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 ←これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十五年五月号 →Journey through the Decade Re-mix 第八話 「超モモタロス、参上! 鬼ヶ島の戦艦」 二両目
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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(2)

Journey through the Decade Re-mix 第九話 「警告:カブト暴走中」 フェーズ1

 ←これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十五年五月号 →Journey through the Decade Re-mix 第八話 「超モモタロス、参上! 鬼ヶ島の戦艦」 二両目
 現在執筆中の「電王」編があまりにも進まないため、先に「カブト」編スタートにすることになりました。「電王編」の「あと」のお話になりますが、本作はそちらを読んでいなくても問題なく成立する話となっております。

 一応、電王編の続きも執筆中です。いつになるかは分かりませんが、次回の更新分は「電王編・その2」になるかと。

 なお、本作掲載の折にカテゴリー表記を見直しました。(1)もしくは、(2)の作品目次をご覧になられる際、もう一方のまとめにも飛べるように編集しましたのでご確認くださいませ。

・「Journey through the Decade Re-mix」(本編スタートから剣の世界まで)
・「Journey through the Decade Re-mix(2)」(555の世界編~)





「仮面ライダーカブト」。
 平成ライダー作品全体を見て、どの作品がどれだけ好きか面白いかをランク付けするのはとても難しいのですが、「キャラクターのカッコよさ」という一点に限って、自分は本作を一番に推したいと思います。

 登場するマスクド・ライダーのデザイン、CGを巧みに利用したクロックアップ空間演出、「ライダーキックと言えば飛び蹴り」という常識を覆したスタイリッシュな「回し蹴り」に代表される、ライダーたちの各種必殺技、天道総司を演じた水嶋ヒロ氏をはじめとしたイケメンライダーたち……。お話や作品の流れによる優劣はあるものの、未だに「カッコいい」仮面ライダーという点に関してはカブトの上を往く物は出てないんじゃないかなあ、と思います。後の電王にも繋がる過剰でシュールなギャグや、外や中の事情で二転三転し、風呂敷をまとめきれなかった作劇、ワーム関連の設定の変遷などは正直微妙ですが、そこはまあ置いておくとして。

カブトと言えば超加速・クロックアップ」、「そんなクロックアップが解除出来なくなり、現実世界から取り残されたらどうなるか」を描いた原典におけるカブトの世界編。一応そのあたりをベースにしたお話になりますが、『クロックアップ』と言う能力に対し、他世界のライダーはどう戦うのか? もちょこちょこ書き足して行きたいなあと。


※ 本世界にて描写される『マスクド・ライダー』、『クロックアップ』、『ワーム』の設定は、本作を書くに当たって筆者が創作した架空のものです
 公式の物とは大きく異なりますのでご了承ください。





 夜明け前のように薄暗く、真冬のように寒い道を、厚手のトレンチコートを纏った男が歩いて行く。人通りは疎らで、時折吹く空っ風が枯れた草木をかたかたと揺らす。ここは日本領東京国。七年前に落下してきた隕石のために、日本本土から隔絶された独立国だ。

 東京都・渋谷区周辺に落下した巨大隕石は関東圏一帯に甚大な被害を及ぼし、数百万人の命を無慈悲に奪った。首都東京は一瞬で壊滅し、その機能を失って大阪に遷都、東京と関東地方の多くの区域は独立国として隔離され、出入国を著しく制限されている。
 隕石が巻き上げた土砂は太陽光を妨げる程膨大であり、東京の地に日中でもコートが手離せない環境を産み出した。四季は失われ、作物は枯れ果て、四六時中の寒さと食物に乏しい環境のせいか、更に多くの人々が死に、東京国に残された住民の数は十万人を切っている。
 国から莫大な支援金を提供されているも、東京国内で発生した大量の瓦礫は七年という歳月が経って尚撤去し切れておらず、残された住民たちは劣悪な環境での暮らしを余儀無くされている。

 ここでの生活に耐えかね、東京国を出て行かんとする人々は大勢居る。テンガロンハットにトレンチコートを纏った異様な男――、生簀《いけす》次郎もそうした難民の一人だ。築地の市場で板前としてならしていたのも今や昔。この国の過酷な環境に見切りをつけ、他県に職を求めたのだ。
 生簀が訪れたのは東京国国境数か所に設けられた「出入国管理局」。本土とこの国とを結ぶ唯一の玄関口だ。ここを通らずに出国する者はいない。密出国は法律で禁止されており、発見されればその場で死罪となるからだ。

 受付を終えた生簀は留置所の接見室らしき個室に通され、ガラス戸越しの係官に座るよう促される。「必要書類を」と請われ、鞄の中から十数枚の書類を取り出して、机の下の回収スリットに滑り込ませた。
 係官は生簀の書類を一枚一枚丁寧にチェックし、手元のパソコンに記載されたデータとの齟齬《そご》が無いか入念に確認を行う。これが終了するまでに10分。不備が見つかれば修正と確認とで更に倍の時間がかかり、万が一偽造があればその場で刑務所送りとなる。

「国民ナンバー008917・生簀次郎さん。東京国エリアCにて板前をされていらっしゃる……。出国の理由は現在の店を畳み、つてのある大阪都のお店で働くからと。記載されている内容に相違は?」
「ありません」
「結構。パスポートを発行しますので、もう暫くお待ちください」

