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「二次創作」
エコテロリストプリキュア!

『ハートキャッチプリキュア!』二次創作 エコテロリストプリキュア! 1/4

 ←これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十五年七月号 →これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十五年八月号
 去年の10月末から今年の八月末まで、pixivのアカウント上で連載していた『ハートキャッチプリキュア!』の二次創作です。
 時系列は多分最終回でえりかたちが『あたしたちはすごいことをしてしまった!』とか言ってる後辺りかなあと。

 全十チャプターのうち、1~3くらいの話を凝縮しております。
 ブログでは全四回連載で終わるんじゃないかなと。

 目の前に広がる光景は、どこまで行っても瓦礫ばかりの廃墟。赤茶けた硝煙が空を覆い尽くし、生きとし生けるもの全てが死滅し、骸の上に骸が連なる、絵に描いたような「地獄」であった。
 何もかもが死に絶えたこの場所で、無我夢中に地面を掘り返し、何かを探す少女がいた。瓦礫と骸の山から「萎びた植物」を見つけ出すと、愛おしそうに抱き留めて力を込める。いつ枯れてもおかしくなかったそれは、文字通り「息を吹き返し」、元気だった頃の姿を取り戻した。
 だが、それも束の間の出来事でしかなかった。息を吹き返しても根付く場所が無いからだ。植物はみるみるうちに萎れ、空の色と同じく赤茶けて塵と消えた。

「ごめんね、もっと生きたかったよね。辛かったよね。すぐに迎えに来てあげられなくて、本当に、ごめんなさい……」
 残された塵を握りしめ、許しを乞うて涙を流す。彼女の悼みは、彼女の叫びは、誰に聞かれるでもなく風にさらわれ、空に溶けて行く。泣き腫らした頬を拭い、凛とした表情を見せて立ち上がる。その目に迷いは無い。一度決めたら何としてもやり遂げる決意の瞳だ。
「こんな未来、私は認めない。変えて見せるよ、……必ず」
 少女は塵を空に撒き、屍となった人間の顔を踏み抜くと、煤けた空に光る「何か」に手を伸ばす。光は彼女の求めに応じ、凄まじい早さで駆け寄ってきた。
「行こう、”こころの大樹”。この星に巣食う『癌』に、産まれてきたことを後悔させてやる」
 少女の願いを聞き入れたのか、光は彼女を取り込むと、赤茶けた空を突っ切って消え去った。

※※※

・AM.06:55

 ――次のニュースです。
 ――昨夜未明、N市火力発電所が突然稼働を停止しました。原因は不明です。現在隣接するS市発電所より供給しておりますが、万一に備え節電をお願い致します。

「発電所で、事故……。N市って希望ヶ丘の近くじゃないですか。一体何が……」
 花咲つぼみは朝の食卓の席でニュース番組を見、手元の新聞に目を向ける。彼女たちの住む希望ヶ丘近辺で似たような案件がここ数日、この国の至る所で起こっている。原因不明の操業停止は各地方の電気供給に被害を及ぼし、徐々にこの街へと迫っている。気にならない訳が無い。
 一体何故、何者が、どのような目的でこんなことをしているのか。しかめ面で新聞を見つめるつぼみの眼前に、よく見知った顔が現れた。
「辛気臭い顔で何考え込んでるのよ、つぼみ」
「えりかですか……。って、えりかっ!? いつからそこにッ」
「新聞読んでうんうん唸ってるくらいから。あ、おじさんおばさんおはよーございます」
 机の下に潜り、広げた新聞と自身の胸元の間から現れたのは、親友の来海えりか。彼女はつぼみの両親と挨拶を交わし、机の下から這い出てくる。
「そんな顔してると目元にシワができて、折角の美人が台無しよ? 悩んでないで学校行こーよぉ」
「珍しいですね。えりかが私よりも先に起きて迎えに来てくれるなんて」
「いやさ、もも姉がセンター試験? か何かでばたばたしてて、あたしも早いうちに起こされちゃったわけなのよ」
「そう……なんですか?」妙だと訝しんで思案を巡らせ、一つの結論に至る。「まさか、数学の宿題をやってないんじゃ。それで私のものを書き写して誤魔化そうとしているのでは……」
「し、失礼な! あたしはつぼみの回答を参考にしたいだけっしゅ」
「でも結局は書き写すんじゃないですか! ダメですよ、そういうことは自分自身で片付けないと」
「だって、だってェ……」
 抱き付き、すがる目でつぼみを見るえりか。助けるのは彼女のためにならないが、この瞳を無為することは出来ない。つぼみはふっと溜め息をつくと、
「少しだけですよ。教えてあげますから、自分でやってくださいね」
「やっほーっ! さっすがつぼみぃ、話が分かるぅ!」
「ちょっと、やめてください! 変なところ触らないでっ!」


