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「二次創作」
それでも、わたしは魔法少女だから

まどマギxディケイド 『それでも、わたしは魔法少女だから』 そのご

 ←まどマギxディケイド 『それでも、わたしは魔法少女だから』 そのよん →まどマギxディケイド 『それでも、わたしは魔法少女だから』 そのろく
 一部pixiv掲載版と同様の描写がございます。
 おそらく本筋には何の問題も無い……はず。

 「そのろく」は本日22時頃に、完結となる「そのなな」は明日(11/1)掲載予定です。

それでもわたしは、魔法少女だから:そのご【原作:魔法少女まどか☆マギカ】


◆◆◆

 ――あぁ、もうどうでもよくなってきやがった。
 ――遅かれ早かれ、生きてる以上死からは逃れられない。
 ――ここらで幕引きをしようじゃあねぇか。過去も何も見つけてねぇが、とっかかりを残したまま消えてくってぇのも乙なもんだ。
 ――頼むぜ夏ミカン。俺を早く黄泉の世界とやらに連れて行ってくれ――。

 門矢士の心は、夜の闇よりも黒く深い絶望に支配されかけていた。夏海を救うことはおろか、自分の命さえも、どうでもよいことになりかけていた。
 何もかも諦め、握っていた武器を捨てた士は、自分の首を絞める夏海の手に自身の手を載せ、その全てを彼女に委ね、目を閉じる。

 それで全てが終わった。喉を潰され、呼吸困難で死んだ筈だ。だが、今の自分は先ほどまでと同じように空気が吸える。首を絞められていると言うのに痛みはない。
 なんだ、もう死んだかと辺りを見回すも、目の前に広がるのは先程までと同じ趣味の悪い礼拝堂の中。おかしいのはそれだけではない。士の首を絞めていた夏海の腕が、今度は自分の首輪を掴んで苦しがっているではないか。
 虚ろだった意識を覚醒させ、どういうことだと再び辺りを見回す。意識を取り戻した士の目に映ったのは、青色の棒で夏海の首輪を刺す、仮面ライダークウガの姿だった。

「――馬鹿野郎、何ぼぉっとしてやがんだ士ァ! 夏海ちゃんがピンチなんだぞ!」
 予期せぬクウガの登場に、士はディケイドの仮面の中で目を見開いて驚く。「馬鹿はお前だ! 子どもの御守りすら満足にできねぇのか」
 同時に、自身がユウスケに課したことを思い出し、助けられたことも忘れて、荒い口調で言及するディケイド。クウガは即座に「言いがかりだ」と反論する。
「そのカナメちゃんを追ってたら、こんなわけのわからない場所に出ちゃったんだ、不可抗力なんだって」
「何が言いがかりだ。逃がした時点でお前が悪い」
 クウガと言い争いをする最中、ディケイドは首輪を掴んで苦しがる夏海の姿に疑問を抱く。痛みを感じ、それを引き剥がそうとするのは分かる。しかし、それで自分が絶望から解放されるのはおかしいのではないか。
 どうしてそうなるのかと思案を巡らす。ディケイドは彼が夏海の首筋に刺した棒と、彼の体表を目にして、一つの結論に達した。
「そうか……そういうことかよ」
 彼が今目にしているのは、青のクウガ・ドラゴンフォーム。手持ちの武器はドラゴンロッド。
 仮面ライダークウガは手足や手持ちの武器から「封印エネルギー」を放出し、グロンギたちを倒す戦士だ。そのエネルギーが首輪を伝い、自分の中に巣食いかけていた絶望を断ち切ったのではないか。
 その証拠に首輪が形を変え、自分の腕に取り付かんとしていたあの腕輪は、砕けて千切れ床に散乱している。ディケイドは「助かったぜ」と仮面の下でにやりと笑った。
「その話は後だ! そこを動くなよユウスケ、夏ミカン!」
「えぇ、えッ?」
 床に落とした音撃棒を拾い上げ、念には念をと、ライドブッカーから「響鬼・紅」のカードを引き抜いてドライバーに装填。
「一発で決めてやる、音撃打・灼熱深紅の型!」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「Hi-Hi-Hi-HIBIKI」
 ファイナルアタックライドのカードを装填すると同時に、ディケイドは夏海の腹部目掛け、音撃棒を勢いよく振るう。清めの音を打ち込まれた夏海は、炎の紋を体に刻み、それが弾けると同時に、長机の間と間に吹き飛ばされた。
 
「痛てててて……いきなり何するんだよ士」
 夏海と共に吹き飛ばされ、机や椅子の下敷きになったクウガが、よろよろと起き上がる。
 ディケイドは「夏海のためだ」と彼の言葉を遮って、近くに倒れている夏海の様子を見るよう促した。
「夏海ちゃん、夏海ちゃん! 大丈夫か、夏海ちゃん!」
 机と机の間に挟まって横たわる夏海を抱き上げ、軽く揺すって無事を確かめるクウガ。
 清めの音撃が効いたのか、変身は既に解けており、絶望を増幅させるあの首輪も、跡形もなく消え去っていた。
 意識はないが、寝息にも似た穏やかな息遣いが聞こえてくる。無事にケイトの呪縛から解き放たれたようだ。二人のライダーは仮面の下で安堵の溜め息を漏らした。