 書類には何の不備も無かったようだ。生簀の疲れ切った顔に溜め息が漏れる。ガラス戸の向こうで印刷機がかたかたと音を鳴らし、彼の顔写真入りのパスポートが発行された。
「……手続きはこれで終了です。大阪行きのバスは十番停留所にて発車しますので、お間違えの無いように」
「ご丁寧にどうも。お世話様です」
「いえいえ。良い旅を」
 係官に一礼し、差し出されたパスポートに手を伸ばす生簀。だがその瞬間、彼は伝え忘れていた事項を思い出し、パスポートを引き上げた。
「あぁ、そうだ。最後に少しだけ、質問をさせていただいても宜しいですか?」
「何でしょう」
 係官は時計の長針のようなものがついた機械に、円状の溝がついた赤色のレンズを取り付けると、きょとんとする生簀の前に置いて、彼の左目と合わさる様に調整した。スイッチを入れて機械の針がメトロノームの様に一定のリズムで左右に振れる。

「これから出国になるわけですが、以前の店に未練は?」
「ありません。客足も途絶え、借金まみれになった家屋に……、未練など」
 針は一定のリズムを刻んで左右に揺れる。変化無し。赤いレンズに瞳孔の収縮の様子が示されるが、そちらにも不可解な面は見受けられない。
「成る程。ですが出国は大きな決断です。ご家族様も大変心配なされたのでは?」
「無用なことです。家内とは渋谷隕石の際に死別。一人娘はどこの馬の骨とも知れぬ男と蒸発しましたので」針の振れ幅が早くなったが、特筆すべき点はない。立ち行ってほしくない質問に怒りを覚えただけだ。
「非礼をお詫びします。では次の質問を」
「一体いつまで続くのです? 早くしないと大阪行きのバスが行ってしまうじゃありませんか」
 針の揺れがより一層激しくなる。バスに間に合わなくなる焦燥と、意図の読めない質問責めの為だ。係官は苛立つ生簀を御し、これで最後だからと彼の話を遮った。

「生簀さんあなた確か、『黒包丁』を有する『闇の料理人』でしたっけか。そうなるまでに多くの人々を蹴落として来たのでしょう。あなたの命を奪いたいと思う人も沢山居た筈だ。彼らに対して、何か思うことは?」
「それは、その。あの、その……ですね、うご、うごごごごご」
「?」

 その途端、生簀は苦悶の表情を浮かべ、机に突っ伏してしまう。針は左に素早く右に遅く振れ、瞳孔が異常な収縮を繰り返している。感情の爆発だけで済まされる代物ではない。
 係官の顔から笑みが消える。奴は間違いなく『当たり』だ。まさか自分の勤務中に出くわすとは。彼はホルスターに提げたソードオフ・ショットガンを抜くが、引き金を引くより早く、彼の胸を鈍色に輝く鋭利な刃物が貫いた。
 物言わぬ人形となり、ガラス戸の前で突っ伏す係官を尻目に立ち上がる生簀。彼は苦悶に引き吊った自身の顔を自らの手で千切って放り、腕を回して背中の皮を掴み、左右に引き裂いた。

 中から現れたのは、赤塗りの髑髏にラジオのアンテナめいた触角を生やし、肩口から腰まで伸びた黒いマントを纏う奇怪な生き物。彼らこそ、東京国のみならず、全人類の脅威と認識される地球外生命体・《ワーム》である。
 黒マントのワームは個室のドアを砕き、ロビーにて順番を待つ人々の前にその異形を見せつける。人類の脅威を目の当たりにした東京国民はなすすべなく逃げ惑い、大小の悲鳴を上げた。
 興奮した牛の如く、大挙して出口に押し寄せる人々の前に、蝶蝶の蛹にヒトの手足がついた緑色の異形が立ちはだかる。成体配下の幼体ワームの一団だ。人々を確実に喰らうだけでなく、管理局を破壊して自分たちの生活圏を拡げようとしているのか。

 だが、出入国管理局がこの化物を国外に出したことは一度もない。かなりの数が大挙して攻めてきているが、こうした事態は過去にいくらでもあった。
 何故、ワームを国外に出さないでいられるのか? 奴らの存在を感知し、殲滅する組織が存在するからだ。組織の名は「ZECT」。ワームの脅威に対抗すべく国連によって創設された、専門の特殊部隊である。
 ある者は建物上部の窓ガラスから、ある者は地下通用口から、はたまた局庁内部の隠し扉から。蟻を模したヘルメットの武装兵士たちが建物の中に乗り込んできた。各々、蟻の尾を模した機銃や、カッターめいた剣を腕に装備している。ZECT所属の兵士・ゼクトルーパー部隊だ。

「先行突入部隊、状況を報告せよ」
「こちら02小隊。施設内には成体が一匹、幼体が十五匹。『脱皮』の兆候を示す蛹体は確認できません。指示を」
「了解。マスクド・ライダーの現着までに一匹でも多くの蛹を処理せよ。成体は無視して構わん」
 ――この建物に居合わせた全ての人々に次ぐ。我々ZECTはこれよりワームとの戦闘状態に入る。あなた方の身の安全は保障できない。命が惜しくば直ちに物陰へ退避せよ。
 ゼクトルーパーによる無慈悲な勧告が建物内に響く。彼らには一般人を護る気も義務も無いのだ。

