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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(2)

Journey through the Decade Re-mix 第八話 「超モモタロス、参上! 鬼ヶ島の戦艦」 一両目

 ←これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十四年十一月号 →これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十四年十二月号
 FC2ブログの「カテゴリ表示制限」により、「アギトの世界」の途中以降の話が「作品もくじ」内に表示されなくなっていました。
 このため、「ブレイドの世界」までと、今回の「ファイズの世界」以降とでカテゴリを分割させることとします。


 ブレイド編以前の作品は「Journey through the Decade Re-mix」より、
 それ以降の作品は「Journey through the Decade Re-mix(2)」のもくじからご覧くださいませ。




 これまでの作品が全て過去作の加筆修正だったため、実質的な新作は「なろう」、「pixiv」時代を合わせても半年ぶりくらいでしょうか。

『仮面ライダー電王』。
 ”仮面ライダーが電車に乗る”、”主人公が敵・イマジンに憑依され、彼らの特性及び個性を活かして戦う”、”モモタロスを筆頭としたイマジンたちの明朗快活な作劇”など、龍騎・響鬼と並んで、それまでの仮面ライダー像を『破壊』した作品。放送終了後の今でも、劇場で第一線で活躍しているあたりに、作品としての人気が窺えます。

 幼少期、アギト・龍騎辺りで平成ライダーを観なくなっていた自分が、それまでの作品を見つめ直すようになった、個人的には記念碑的作品です。
 その人気故に毎年スクリーンで、イマジンたちと顔合わせが出来るのは良いのですが、その度重なる映画出演のせいで、元々あった電王という作品の良さが徐々に薄れて行ったのが、当時からの視聴者としては寂しくもありました。
 そもそも、電王の良さって何だろう? イマジンたちのコメディ? その裏に隠れた時間改変の設定? 一人で何役をもこなす、スーツアクター・高岩成二氏のアクション? 何を持って由とするべきか、考えれば考えるほど結論から遠ざかります。

 そんな中、本小説でやるべきこととは何か。どうすれば電王の二次創作足りえるのか。
 未だに答えは出ませんが、自分は自分で『面白い』と思えるものを描こうと思います。
 どうか、最後までお付き合いくださいませ。

 なお、現時点でストックがまるでないため、次回の掲載時期は全くもって未定です。


※※※

「帰ったぞ、夏ミカン」
「あぁ、お帰りなさい士君。お茶が入ってますよ」
「……紅茶? 今日はコーヒーじゃないのか」
「毎度同じだと飽きますし。日射しもこんなに暖かいんですから」
 暖かな陽が差し込む穏やかな昼下がり。光夏海は応接間にティーセットを並べ、のんびりと午後のお茶を楽しんでいた。士は夏海の淹れた紅茶に口をつけると、何とも言えない表情を浮かべ、ゆっくりと息を吐く。
「それで、写真の方はどうだったんですか? 街に繰り出したんでしょう」
「現像してみなきゃ分からんが、恐らくハズレだな。レンズを通した時点で変なモヤがかかってた。ここも俺の世界じゃあないんだろ」
「写す前からって……、最近一段と酷くなってませんか?」
「善い兆候でないのは確かだな。あの『アヒル口』に急かされてんのか、早く自分の世界を見付けないと、俺自身がヤバイのかは分からんが……」
 かつて、栗色の髪の青年によって語られた「世界の崩壊現象」。今まで目立った騒ぎがなかったこともあり、特に気にすることも無かったが、日常生活にまで被害を及ぼすともなるとそうもいかない。
 自分たちは本当に平行世界の危機、とやらを救えているのか。謎の男・鳴滝の言う通り門矢士《ディケイド》は世界を滅ぼさんとしているだけなのではないか?
 不安気な夏海の胸中を察したのか、士は紅茶を全て飲み干し、「それよりも」と彼女の頭をくしゃりと撫でた。
「お前には今、もっと気にすることがあるだろうが。見ろ、俺の格好を!」
 言われて彼の姿をじっと見る。薄茶色のフェルト帽に同じ色の外套。そこに眼鏡さえあれば、旅先でよく見かけるあの男とそっくりなのだが――。
「もしかして、この世界での士君の役割は……、鳴滝さん!?」
「馬鹿言え。そもそも奴は俺たちの行く先々で何をやってるんだ。全く知らねぇし、分かりたくもない」
 あんな奴の真似なんかするものかと当たり散らし、ソファの上に体を預ける。「分からないと言えば……こいつもそうだな」
 ついでにとズボンの尻ポケットから「定期券入れ」を取り出し、手のひらの中で弄り回す。中のチケットには行き先が記されておらず、どこで何に乗ればよいのか分からない。街に繰り出して調べたものの、何処で聞いても「知らない」の一点張り。
 使い方も行き先も分からない謎の乗車券。こうして自分の手にある以上、この世界において重要なアイテムなのは間違い無さそうだが、使い方が分からなければ宝の持ち腐れだ。
 時間は14時を回り、時計の短針は2と3の間を指している。士が定期入れとにらめっこし、難しい顔をしていると、キッチンの中から盆を持った栄次郎とキバーラが、ユウスケを引き連れて一緒に現れた。
「はーい、ちょっと早いおやつの時間ですよぉ」
「今日は栄次郎ちゃん特製プリンよ、プ・リ・ン」
「こいつぁ凄いぜ士、美味すぎて頬っぺた落とすんじゃねぇぞ」
「……どうせ何もしてないくせに。何をそんなに息巻いてんだ」
「失礼な! 俺だって手伝ったよ。栄次郎さんお手製の生クリームやさくらんぼの飾り付けとか」
「飾りだけじゃねぇか。作る方には携わって無いんだろ。それくらいで威張るな」
「それくらいとは何だ、『それくらい』とは!」
 男同士の、端から見ればどうでも良いやり取り。白熱し過ぎて殴り合いに発展しかけたが、夏海が両親指を構え、獲物を狙う肉食獣のような目で睨んでいるのを見、喧嘩は自然と立ち消えた。
「くだらねえ。写真を現像してくる、プリンはお前らで勝手に食ってろ」
 やれやれと溜め息を着きつつ、士はテーブルに並べた写真を片付けるべく、現像室の扉に手を掛けた。
 午後14時14分14秒。
 時・分・秒がゾロ目となって揃った瞬間、現像室の扉を開け放す。するとどうだろう。目の前に広がっていたのは現像液の臭い漂う部屋ではない。見渡す限り黄土に輝く、だだ広い空間であった。
「なん、なんだ……こりゃあ」
「おいおい、こいつぁすげぇな士」そこに横からユウスケが口を挟む。「家の中から砂漠まで繋がってる……。こいつが噂の”どこでもドア”ってヤツか」
「こいつはうちのドアだ。俺が持ってきた訳じゃねぇし、青いタヌキに知り合いは居ない」
「まったまたァ。それが今回の役割なんだろ? 不思議なポケットからアイテム出して、困っている人たちを救うって使命があるってことだろ? そうなんだろう」
「ポケットどころかチケットしか無ぇのに、誰をどう助けろと言うんだよ」
「いや、案外お前の見落としかも知れないぜ。探ったら何か……」
 困惑する写真館の男たちを更に驚かせたのは、砂漠の中から飛び出した、三つの光の玉であった。
 玉のうち二つは夏海と栄次郎の体に吸い込まれ、残る一つはキバーラの体に取り込まれる。士は夏海を、ユウスケは栄次郎の体を直ぐ様抱き抱えた。
「なんだ、今の……? 夏海ちゃん、栄次郎さん!」
「落ち着けユウスケ。二人とも気を失っているだけだ」
「これが落ち着いてられるかよ! このまま目覚めなかったら……」
「お前が一人で取り乱してるだけだっての。冷静になれ」
 続々と起こる怪異に狼狽えるユウスケと、逆に慣れて落ち着き払う士。何が何だか解らない状況の中、キバーラだけが一足先に目を覚まし、よろよろと浮き上がる。
「ほぉ、お前が一番か。意外だな」
「キバーラ、そんなにすぐ起き上がって平気なのか?」
「う、うう……おぉ、お」
 卒倒したキバーラを気遣っての一言だったのだが、彼女は二人の事など気にも留めず、白目を剥いて倒れている夏海たちの元へと一直線に飛んだ。
「出てきやがれこの野郎! “そこにいる”のは分かってんだ! このやろ、このこのッ!」
 光の球をその身に取り込んだキバーラは、未だ目覚めない夏海たちに向かい、敵意を持って翼打ちや蹴りを喰らわせているではないか。よく見ると顔の周りに妙な”隈取り”が出来ている。気を失う寸前までこんなものは無かった筈だ。
 考えていても仕方がない。士はキバーラを問い質すべく押さえ付け、気絶した夏海の前に顔を近付ける。しかしその時、彼女の目が何の前触れもなくぱっと開き、突然起き上がって来た。
「うォっ、何だよ、驚かすんじゃねぇ!」
「よかった……、二人とも無事みたいだ」
 この場合、無事と言うには少々語弊がある。目覚めたと言うものの、夏海たち二人は虚ろな顔で立ち尽くしているし、何より不気味な白い砂が、体から絶え間無く溢れ落ちている。
 応接間に散らばった砂は二ヶ所に分かれ、集まって形を成して行く。白い砂の塊は“狼”と“コウモリ”を模した二足歩行の異形に変化した。
「なな、なんだこいつら!」
「光の玉に砂の怪物……、そうかこいつら、『イマジン』か」
「ヒマジンって何だよ士。夏海ちゃんは、栄次郎さんはどうなったんだよ!?」
 取り乱すユウスケを、士は両手で押し退ける。
「あいつらは気を失っているだけだ。問題ない。それより俺たちにはやることがあるだろうが」
「あぁ、そう……そうだったな」
 目の前に敵意丸出しの怪物がいるのなら、自分たちがすべきことは、敵を戦って倒すことだけだ。士はベルトを腰に巻いてライダーカードを抜き出し、ユウスケは右腰の突起に手の甲を合わせる。
「ここまで乗り込んで来るとはいい度胸だ。勿論、やられる覚悟もあるんだろうな?」
「夏海ちゃんと栄次郎さんに何をしたんだ! 答えろッ」
 二体の怪物は聞く耳を持たずに向かい来る。士たちの予想に反し、怪物たちは彼らには興味がないと飛び越した。
「馬鹿な奴だ。自分が何に取り憑いてるとも知らないでよ」
「諦めて我らが『大将』の元に戻るのだ」
 狼のイマジンは応接間の用具箱から虫取り網を掴み取り、二人の背後にいた白コウモリを捕らえる。彼らの話を聞く限りキバーラ……の中に潜む何かを捕まえるのが目的だったらしい。これには士たちもどうして良いのか分からない。
「ど、どうすんだよ士。怪物同士で喧嘩してるぜあいつら」
「そんなこと俺が知るかよ。何か無いのか、イイ奴と悪い奴を見分ける術は」
「えぇと、確かテレビの巨大ヒーロー番組だと、赤い玉は味方で、青い玉は敵なんだけど」
「色だぁ? 奴らは両方黄色い光の玉だぞ。だったらどうなるんだ」
「赤に青に黄色……、信号機に準えて考えたら、敵でも味方でも無いってことになるんじゃ」
「誰が信号機の話をしろと言った!」