「私の口付けが破られるなんて……! けれどまだ終わりじゃないわよ、今度はあなたたちが喰らいなさいッ!」
 その一瞬の隙を、ドクター・ケイトは逃さなかった。夏海に気を取られた二人のライダーに向かい、杖を振り上げてあの光線を放ったのだ。
 気付いた所で時遅し。光線は彼らの首筋近くにまで迫っていて、避けようがない。あのディケイドを自分が仕留め、手駒に変えた。ケイトはこれで昇進だと高笑うが、杖を握る右手目掛けて銃弾が迫っていることには、全く気付いていなかった。
「あぁ……ッ、なんで、いきなりッ!」
 銃弾はケイトの右掌を貫き、握っていた杖を叩き落とす。音もなく突然放たれた銃弾に動揺し、何奴かと必死になって辺りを見回す。施設の入り口に、拳銃を構えてこちらを狙っている焔アケミの姿を見つけるのに、それほど時間はかからなかった。
 彼女に気を取られ、杖を拾うことすら忘れたことがケイトの運命を分けた。アケミに気を取られたことで反応が遅れたケイトは、左脇から飛び込んできた彩花ミキの突撃を避けることが出来なかった。
「トモエさんの、仇ぃいいいいいいいいいッ!」
「う……、ぐッ!」
 両手に構えたミキの剣が、ケイトの両手を刺し貫いて、そのまま壁に叩きつけて釘付けにする。ミキはケイトの顔に膝蹴りを見舞って、空中で一回転し、痛みに悶えるケイトの顔を横目に着地した。
「なるほどね、こんなもんのためにトモエのやつはねぇ……。けどよ、これで終わりだ!」
 その上で、杏子サクラが右脇からケイトのいる大壇に登り、転がっていた杖を折って投げ捨てる。放られた杖はサクラの魔法の力によるものか、炎に包まれて消し炭と化した。

 鮮やかな形勢逆転だ。ディケイドは壇上に立つミキとサクラ、入り口の前で拳銃を構えるアケミの姿を見て口元を歪ませた。
「お前ら……やりゃあ出来んじゃねぇか、見直したぜ」
「私の力じゃないわ。強いて言えばあなたと……あいつ」
 苦々しくそう語り、アケミはディケイドと、その背後に立つ二足歩行の白い生き物を指差す。円カナメにソウルジェムの秘密を教え、この場所まで誘導し、ユウスケに彼女を追わせる算段を立てた者、「キュゥべえ」だ。
「やってくれるわね。麻未トモエを利用して……そこまでしてカナメを魔法少女にしたいっていうの?」
 鋭い目付きで銃口を向け、怒りに満ち満ちた表情を見せるアケミ。
 キュゥべえはそれに一切気圧されることなく、無表情のまま淡々と言葉を返した。
 ――酷い言われようだなあ、今君たちが生きていられるのは僕のお陰だっていうのにさ。わけがわからないよ。
「黙りなさい。けれど、お前の企みもここまでよ。ドクター・ケイトを倒して、何もかも終わりにしてやる」
 ――そうだね。ディケイドに大ショッカーに麻未トモエのソウルジェム……。イレギュラーな事態はもう勘弁してほしいよ。
 悪びれることなく切り返すキュゥべえに、苛立ちを募らせるアケミ。ディケイドは「放っておけよ」と平手を振って、壁に釘付けとなったドクター・ケイトの方に彼女たちの注意を向けさせる。
「それよりも、まずはこいつだ。とっとと終わらせてメシにしようじゃねぇか。この小動物の折檻もな」
「……そう、ね。その通り」
 ディケイドの一言で我に返ったアケミは、ケイトの方に向き直り、未だ抵抗を続ける彼女の足に鉛弾を撃ち込んだ。
「もう逃げられないわよ、イレギュラー。大人しくここで消えなさい」
「トモエさんの仇……、討たせてもらうわ!」アケミに続き、剣先をケイトの顔に向けてミキが叫ぶ。
「あんたから受けた借り、きっちりと返させてもらうぜ、覚悟しな!」自慢の槍を抜いたサクラが、それをこれ見よがしにぶんぶんと回しながら自信たっぷりに言う。

 三人の魔法少女と二人のライダーは、各々武器を構え、とどめの一撃を放つべくじりじりと迫る。自分たちの勝利を確信していたからか、ケイトが俯いたまま、その下で不気味な薄笑いを浮かべていたことに、彼女たちは気付けなかった。