「勧告終了。各員、一斉掃射!」
 ゼクトルーパーの右腕の機銃が火を噴き、逃げ遅れた哀れな人々をも巻き込んで蛹ワームを撃つ。彼らの銃弾では蛹の強靭な外殻を貫けないが、強い衝撃を与え続けることで中の不安定な体組織を破壊できる。

 七年前、渋谷隕石の中に潜んで地球にやって来たワームは、覚醒間も無く隕石の衝突から生き延びた人々に襲いかかり、次々と捕食していった。ヒトはワームにとって非常に栄養価の高い食物であり、精力剤めいた効力を持っているからだ。
 卵から孵ったワームは、人間の骨格のような体を緑色の粘液で覆って蛹体に変質し、成体になるまで無差別に人間を喰らう。この時点で大人数名を蹴散らす程の腕力を持つが、人間を捕食する以外の思考は持ち合わせていない。外見だけでなく、思考パターンも虫と似通っているようだ。
 撃たれた蛹のうち何匹かが、体内から緑の血飛沫を上げて突っ伏した。強力な衝撃で内部崩壊を起こしたのだろう。だがそれも数多くの中の数匹だ。ダメージを気にせず突き進む蛹たちがゼクトルーパーに襲いかかる。彼らは左手のブレードを構え、格闘戦に備える。

 ワームという存在が東京国を本土から隔離させたのには二つの理由がある。一つは捕食した人間の外見及び記憶データをコピーし、その人物に成り代わる能力を持つためだ。ワームの“擬態“は非常に精巧であり、たとえ親類であっても外見で判別するのは不可能に近い。
 しかし、奴らとてヒトと全て同じではない。擬態した者の記憶を読むことしかしないワームには、知覚したデータに「感情移入」することが出来ないのだ。パソコン上で描画したイラストをUSBに保存し、別のパソコンで起動しても、それ以前の作業行程を再現出来ないのと同じだ。

 一つ目の問題は先の判断テストによって容易に判別でき、然程脅威にはなっていない。問題は二つ目だ。脱皮を繰り返して成体となったワームには、ヒトの手に負えない恐るべき能力が備わっている。
 蛹とゼクトルーパー。二者の接近乱戦となった所で、黒マントの成虫ワームの体が不意にぶれる。それを知覚出来た者は誰も居ない。再び成虫ワームが現れる頃には、建物内のゼクトルーパーたちは皆、躰の各所を切り裂かれ突っ伏していたからだ。

 二つ目の脅威。それはワームの体内を駆け巡る未知の物質『タキオン粒子』を噴射することで、あたかも時間が止まったかのような早さで動き回る《クロックアップ》能力だ。クロックアップしたワームには人間の持つどんな武器も通用しない。
 弱点といえば、血中粒子残量が少なくなると、新たに粒子が精製されるまでクロックアップを使えなくなるというくらいか。硬い外殻を脱ぎ捨てて生身の体となったワームからすれば、たかだか十数秒加速出来ないだけでも死活問題である。
 攻撃面以外での弱点となると、粒子の放出と呼吸を阻害するためか長時間水中に潜ることは出来ず、羽根があっても長い距離を飛ぶことは叶わない。翼で風をつかまえて飛行するには自重がありすぎて、飛ぶためだけに血中粒子を大量に消費しなくてはならないからだ。

 先の一発で、二十数名居たゼクトルーパーの殆どが沈黙。息があっても立てない者も多い。邪魔するものが居なくなり、ワームは悠々と物陰に隠れた東京国民に狙いを定め、食い殺さんとにじり寄る。
 抵抗できない彼らは俯いて震えるか、天を仰いで神に祈ることしか出来ない。絵に描いたような最悪の事態だ。しかし思い出してほしい。ZECTは東京国建国からこれまで、一匹足りともワームを本土に上陸させたことはないのだ。それは何故か。

 ――そこまでだ、ワーム共!
 出入り口を突き破り、二台のバイクが管理局に押し入ってくる。一人は左目に伊達政宗めいた眼帯をつけ、異様な雰囲気を醸し出す男、もう一人は顔立ちに若干の幼さを残す青年だ。
「成体一匹に蛹七匹か……、使えない奴らだ、手こずりやがって」
「そんなこと言っている場合ですか、隊長。速やかにワームを始末し、負傷者の救護に向かわないと」
「そうだな、その通りだ。準備はいいな、アラタ」
「勿論」

「隊長」と呼ばれた男はブレスレットの付いた右手を空にかざし、「アラタ」と呼ばれた青年は腰に『ベルト』を巻いて左手を天に掲げる。
 ――来いっ、ザビーゼクター・ガタックゼクター!
 彼らの求めに呼応するかのように、手のひらサイズの蜂型の機械とクワガタムシ型の機械が空間を切り裂いて現れ、彼らの手のひらに収まった。隊長はそれを右手のブレスに、アラタはベルトのバックルに勢いよく差し込んだ。