「――新たな情報が入りました。発電所稼働停止の原因は、異常繁殖した『植物』が、動力部を破壊したことに因るものと判明。警察・消防は植物の除草作業を行うと共に、原因を更に詳しく捜査して行くものと思われます――」


※※※

・AM.07:30

 運動部の朝練の声が響き渡る早朝の私立明道院学園。えりかに宿題を教える約束を取り付けられたつぼみは、交換条件にと彼女を校舎裏の花壇に連れ出し、ガーデニング部の活動を手伝わせていた。
「えりかー、そちらのお花に水をお願いします。あげすぎちゃダメですからね」
「はぁい」えりかは水で一杯となった如雨露を重そうに持ち上げ、苦々しげな表情を浮かべる。
 正直な所、朝から肉体労働などしたくないのだが、宿題を見せてもらう手前、断る訳にも行かない。小さな体を左右に揺らし、花壇の花たちに水をあげてゆく。

「ねぇえ、ホントに宿題手伝ってくれるのぉ? 使うだけ使って時間がありませんでしたって言うんじゃないでしょーね!?」
「少しは信用してくださいよ……。大丈夫ですって、それにしてもおかしいですね、いつももう一人、隣のクラスの子が花壇の手入れをしている筈なんですけれど……」
 重い如雨露を持って右往左往しているえりかに、大丈夫と声をかけるつぼみ。彼女が自分たちとは違う“誰か”を視界に見込んだのはその時だ。
 身に纏う制服は明道院学園のもので、胸元のリボンの色からして自分たちと同学年であることが分かるが、全く見覚えがない。黄緑色の長髪をこめかみの辺りで二つに括り、可愛らしくあどけない顔立ち。丈に合わない大きめの制服と、中学生にしては低めの身長が庇護欲を掻き立てるが、身震いしそうな程冷たい目をしており、どこか不気味な雰囲気を醸し出している。
 奇妙だが、花が好きで朝早くから来ているのなら大歓迎だ。転校生だとしたらまずは自分が友達になってあげよう。彼女に興味を覚えたつぼみは、えりかを待たせて彼女の元へ駆け寄った。
「見かけない顔ですね。転校されてきたんですか?」
「……」
「えぇ、えぇと。どうです、みんな素敵なお花でしょう? ここのガーデニング部のみんなで一生懸命育てたんですよ」
「……」
 親しげに話を振るが、少女は無表情に周囲を見回すばかりで、全く言葉を返さない。
「あ、あ……。あのう」会話が続かず、どうして良いか戸惑うつぼみを見、少女はここで初めて「そうね」と口を開いた。
「とても綺麗。見ているだけで心が洗われるよう。けど、『可哀想』」
「かわいそう? どうしてそう思うのですか」
「こんな狭いところに押し込められて、窮屈そうにしているんだもの。周りの植物たちもみんなそう。己の自己満足のために何でもかんでも一纏めにして育てようだなんて、思い上がりも甚だしいわ」
 この一言に思うところがあったのか、つぼみはやや強い口調で「お言葉ですが」と言い返す。
「栄養管理も間引きも、出来るだけ相性の良い植物同士を引き合わせる努力だってしています。それを開口一番『思い上がり』だなんて……」
「それが愚かだと言ってるの。管理? 努力? 植物たちは自らの力で生き、そして死ぬ。人の手による管理やら装飾なんてものは、植物たちへの侮辱に他ならないわ」
「それは……」
 言うことに詰まり、辺りに視線を這わせて逡巡《しゅんじゅん》するつぼみ。彼女への興味を無くしたのか、少女は立ち上がり踵を返した。
「期待外れだわ。あなたなら分かってくれると思っていたのに。砂漠の使徒をこの星から退けた伝説の戦士・キュアブロッサム」
「待ってください、あなた今何て……!?」
 自分のことをつぼみではなく「ブロッサム」と呼び、砂漠の使徒と戦ったことまで知っている。この世界のプリキュアは自分を含めて四人。素性を知る者は四人の家族のごく一部に限られている。ならば彼女は何者だ。つぼみは血相を変えて呼び止めるが、別の大声に遮られた。
「何やってんのさァつぼみ。花壇の水やり終わったよー? いい加減にノート見せてよ。これが罰だって言うんならバッチリ受けたんだしさァ」
「えりか……、申し訳ありませんがもう少々待ってもらえませんか? 今、こちらの方と大切なお話をしている最中ですので」
「コチラって何よ。誰も居ないじゃん」
「そうそう……って、えぇッ!?」驚いて再び少女の方へと向き直るが、そこに彼女の姿は無い。僅か十数秒目を離した隙に何処へ消えたと言うのか。
「今の今まで話していたというのに、そんな……」
「そんなことどーでもいいっしょ。時間無いんだからさ、そろそろ教室行こうよ、ねーねーねー」
「ああっ、ちょっと、えりかぁ!」
 少女の後を追うことも出来ず、えりかに手を引かれ、強引に連れて行かれるつぼみ。消えてしまった少女のことで頭が一杯だったからか、つぼみは花壇奥の茂みの先に、自分たちと同じくらいの背丈の“下着姿”の女の子が、宿り木で雁字搦《がんじがら》めにされて横たわっていることに気付かなかった。


