識を失った。

「……悪いね、お嬢さん。『クロックアップ』を手に入れるためには、君の力が必要なのさ」
 目出し帽の青年・海東大樹は、マユを右肩に担いで雨粒の中を去って行った。

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