 ――HENSHIN!
 二人の体が六面体めいた光に覆われ、重々しい鎧に包まれて行く。隊長は蜂の蛹を模した戦士に、アラタはクワガタの蛹を模したそれを纏った姿に変化した。
 これこそ、ZECTが開発した対ワーム用強化パワードスーツ、マスクド・ライダーだ。蜂のそれは二号機・ザビー、クワガタのものは三号機・ガタック。高い戦闘能力を誇る対ワーム戦の切り札である。

「俺は雑魚共の駆除に回る。貴様は成虫を叩け、絶対に逃がすな」
「はいッ」
 ザビーの言葉に従い、黒マントのワームと対峙するガタック。両肩口に仕込まれた機関砲が目にも止まらぬ早さで撃ち込まれて行く。機関砲を発射しつつ前進し、ワームとの距離を詰める。黒マントは抵抗出来ずに追い詰められ、建物の壁を背負って身動きが取れなくなってしまう。
 好機! ガタックは砲撃を止め、右拳を握ってワームに飛び掛かった。しかし敵にはクロックアップがある。追い詰められた黒マントは、超加速でガタックの背後に回り込み、無防備な背中に手痛い一発を打ち込んだ。
 黒マントの反撃はガタックはおろか、蛹たちと格闘するザビーにも飛び火する。不意打ちを食ってよろけたザビーは、その隙を突かれ、取り囲む蛹たちに滅多撃ちにされてしまう。

「た、隊長!」
「おのれ……、失態だぞアラタ! 貴様、始末書だけで済むとは思うなよ!」
 怒気を強めて叫んではいるが、破れかぶれになった訳ではない。少なくとも窮地に陥った人間のそれとは違う。
「この虫ケラが……、まとめて焼き殺してやる」
 ザビーはベルトの背面にマウントされた蜂の巣状のグローブを取り出して右手に嵌め、大きく振り被る。グローブ外面の六面体が妖しく点滅し、『KILL』の文字を描いて赤く光る。発光が最高潮になったところで、集束されたエネルギーを蛹の鼻先に放った。

 グローブに刻まれた六面体のうち一つが破裂し、ダイナマイトの爆発の如き衝撃が建物内に響く。蛹の背中が網焼き蛤のようにぱっくりと開き、緑黒い体液を噴出させて息絶えた。
 これぞ、マスクドライダー・ザビーの持つ特殊武装、『ハニーボマイザー』だ。無反動砲の十数倍に匹敵する爆発力を拳に集中させ、ワームを外殻越しに始末できる武装である。

 ザビーは残りの六匹の頬や腹に燃える拳を打ち込み、その全てを肉塊に変える。雑魚を片づけたザビーは、黒焦げになって使えなくなったグローブを脱ぎ捨て、ガタックの頭に拳骨を打った。
「余計な手間を掛けさせてくれたな。あれくらいのワーム、自分一人で処理出来んのか」
「申し訳ありません隊長、あれだけ粒子を消費して、まだクロックアップを使えるだなんて」
「言い訳は始末書に記せ。今度は確実に仕留めるぞ、『キャストオフ』だ」
「は……はいっ!」

 ザビーは右手のブレスの蜂の羽根を捻り、ガタックはクワガタの顎を右側一杯にまで倒す。二人の装甲が一気に盛り上がった。
 ――キャストオフ!
 掛け声と共に装甲が弾け飛び、摩擦熱によって燃え尽きる。堅牢な装甲を脱ぎ捨てた先には、より甲虫らしいフォルムへと変化したザビーとガタックが立っていた。
 ZECTの開発したマスクド・ライダーシステムには、戦況や目的に応じた二種の形態が存在する。一つはこれまでの形態・マスクドフォーム。成虫ワームの攻撃ですら通用しない分厚い装甲が売りだ。

 二つ目が、キャストオフによって装甲を脱ぎ捨てた、ライダーフォーム。防御性能が著しく低下し、囲まれれば蛹ワームたちにすら倒されかねないが、それを補って余りある能力を持っている。
 マスクドフォーム時、装甲の下に隠れたベルト右腰のスイッチを叩くことで、ライダーフォームはワームと同じ『クロックアップ』状態を発動することが出来る。マスクド・ライダーが対ワーム用の兵器として運用されている理由がこれだ。

 ワームの造り出したクロックアップ空間に二人のライダーが乗り込んだ。何もかもが止まって見え、時間が凍りついたかのような感覚に襲われた。最早黒マントに逃げ場は無い。ザビーの拳とガタックの鋭い蹴りが、ワームの体力を削り取って行く。
「一発で仕留めるぞアラタ! 俺に呼吸を合わせろ!」
「了解!」
 キャストオフの時と同じ要領でゼクターに触れ、ザビーは右手に、ガタックは両肩についた一対の剣にエネルギーが集束されて行く。

 ――ライダースティング!
 ――ライダーカッティング!
 光輝く一対の剣がワームの足の腱を裂き、膝をついて無防備となった所にザビー右腕の、鋭く伸びた毒針が襲う。針の先から注ぎ込まれた高純度のタキオン粒子は、黒マントの体を内部から焼き付くし、自壊による四散を促した。
 ワームの四散と共にクロックアップ空間は消失し、建物内に時間が戻ってくる。ゼクターを取り外して変身を解いた二人は、辺りを見回して今回の被害を省みる。