「あなたたちまさか、「これで終わり」だなんて……、そんなこと考えているんじゃないでしょうねぇ?」
「な、なんだよ。事実その通りだろ。この期に及んで負け惜しみ?」
 そのことを最初に不審がったのは彩花ミキだ。痛みを堪えて苦悶の表情を見せてはいるものの、これから殺されるというのに、恐怖を全く表に出していないのだ。
 大ショッカーの幹部たる矜持《プライド》からか、まだ何か策があるとでも言うのか。彼女の脳裏に一抹の不安が過る。ミキの疑問をよそに、ケイトは震える声で話を続ける。
「これだけ沢山の魔法少女を素体にした魔女よ。隠れる場所なんてどこにもない。なら、何処に居ると思う……?」
「あんた、一体何のこと言ってんのよ」
「何やってんだ馬鹿ミキ。そいつはもう虫の息なんだぞ、トドメぐらいちょちょいっと刺しちまえよ」
 ケイトの言葉に聞く耳を持たず、戸惑うミキにとどめを刺せと促すサクラ。それに応じ、疑問は一先ず横に置いて、手にした剣を振り上げるミキ。

 それが、彼女たちの最期の言葉となった。
 早くしろと野次を飛ばしていたサクラの声が消えた。どうしたのかと彼女の方に顔を向けると、杏子サクラは、鳥の羽根の様な耳を生やし、道化師のような顔の化け物に上半身を喰われ、残された胴体は炎に包まれ消し炭となった。
 どうなっているんだとディケイドたちが考えるよりも早く、今度はケイトに剣先を向けていた彩花ミキが、空から伸びた巨大な手に捕まり、頭と両足を残して握り潰されてしまう。ミキの頭と足は、泡に包まれて気化し、跡形もなくこの世界から消え去った。

 瞬く間に二人の魔法少女が死んだ。何故、誰が、どうやって。わけが分からないにも程がある。彼らのそんな姿を見て、先程以上に嫌味な笑みを浮かべるケイト。彼女の仕業なのは間違いないが、腕や足を潰され、魔女の口付けさえも封じられた今、彼女にこんなことが出来るのだろうか。否、不可能だ。
 三人が驚き戸惑う中、ドクター・ケイトは勝ち誇ったように高笑いを上げた。
「これでおしまい? 違うわ、終わりなのは私じゃない、あなたたちの方。見せてあげるわ、私の研究成果、人口魔女の合成・融合態の力をね」
 ケイトの求めに応じ、ディケイドたちの足元が激しく揺れる。それまで「床」だったものは地面から切り離され、空中で何らかの形を成して行く。
 薄い暗幕の張られた鳥籠に、格子の隙間からは無数の腕と不気味な小窓。登頂部には、何本もの剣が刺さった蓄音機。籠の下では巨大な歯車が不気味な音を立てて回っている。

「なん……なんだよ、こりゃあ!」
「分からない、分からないけど……怖い!」
 これも”魔女”だと言うのか。二人の仮面ライダーは恐怖に顔を引き攣らせ、焔アケミは強大過ぎる敵の出現に、ただただ唇を噛んでいた。

「融合態だぁ? ンな木偶の坊、すぐにブッ倒してやる」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「Hi-Hi-Hi-HIBIKI」
 だが、怖れてばかりもいられない。ディケイドは頭上から襲い来る腕を音撃棒で薙ぎ払い、ファイナルアタックライドのカードをバックルに装填。
 御魂を模った炎が檻の柵と柵の間にくっつき、音撃棒でそれを叩いて清めの音を流し込む。しかし、響鬼・紅の強力な音撃を浴びてなお、籠の化け物は何事もなかったかのように腕を動かし、音撃を叩きこんで隙だらけになったディケイドを吹き飛ばした。
「こンの野郎……音撃すら効かねぇってのか……よッ!?」
 末広がりの机と机の間に叩きつけられたディケイドだったが、そこで休んでいるわけにはいかない。籠に備え付けられた小窓の中から、あの道化の化け物が時報を知らせる鳩時計の鳩のように飛び出し、ディケイドを喰おうと大口を開けていたからだ。
 咄嗟に体を捻り、なんとかかわすことが出来たが、ディケイドは目視するまで接近して来ていることに気付けなかった。
「油断大敵。注意一秒怪我一生ってか。そうかいそうかい、だったらこっちも全力で行かせてもらうぜ」
 ――KUUGA! AGITO! RYUKI!
 ――FAIZ! BLADE! HIBIKI! KABUTO!
 ――DEN-O! KIVA!
 ――FINAL KAMEN RIDE 「DECADE」!!
 ベルト右腰に嵌ったツール「ケータッチ」を取り外し、九つの仮面ライダーの紋章を指でなぞる。ディケイドの胸部に9人の仮面ライダーカードが並べられ、盛り上がった頭の上に自分のライダーカードが填まった。
 仮面ライダーディケイドの最強形態、『コンプリートフォーム』だ。