「ちきしょう、こっから出せ、離せ、出しやがれェ!」
「諦めろよ。無駄だぜ無駄」
「かような小ささで何ができる」
 士とユウスケを尻目に、二体のイマジンは網を片手に、現像室の扉からあの砂漠に帰ろうとしていた。精一杯抵抗して見せるが、小さいコウモリの姿ではどうしようもない。困り果てた隈取りキバーラの目に、無駄な言い争いをする二人の男が留まる。
「しめた! ちょっと借りるぜ、てめえの体をよォ」
「は、ぁ!?」
 捕まったイマジンはキバーラの体を離れて発光体に戻ると、網の隙間を潜り抜け、二人の元へと向かう。直線上に居た士に取り憑き、狼たちと戦おうというのだ。
 だが発光体の接近を感知した士はユウスケの肩を掴んで、自分とイマジンとの間に割り込ませる。
「冗談じゃない。頼んだぞユウスケ」
「お、おおい!? 何するんだよ士ァ! あっ、ああぁあぁ」
 ユウスケの体の中に光の玉が消える。彼が再び目覚めた時には、毛髪が逆立ち、目の色が真っ赤に染まっていた。
「どぉだオオカミ野郎、これで立っ端も同じだぜ。さぁ始めようぜ、俺とお前たちとの喧嘩をよ」
「おい馬鹿、何やってんだよッ」
 ユウスケは士の制止に耳を貸さず、狼の鳩尾に拳を放って怯ませ、コウモリのイマジンを掴んで窓の外に放り投げる。怪人を軽々と持ち上げ、写真館の外に投げ飛ばすなど、変身後ならまだしも普段の彼に出来る訳がない。
「あっ、コンニャロぅ、待ちやがれッ!」
「いや、お前が待て、何処に行くつもりなんだ」
 これは敵わないと、狼のイマジンが割れた窓から逃げ出した。ユウスケは感情の高ぶりに身を任せ、ガラスの破片で服が傷付くのも厭わず、逃げたイマジンを追って外に出る。
 何はともあれ、奴をこのまま野放しにしては置けない。士は面倒臭いと悪態を付き、仕方なく彼らの後を追った。

◆◆◆

 士が追い付く頃には、「喧嘩」の優勢は狼たち側に傾いていた。腕力こそユウスケ(に取り憑いたイマジン)の方が上であったが、彼は鋭利な刃物を手にした狼と、空を自在に舞うコウモリを同時に相手していては、不利になるのは仕方がない。
「くそォ! 二対一で空飛んだり、刃物振り回すのは反則だろうが! やい、やいやいやい! 降りて来やがれってんだ!」
「うるせぇぜ、俺たちゃお前を捕まえられればそれでいーんだ、よッ」
 狼の得物がユウスケの首筋を目掛け飛んでくる。即座に半身を退いてかわすが、奴の背後にはコウモリのイマジンが控えており、不安定な体勢で両足蹴りを喰らってしまった。
 どちらが敵か知らないが、このままではユウスケも奴らに倒されてしまう。士は自分たちが「変身途中」だったことを思い出し、ユウスケに駆け寄って彼の肩をむんずと掴んだ。
「何だ、離せこの野郎! 邪魔だ、邪魔だ!」
「ユウスケ《そいつ》の体使って負けられちゃ困るんだよ。変身して戦え」
「へんしん? なんだそりゃあ、食えるのか」
「何だっていい。腹のでかいベルトを……あぁ、もういい、俺がやる」
「おい馬鹿やめろ、どこ触ってんだ、あっ、ああ……ッ!」
 士は変身ベルト・アークル右腰の出っ張りをユウスケの右手の甲を押し込ませ、無理矢理クウガに変身させた。
 真っ赤に染まった己を省み、ユウスケは「何なんだ」と声を荒げる。
「おいおいおいおい、なんだこりゃあよォ。真っ赤っ赤じゃねぇか、二本角じゃねぇか、不気味過ぎなんじゃねぇか!? そこのノッポ、俺様に何しやがった!」
「そういうのは後にしろ。あれだけデカい口を叩いたんだ、とっととあいつらぶちのめせ。お前の力を見せてみろ」
「んなこと、言われなくたってやるんだよ! 行くぜ行くぜ、行くぜェ!」
 クウガに変身したユウスケは、強引に士を押し退け、イマジンたちに飛び掛かる。狼のイマジンは避けもせず彼の拳を受け止めるが、仮面ライダーの力を御すことは敵わず、数米《メートル》地面を擦って尻餅をついた。
「なんだなんだ、不気味なくらい力が湧いて来やがる。悪くねぇなぁ、おい」
 クウガは二体のイマジンに向け、自信満々に右人差し指を突き立てる。「さっきはよくもやってくれたな。借りたモンは力ずくでキッチリ返させて……もらうぜッ!」
「まっ、待て待て、待て!」
「もう遅ぇンだよ!」
 クウガは敵の振るう刃を交わしつつ、鳩尾に懐に潜り込んでの力強いワンツー。
 狼頭の足下がぐらついた所で、奴の腹に前蹴りを喰らわせ、後方に飛んだ所を、ボールを蹴る要領で追撃。
 クウガが狼を手玉に取るのを傍目に見、士は彼の体の至るところに、禍々しい黒の「模様」が浮き出ているのに気付く。人の姿の間でも髪が逆立ち、目の色が変わっていたが、ライダーに変身してもそこは継承されるらしい。取り憑かれたのがあいつでよかったと心の中で胸を撫で下ろした。
「く、くそぉ……。何だよ、なんなんだよてめぇは!」
「俺が知るか。まぁ、運が悪かったって諦めるんだな」言って、狼が落とした剣を拾う。それは一瞬でタイタンソードへと形を変え、クウガの姿を「タイタンフォーム」に変化させた。
 形こそ”紫のクウガ”そのものだが、鎧の色は先と同じく赤を基調としており、身体中の模様もそのまま残されている。どうやら彼は”赤色”に強い拘りがあるらしい。
 二回目となると驚きも少ないようで、クウガは剣の心地を確かめると、その上で狼の体を袈裟に斬り付けた。呻き声が上がり、傷口から白い砂が噴き出す。恐怖に駆られて逃げ出そうとするが、それをクウガが許す筈もなく、頭の先から足の先まで細切れにされてしまう。
「へへッ、どんなもんだ……って、逃げんなこの野郎」
 狼退治に夢中になるあまり、一緒にコウモリ怪人が居たことを失念していた。彼らの争いを見て旗色悪しと判断し、自慢の翼で逃げ失せるつもりだ。
 追おうにもクウガには羽根が無い。緑のクウガ――ペガサスフォームなら空の相手も撃ち抜けるのだが、ここにはボウガンの媒体となる銃器はないし、そもそも彼はその事を知り得ない。
 どうにもならないが、逃がすわけにはいかない。悩んだ末に彼が選んだ方法は――。
「空を飛べるからってチョーシに乗ってんじゃねぇぞ、これで……どうだッ!」
 クウガはタイタンソードの刃を叩き折り、逃げるコウモリを目掛けて放つ。折れた刃は縦に弧を描き、コウモリの体を尻の割れ目から一直線に斬り裂いた。
「へへへっ。名付けて……必殺・俺の必殺技、ってかァ!」
「ダサ過ぎて笑えないぜ。もっと何かないのかよ」
「何だと!? ……って、うわぁ! 誰だお前!?」
 戦いが終わったのを見計らい声を掛けてきた士に対し、クウガは腰が抜ける程大袈裟に驚いて、同時に変身を解いてしまう。
「いちいち驚くなよ、調子が狂う。立ち話も何だし、ちょっと来い。美味いコーヒーを出す店を知っている」
「なァにィ? てめぇみたいな野郎と一緒に茶なんか飲めるか」
「そうか、そりゃあ残念だ」士は言いながら踵を返し、ぼそりと呟く。「美味しい美味しい『プリン』も付けるのに、なあ」
「何!? プリン!」
 瞬間、ユウスケの目の色ががらりと変わる。士は思った通りだと口元を歪ませ、後手をひらと振った。
「あぁ、でも断られちゃあ仕方ねぇな。そいつの体は好きにしていいぞ。あとは勝手にやってくれ」
「まッ、待てよ……待ってくれ! 行くよ、行く行く! プリン食わせろ、頼む、この通りだッ!」
「欲望に忠実な奴だな。ま、いいだろう」
 好物の為ならプライドも捨てて頭を下げる、か。得体は知れないが、悪い奴では無さそうだ。士
は彼の願いを聞き入れ、ユウスケについて来いと手招いた。