※※※

・AM.08:05

 未だ誰も入って来ない朝の教室。つぼみはえりかに宿題のノートを見せる傍ら、花壇で出会った少女の言葉を頭の中で反芻していた。子どもながらに「グリーン・ハンド(植物を育てることに長けた人)」などと持て囃され、調子に乗っていたことは認める。しかしあぁも言われてしまうとは心外だ。心のもやもやを紛らわすかのように頭を左右に振ると、一心不乱にノートを書き写すえりかに話を切り出した。
「えりか……、私って傲慢なんでしょうか?」
「どぉしてそんなこと聞くのさ?」えりかはノートから視線を外さず、鉛筆を走らせながら言葉を返す。「つぼみほど他人本位でお節介焼きは居ないんじゃない? 少なくても、あたしの知る限りじゃイチバンね」
「でも、それはヒトという立場から見ての話でしょう? 草木や動物、この星に住まう生き物たちにとって、私は……プリキュアとはどんな存在なんでしょうか……?」
「ずいぶん面倒臭いこと聞くねー。んなこと、あたしに聞いたって分かるわけないっしょ。つぼみが何言いたいのか解らないけどさ、あたしたちはプリキュアとしてすごいことをしてしまった訳よ。それでいいんじゃないの? 宿題写してるんだから、あんまり邪魔しないでよ!」
「えっと、その……すみません」
 えりかの言い分は尤もだが、どうしても割り切れない。答えが見つかるとは思っていなかったが、誰かに打ち明けることで不安を和らげたかったのだろう。プリキュアである自分は何を成すべきなのか。つぼみは自問自答に頭を悩ませ目を伏せる。