 ――HIBIKI.KAMEN RIDE「ARMED」
 ディケイドは化け物の腕の攻撃をかわしつつ、ケータッチの響鬼のマークにをタッチ。
 胸部に並んだカード全てが響鬼のものへと代わり、彼の隣に響鬼の最強形態「装甲《アームド》響鬼《ヒビキ》」が召喚された。
「今度こそ決めてやる、くらえッ!」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「Hi-Hi-Hi-HIBIKI」
 飛び退きつつ、右腰のドライバーにファイナルアタックライドのカードを装填するディケイド。並び立つ響鬼の装甲《アームド》声刃《セイバー》と、ディケイドが持つライドブッカーの刃に清めの炎が灯る。
 いざそれを放たんとした瞬間、檻の中の小窓が開き、道化の化け物が二人のライダーを一口に喰らう。
 しかし刃に灯った清めの炎は止まらない。ライダーを飲み込んだ化け物の口元・両側面からバーナーの様な炎が噴き出し、鋏《ハサミ》のように交差することで、化け物の体を内側から斬り裂いたのだ。
 顎を無理矢理こじ開け、中から飛び出す二人のライダー。道化の化け物は上顎と下顎を境に真っ二つに斬り裂かれ、どろどろに溶けて消え去った。
「ざまぁみろケダモノ大将。このまま一気に終わらせてやらァ」
 ディケイドは間髪入れず、自分の背丈以上に伸びた清めの炎を、空飛ぶ檻の化け物に叩き込むが、魔女の体を貫くまでには至らない。馬を駆り、蝋燭頭に中華風の着物を纏った不気味な“使い魔”に阻まれてしまったからだ。
「何だこいつはッ! うざってェ、手前ごとぶった斬ってやる!」
 阻むのならまとめて始末すればよい。ディケイドと響鬼は腕に有らん限りの力を込め、蝋燭頭の体を袈裟に斬り裂いた。身体中から煙を吐き、原形を無くして溶けて行く。
 しかし、何かがおかしい。溶け行く蝋燭頭からは倒したという手応えが全く感じられない。それもその筈。ディケイドが倒したその“使い魔”は、彼を挟み撃ちにして立っていたからだ。
 渾身の一撃が効かず歯噛みするディケイドを、槍を持った二体の蝋燭頭が引き叩く。ディケイドは空を斬る程の速さで礼拝堂の壁に叩きつけられてしまうも、そうして生じた砂埃を隠れ蓑にし、ミキの残した剣をタイタンソードに変えて、紫のクウガが飛び出した。
「士! あぁくそっ、外からがダメだってんなら、中に直接ブチ込んでやる!」
 手にした剣を力任せに振るい、(攻撃が通るであろう)檻の格子と格子の間に刺し入れようとするが、花弁のように広がった無数の掌に阻まれる。
 掌の花の上に着地し、苦々しくこれもダメかと呟くクウガの頭上に、別の格子の隙間から現れた、青銅の手甲を嵌めた逞しい腕が、彼を押し潰さんと迫り来る。
「調子に乗ってんじゃ……ねぇぞ! 舐めんなッ」
 潰されるより前に跳び上がり、タイタンソードを振るうクウガ。落下の勢いを借りて放たれたそれは、手甲の付いた奴の腕を豆腐のように斬り裂いた。
「ざまぁみろ、やってやったぜこんにゃろう!」
 着地し、そう言って勝ち誇ったのも束の間、手甲の腕は切り口から色鮮やかな魚の尻尾を生やし、人差し指と中指と薬指があらぬ方向に曲がって一体化。赤色のマントへと変わる。
 小指と親指はそれそのものが腕へと変貌し、背中から身の丈ほどもある大剣を担いだ、首のない鎧の化け物に姿を変えた。
 鎧の化け物が背中の剣を抜き、クウガに襲いかかる。得物ばかりか図体も大きいため、かわすことは容易であったが、空振って地面に当たる度、花弁状の腕がたわんで揺れた。
 揺れる地面に足を取られ、尻餅を付くクウガに、首なし鎧の剣が迫る。立ち上がって逃げていては間に合わないと確信したクウガは、指と指の間の隙間に潜り込み、そのまま下の地面へと降り立った。
 息付く間もなく、首無し鎧が剣を振るって追って来た。このままじゃかわしきれないと判断したクウガは、地に足を付けて踏ん張り、振り下ろされる剣を白刃取りにして受け止めた。

 自分の数倍もの丈の剣を受け止めて、無事でいられるわけがない。首無し鎧が剣に力を込める度、クウガの足元は亀裂を走らせて陥没し、徐々に彼の眉間へと迫って行く。
「ぐぬ……うぅう、ちきしょう! 負けて……たまるかよォ!」負けじと両の腕に身体中の力を込め、霊石アマダムの力を集中させる。あわやクウガを潰しかけた大剣が、見上げる程大きなタイタンソードへと変化した。
「おぉぉっ!? なんだかよく分からないけど……喰らえッ」
 予想外の展開に冷や汗をかくも、刃は鎧の方を向いている。ならば細かいことは後で考えればよいと結論付け、クウガは山のような大きさのタイタンソードを首なし鎧に向けて振るう。
 首無し鎧は白羽取りで防ごうとするも、クウガ・タイタンフォームの馬鹿力には敵わず、頭のてっぺんから尾鰭《オビレ》の先まで、青色のペンキのような体液を噴き出し、真っ二つに切り裂かれた。
「はははっ、どうだこの野郎。今度こそやってやった……って、うあぉッ!?」
 倒したと同時に降ってきた青色の宝石を握り締め、膝をついて力なく笑うクウガ。しかし彼は失念していた。自分が戦っていたのが、魔女本体ではなく、その『使い魔』だったことを。
 使い魔の一つが倒されたことを知った魔女本体は、無数の腕を彼の元に向ける。首なし鎧との一戦で疲弊したクウガは成す術無く押し潰されてしまった。