「――成る程、そう来たか。計画は狂ったが、それならそれでやりようはある。ここはもう少し様子を見るとしますか」
 物陰から密かに事の次第を見守っていた「彼」は、薄笑いを浮かべて踵を返し、警察官の白バイを象った二輪車に体を預け、そのまま何処へと走り去った。

◆◆◆

 先の一件など無かったかのように、割れた窓をビニールテープで補修し、光写真館は平然と営業を再開させていた。
 変わり果てたユウスケの風貌に夏海は泣き出し、キバーラは「私のユウスケを返して」とニンニクの欠片を投げ付け、栄次郎は「イメチェンかい」と笑って流す。写真館の面々に怒り心頭のユウスケだったが、特製プリンを差し入れると共に掻き消えた。
「……うまいか、それ」
「あぁ、最高だぜ、最高! 悪ィか」
「いいかどうかは別として、そんな笑顔を浮かべられたら何も言えん」
 ユウスケの様子に辟易としつつ、「ところで」と話を切り出す。
「結局、お前は何者なんだ? そいつに取り憑いて何をしようとしている」
「知らねぇよ。何でここに来たのかも、自分が何なのかも」
「うちの窓破っといてそんな曖昧な答えで許される訳ないだろう。もっと真面目に答えたらどうだ」
「いや、だから。本当に何も分からねぇんだって。いちいちしつけぇ野郎だな」
「しつこいのはお前だ、いい加減にしないと……」いや、待てよ。このイマジンに嘘を付いている様子はないし、つける程器用にも見えない。何故ここに居るのか、自分は一体誰なのか。それすら分からないということは――。
「記憶……喪失、なのか? お前」
「キオク……ソー、そー……? なんだよ、そいつも食えんのか?」
「いちいち食い物と結び付けて考えるな。要するに、自分が何なのか分からない、ってことだろ」
「そう、そいつだ!」それを聞いたユウスケは納得して景気よく手を叩く。「いつの間にか光の玉になってて、暗くて狭い部屋に押し込められてたことは覚えてるんだが」
「思い出せない、ねぇ」士は渋い顔をし、人差し指でテーブルを叩く。「お前らイマジンには過去の記憶がない。故に人に取り憑いてそいつを奪い、自分の存在を得ようとする。そんなもん、元から無かったんじゃねぇか?」
「ちょっと、士君。怪人相手だからって失礼ですよ」
 夏海が士の態度をたしなめるも、当の本人は鼻を鳴らしてソファにふんぞり返る。とはいえユウスケの方もそれを気にする様子はなく、それは違うと言い返した。
「確かに俺たちにゃ何もない、だから手前ぇらから奪うのさ。けど、これはそうじゃねぇんだよ。何て言うのか……、写真っつーか、エイゾウっつぅのか? 何だか知らねえが、そーゆー何かが頭ン中に焼き付いてて離れねぇ。
 そこに居たのは勿論俺で、剣を振り回してカッコよく戦ってたもんだ。けど、俺の隣にはもう一人居たんだ。顔も名前も覚えちゃいねぇし、どうしてそこに居るのかも分からねぇ。俺にとっちゃどうでもいいヤツの筈なんだ。けどよ、頭ン中でいくら振り払おうとも、ぼやけて写るそいつの顔が消えねぇんだよ」
 渇いた喉をコーヒーで潤し、ユウスケの話は続く。「さっきの奴らみたいに、最初から何もなきゃよかったんだ。思い出が中途半端に残ってちゃ、気持ち悪くてしょうがねぇ。だからここまで来た。そいつが何者だろうが関係ねぇ、草の根分けてでも探し出して……」
「探し出して?」言い淀むユウスケに代わり、士が彼の言葉を継ぐ。「そもそも、どうやって探すつもりだ。身一つで逃げて来たお前にアテやツテがあるとは思えんが」
「関係あるか。無いなら見付ける。なくたって見付け出してやらぁ!」
「無理だね。砂漠のど真ん中で米粒探すようなものなんだぜ。お前みたいな存在も記憶もあやふやな奴に見つけられるわけがねぇ」
「なんだと!?」
「怒るなよ。事実を言ってるだけだぜ」
 売り言葉が買い言葉となり、周囲に険悪な雰囲気が漂う。しかし夏海に「いい加減にしてください」となだめられ、殴り合いに発展することはなかった。
 睨み付けられることに辟易し、士は後頭部を軽く掻いた。「何もそれが悪いとは言ってないだろ。本当の自分なんざ見付からなくて当たり前だ、肩竦めて落ち込む気持ちは分からんでもない。けどよ、塞ぎ込んでちゃ何にもならん」
「……お前、何が言いたいんだよ」ユウスケが怪訝そうな顔で問う。
「丁度この世界の情報が欲しかった所だしな。手伝ってやるよ、お前の自分探しの旅をな」
「は、ァ? だから、何言ってんだよ」
「言葉通りの意味だ。お前は本当の自分が見付けられて、俺たちはこの世界ですべき事が分かる。互いに良いことずくめだろ」
「そりゃまあ、そうだけどよ……」
 二人の会話を横で聞きつつ夏海は思う。自分の事すらハッキリしない彼から、この世界に於いて有益な情報を引き出せるとは思えない。そんなことは士だって分かっている筈だ。
 ならば何故この得体の知れないイマジンに手を貸すのだろう。もしかするとそれは、記憶を無くして世界をさ迷う自分と、彼の姿を重ね合わせたからではないか。
 自分が何なのか分からない苦しみは、彼が一番良く知っている。故に理由を付けて手を貸したのではないか。士の優しさが垣間見え、夏海は穏やかな微笑みを浮かべた。
「何笑ってんだよ、夏ミカン」
「いえ。何でもありません」
 士が夏海のそんな態度を訝しむ中、腕を組んで唸っていたユウスケが、「決めた」と声を上げる。
「お前のことは気に食わねぇ。気に食わねぇが……。協力してやるよ。美味いプリンもご馳走になったしな」
「何が協力してやるよだ。そこはお前『お願いします』、だろ?」
「いや、手前ェこそなんだその言い草は。むしろお前たちが言えよ! 土下座して、周りのお宅にまで聞こえるように!」
「吹けば崩れる砂の分際で、ふざけるのもいい加減にしろ」
「ンだとォ!?」
「何だよ!」
「もう……、光家秘伝! 笑いのツボ!」
 和解したかと思いきや、何でもないことで喧嘩になる二人の男。腹に据えかねた夏海は、笑いのツボでまず士を沈め、ユウスケにも打ち込もうとするが、半身を退かれ、紙一重の所でかわされてしまう。
 流石はイマジン、人並み外れた動体視力だと驚くも、同時に彼の様子が妙なことに気付く。険しい顔付きで周囲をぐるりと見回したかと思えば、犬のように鼻を鳴らして『何か』を嗅ぎ回っている。
 暫くし、ユウスケの顔が写真館の玄関前で止まった。「匂うぞ、イマジンだ。また俺を狙って来やがったのか……。冗談じゃねぇ、ぶっ潰してやる!」
「あはは、はは、おい、待て……、はは、ははは」後を追わんと席を立つが、笑いのツボの効力は未だ抜けておらず、士は歩くことさえままならない。