 そんなつぼみが学外の異変に気が付いたのはその時だ。異様な地響きと老若男女問わず飛び交う悲鳴。一つ一つが丸太のように太い木の根が、アスファルトを砕いて道路上に迫り出し、巨大な植物の蔓《つる》が建物や車両に巻き付き、それらを悉く破壊して行く。二人の目に映ったのは、パニック映画さながらに混沌とした希望ヶ丘の街並みであった。
「何よ……、なんなのよあれ!」
「街が、私たちの街が滅茶苦茶に!? どうして、こんな……!」
「つぼみ、つぼみ、つぼみーッ!」事態を把握出来ないまま困惑するつぼみたちの前に、相棒の妖精・シプレとコフレが飛んで来た。彼女たちに負けず劣らず焦っており、つぼみたちの周りを狂ったように飛び回る。
「大変です大変です、大変なんですぅ!」
「おぉ、落ち着いてくださいシプレ。何があったか詳しく教えてください!」
「あの、えと、えぇと……」
 慌てふためくシプレを押し退け、えりかのパートナー・コフレが叫ぶ。「植物たちが急成長してヒトや街を襲ってるんですっ! 家や車はぐちゃぐちゃ、道路は飛び出してきた木の根でぼっこぼこ、逃げ遅れた人たちは蔓に絡まって養分を吸われてからっからになっちゃってるんですーッ!」
「何なのソレ!? そーゆーことはもっと早くあたしたちに伝えなさいよッ」えりかはコフレの頬を両手で掴んで引っ張り上げる。餅のように柔らかな肌は、引き伸ばされて象の耳のようにだらりと垂れ下がった。
「落ち着いてくださいえりか、コフレに当たった所で何にもなりませんよ!」
「そうですそうですぅ、『悪い気配』が全くないんじゃ、シプレたちには見付けようがないですぅ」
 こころの大樹の妖精・シプレとコフレは砂漠の使途のデサトリアン発生のみならず、「悪しき気配」や「負の感情の発露」を感知することができる。しかし今回は「それ」がない。これだけ大掛かりなことをするのに、悪意が欠片も感じられないとはどういうことなのか。
「あぁ、もう! 悩んでたってしょうがないでしょ、変身するよつぼみ! あんたたちもホラ、種出して種!」
「は、はいです……」
 えりかはだから何だとココロパフュームを握り締め、変身に使う「プリキュアの種」を出すようコフレたちに迫る。つぼみもそれに引っ張られ、妖精たちもその通りだと頷いた。
 桃色の種と青色の種をパフュームに挿し込み、眩き輝きを自らの身体に吹き付ける。光は「衣装」となって定着し、頭髪を色鮮やかに変えて行く。
 絢爛な衣装を纏いし浄化の戦士。キュアブロッサムとキュアマリンは、妖精を光耀くマントに変え、街に向かって飛んだ。

※※※

・AM.08:00

 この街と他とを繋ぐ希望ヶ丘の駅。学生や会社員の通学・通勤ラッシュで人がごった返す中、明道院学園高等部の月影ゆりと来海ももかは、一つの参考書を二人で読みながら、電車が来るのを待っていた。
 今日は彼女たちの志望する大学のセンター試験日。明道院学園の生徒のみならず、近隣の高校生たちが一様に集まり、赤本を目にして何やらぶつぶつ呟いている。入学合否のかかった重要な試験、なのだが――。