「なんて奴……こんなものと、どうやって戦えと言うの」
 ディケイドとクウガが成す術なく倒される様を見、焔アケミは敵の強大さに怯え、体を震わせ親指の爪を噛んでいた。
 しかしそこで立ち止まるわけにはいかない。ミキとサクラに加え、二人の仮面ライダーがやられた以上、次に襲われるのは自分しかいない。こいつを放っておけば、屋敷の外にいるカナメにも被害が及ぶ。それだけは絶対に阻止しなくては。
 アケミは震える腕を抑え付け、巨大な檻の化け物に向かって駆け出した。彼女の接近に気付いた魔女が檻の中に手を引っ込め、無数の使い魔たちを放つ。
 目標は檻の中の化け物ただ一つ。雑魚に構っている暇はない。アケミはほんの一瞬だけ時間を止めて使い魔たちの攻撃をかわし、空中に浮いた使い魔を足場にして、檻の格子にしがみ付いた。
「これ以上お前の好きにはさせない……、消えなさい」
 アケミの左手、手甲内の歯車が動いた。自分以外の時間が制止したのと同時に、手甲の中に収められた重火器を全て解放し、格子の中の魔女本体に放つ。
 彼女が離脱すると同時に盾内部の歯車が回り、時が再び動き出す。魔女を覆う籠の中で大小複数の爆発が起こり、見上げる程大きな悪魔の鳥籠は、アジトである教会を巻き込んで吹き飛んだ。

 ややあって、瓦礫の下からアケミが体を起こして立ち上がる。盾を揺するが何も出ず、時も止められない。文字通りのガス欠だ。力を殆ど使い果たした甲斐あってか、魔女の体は爆ぜ、粉々になった亡骸の欠片が宙を舞っている。
「ふふ、ふ……ざまあ見なさい、この、化け物……」
 安堵の溜め息を漏らし、その場に座り込むアケミ。しかし、そんな彼女を嘲笑うように、跳ねて飛んだ二本の人差し指が、アケミの胸と左足を貫いた。
「な、なんで……! 奴は今、粉微塵になった筈じゃ」
 言いかけて空を見上げたアケミは、胸と足の痛みすら忘れ、絶望に体を震わせ歯噛みする。先程まで粉々に砕けていた筈の魔女の体が、いつの間にか元通りになっていたのだ。
 自分の力程度では奴には絶対に敵わないことを思い知らされたアケミは、抵抗することすら出来ずに持ち上げられ、瓦礫の山に叩き付けられた。
 暫くし、瓦礫の山を掻き分けて薔薇の花弁が顔を出す。ドクター・ケイトは体の埃を払って嫌味な笑い声を上げた。
「素晴らしい……素晴らしいわ、流石私の最高傑作! 世界の破壊者ディケイドだって、この魔女の前には足元にすら及ばない! この子を大首領様に献上すれば、大ショッカーでの私の地位も更に上がるわ、はは、あははははッ」

◆◆◆

 ――どうやら、遅かったみたいだね。
「これ……は、アケミちゃん! ミキちゃん! サクラちゃん! みんな……、みんな、どこにいるの!?」
 瓦礫と化したドクター・ケイトのアジトに向かい、足早に駆けて行く者がいた。アケミたちに邪魔だと結界で足止めされていた円カナメだ。
 ミキとサクラが死んでしまったことで結界が消失した上、彼女たちが向かった建物が轟音を立てて崩れたことで不安を覚え、キュゥべえの声に導かれてやって来たのだ。
 カナメの目に映ったのは視界一杯に広がる瓦礫の山と、そこに埋もれる仮面ライダー二人と友人の姿。焔アケミが負傷を推して立ち上がる。しかし、既に体力も貯蔵している武器も尽きた彼女に出来ることは何もなく、魔女の指に頭の右半分を抉られ、成す術無く突っ伏した。
 溢れんばかりの涙が零れ、胃の中のもの全てが逆流し、カナメはその場に蹲ってしまう。怯え慄《おのの》くカナメに、瓦礫の下から這い出したキュゥべえが事実だけを淡々と述べる。
 ――彩花ミキ、杏子サクラ。彼女たちの体はあの魔女に喰われて消滅した。抵抗する暇もなくね。あんな強大な力を持った魔女は初めてだ。どれだけのグリーフシードがあの中にあるのか……僕にも想像がつかない。
 奴は危険だ。逃げようカナメ。君一人だけなら、僕の力でこの結界から出してあげられる。さぁ、早く!
「そんなのって……」カナメは怒りに声を荒げる。「そんなのってないよ! アケミちゃんを……、士さんたちを見捨ててわたしだけに逃げろって言うの!?」
 ――頭を冷やして、よく考えてご覧よカナメ。あの魔女の力は、焔アケミはおろか、ディケイドですら歯が立たない程に強力だ。逃げたって誰も文句は言わないし、君の身を護る……それがアケミたち三人の願いなんだよ。君は彼女たちの想いを無下にするつもりなのかい?
「分かってる、分かってるよそんな事……」カナメは大声でそう叫んだ後、俯いたまま絞り出すような声で言う。「でも、わたしには無理だよ。みんなを放ってなんかおけない。これ以上大切な人を失うのは嫌……」
 蹲って泣きじゃくるカナメを見、キュゥべえのルビーのような赤い目がきらりと光る。キュゥべえは「君の気持ちはよく分かった」と話を切り出した。
 ――答えは、既に君自身が分かっているんじゃないのかい? 君が内包する力は僕にも計り知れない。その力を解放すれば、この状況を打開できるかもしれないよ。さぁ、解き放ってご覧。君の祈りを――。
「わたしの……わたしの、願いは……」
 キュゥべえの耳の様な触手がカナメの胸元に迫る。カナメは目を伏せ、迷いを断ち切るかのように首を左右に振ると、凛とした顔で言葉を紡いだ。