「むっ、無茶しちゃダメですよ士君! 無理に動いたら横隔膜が!」
「そういう、問題じゃ……、はは、あっはは」
「どぉれ。下がっていなさい、夏海」放った本人すら慌てる中、栄次郎はにこやかな顔で士の前に立ち、夏海が押したのとは逆方向の首筋に親指を押し込んだ。
 するとどうだろう。今まで止まる気配を見せなかった笑いがぴたりと止んだではないか。
「秘奥義・笑いのツボ返しって所かな。どうだい、楽になったろう」
「は……、おぉ? 凄いな爺さん、なんでこんなことが」
「愚問だねぇ士君、夏海に笑いのツボを仕込んだのは私だよ。このくらい軽い軽い。……あぁっと、やられて困ったからって安易にこれを試してはいけないよ。コツが分かってなきゃ、笑いの勢いが酷くなるだけだからね」
 流石は師匠と言ったところか。栄次郎はどこでこんなものを覚えたのかと疑問が生じたが、今はそんなことを気にしている暇はない。
「何はともあれ助かったぜ。ちょっと出て来る」
「こんな技があったなんて聞いてません。後でしっかり教えてくださいねおじいちゃん」
「はいはい、行ってらっしゃい。夕飯までには帰って来るんだよ」
 栄次郎はそう言った上で手を振って二人を見送り、再び椅子に腰かける。
「忙しないねぇ。若いってのはいいもんだけど」
「あらあら。栄次郎ちゃんだって十分若いわよ」
「そう言ってくれるのはキバーラちゃんだけだよ。いやはや、悲しいねえ」
 すっかり冷えたコーヒーを啜り、キバーラと共に笑い合う。
 未だ開けっぱなしだった扉の先の砂漠から、新たに三つの光が写真館を出ていったことなど、知る由も無く――。

◆◆◆

 銀色の輝きが太陽光を反射して、熱を増幅させるビル群。
 士と夏海は突然去ったユウスケを追い、街の中心部と思しき地点に来ていた。
「くそ……、どこに行きやがった、あいつ」
「完全に、見失っちゃいましたね」
 うだるような暑さで面倒臭くなり、士は不貞腐れて壁に寄り掛かる。
「探すのはもう止めだ。そもそも俺たちが必死こいて追いかける必要はねぇ」
「やめって……、ならどうするんです」
「待てばいいのさ。どこかで騒ぎが起きた時、ヤツは必ずそこにいる。何せ、馬鹿は目立つからな」
「そういう、ものなんですか?」
「そういうもんだ。あいつが騒ぎを起こすまで、のんびり街でも見てようぜ」
「まぁ、そういうことなら……」
 彼の言葉に従い、夏海は手近で煌びやかなビルの中に入ろうとする。しかし、彼女が他のビルに気を取られた瞬間、士の体に先程と同じ光の球――意思を持った“人魂“が入り込んだ。
「いきなり立ち止まって、どうしたんですか士君。置いてっちゃいますよ」
「あぁ、ちょっと……。立ち眩みがしてね。歩くのが億劫なんだ」
「立ち眩みって、あなたそんなキャラじゃないでしょう。ヘンなこと言ってないでほら、しゃんとしてください」
「いや、本当なんだよ。ごめん、ちょっと、肩を貸して……くれないかな?」
「仕方ありませんね……」
 怪しく思いつつも、士の元へと近寄る夏海。どういう訳か、彼は自分を心配して近付いてきた夏海を、強くそれでいて優しく抱き寄せる。
「ひゃうう!? なな……、な! 何するんですか士君!」
「ごめん、立ち眩みってのは嘘。君の体温を、もっと近くで感じて居たくて――」
 士の顔が徐々に迫る。今まで見せたことのない艶かしい表情に、自然と胸の鼓動が高鳴って行く。今まであまり意識していなかったが、彼は男で自分は女。情熱的に迫られれば恥じらいの一つもあって然るべきなのだ。
 夏海は頬の紅潮を隠すかのように、彼の胸をぐいと押した。
「何なんですか、その青少年に見せられない婬《みだ》らな顔は! こっ、これ以上近付くと……おっ、“押しますよ”ッ!?」
 士はつまらなさそうにひらと手を振る。「“釣れない”なァ、何もしないってば。『僕』はただ、君に話を聞きたいだけなのに」
「だったらそのフラチでフケツな目付きをやっ、やめてください!」
「酷いなあ。僕のコレは生まれつきなんだけど」
 話は平行線を辿るばかりで全く進まない。
 夏海は薄々勘付いていた。彼は士ではない。ユウスケに取り憑いたものと同じ、件の人魂だ。それについて問い質そうとしたその時、彼の体にまた別の人魂が入り込む。
「まどろっこしゅうて敵わん。『亀の字』、お前は何をやっとるんや。俺たちが用があるんはこの子やのうて、この男《ディケイド》やろうが」
 先程までとはがらりと変わり、男らしく野太い声に変わった士は、眼前に飛び出た人魂を叱り飛ばす。人魂は地面に落ち、砂の塊となって口を開く。
「違うって『キンちゃん』。彼女はずっと彼の傍にいたんだ、なにか知っててもおかしくないでしょ? 荒っぽい魚を釣り上げるにはまず外堀から攻めなくちゃ」
「一理あるがなァ、お前がしたいんはこのお嬢ちゃんのナンパだけやろ。女と見るとすぐ助平心出しよってからに」
「心外だなァ。そんな証拠、どこにあるのさ」
「そのヤらしい目付きが何よりの証拠やがな」
 言い争いに終始する士と人魂。彼らの出入りで人格がころころと変わり、端からは一人芝居をしているようにも見える。夏海は今のうちと場を離れようとするが、四股を踏んだ士に回り込まれた。
「おぉっと、逃がさへんでぇ。あんたも何か関係あるんやろう、世界の破壊者・ディケイドっちゅー奴と」
「ディケイド……!」夏海は背筋を震わせ息を飲む。「どうしてあなたが、そんなことを……」
「如何にも何かありそうなその反応。アタリと見て間違いないな。洗い浚《ざら》い喋って貰おうやないけ」
 士は険しい顔付きをし、張り手を徐々に近付いてくる。それを見かね彼と話していた人魂が、『キンちゃん』を士の体から弾き出した。
「もう、何やってんのキンちゃん。その子怖がってるじゃない」
 その人魂を追い出して、『キンちゃん』が再び士に入り込む。「そない悠長なこと言うとる場合か。こっちは大切な”チケット”を奪われてもうたんやで」
 ”亀の字”と呼ばれた人魂が士の体に今一度潜り込む。「逸る気持ちは分かるけど、焦って竿を上げちゃ、釣れるものも釣れないよ」
「えぇと、あの……その」
 入れ替わり立ち代わり雰囲気が変わる士に、ツボ押しすらも忘れて困惑する夏海。だがそのことに最も苛立ちを覚えていたのは他ならぬ当人だ。
 ――お前らァ……、いい加減にしろォォォォッ!
 体の芯から士が声を奮わせて吠える。二つの光は彼の体から離れ、士は元の姿に戻った。
「はぁ、はぁ……! 化物共め、よくも俺の体を……」
「士君ッ! 士君……、ですよね?」
「俺じゃなきゃ何だってんだよ。俺は士だ、門矢士。それ以外の何者でもねぇ」
 それを聞いて安堵する夏海と異なり、人魂たちは動揺を隠せない。「嘘……。僕たちを内側から弾き出すなんて」
「あの男……、何かがおかしいで。中に入っとってこうも『座りが悪い』奴は初めてや。こいつ、ホンマにヒトとちゃうんやないか?」
「確かにね。流石は『世界の破壊者』さん」
「云うとる場合か。どうにかせんとアカンやろ」
「だから今考えてるんじゃない。時間だってあまり無いし」
「それが分かっといて、何でさっきナンパしとったんやお前は……」
 ――あーっ、もう。二人ともめんどくさーい!
 状況を把握しようと各々考えを述べる人魂たちだが、「退屈」に飽き飽きした三つ目の人魂が、彼の遥か上方から飛び出した。
 それは士ではなく夏海の体に潜り込み、彼女の体の自由を奪う。目覚めた夏海は紫の光を瞳に輝かせ、無垢な幼子のような無邪気な笑みを浮かべた。
「『カメちゃん』も”クマちゃん”もまどろっこしいっ。全部こいつが悪いんでしょ? だったらさっさとやっちゃえばいいんだよ。ってことで」
 士にびしりと人差し指を突き立てる。「ディケイド倒すけどいいよね?」
「は……あ!? 何言ってんだ夏ミカン」
「答えは聞いてない」
 回答を待たずして士の言葉を遮ると、彼のと同じパスを腹部に掲げる。瞬間、得体の知れないベルトが彼女の腰に巻かれた。