「そんな日に限って、どうして家に参考書を置き忘れるのかしら、ももか」
「だってしょーがないじゃない。昨日夜通し勉強してて、準備する時間なんて碌になかったんだもぉん」
「勉強って……一夜漬けの間違いじゃないの?」
「あちゃー、バレちゃったかぁ。でも安心してゆり。あたし、一夜漬けは得意なの!」
「ワケが分からないわ……」
 口調こそ厳しげだが、声自体はとても穏やかだ。呆れてはいるが、責めるつもりも無いらしい。
 列車到着を示す警笛が鳴る。電車に乗り込み、出発を待つ。ところが発車時刻になろうとも、駅構内に集まる学生たちの殆どが乗り込もうとも、電車は微動だにしない。
「おかしいわね……。とっくのとうに発車していて良い筈なのに」
「何よ何よぉ、折角眠い目擦って、朝ごはん食べる間も惜しんで乗ったっていうのに、電車の方が動かないってどういうことなのよぉ!?」
「あなたはそういうことを言える立場に無いでしょう。それと、朝ご飯は毎朝毎食きちんと摂りなさい」
 ゆりはももかの自分勝手な言い分に呆れつつ、鞄から「カロリーメイト」のメープル味を取り出した。
「試験中にお腹がなってちゃ、人気モデルの名が泣くわ。無いよりはマシでしょう」
「嘘っ!? 超ラッキー! ありがとうゆりぃ、大好き! 愛してるぅ!」
「……まったく、もう」
 嬉しさのあまり抱き付かんとするももかを御しながら、彼女の妹・えりかの姿を重ね合わせる。端から見れば完璧な姉と、彼女に近付こうと必死に背伸びする妹。なのに本質的には然程変わり無い二人の姿が妙に面白くて、ゆりの顔から自然と笑みが溢れる。
「ん? 何ニヤニヤしてるのよ」
「何でもないわ」
 居住まいを正し、咳払いを一つ。それでも尚動こうとしない電車に不審を抱いたゆりは、鞄をももかに預けて立ち上がった。
「ちょっとゆり、何処行くの?」
「駅員さんに話を訊いてくるわ。このまま待っていても時間の無駄だし、別の路線かバスあたりで振替輸送を回してくれるかも知れないから」
「確かにそうね。席は取っとくから、頼んだわよゆり」
「無理に取って置かなくてもいいわよ。お年寄りや小さな子どもがいるようなら、譲ってあげて構わないわ」
 そう言って電車を降り、駅構内の窓口へと向かう。考えていることは皆同じらしく、ゆりの他数名が窓口に詰め掛け、駅員に罵詈雑言を浴びせかけていた。
 不測の事態だからか、駅員たちは皆一様に困惑し、碌に説明もせず、乗客への謝罪を繰り返している。苛立つ気持ちは分かるが、彼らに当たった所で何にもならない。自分が止めてやらねば。ゆりは凛とした表情を作り、人だかりの中に足を踏み入れる。
 その、ほんの一瞬の出来事だった。ゆりが電車から完全に降りたその時、線路の下から飛び出してきたとてつもなく大きな木の根に弾かれ、今の今まで停車していたそれが、思い切り横転してしまったのだ。
 先ず始めに驚きの声が上がり、次いでそれが悲鳴やどよめきへと変わる。向かいの電車にも同じことが起こり、乗降車中の人々、文句を言うために集まった人々に依って駅構内は大パニックに陥った。
 辛うじて平静を取り戻したゆりは、今一度自身が乗っていた車両に目を向ける。木の根は尚も盛り上がり、大玉転がしの要領で電車を街に向けて運び続けていた。
 何故植物がこんな真似を? そもそもあんなことが出来る植物等この世界に存在するのか? 乗り合わせたももかは無事なのか? 様々な疑問が脳裏を過るが、差し当たって重要なことは一つだけ。あれをこのまま街の中に入れてはいけない。
 相手は十両編成、かつ通勤通学で数多くの人々が乗った電車だ。自分に止めることなど出来るのだろうか? いや、考えている暇はない。ゆりは物陰に身を隠し、鞄からコンパクト型の変身アイテムを取り出し、薄紫色のこころの種を嵌め込んだ。
 ――プリキュア! オープンマイハート!
 眩い光と共にキュアムーンライトに変身したゆりは、左胸の薔薇の形をしたエンブレムをさっと撫でて藤色のマントを作り、空を飛んで横転する電車の前に立ちはだかった。
 これ以上進ませてなるものかと五両目と六両目の間に陣取り、両手で電車の進行を押し留める。十両編成の急行電車は弓矢の弦の様に弧を描き、右側の車輪が浮いた状態で動きを止めた。
「くぅ……ッ!」プリキュアと言えどたった一人で数十トン近い物体を留めておくことなど不可能だ。根の勢いに負け、貨車の傾きは一層強まって行く。
「力で駄目なら……! これでどう!?」
 キュアムーンライトは掌を通して浄化の力を送り込み、根を地中に押し戻す。反発する力を無くし、車両の傾きが徐々に緩やかになって行く。しかし、木の根は太く深く、ムーンライトの力を持ってしても戻しきることは敵わない。
「負けない……、絶対にここで食い止めるッ!」
 彼女の思いに呼応するかのように、掌の輝きが増し、素手だった左手に黒い手袋が纏われ、紅い髪飾りが現れる。薄紫一色だった掌の輝きに黒色のものが増え、浄化の力がより一層強まって行く。
 木の根の方が文字通り”根をあげ”、地中深くへと逃げて行く。横転寸前の十両編成車両は、辛うじて地面に車輪を降ろした。