「――あの魔女を、元の姿に戻してあげて。奇跡を願った魔法少女が、他の誰かに絶望を与えるなんて、そんなの絶対おかしいよ。これ以上、みんなを苦しませないで!」
 ――……訳が分からないよ、カナメ。あの魔女はアケミたちをこんなにした元凶だ。アケミたちを救うならまだしも、なんであんな奴に情けを掛けるんだい。
「誤魔化したって無駄だよ」カナメは憤怒の籠った目でキュゥべえを見る。「あの魔女もトモエさんと同じ、ドクター・ケイトによって魔女に変えられた魔法少女なんでしょう? だったら、戻すことが出来ればこれ以上暴れることもないはず。お願いだよ、キュゥべえ!」
 カナメの目に宿る決意は本物だ。自身の願いを叶えてもらうまで、きっと一歩も退きはしないだ。下手に誤魔化しても時間の無駄だろう。そう判断したキュゥべえは、仕方がないと溜め息を吐いた。
 ――君の気持ちは良く分かった。だからこそ言おう。気を悪くしないでくれ。その願いは……叶えるに値しない。
「えぇ……えっ!?」
『どんな願いも叶えてあげる』と言っておきながら、今一番叶えて欲しい願いを無下にする。キュゥべえの訳の解らない行動に、カナメは怒る所か困惑して言葉に詰まってしまう。
 どうして良いか解らず戸惑うカナメに、キュゥべえは「言葉が足りなかったね」と侘びる。
 ――結論から言えば、その願いを叶えるのは不可能じゃない。君の推論通り、あの魔女は何処からか集められ、ドクター・ケイトに絶望を植え付けられた、元・魔法少女たちの集合体だ。君の願いで奴の体から穢れを取り除けさえすれば、少なくともソウルジェムの状態まで戻れるかも知れない。
「だったら……! なんでそうしてくれないの!?」
 ――話は最後まで聞くことだ。確かに僕は、穢れを取り除けるとは言った。けどね、取り除いた絶望を消し去ることは不可能なんだ。誰かが飲み込んで肩代わりするしかない。それを担えるのは、彼女たちの幸せを望んだカナメ、君をおいて他にない。
 あれだけ強力な魔女を生み出す程途方も無い量だ。君のソウルジェムは絶望に覆い尽くされて呪いを産み、そこの魔女よりさらに強大な化物へと変貌するだろう。その先に何が待っているか……、僕が一々説明しなくても分かるだろう?
「ちょっと……、ちょっと待ってよ。魔法少女が魔女にって……、あれはドクター・ケイトが産み出したんじゃ、なかったの!?」
 ――今更何を言っているんだい、カナメ。魔法少女は遅かれ早かれ、魔女になる運命なんだよ。ドクター・ケイトはそれを早めたに過ぎない。麻未トモエだって、ケイトが手を下さなくとも、いずれあの姿になっていた筈さ。あれで気の弱い子だったからね。
「そんな! そんな、そんな……」
 畳み掛けるように告げられた、残酷な真実に耐えられず、カナメは項垂れて床に膝をついてしまう。キュゥべえは彼女の肩に前足を乗せ、『君を傷付ける気はなかったんだよ』と釈明する。
 ――僕だって、本当はこんなこと言いたくは無いんだ。君にはちゃんと魔法少女になって欲しかったんだ。絶望を糧に魔法少女になられちゃあ、『エネルギー』を回収出来ないからね。
 さぁ、他の願い事を決めるんだカナメ。アケミやディケイドたちを助けたいんだとか、何なら、トモエを生き返らせたいってものでも構わない。何にせよ、今君が行動を起こさない限り、この結界にいる者たちはみんな死んでしまうだろうね。誰一人救われずに。