 ――変身っ。
 ――GUN FORM
 磁気定期券を改札にタッチするかのように、ベルトのバックルにさっと触れる。
 電車の線路を模した鎧が夏海を包み、アルファベットのVのようなものが頭に、竜の爪を模したアーマーが肩部に貼り付いた。
 銃器を扱う仮面ライダー、電王・ガンフォームだ。
「話なんか聞かなくていいよ。だってこいつが一番悪い奴なんでしょ? だったらやっつけちゃえばいいんだよ」
 二つの人魂は暫し考えて、「……極論だけど、”リュウタ”の考えは間違ってないかも」
「大人しく話聞くようなタマとちゃうしな。弱らせてふん縛った方がえぇやろ」
「でしょでしょー? やっちゃえやっちゃえ!」
 納得し、夏海の体に入り込む二つの光。彼らは良いが、狙われた士はたまったものではない。
「てめぇら、夏海の体で何やってんだ! 離れやがれ」
「やーだよっ。このお姉ちゃんにはキョーミないけど、”チケットどろぼう”は、やっつけなきゃ大変なことになるし」
「待てよ、そもそも泥棒ってのは何だ、盗みなら俺よりもずっと適役が……」
「だから、答えは聞いてないんだってば」
 有無を言わさずの発砲。紙一重でかわせたものの、奴には容赦がまるでない。中身は夏海だからと尻込みしていては、逆にこちらが殺されかねない。
 チケット泥棒。不可思議なあの定期入れの使い道がようやく見えてきた。だが盗んで得た覚えはないし、狙われる道理もない。考えるのは後回しだ。
「図に乗るなよ人魂軍団。その夏ミカンは返品してもらう」
 ――変身
 ――KAMEN RIDE「DECADE」!
 士は銃弾の雨を掻い潜ってディケイドに変身。ライドブッカーのソードモードで弾を叩き落とし、一気に間を詰める。
 十分に近付いた所で刃を真一文字に振るう。しかし電王は上半身を退いてかわし、その体勢から銃を放ってディケイドをのけ反らせる。
 ならばとガンモードに組み替え引き金を引くが、それらもことごとく当たらない。ディケイドは「奴はこちらの心でも読めるのか」と訝しむが、電王の流れるような動きを目にし、その理由に気付く。
「ダンス……か。舐めやがって、そんなもんで、俺の攻撃が……あッ!」
「へっへぇーん。お前の攻撃なんて当たらないよぉだ。それ、ばぁん! ばーん!」
 軽快なステップと無邪気で機敏な動作。ディケイドは相手の動きが全く読めず、逆に相手の攻撃を食うばかり。
 こんな子どもに押されてなるものか。握り拳で地面を叩き、怒りと自らの不甲斐なさに奮起したディケイドは、ライドブッカーの中から『アギト』のカードを取り出した。
「ガキが……、優しくしてりゃあ調子に乗りやがって。我慢しろよ、夏ミカン!」
 ――変身!
 ――KAMEN RIDE 「AGITO」
 目が眩まんばかりの光が周囲を包み込み、ディケイドの姿を仮面ライダーアギトへと変える。突然の変貌に、紫の電王は「なんでなんで」と怒り出した。
「えぇーっ。何それ何それ、ずるいずるーい! でもいいもん、僕の方が強いし」
「どうかな。そうとも、限らないぜ」
 不敵に笑い、先と同じステップを踏んて近付く電王。先ほどまでとは違い、何の迷いもなく一直線に近づくディケイド。不意に、電王の銃が火を噴いた。ディケイドはそれらを必要最低限の動きで避け、確実に歩を進める。
 進行を防ぐべく、足元に向けこけ脅しの銃弾を放つ。効果なし。
 ピンポイントに脳天目掛けて放つ。首を軽く曲げて容易くかわされる。
 敵は丸腰だ。間合いに入られる前に足技で仕留める。電王の足払いがディケイドを襲う。彼はまるでそうくるとわかっていたかのように、僅かに後ずさる。
 驚いたが、電王は思い切り仰け反り、ブレイクダンスの要領で両足蹴りを見舞う。だがそれも、さっと振られたディケイドの右手に弾かれ、無駄足に終わった。
 電王とディケイドとの距離は最早目と鼻の先。完全に彼の間合いだ。ディケイドは今まさに立ち上がらんとする紫の首根を掴み、鳩尾に必殺のボディブロー。
 腹と胸の間を押さえ苦しがる紫に、駄目押しの左回し蹴り。電王の体が後ろに大きく揺れたが、彼は背筋を突っ張らせて踏ん張り、戻ってきた反動を利用してディケイドに渾身の右拳を振るう。
 だがそれも彼には通用しない。そんなものなどお見通しだと、左肘で攻撃を受け止めて、続け様に必殺の右を奴の頬へと押し込んだ。