「救急車は……、救急車はまだなの!?」
 逸る気持ちを必死に抑え、不安な気持ちを紛らわせるかのように、助けはまだかと落ち着き無く周囲を見回すムーンライト。横転した列車の上に、明道院学園中等部の制服を纏った少女が座っているのに気付いたのはその時だ。
 一体何故? 何時の間にあんな場所に? 困惑し言葉に窮するムーンライトをよそに、黄緑髪の少女は朗らかな声で彼女に問い掛ける。
「貴女、キュアムーンライト……よね? 物静かで思慮深い美人さんと聞いてたけれど、子どもみたいに取り乱すこともあるんだ」
「なんで私の名前を……」彼女が何者なのかは分からない。しかし自分の名を呼び、不敵で不気味な笑みを浮かべるこの少女が、自分にとって味方でないことは理解できた。
「いや、そんなことはどうでもいい。電車をひっくり返したのはあなたの仕業?」
 少女は不敵な笑みに、此方を小馬鹿にしたような表情を重ねて答える。「私じゃないわ。やったのは草木たち」
「何を馬鹿な。あなたでないなら誰だと言うの!」
「飲み込みが悪いのね。草木たちだって言ってるでしょう? 我が物顔で大地を踏みにじる人間に、植物たちが裁きの鉄槌を与えたのよ」
「ふざけるのもいい加減にしなさい。仮にそうだったとして、仕組んだのはあなたなんでしょう?」
「あぁ言えばこう言う、こう言えばあぁ言う……」少女はムーンライトの返答に飽き飽きした様子で、つまらなさそうに溜め息を着く。
「分かったわ、なら私のせいってことにしてあげる。それで、どうするつもり?」
 人をコケにするような態度と言動に苛立ったムーンライトは、胸の白い薔薇から「ムーンタクト」を呼び出して、貨車の上の少女に向けて突き立てる。
「今すぐ草木を元に戻しなさい。何の罪もない植物を、何の罪もない人々を襲うが為に利用するなんて、絶対に許さない!」
「やれやれ……聞いてた? 私の話」少女は額に皺を寄せ、見るからに不機嫌そうな表情を浮かべる。「やったのは草木たちであって、そこに私の意思は介在しないの。罪の無い人間? ヒトは自分勝手に繁殖と繁栄を続け、食物連鎖に逆らって他の生き物の命を理不尽に奪ってきた諸悪の根元。誰も彼も罪深き生き物でしょうが。
 それに、こんなところで悠長に話してて良いのかしら? 草木たちが動いているのは此処だけじゃないと言うのに。あれを見て御覧なさいな」
「あれ……?」
 促されるがままに街の方へと目を向ける。
 ムーンライトの目に映る光景は、どうにも理解し難い凄惨なものだった。地中から伸びる木の根が家屋や車を潰し、逃げ遅れた人々は蔦に絡め取られて身動きが取れず、保健所から逃げ出したであろう野犬の群れが逃げ惑う人々を襲っている。ここが自分が産まれ育った希望ヶ丘の街だと言うのか。
「何よこれ……! あなた、一体何をしたの!?」
「一々質問してないで、少しは自分の頭で考えてみなさいな。今あなたのすべきことは発生理由を突き止めることじゃ無いでしょう?」
「……」そうだ、驚いてばかりもいられない。自分はプリキュア・キュアムーンライト。この奇妙きてれつな状況を打開出来るのは自分たちだけなのだから。
 救急車のサイレンが丘の下からけたたましく鳴り響いてくる。この場は任せて大丈夫だろ。少女のことは気掛かりだが、今は人命救助を最優先にしなくては。ムーンライトは駆け付けた救急隊に全てを任せ、暴走する植物が蹂躙跋扈する希望ヶ丘の街へと飛んだ。
「そうそう。精々びゅんびゅん飛び回りなさい。それが徒労だったと解るまでね」