「ゼクトルーパー三十名のうち十五が死亡、七が軽傷、八が重傷。東京国民は……死傷者十ってところか。アラタ、指令室に連絡取って生存者を病院に搬送しろ。死人の国民登録ナンバーをチェックして、リストから外してもらうのも忘れるな。奴らに利用されると厄介だ」
 アラタ隊員は何も言わず首を縦に振る。彼の冷徹な態度に疑問を覚えたが、反論したところで無意味であると理解しているからだ。

 残された人々は病院に搬送され、ワームの死骸は焼却処分とされる。体内に残されたタキオン粒子が炎と化学反応を起こし、緑色の硝煙を上げてめらめらと燃え上がる。
 防犯用カラーボールのように壁にこびりついたワーム体液は洗剤で擦っても取れないため、全取り替えか上塗りで誤魔化す他無い。本施設は政府直営のため国が修繕費を払うのだが、一般家屋などで同じことが起きると目も当てられない。

「なるほど、これがワームにマスクドライダーシステム……。この世界の仮面ライダーのやり方か」
 皆が甲斐甲斐しく作業する中で、一人焼却に参加せず、手持ちのトイカメラで撮影を行うゼクトルーパーが居た。彼は重々しいヘルメットを脱ぎ捨て、建物の裏口から去って行く。
 彼の名は門矢士。世界の崩壊を防ぐため、自分の失われた記憶を取り戻すため、仮面ライダーディケイドとなって世界を旅する青年だ。


◆◆◆

 日本領東京国・エリアH。爆心地である元・渋谷から遠く離れ、東京国民の約三割が居住するこの町に『この世界での』光写真館は在った。門矢士は棄てられていた二輪車をアタックライド・マシンディケイダーで常用バイクへと変化させ、拠点たる写真館へと向かっている。
 帰る途中何人かの人々に出くわしたが、誰も彼もが分厚いコートに身を包み、そこから伺える表情はどこか暗く、不気味に淀んでいる。渋谷隕石によって冷え込んでしまったのは、東京国という環境だけではないらしい。
 門矢士は赤煉瓦造りの高そうな建物の前で乱雑に車を停め、呼び鈴もノックも無しにそこへ入る。外観こそ立派だが、中身はいつもの写真館。中も変われば良いのにと嘆くべきか、幾ら世界を越えても変わらないものが有ることを喜ぶべきか。

 玄関で靴を脱ぐと、居間の方で夏海たちの話し声がする。来て早々客にありつけるとは運が良い。いや待てよ。この国の住民にわざわざ写真を撮りに行く余裕があるものだろうか。そしてもう一度足元に散らばる靴を見やる。自分が今脱いだのと同じものが、もう一足転がっているではないか。嫌な予感がする。廊下を駆けて居間に飛び込んだ士が目にしたものは、仲間たちと親しげに談笑する『自分自身』の姿であった。

「おいおいおい、待て待て待て! 何なんだ、何なんだよお前は!?」
 士は眼前の「自分」の奥襟を掴み、左右に激しく揺する。夏海たち光写真館の面々は一拍置いてこの怪異に驚きの声を上げた。
「つ、つつ、士君が……ふたり!?」
「お前、ホントは双子か何かなのか!?」
「ンな訳あるか! 記憶喪失だからそういう可能性があるのは否定出来ないが……。これはそういうものとは違うだろ!」
「じゃあ何だって言うんです」
「それは……」
「人間に擬態して本人に成り代わろうとする怪物・ワームって奴さ」
 士に代わり、眼前の青年が不敵に笑う。「擬態したワームはオリジナルを付け狙い、亡き者にして入れ替わる。おたくもそのクチなんだろう? 何処で俺に擬態したか知らないが、良く出来てるな」
「勝手なことをいけしゃあしゃあと……。ユウスケ、夏ミカン! 何ぼさっとしてんだ、早くこいつを叩き出せ!」

「そんなこと言われても……」
「なぁ?」
 鏡写しにしたように瓜二つな二人を目にして、夏海たちにどちらが本物かなど分かる訳がない。今までの話が本当ならば、むしろ自分が本物だと声高に主張する方が怪しいではないか。二人は肩を竦め、無理だと匙を投げる。
「見苦しいぜ偽物野郎。必死になればなるほど、自分が偽物ですと言うようなものだ。酷でェ劣化だぜ」
「なんだとこの野郎!」
 激昂した士は眼前の青年に頭突きを喰らわせ、倒れた所を馬乗りになって両の拳を叩き込む。
「調子に乗ってんじゃねぇぞ手前ェ!」
 しかし彼も負けてはいない。前蹴りで隙を作り、取っ組み合いに持ち込んだのだ。コピーと言えど力自体は完全に互角。切り崩すことは敵わない。

 門矢士同士の戦いは居間全体に波及し、フローリングの床にヒビが生じ、食器棚のグラスが割れ、テーブルの上のポットが宙を舞い、熱湯を被ったユウスケが悲鳴を上げる。状況が飲み込めず困惑していた夏海だが、遂に堪忍袋の緒が切れた。