 重心を崩され、地面を二度三度と転がる紫の電王。今度は彼が悔しげに地表を叩いた。
「もういいよぉ、こいつキライ! クマちゃん、後はよろしくねー」
「よろしくって、勝手で出て行くなや……あぁ、もう!」
 紫の身勝手さに頭を痛めつつも、「クマちゃん」は夏海の体の前面に出て、バックルの黄色い釦を押した。
 ――AX FORM
 その上でバックルにパスをかざすと、紫の電王を形造っていたアーマーが一瞬にして組み変わり、金色を基調した鎧と、斧を象った仮面へと変化する。
 体中の筋肉が膨れ上がり、「電王・アックスフォーム」への変身が完了する。
「仕方あらへん。どっからでもかかってこんかい、世界の破壊者!」
「何考えてるか知らねぇがよ」握った拳を開き、平手で構える。「来いってなら、お言葉に甘えさせて……もらうぜッ」
 地を踏み締めディケイドが跳ぶ。来いと待ち構えるなら好都合。奴を気絶させて人魂たちを引っ張り出してやる。
 手の内を知っているのか、それとも始めから避けるつもりがないのか。金の電王は微動だにせずそれを待つ。
 妙だと思い、ディケイドは接触寸前で平手を拳骨に変える。吊り鐘を木槌で叩いたかのような音が鼓膜を突き刺し、余りの『硬さ』にディケイドの方が思わず仰け反った。
「なんだこいつ、かっ……堅てェ!」
「リュウタが泣き寝入りするくらいやから、どんな男かと思うたが、そんな強さじゃあ、俺は泣かれへんなぁ。ディケイド」
「泣く? 一体何の話だ」
「なんや、知らへんのかオノレは」彼は何故かその場で四股を踏み、えぇかと前置きして言う。「強さにもランクっちゅうもんがあってな。俺の強さは……『泣ける』でぇ」
「馬鹿言ってんじゃねえ。誰が泣くか」直ぐ様体勢を立て直し、再び殴りかかるディケイド。
「信じとらんようやな。えぇやろ、ならお前の体にしっかりと刻み込んだる」
 先程まで銃の形をしていた武器・デンガッシャーを斧の形に組み替え、向かって来たディケイドを逆に斬りつける。
 敵の動きは単調だ。容易く読めるしかわすのも訳はない。だが奴にそもそも避けるという選択肢はない。こちらの攻撃を敢えて受け、腕力任せの攻撃を仕掛けてくるだけなのだ。
「そらそらァ! 世界の破壊者っちゅうんは、笑ってまう程弱いんかぁ? 拍子抜けにも程があるでェ」
「好き放題言いやがって……、クソッ」
 怒りと悔しさに唇を噛む。その最中、一枚のカードがディケイドの脳裏に留まった。
「上等だぜ、とことんやってやる」
 ――FORM RIDE 「AGITO FLAME」
 バックルにカードを装填すると共に、ディケイドの体が赤く燃え、「アギト・フレイムフォーム」へと姿を変える。
 金の電王は驚きに目をしばたかせるが、「なんや、まだ変わりよるんか。せやけど、元があれじゃあ相手にならんで」
 電王の斧が振り下ろされる。ディケイドはバックルから飛び出した剣・フレイムセイバーを右手に構えて受け止めた。
「おぉ……おっ!?」金の電王は驚嘆の声を上げる。「動かへん……! お前、ただの青びょうたんやないな」
 いくら押そうが、剣は全く下がらない。ディケイドは剣の柄を両手で握り、電王の斧を払い落とした。
「ぬぅ……う!」
「おっと、こんなもんで倒れてくれるなよ」言って刃を袈裟に振り下ろし、手首を返して逆の上方に斬り上げる。
「どうだい大将。こいつは俺の奢りだッ」更に手首を返して剣を水平にし、真一文字に斬り伏せる。金色鎧の体が大きく後ろのめりによろけ、ディケイドに蹴り付けられて尻餅をついた。
「なかなかやるやないけ。ほんなら俺も本気で……」
「ちょっと、待ちなよキンちゃん」
 やる気満々の金色鎧を、夏海の体内に潜む別の人魂が呼び止める。
「キンちゃんの体に傷を付ける位の怪力なんだ。まともにぶつかったらただじゃ済まないよ」
「聞き捨てならへんな亀の字。こないな男に俺が負けると、本気で思うとるんか?」
「そうじゃないよ、体を借りてるこの子の事。キンちゃんはよくても彼女はまずいでしょ。“リョウタロウ”じゃないんだから、無茶しちゃダメだよ」
「言いたいことは分かるがな、だったらどうするつもりや」
「簡単さ、僕がやる」
 ――ROD FORM
 ベルトの青の釦を押して、三度バックルにパスをタッチ。金色の装甲が弾け飛び、亀の甲羅を模した仮面と青い鎧へと変化する。
 長槍を武器に戦う電王・ロッドフォームだ。
「お前――、僕に釣られてみる?」
 奴の赤い複眼が自信ありげにきらりと輝く。先程の金色や紫とは異なる雰囲気を醸し出している。恐らく只者ではない。だが、尻込みしていては夏海は救えない。
「お望み通り釣られてやるぜ。シカケごと食い千切ってやる」
 セイバーを手にディケイドが疾駆する。青の電王はそんな彼の足首を狙って槍を振るい、いきり立ったディケイドを思い切り転ばせた。
 出花を挫かれたが、それがなんだと立ち上がるディケイド。両手を地について体を起こすも、電王の槍が彼の右頬を引っぱたいた。虚を突かれてごろごろと転がる。距離を取れたので今度は立ち上がれたが、剣の間合いよりも槍の間合いの法が広いうえ、剣を囮にしての拳も蹴りもことごとくいなされ、完全に主導権を握られてしまった。
 困惑するディケイドに向かい、青の電王は不敵な口調で捲《まく》し立てる。
「相手の動きを読めるのが自分だけだって、本気で思ってた? 僕に言わせりゃ、そんなの生け簀で釣りするより簡単なんだよね」
「ンな阿呆な。てめぇら人魂如きに!」
「キミがどう思おうと勝手だけどさ、そんじょそこらの相手と僕を一緒にしないでほしいな。そぉらッ」
 出そうとした手を読まれ、先程まで以上に何も出来ない。傷付きふらついた所で、槍の穂先がディケイドの目玉を捉えた。
「さ、いい加減諦めて釣り上げられてよ。下手に意地張ってもいいことないし、キミじゃ僕には勝てないよ」
「どうかな……」疲労で呼吸が相当崩れている。「俺の方が……もっと強い!」
「やれやれ、まだやるの?」
 苦し紛れに放たれた刃を槍で弾き、右手ごと持ち上げて攻撃を防ぐ。だがディケイドの狙いはそこではない。電王の注意を右手に向けさせ、左手に隠し持っていたカードの装填を邪魔させなければよかったのだ。
 ――FORM RIDE 「AGITO TRINITY」
 バックルを閉じると同時に、変身を待たずして左拳を突き上げる。左腕が真っ青に染まり、薙刀・ストームハルバードが彼の手に納まる。その勢いのまま電王の胸を突いて拘束から脱け出した。
 炎の力と風の力、加えて大地の三つの力を宿した「アギト・トリニティフォーム」だ。
「やっぱり、な」ディケイドが仮面の下でにたりと笑う。「心を読むなんて嘘っぱちだろ。これ迄の戦いから俺のしそうな動きを推測して、嘘で『出来る』ように思わせただけだ。もしそれが本当なら、今の不意討ちだって余裕でかわせた筈だしな」
「成る程。安いエサには釣られないってワケ」青鎧は不敵に鼻を鳴らす。「でもさ、竿の二刀流は反則じゃない?」
「人のツレに取り憑いといて反則も糞もあるか」
 今度は此方の番だ。青の薙刀と赤の剣を同時に振って、電王に立ち向かう。範囲の広い薙刀で相手の攻撃を捌き、間合いに潜って剣の一発を丁寧に当てて行く。
 電王の膝が折れる。疲労が積み重なっているのは彼も同じなのだ。宿主である夏海の体力も心配だ。決めるなら今しかない。
「遊びは終わりだぜ人魂共。お前らじゃ夏ミカンは手に余るんだよ」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「a-a-a-AGITO」
 フレイムセイバーとストームハルバードを放り投げ、金縁取りのカードをバックルに挿入。頭部の二本角が六本角へと変わり、足先から放出されたエネルギーが地面にアギトの紋章を映し出す。
「ちょっとちょっと、そこまでやる?」それを見た青仮面が素っ頓狂な声を上げた。「しょうがないな、まったく」
 ――FULL CHAEGE
 やられる前にやれと言わんばかりに、電王もパスをバックルにかざして放り投げる。青い稲妻のようなオーラが彼の足先に集束し、亀の甲羅のような形を成す。
 ディケイドと電王が全く同じタイミングで飛んだ。ディケイドは両足を、青電王は右足だけに力を集中させ、渾身の飛び蹴りを放つ。
 二人の蹴りの衝撃が街中を大きく震わす――、事態にはならなかった。彼らの蹴りが交錯するまさにその時、何処からか吹き飛ばされてきた赤き闖入者に邪魔されて、どちらの攻撃も空を切った為だ。
「なんだ今のは! 誰が横槍を入れやがったッ」
「痛てて、て……。釣った獲物を横取りするなんてマナー違反だよ」
 二人の戦いを中断させた闖入者。それは士が先ほどまで探していたユウスケ――の体に取り憑いた謎のイマジンであった。彼も何かと戦っていたのか、クウガの姿になっている。
 二人に詫びること無く、彼は大変頭に血が上った様子で叫ぶ。「こんにゃろう、ちきしょうめ! なんだよ、何なんだよお前は!」
「お前! 何でここにいる、いや……、俺たちの邪魔をするんじゃない」
「その声……」ディケイドにどやされ漸く我に帰る。「さっきのノッポ……じゃねえ! なんだそのどぎついピンクは! お前みたいなアヤしい奴に知り合いはいねぇぞ!」
「ピンクじゃない、マゼンタだ! 見た目で判断するな、さっき出会ったばかりだろうが!」
「えっ、ホントにお前ぇ!?」にわかには信じられんと訝しみ、「まぁ……、声はあいつと一緒だったし、そういうことならそうなんだろうな」と結論付けた。
「そんなことより、お前は今まで何をしていた。どうして吹っ飛ばされて来たんだよ」
「俺のせいじゃねぇ、あいつだアイツ!」
 クウガの指差す先に居たのは、クリーム色の鍔あり帽に焦げ茶のジャケットを着こなすトレジャーハンター、仮面ライダーディエンドこと海東《かいとう》大樹《だいき》。「アギトの世界」にて未確認生命体対策班より強奪した二輪車・ガードチェイサーを駆って、イマジンの乗り移ったクウガを追っていたようだ。
「なんだよ……この忙しい時に」ディケイドは彼に聞こえるよう、わざとらしく舌を打つ。「お前の大好きなお宝はここには無いぜ。おととい来や……」
 士の投げやりな言葉に海東は何も答えない。いや待てよ。そもそも状況が謎だ。何故クウガがこうも傷だらけになっている。変身者が違うとはいえ、変身せずにクウガをここまで圧倒出来るのか。自分程じゃないが、クウガ――小野寺ユウスケもそれなりの手練れの筈だぞ。
 海東はそれらの疑問に答えることなく、バイクから降りて楽しげに口元を歪ませ、此方に向かってくる。
「な……何ッ!」ただ飛んだだけならいい。彼は十数メートル離れた場所から、助走もつけずに自分たちを飛び越えたのだ。人並み以上の身体能力を持っているとはいえ、これは妙だと言わざるを得ない。
 戸惑う彼らを尻目に、海東はその場で何かを拾い上げ、漸く口を開いた。
「思った通りだ。君たちを放っておけば、そこに必ず電王は現れる。感謝するよ士。それに名無しのイマジン君」
「何言ってんだ海東。お前、俺たちを利用して何しやがった」
「これ、さ。君たちが争ってくれたお陰で簡単に手に入ったよ」
 これ見よがしに拾ったパスを掲げる。青電王が眉をひそめる。「君が誰だか知らないけど、漁夫の利狙いだったってワケ。良くないなぁ、そういうの」
 言って、返せと海東に迫るが、彼はそれに答えずパスをおもむろに臍の前にかざす。彼の瞳が“緑色”に輝いた瞬間、電王と同じベルトが彼の腹部に現れた。
 ――変身
 ――GAOH FORM
 電王と同じ鎧が海東の体を包み込み、発せられたオーラがアーマーとなってそこに合わさる。ディエンドとは違う。電王ともまるで違う。鰐《ワニ》の顎を模した、深緑色の雄々しき仮面。刺々しい装甲。仮面ライダー『牙王《ガオウ》』だ。
「お前……! なんだその姿は。それもお前の言う『お宝』だっていうのか」
「君には関係の無いことさ。それよりも」
 海東の変身した牙王は、士の物とは違う『日付の綴られたチケット』をパスの中にセットして高々と掲げる。瞬間、次元の壁を突き抜けて一両の『電車』が飛び出した。電王たちの活動拠点、時を走る列車・デンライナーだ。
 士にも事の次第が読み解けて来た。海東大樹がこの世界で狙うお宝。それがこのデンライナーなのだろう。その考えは当たっていた。デンライナーの運転席の扉が開くと共に、牙王はそこに飛び乗ったのだ。
「このデンライナーは頂いて行くよ。あぁっと……、そうだ」思い付いたように軽く手を叩く。「くれぐれも、追って来ようだなんて考えないでくれたまえ。相手をするのが面倒だからね。もし忠告を守らないのであれば――」
 言い終わらないうちに、牙王は腰の武具を剣の形に組み替え、緑色に輝く切っ先だけを放つ。ディケイドたちは咄嗟にかわしたが、彼らの背後に建つビルは、それを受けて斜めにずれ、瓦礫の雨となって彼らを押し潰した。
「次は直接君たちを斬ることになるからそのつもりで。それじゃあ、さよなら」
 怒る訳でも、嘲笑う訳でもなく、無感情にそれだけを告げて、瓦礫に埋もれたディケイドたちに背を向け、列車の運転席へと向かう。
 席に備え付けられた二輪車・マシンデンバードにパスを挿し込み、強くアクセルを空噴かす。チケットに定められた時間が車体フロントに刻まれ、発車を告げる汽笛が鳴り響く。
 やっとのことで這い出したディケイドは、去って行かんとするデンライナーを瓦礫の中から見つめる。放っておいても良かったが、自分をダシにしてお宝を得たのは許し難い。ディケイドは何かないかと周囲を見回し、海東が乗り捨てて行ったガードチェイサーに目を付けた。
「追ってくるなだって? 俺がお前の言うことを素直に聞くと思ったのか?」しめたと思い、三枚のカードをドライバーに装填。
 ――KAMEN RIDE「KIVA」
 ――ATTACK RIDE「MACHINE KIVA」
 ――ATTACK RIDE「BRON BOOSTER」
 仮面ライダーキバの姿に変身すると共に、その常用バイクであるマシンキバーと、そのサポートユニットであるブロンブースターを呼び出し、飛び乗ってアクセルを強く噴かす。
 燃料は充分、視界良好。発進せんとしたその時、ブースターの部品でごてごてとしたバイクの助手席に、手負いのクウガが乗ってきた。
「俺も乗せてけピンク野郎。奴との戦いはまだ終わっちゃいねぇんだ」
「終わるも何も、手も足も出ないでぼろぼろにされた奴が何言ってやがる。退け、電車に追い付けなくなるだろうが」
「うるせぇ! ガタガタ言わずに走らせろ! ケツの穴にぶっとい刃ブッ刺されてぇか、あぁ!?」
 相当頭に来ているらしく、言葉も態度もいつも以上に口汚い。海東との争いで彼が役に立つとは思えないが、弾除けくらいにはなるだろう。
 ディケイドはそう考えて静かに溜め息をつき、「分かった、しっかり掴まってろよ」
「話が分かるじゃねぇか。……って! うほぉぉぉぉッ!?」
 時速1500キロを叩き出す怪物マシン・ブロンブースター。取っ手もなく、捕まるべき部分のないブースターの後部座先は、凄まじい風の格好の的となっていた。
 それでも必死にしがみつき、漸くデンライナーに追い付いた。列車が、それを支えるレールが中に浮く。時間移動をする合図だ。振り切られたら追いようがない。このままでは逃げられる。だがそうはさせない、させるものか。
「しゃあねぇな、お務め……御苦労さん!」
 言うと同時にあろうことかエンジンを急停止させるディケイド。最大加速時から急に止まったことで、車体後部は大きくたわみ、一方に思いきり重量が掛かったシーソーのように跳ねた。
 ディケイドはその跳ねを利用してデンライナーまで飛んだ。押し潰されそうな程の圧が掛かったが、お陰で列車の運転席、一両目のドアの取っ手を掴むことが出来た。
「うはぁ……おぁ、おお……。死ぬかと、思ったぜ」
「何だ。よく振り落とされなかったな。褒めてやるよ」
 デンライナーに無賃乗車したのはディケイドだけではなかった。ブロンブースターにしがみついていたクウガもまた、シーソーから振り飛ばされたのだ。
「なんてことするんだよどピンク! 死んじまったらどう言い訳するつもりなんだ、あァん!?」
「生きてるんだから文句言うな。そら、ヤツのお出ましだぜ」
 引き戸を開け放し、運転席へと潜り込む。二人の闖入者の存在に気付いた牙王はデンライナーを自動操縦に切り替え、溜息交じりに振り向いた。
「やれやれ。あれだけ言ったのに……。怖いもの知らずを通り越して、ただの阿呆だな」
「あぁ、俺ァ確かに馬鹿だよ」牙王の言葉に、激高したクウガが答える。「けどな! そんなこたぁ俺とお前の喧嘩にゃ関係ねえ。違うか? いいや違わない!」
そこにディケイドも続く。「お前に文句言われる筋合いはねぇな。人魂の力を借りなきゃこんなこと出来なかったくせに」
「人聞きの悪いこと、言わないでほしいな」牙王がやれやれと首を振る。「彼の力を借りなくたって、デンライナーを手に入れることくらい造作もなかったさ。目的が一致していた故に手を組んだに過ぎないよ」
「目的……だと?」
「そう、僕と彼の目的は――」