※※※

・AM.07:50

 私立希望ヶ丘総合病院。街で一番高いところに建ち、この地域で最も大規模であり、希望ヶ丘以外の市街からも連日多数の患者が訪れる大病院だ。
 特徴的なのはその大きさだけではない。この病院では全国でも珍しく屋上に「太陽光発電パネル」を設置しており、有事の際は予備電源として利用できるようになっている。普段は火力発電その他で賄えている為、国からの節電要請への対応や経費削減にしか使われていないのだが、昨日のN市発電所事故の報を受け、施工業者の作業員が点検整備にと院内を忙しなく回っていた。
 明道院学園・学長の孫娘にして、生徒会長でもある明道院いつきは、病室で横たわる兄さつきの前に座り、心配そうな面持ちで彼の顔を見つめていた。
 明道院さつきは本日早朝の稽古中、突如蒼い顔をして倒れてしまった。常人ならいざ知らず、さつきは以前から大病を患っており、ほんの数ヵ月前に退院した病み上がり。また病気が振り返したのではないかと不安がるいつきが、周囲の声を遮って無理矢理病院に搬送してしまったのだ。
 しかし結果はただの貧血。休んでいれば直ぐに良くなるということでひとまず休ませてもらっているのだが、いつきの早とちりはその場に居合わせた門下生たちの混乱を無用に煽るだけであった。
「……まったく。大袈裟だなあ、いつきは。たかが貧血で救急車を呼ぶなんて、門下の人たちが不安になるだろう?」
「……」
 さつきはベッドの上から辺りを見回し、不愉快そうな表情を浮かべる。「白いタイルが敷き詰められた天井、街の様子が一望出来る窓、消毒液臭い空間……。変わらないな、ここは」
 彼が体を休めている病室は、何の因果か幸か不幸か、嘗て自分が入院していたところと同じ場所。病気から解放されても、そう簡単には離れられない。さつきはこれも運命なのかと溜め息を吐いた。
「ごめんなさい、お兄様……。ボクが思慮に掛けていたばっかりに、こんな……」
「何、いつきが気にすることじゃない。少し横になれば良くなるってお医者様も言っていただろう。治らないんじゃないかって怯えていた時に比べれば、なんてことはないさ」
「でも……」
「まあ、それだけ深刻そうに見えたってことなら、大人しく休ませてもらうとするよ。無理してまた病院送りになっちゃあかなわないからね」
 暗い顔をして俯くいつきを気遣ったのか、さつきは大袈裟に笑って布団を被り、目を瞑る。いつきは今一度謝った上で病室を後にした。