 そんなこと、わざわざ言われなくとも分かっている。だがなんとかしたとして、自分が目の前の魔女以上の怪物になると言うのなら、何の意味も無いではないか。
 魔女と化した麻未トモエの姿が、カナメの瞼に焼き付いて離れない。大切な友を友と分からず、見境無く人々を襲う自分など、想像したくもない。
 魔法少女になるか、ならないか。どちらを選んでも誰も救えないと知った今、自分は一体何をすれば良いのだろう。カナメは顔を掻き毟り、頭の中で解の無い問答を繰り返していた。

「おぉッ、うおおお、お!」
 そこに、傷だらけの仮面ライダーディケイドが、数メートル程地面を擦ってやって来た。魔女の攻撃を喰い、廃墟となった教会《アジト》からこの場所まで放り投げられたのだろう。彼は、手にした剣を杖によろよろと立ち上がり、怒りに任せてカナメに契約を迫るキュゥべえの首根を掴んだ。
「聞いてたぞこの野郎、全部てめぇの仕業だったんだな。ミキにサクラ、アケミの奴を泣かせた上に、カナメまで引き込もうってか。ふざけんじゃねぇ!」
 首根を絞められ、いきり立つディケイドを前にしながらも、キュゥべえは涼しい顔と抑揚の無い声で言葉を返す。
 ――……やれやれ。君はそんなことを言える立場かい? 僕たちは君のせいで生まれたと言うのにさ。
「俺の……せい、だと? 何を言ってる」
 ――惚けるつもりかい? 君は世界の破壊者で、無秩序に増え過ぎた『ダミー』の世界を壊し、『オリジナル』の世界を消滅から救う役目を負っていたじゃないか。君はそれを無視し、世界と世界を繋いで崩壊を助長させてしまった。
 僕は平行世界の意思によって産まれたんだよ。世界各々が『個』として存在し続け、他の干渉に屈しない程のエネルギーを集めるためにね。『第二次成長期の少女の、希望から絶望への相転位』。このエネルギーが、それに最も適している。
 彼女たちを気の毒とは思うが、平行世界全てが崩壊するかどうかの瀬戸際だからね。それに『どんな願いも叶える』という対価だって用意しているんだ。理不尽を強いているつもりは無いんだけどな。
「おい、ちょっと待てよ、おい……。何なんだよ、そりゃあ」
 キュゥべえの口から明かされた、門矢士の旅の目的と、それ自体が無駄なことだったという言葉。彼がそう言っているだけで根拠も何もなく、信じようが信じまいが士の自由なのだが、ここまで多くの怪異を目の当たりにしてきた以上、信じざるを得なくなってしまった。
 自分が巡ってきた旅は全て無駄なことだったのか。カナメと仲間の魔法少女たちは、自分のせいでこんな目に遭っていると言うのか。ディケイドは呆然自失のまま膝を落とし、床に両手をついて項垂れた。
 士の手から脱け出したキュゥべえが催促のため、カナメの元へ可愛らしく駆けて来た。
 ――泣いている暇は無いよカナメ。残された時間は後僅かなんだ。さぁ、僕と契約して、魔法少女になってよ。

 キュゥべえの頭の、耳とも触手ともつかない物体が泣きじゃくるカナメの頭に触れる。彼女の都合や想いもお構い無しに、深層心理の中から願いを読み取り、強引に叶えてしまうつもりなのか。
 だがカナメはそれを引き剥がすどころか、逆に自分の胸元に押し付け、唇を固く結んで凛とした顔で言った。
「契約するよ。でも、わたしの願いは変わらない。あの魔女を元に戻して。それ以外は望まないし、叶えてくれるまで絶対に退かないから」
 ――何を言い出すんだい、カナメ。僕の話を聞いていただろう、そんな利の無い願いなんて、叶えられないと。
「嘘」カナメはキュゥべえの言葉を遮って話を続ける。「あなたはさっき、『不可能じゃない』って言った。願いを叶えてもエネルギーが手に入らないから拒んでいるだけなんでしょう。でも、そうは行かないよキュゥべえ。だってわたし、もう決めちゃったから」
 不意に士の方へと顔を向け、カナメは怖さも辛さも微塵も見せない堂々とした顔で彼に言う。
「士さん、『世界の破壊者』なんでしょ? わたしのこと、宜しくお願いしますね。出来れば、魔女として覚醒する前に……」
「おい、馬鹿やめろ! そんなことして何になる。お前には背負わせたくないと命張ったアケミの、ミキやサクラたちのやったことを無駄にするつもりか!」
「分かってます。分かってますけど……、あの魔女を放っておけば、この世界全てを絶望させてしまうんですよ。わたしの願いでそれが防げるのなら……、構いません」
「構うだろ! 俺もアケミも、お前のために死んでったミキたちも! ふざけんじゃねぇ」
 ディケイドの言葉に、カナメは声を荒げる。「分かってるって言ってるんです! わたしだって皆を護りたい……。舞台の袖で観客をやってるだけで終わりたくないんです!」
 かつて自分が言った言葉が、こんな形で仇となるとは。士はさせるものかとカナメの元に駆け出すが、魔女の長く太い腕に掴まれ、阻まれた。
「そんな小娘とばかりお話してないで、もっと私の方を見て頂戴。お仲間さんが首を長ぁくしてお待ちかねよぉ」
「馬鹿ッ、今はお前らに構ってる暇なんか……」
「今も昔もあるもんですか。生意気ね、やっておしまい!」
 ケイトは魔女に命じ、ディケイドをアケミやユウスケたちの元へと放り投げる。床に叩き付けられ、背骨に激痛が走るが、意に介している暇はない。それでも尚立ち上がり、カナメの元へと駆け出すが、自身と同じ位大きく長い魔女の指に弾かれ、またも宙を舞った。
 もう、止める者は誰もいない。カナメは歯を食い縛って涙を堪え、キュゥべえの『耳』を握り締めて叫んだ。
「次はあなたの番。さあ、叶えてよ、キュゥべえ!」
 ――待ってくれ。そんな願い、叶えられる訳が……。