「二人とも、いい加減にしなさい! 光家秘伝・笑いのツボ!」
 両手親指を立てて構えた夏海は、取っ組み合う士たちの間に割って入ると、彼らの拳を霞めて親指を彼らの首筋に滑り込ませ、鍵を捻るように押し込んだ。身体中に痺れが走り、二人の男が居間のカーペットに倒れ込む。
 しかし、ここで押した夏海本人にも不可解な現象が起きる。二人の士のうちひとりが、真顔で大粒の涙を流し出したのだ。押し違えたかともう一人の方へと目をやるが、そちらはいつものように不気味な顔で笑っている。ならば何故こうなるのか? 答えは明らかだ。

「よくやったぞ夏ミカン、偽者がどっちか……これでハッキリしただろう」
 ワームが擬態で読み取れないのはヒトの心だけではない。体組織が人間とは違う以上、生理的反応を忠実に再現出来ないのだ。
「どうだ偽者野郎、これでもまだ本物だって言い張るつもりか?」
「……くうッ」士と同じ顔の青年は着の身着のまま窓から身を乗り出し、寒風吹き荒ぶ街中へと逃げて行く。虚を突かれ、逃走を許してしまった士は、怒りに目を血走らせ、偽者の後を追った。

「この野郎……、待てッ待ちやがれってんだ!」
「士君、早すぎます……。置いてかないで……」
 常人の三倍はあろうかという異様な脚力の青年に、士と夏海は見失わずについて行くだけで精一杯。なお小野寺ユウスケは熱湯による火傷が後を引き、この追走劇には不参加である。

 寒気を遮断するドーム状の堅牢な住宅密集地を抜け、夜の歓楽街かのようにきらびやかで猥雑な光を放つ商店街を追い越し、人気のない袋小路に差し掛かった所で、偽者の足がぴたりと止まる。我武者羅に逃げ続けてとうとう追い詰められたのか? いや、そうではない。
 士の偽者は本物と夏海が追い付いて来たところで、右手をさっと振り上げ、ぱちんと指を鳴らす。どちらに反応したか定かではないが、塀を乗り越えて現れた十数体の蛹ワームが士たちをぐるりと取り囲む。
 彼は逃げていたのではない。士たちをこの場所に誘い込んだのだ。

「士君! これって……」
「今までの罵倒含めて全部狩りの為の罠だったってことか。慎重というか、臆病というか……」
「そんなこと言ってる場合ですか! なんか囲まれちゃいましたよ!?」
「安心しろ。こんな蟲共なんぞ速攻で駆除してやるよ。俺に楯突いたことを後悔させてやる」

 ――変身
 ――KAMEN RIDE『DECADE』!
 士が変身したのを見計らい、偽者は振り上げた手を一気に降ろす。それを合図と取ったか、蛹たちが一斉に飛び掛かって来た。ディケイドは夏海に自分から離れないよう耳打ちすると、ライドブッカーをガンモードに組み替えると、円を描くように回転し、ワームたち全てに銃弾を撃ち込んだ。
 出鼻を挫き、散らしはしたが、ブッカーの銃弾程度では蛹の外郭は貫けない。ディケイドは直ぐ様ブッカーをソードモードへと組み替え、いつでも夏海を守れる位置を維持しつつ、ワームたちに斬りかかった。

 太い鉤爪を備えた蛹二体がディケイドに襲い掛かる。彼は横蹴りで一体を遠ざけると、もう一体の爪攻撃を刃で受け、そのまま塀に叩き付ける。背を打ってよろけたのを見計らい、ディケイドは刃を引き抜いて蛹の頭部に突き刺す。まな板の上でもがく鯛めいて頻りに手足を動かすが、やがて生気を失い、息絶えた。

 蹴りで引き離したもう一体が再び襲い掛かってきた。ディケイドは死んだ蛹の腕を一本もぎ取ると、人で言う喉元辺り目掛けて投げ付ける。堅く太い腕は蛹の外郭を貫き、一撃で絶命に追い込んだ。
 次は三体同時だ。ディケイドはブッカーを開いて「スラッシュ」のカードを抜き出し、ディケイドライバーのバックルに読み込ませる。

 ――ATTACK RIDE『SLASH』
 カードによって強化された刃で横並びの蛹三体を逆袈裟に一薙ぎ。ワームたちは上半身と下半身を分離させられ、緑色の血液を噴出させて即死する。
 今度は更に群れを成し、六体で三角形のような陣形を作って迫り来る。ディケイドはブッカーをガンモードに組み直し、一枚のカードをバックルに滑り込ませた。

 ――ATTACK RIDE『BLAST』
 カードの効力で何倍にも増幅・強化された銃弾が先頭の蛹が襲う。内部組織を外部から破壊されて肉の塊と化した蛹は、反動で後ろに吹き飛び、まるでボーリングのボールのように後続に接触。彼らを巻き込んで四散した。

 取り巻きの蛹たちを一瞬のうちに始末させられて激昂したか、士の偽者は体内の熱量で人間の薄皮を溶かし、異形の姿を露にする。
 ムカデに似た姿の成体ワームは、体内のタキオン粒子を放出し、袋小路の中で忽然と姿を消す。『クロックアップ』だ。知覚出来ない速さの前には、さしものディケイドも抵抗できず、攻撃を喰らうばかりだ。