「……悪いことしちゃったな」
 肩にかかるくらいに伸びた栗色の髪を弄って溜め息を一つ。医者からは完治したと言われているし、事実病み上がりにも関わらず調子はすこぶる良い。だからこそたまの不調が気になって救急車を呼んでしまい、挙げ句嫌なことを思い出させてしまった。行為そのものも勿論だが、兄の回復を信じきっていない自分に腹が立ってしようがない。
 待合室に歩を進め、自販機で紙パックの苺ジュースを買い、ストローを刺して茶色の長椅子に腰を降ろす。飲み物を口に含んで一息着いた所で、いつきは自身の隣に黄緑色の髪の女の子が座っているのに気が付いた。
 自分と同じか、それより少し小さめの背丈に、纏っている制服から同じ学校の同級生ではないかと推測するが、見覚えが全くない。季節外れの転校生だろうか。そんな噂は耳にしていないし、何より着ている制服の端々に解れや皺がある。どう見ても新品のそれではない。
 そもそも、彼女は何処から現れ、いつ自分の隣に座ったのだろう。自販機前の長椅子に座る前、何の気無しに周囲を見回したが、そこに少女の姿は無かった。気落ちしていたのは確かだが、上の空になるほど思い詰めてはいない。前を通りかかったのなら目で解るし、横から座ったのなら耳で感じ取っていた筈なのに。
 一体彼女は何者なのか。繁々と見つめるいつきの視線が気になったのか、少女は飲んでいたオレンジ色の容器を横に置き、いつきと向かい合った。
「……何か用?」
「いや、用というか、その……」
 考えが纏まらない内に話し掛けられ、不意を突かれて言葉が出ない。そのうち少女の方が興味を無くし、視線を外して飲み物の容器に手を掛ける。
 このままではまずい。何故そう思ったのかは定かではないが、いつきは彼女の興味を引くべく、無理矢理に言葉を捻り出した。
「まだ朝も早いし、明道院学園《うち》の生徒が病院に何の用があるのかな……って。あ。あぁ、ごめんね。余計なお世話だったかな」
「いいわ」少女は素っ気なく言葉を返し、飲み物を口に含む。「別に用なんて無いもの。ただ、ここからならこの街が全部見渡せるってだけ」
「この街を……見渡す?」
「えぇ。我が物顔で平和を享受する人間たちが、恐怖と苦痛に慄く様を鑑賞するには、ここが一番都合が良いもの」
「……ごめんなさい、意味がその、分からないんだけど」
「分からない? ならここで一緒に見守りましょう。もうじき始まるわ」
 少女は楽しげに口元を吊り上げ、いつきを待合室の窓の前へと手招きする。
 通勤通学で行き交う学生や会社員、連れだって学舎に向かう通学団の子どもたち、それを優しく見守る近所の主婦たちに、開店準備を進める商店街の人々。いつもと変わらぬ日常の風景が今、地中から伸びた木の根と蔓によって、いとも容易く叩き壊された。
 最初は、駅前通りの一区画のみだった。しかし逃げ惑う人々を絡め採った植物たちは、彼らの精気を吸い取って更なる生長を遂げ、被害規模は瞬く間に拡大してゆく。
「何だよ……! 何なんだよ、これ」
「面白いでしょう? 繁栄を謳歌し、他の生き物を蔑ろにしてきた人間が、その生き物たちにしっぺ返しを喰う様は。いい気味だわ」
「ちょっと待ってよ。その言い方じゃあまるで」
「私がやった、と?」少女は冷たい目で眉一つ動かさずに答える。「だったら何?」
「何だっていい、今すぐ止めて! こんなことをしたら沢山の人たちが……!」
「だから、それが何? この街の動植物たちはそうなることを望んでる。私に止める理由は無いわ」
「そんな無茶苦茶な……。君は、それでも人間なのかッ」
「勿論違うわ」いつきの問い掛けに、少女は薄すら寒い笑みを浮かべて答える。「私はプリキュアよ、明道院いつきさん。貴女と同じね」
「プリキュア……だって!?」
 待て、待て。何故ここでプリキュアが出てくるのだ。予想外過ぎる返答に、いつきは言葉に窮して押し黙る。プリキュアを名乗る少女は驚いて二の句を継げないいつきに興味を無くし、落胆の溜め息を漏らした。
「これくらいでいちいち驚くだなんて……。貴女と一緒じゃ観てたってつまらないわ。やることは他にもあるし、この辺で失礼させてもらうわね」
「待って……! このまま逃がす訳には」
「無駄よ。変身していない貴女なんかに、私は絶対捕まらない。物事には優先順位ってものがある。頭を冷やしてよく考えて。貴女がいの一番にすべきことは何? 私との鬼ごっこ? それとも、逃げ惑う人間共を救うこと?」
「くぅ……ッ!」
 確かに、今ここで彼女を踏ん縛って騒ぎが収まる保証は無いし、動植物が人々に与える被害は後回しにしておけるような代物ではない。言いなりになるのは悔しいが、プリキュアである以上は人命救助を最優先にしなくては。
 いつきは鷹のような鋭い目付きで少女を睨み付け、
「君の思い通りにはさせない。この街はボクたちの手で護ってみせる」
「そう言うと思った。四人全員で来るといいわ、皆私ひとりで蹴散らしてあげるから」
「……ッ!」
 反論する間も惜しいと、少女から踵を返して駆け出したいつき。
少女は彼女を追うことはせず、窓を開け放して桟の部分に右足を掛けた。
「あれがこの時代のプリキュア、ね。ヒトなんかに肩入れして、馬鹿みたい」
 少女は何の躊躇も無く三階の窓から飛び降りて、そのまま何処かへと消え去った。

(続く)
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