 ――お前たち邪魔な次元戦士たちを始末し、『時を走る戦艦』を我が手にすることだ!
「何だって!?」
 その言葉を口にしたのは牙王――海東大樹の筈だ。しかし士どころか、喋った本人が一番驚いている。これは一体どういうことか。答えは一つしかない。
 牙王の変身が解かれ、人の姿に戻った海東から多量の砂が溢れ落ちる。砂は一瞬で形を成し、鰐のような姿のイマジンへと変貌した。
「まんまと罠にかかったな。電車の乗っ取りなんぞ、ただの口実。こうして騒ぎを起こせば、必ずお前らが乗ると踏んでいたのよ!」
「士の始末の為に僕を利用した、だって? そいつは聞き捨てならないな!」
 意識を取り戻した海東が、起き上がりつつ引き金を引く。しかしそれは想定の範囲内だったらしく、首の動きだけでそれをかわし、腹部目掛けて後ろ蹴りを放った。海東の顔が苦痛に歪み、少量の胃液を床に噴き出す。
「安心しろォ、貴様も抹殺のターゲットに入っている。故にィ、グッバァイ」
 鰐イマジンは海東の首根を掴み、運転席の扉を開けて彼を放り投げる。既に街は豆粒のように小さくなっていた。こんなところから落ちて無事でいられる訳がない。
 しかしディケイドが驚いたのはそこではなかった。イマジンの裏切りなど最初から予想できていたことだ。見抜けなかった海東が悪い。
 それよりも彼は今こう言った。自分たちを始末するのが目的であると。こいつはただの怪人ではない。自分の何かを知っている。
「また『世界超え』の奴らか。とっとと失せろと言いたいところだが……、お前、俺のことを知っているんだな。洗いざらい吐いてもらうぜ」
「その切り返し。“ヤツ”の言うとおり、本当に記憶を失っているらしいな。貴様に倒された奴らが聞いたら泣いて喜ぶだろうよ」
「記憶がない? ヤツらが泣いて喜ぶ? キーワードを小出しにするなよ。話すんならとっと話せ」
「おぉい、手前ェら。さっきからゴチャゴチャとうるせぇんだよ」ディケイドの後ろから、クウガが勝手に動き出す。「言ったろ。そんなもんはなぁ、俺とお前の喧嘩にゃ関係ないんだよ。どうもキナ臭い野郎だと思ったが、やっぱりイマジン絡みか。行くぜ行くぜ、行くぜーッ!」
「馬鹿野郎、まだ話の途中……」
 ディケイドの静止を振り切り、拳一つで鰐イマジンに向かうクウガ。イマジンはそこから仁王立ちで微動だにせず、右手をぱちんと鳴らした。瞬間、運転席の壁を突き破り、巨大な鎚がクウガの体をもう一方の壁に叩きつけた。
「ちきしょう、不意打ちかよッ!」
「おっと! まだ倒れてくれるなよォ。これで終いだ、終いなのだッ!」
 鎚の中心が真っ二つに割れた。切れ込みには鮫の歯のような切れ込みがいくつも入っており、まるで動物のように動く。鰐の顎の如き不気味な鎚はクウガはおろかディケイドをも巻き込んで噛み付いた。
「うわぁあ、やめろ、おいやめろ! 俺を喰っても美味くねぇぞ、やめろっての!」
「人を巻き込んどいてなんだその態度は!」
 ふざけるなと毒付くが、顎にかかる力はお構いなしに強まるばかり。反撃しようにも両腕は塞がれており、文字通り手が出せない。二人の頬がぴったりとつき、軋む音が生じる。これ以上はまずい。ディケイドなど呆気ないと笑うこいつを見返さねば。そう、鰐のイマジンは彼らを始末するので精一杯で、他に注意を払うことなどなかった。
 故に、壁の外から砲撃が起きて、自らが吹き飛ばされることなど予想だにしていなかった。顎型の鎚から解放され、何だ何だと辺りを見回す。
「うォっ、なんだこの穴は!」二人の目に飛び込んで来たのは、運転席右側に出来た大穴と、その先で軽やかに宙を舞う、亀型の飛行機械だ。青の電王・ロッドフォームが中央に立ち、こちらに砲門を向けている。
「時の列車はデンライナーだけじゃない、僕たちだって持っているのさ」単騎じゃ時を越えられないけどね、と彼は心の中で付け加える。
 鰐イマジンは突然の砲撃に驚くも、彼がデンライナーの破壊を恐れてこれ以上踏み込めないのと、青のイマジンが宿主としている者を見極め、愉しげに口元を歪ませた。
「うるさい蠅め。お前みたいなのはお呼びじゃないんだ」
 ディケイドたちを壁に押し付け、鎚の顎を開いた穴に向ける。柄が一瞬にして伸び、電王の脇腹に喰らいついた。
 不意を突かれて苦しがる間に柄を戻し、自分の元へと手繰り寄せる。
「こいつは思わぬ拾い物だ」電王から三つの光球を引きずり出し、夏海の首筋に刃物を突き立てる。「動くなよ。さもなくば……言うだけ野暮だな」
 動くなというくせに、自分はディケイドたちに近付いて行く。彼の雰囲気に威圧され、二人は少しずつ後ろへと下がってしまう。
 運転席を抜け、二両目の中腹に足を踏み入れたところで、鰐イマジンは飛びのいて運転席に戻り、左腕を横薙ぎに振った。一両目と二両目の間が切り裂かれ、落ちて行く。
「さらばだ毒虫共。なァに心配するな、時の列車は俺が有効に使ってやるよ」
 笑いながらディケイドたちを蹴落とし、時の彼方へと去って行く。推進力を失った残りの列車は、ビル郡のどれよりも高い場所から重力に従い落下していく。