 闇雲に剣を振るが、刃は何も捉えず空を切るばかり。仮面ライダーカブトのカードさえあれば対抗出来るのだが、それも今はディケイドの手には無い。万事休すか? 否、世界の破壊者ディケイドに手詰まりは無い。正攻法で駄目なら邪道で攻めるまでだ。
「舐めるなよ蟲野郎、目で追えないなら、動きを止めてやる!」

 ――FORM RIDE『KIVA BASSAH』
 キバ・バッシャーフォームに変身したディケイドは、足元から薄い水の膜を発生させ、袋小路一帯に行き渡らせる。疑似水中環境・アクアフィールドだ。
 アクアフィールドに足を踏み入れた者は動きを抑制され、殆ど身動きが取れなくなってしまう。それはクロックアップするワームとて例外ではない。水に足を取られ、逃げ出さんともがく様は、さながら罠にかかったゴキブリだ。

「今まで散々馬鹿にしてくれやがって、こいつで終いだ!」
 ――FORM RIDE『KIVA DOGGA』
 ――FINAL ATTACK RIDE『k-k-k-KIVA』
 キバ・ドッガフォームに変身したディケイドは、続け様にファイナルアタックライドカードを装填。右手に装備された鎚・ドッガハンマーの目が妖しく輝き、ワームの体を釘付けにする。
 指一本足りとも動かせなくなったワームに、重たい鎚を引き摺ったディケイドが迫る。彼は身動きの取れない成体ワームを鎚で左右に引っ叩き、雷のエネルギーを纏った鎚を振り降ろす。ムカデのワームは無慈悲に叩き潰され、体液の飛沫が塀を緑色に染めた。

「一丁上がりっと。さぁ、帰るぞ夏ミカン。……夏海?」
 戦いを終えて振り返るディケイドだが、そこに夏海の姿は無い。周囲を見回すディケイドの耳に、絹を裂くような女の悲鳴が届いた。

「夏海……? どこ行った夏海!」
 聴力だけを頼りに夏海の居場所を探る。彼女は塀を超えた先に居た。塀の先で待機していた蛹の増援たちにバケツリレーの要領で担がれていたのだ。
「あいつら……! どこに出荷するつもりだ、そいつを返せ!」
 慌てて夏海の後を追うディケイド。幸い距離は離れておらず、走って追いつける距離にあった。ほっと胸を撫で下ろすもつかの間、仮面ライダーの常人離れした聴覚は、彼女とは真逆の方向に、別の少女の悲鳴を聞き取ったのだ。

 夏海を蛹たちから奪い返し、直ぐ様後ろを振り返るディケイド。緑の化け物の上をたらい回しにされているのは同じだが、蛹共の鉤爪が彼女の首筋に向かって伸びている。最早一刻の猶予も無い。だが、今から真逆の方向に向かっても間に合わない。今度こそ万事休すか。
 だが、ここで不可解な現象が起きる。ディケイドたちとは真向いの方向の蛹ワームたちが、何の前触れも音も無く爆発四散したのだ。爆発はあっという間に周囲に広がり、一瞬のうちにかの少女を残して全てのワームが消え去った。
 仮面ライダーディケイドの驚異的な視力は、爆風の中にほんの一瞬何者かが潜んでいるのを見込んだ。赤と銀の体表に青の複眼を持ったそれは、こちらを見るような素振りの後、風のように立ち去った。

「士君、今のは……!?」
「説明は後だ。あの子連れて逃げるぞ」
 夏海をお姫様抱っこしている状態での戦闘は部が悪い。ディケイドは向かいの塀まで飛んでかの少女を回収すると、彼女を背負い、夏海をお姫様抱っこしたまま走り出した。女性とはいえ、二人の人間を抱えて走っていても、ディケイドに疲労による体のぶれはない。キバ・ドッガフォームの怪力を持ってすれば当然のことだ。

「ん……、んん……」
 負われて揺られるうち、背中の少女から微かに声が聴こえてきた。ディケイドは蛹たちが追って来ないのを確かめ、商店街に近い小さな公園で足を止めた。
「もう大丈夫……な筈だ。お前、なんでワームに襲われてたんだよ」
「……」
「命の恩人に対してゴアイサツだな。ヒトとじゃなきゃ話せないってか?」
 異形の姿に怯えているのかと、変身を解いて再び話しかけるも変化なし。どうやらコミュニケーション能力の根本に問題があるようだ。
「無表情にだんまりか。恩に着せる訳じゃないが、仮にも助けた人間にその態度はどうなんだ? あ?」
「相手は女の子ですよ、抑えて、抑えて」
 厳しい目付きと口調で威圧的に接する士を、落ち着いてとなだめる夏海。二人の様子を見た少女は、彼らの予想だにしない一言を口にする。

「誰も……」
「何だ? 何か言ったか?」
「助けてなんて……言ってないのに。余計なこと、しないでよ」
「何? そりゃあどういうことだ」
「言葉通りの意味よ。これ以上私に……関わらないで」
「おい、待てよ! どこに行く」
「私の勝手でしょ」
 少女は士の制止を振り切り、商店街の中へと姿を消す。いりくんだ脇道を使ったのか、あっという間に見失ってしまった。