「やった……、やったぞ! あの厄介者を、かの破壊者を、この俺がッ! 仕留めたッ! 俺が、俺がッ、この俺がァ!」
 歓喜に震える鰐イマジンは、自分が光夏海という人質を取っていることを思い出す。彼女は何も知らずただすやすやと眠っていた。最早彼女に利用価値はない。生かしておく必要も、当然ない。
「と言うわけで、あの世で奴に宜しく言っておいてくれ」
 運転席に開いた穴から夏海を放り出そうとする。時の荒野に投げ出されれば当然命は無い。鰐の手が夏海の体から離れたが、代わりにそれを掴む者がいた。
 彼は夏海を引っ張り上げると、鰐イマジンに向き直り、拳骨で制裁を下す。「馬鹿はどちらだ。確かにディケイドとディエンドを始末しろと言った。だが、彼女まで巻き込むことなど、誰が許可するものか。恥を知れ!」
「恥を知れだ、ァ? あんたには借りがあるが、部下になった覚えはない。何しようが俺の勝手だろう」
「ほう。そうか、そうか……」男の手に蒼い不気味な光が灯る。「目的は達した。故にお前を生かしておく理由も無い。もう十分生きたろう。そろそろ仲間の元へ還るが良い」
「まま、待てよ。配下になった覚えはないが、裏切るとも言ってねぇ。今のはちょっと魔が差しただけだ」
「本当に……そうなのか?」
「したくないしする気もない。誓って言う」
「そうか……」鳴滝は「興味が失せた」と吐き捨てて踵を返す。「彼女は生かしておくのだぞ、必ずな」
 そう言い残して、男の姿は虚空に消えた。蒼い光の件といい、人の形を成してはいるが、本当に人なのかどうかすら疑わしい。
 だが彼にとってはどうでもいいことだ。目の上の瘤《こぶ》でしかない存在のことなど、詳しく知る気にはなれない。
「クソッ、クソッ……! いい気になりやがって、今に見ていろ『鳴滝』、”鬼の切り札”さえ揃えば……。時間も空間も、過去も未来も全て支配し、必ず目にモノ見せてくれる。必ずな」
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