「逃げられちゃいましたね……。わたしたちをワームだと勘違いしてるんでしょうか」
「いいや、あれは本物の死にたがりだ。ワームがどうかなんて関係無いと思うぜ。理由は分からんが……」
「これからどうします? 写真館に帰りますか?」
「当然、あの娘を追うぞ。この世界で俺がすべきことの手がかりになるかも知れん」

「そうは言いますけど、アテも無くどうやって追うんですか」
「アテならあるさ。そこに『立ち寄る』建前もな」
 士は足下に落ちていた桃色の財布を手に取り、中に入っていた学生証をまじまじと見つめる。少女の名は『天堂マユ』、東京国立高等学校の二年生のようだ。

※※※

 東京国・エリアD。爆心地渋谷を遠く離れ、東京国境程近いこの地域に、特殊部隊ZECTの研究開発施設はあった。
 この独立国には東西南北四つの国境が存在し、そのいずれにも入国管理所とZECT関連の施設が存在する。海路を除くそれ以外の侵入路は本土側に埋め立てられており、人の力で越えるのは不可能である。
 訓練場・隊員駐屯地・研究施設・指令本部。東西南北に建つZECTの施設には昼夜問わず常駐のゼクトルーパー隊員が待機しており、有事の際は他部署への増援要請を行う仕組みとなっているのだ。

 マスクドライダー・ザビーに変身する第一小隊の隊長は、あの戦いの後エリアDの開発施設へと赴き、職員たちからの結果報告を待っていた。薄暗い施設の中で彼の右目がぎらりと光る。
 彼は隊長としてゼクトルーパーたちを率いる立場にいながら、武具の研究開発員の責任者を兼任している。マスクドライダー・パワードスーツや、クロックアップの疑似再現は彼の提唱した理論が元になっているのだ。

「……作業は順調かね」
「勿論です」研究員のうち一人が答える。「ワームたちの発するタキオン粒子を吸収し、エネルギーに還元することでクロックアップを無力化する『クロックダウン』計画……。まさか、我々の代で開発出来ようとは」

「君たち優秀な職員たちのお陰さ。私の力ではない」
「謙遜なさらないで下さい。貴方がいなければとても成立しなかったのですから。しかし主任、こんなすばらしい理論を、どこで?」
「知る必要は無い。君たちは作業に没頭していれば良いのだ。無駄口を叩いていないで作業に戻りたまえ」
「は……はいッ! 申し訳ございません、『天堂』主任!」

 天堂、と呼ばれた眼帯の男は研究員たちとの会話を打ち切り、施設の奥へと更に歩を進める。長机と椅子、何も収納されていない棚だけが置かれた部屋で脚を止めた天堂は、机に両足を乗せてふんぞり返る帽子の男に声を掛ける。

「本日は……どのようなご用件で?」
「世界の破壊者・ディケイドがこの世界にやって来た。君の『クロックダウン』計画に支障を来すやも知れん。早いうちに始末した方が良いのではないのかね?」
「成る程」天堂は目を細め、顎先に親指を当てて思案する。
「御忠告感謝します。我が精鋭部隊を奴の元へ派遣しましょう。何、仮面ライダー如きに、遅れなど」
「その油断が君とその部下を殺すかも知れんのだぞ。気を付けることだ」

 帽子の男は不機嫌そうな表情のまま席を立ち、ゆっくりと戸を閉める。天堂は彼の姿が見えなくなったのを見計らい、「臆病者めが」と毒づく。
「ディケイドだと!? それがどうした、何の障害にもならん! 俺は強い! 他の三下連中と一緒にされてたまるものか! あの『カブト』すら、俺には手も足も出ないのだからな……」
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~ Comment ~

感想 

 新章カブト編、早速拝見させていただきました。現在同じく、自サイトでカブト編を執筆しているトマトです。
 さすがというべきか、イマジンカイザー様の綿密に練られた設定はやはり見事の一言に尽きます。作品設定を無視している訳では決してなく、むしろ語られなかった部分を補完しているといった方が適切でしょうか。今回のワーム設定は元より、以前の剣の世界の会社制度、そして555の世界のそれぞれのドライバー設定。どれも素晴らしいです。


 さて、今回は序章ということで、やはりというべきか敵味方ともに大人しめでしたね。まだ動いているというよりは、水面下で野望行動ともに蠢いているといった感じでしょうか。テレビ本編をRe-mixしているといっても、今後の展開が予測できないので、フェーズ2以降も非常に楽しみです。
 中でもマユ、言動を見る限りひよりと樹花を足して2で割ったという感じでしょうか。ディケイド本編では、言動的には樹花寄りだったのが、近作ではひよりに近いようで。しかし「死にたがり」と思わせる言動を取るとは、彼女の過去に何があったのか……。
 おばあちゃんやソウジ、そしてあまり触れられなかったアラタ。更にはイマジンカイザー様お得意の原点リ・イマジネーションキャラクターの登場にも期待しています。彼等が織りなすカブトの世界での物語、このトマト、首を長くし手続きを待ち望んでおります。
 ――サムズアップ!
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