 キュゥべえの予想に反し、カナメの胸が、彼女の強い思いに呼応するかのように、桃色の輝きを発した。太陽のように眩く、力強い輝きは、見上げる程大きな魔女の体を容易く取り込むと、その巨体を形作る”絶望”の黒い煙を吸い尽くした。
 穢れを吸われて本来の輝きを取り戻したソウルジェムが、雨のように降り注ぐ。願い通り魔女を消し去り、利用されていた魔法少女たちを救うことは出来た。しかし、その代償は余りにも大きく、元魔法少女たちの絶望全てを吸い取ったカナメは、桃色の光の代わりにどす黒い瘴気を発し始めたのだ。

 暗黒の瘴気は空中で一ヶ所に集中し、『何か』を形作って行く。絶望に身を焦がされ、魔女に変化する前兆だ。一瞬のうちに起きたこの怪異に対し、アケミや士たちよりも先に、ドクター・ケイトが声を上げた。
「なっ、何よ、何なのよ!? 私の可愛いカイブツは、一体どこに行っちゃったのよッ」
 辺りを見回そうが、カナメを覆う黒い瘴気が見えるばかりで、魔女の姿はどこにもない。業を煮やしたケイトは、右手を振り上げ、デルザーの戦闘員たちを呼び出した。
「お前たちお行き! あの小娘の息の根を止めるんだよ!」
 ケイトの呼び声に従い、花の面を被った戦闘員たちがカナメの元へ襲い掛かる。
 一時遅れて、その様子を目の当たりにした焔アケミは愕然として泣き崩れた。
「あぁ、ああ……。そんな、そんな! こんなことに……嫌よ、こんなの嫌!」
 左手の盾を操作するが、中の砂時計は一粒足りとも動かない。先の魔女との戦いで魔力という魔力を使い切ってしまったからだ。無理に力を引き出そうとすれば、アケミの心は絶望に覆われ、彼女もまた魔女に変貌してしまうだろう。
「なんで……なんでよ、なんで! どうして戻れないの! どうしてやり直させてくれないのよ! こんなの嫌、絶対に嫌ァ!」
 自身の魔力が尽き掛けているのも分からず、アケミは辺りの瓦礫に当たって喚き散らす。そんな彼女を見かねたディケイドは、カナメを襲わんとする戦闘員たちに振り払いつつ叫んだ。
「いい加減にしろ! 悔やんでどうする、取り乱して何になる! 今お前がやらなきゃならないのは、そんなことじゃあねぇだろう!」
「勝手なことを……」その言葉に、アケミの堪忍袋の緒が切れた。「こうなったのは、元を正せばあなたのせいじゃない! あなたさえいなければ、カナメは、カナメは……」
「あぁ、そうさ。その通り」ディケイドは悪びれることなく言い返す。「やつをあんな目に遭わせたのは俺の責任だ。だからもう、いいだろう。逃げないで戦え、考えろ! いくら焦ろうが怯えようが、状況は何も変わらないんだぞ!」
「そんな……、勝手な……!」
 立ち向かわねば何も変わらない。そんなこと、アケミにだって分かっている。だが、魔女たちの絶望を全て飲み込んだカナメに対し、自分が出来ることなど何も無いではないか。濁りに濁った自身のソウルジェムを見つめ、アケミは改めて自分の非力さを呪う。
 いや、待てよ。彼女は今一度自身のソウルジェムに目を向ける。麻未トモエの最期の瞬間。彼女は一体何をした。穢れの溜まったソウルジェムを自ら砕いて命を落とし、自分たちに癒えない悲しみを与えた。いや、気になったのはそこじゃない。何故彼女のジェムには絶望が溜まったのか? 麻未トモエは自分たちに『何』をしてくれたのか。
「そうか……。そういう、こと!」
 アケミの瞳に紫色の輝きが戻る。彼女は気付いたのだ。ジェムの穢れを吸えるのは、何もグリーフシードだけじゃない。自身のソウルジェムをカナメに近付け、その苦しみを肩代わりすることが出来れば、カナメを魔女ではなく、魔法少女で留められるかもしれない。どうせ時間跳躍には足らない魔力だ、可能性は低くとも、何もしないよりずっと良い。
 心より体が先に動く。アケミは気が付くと、戦闘員たちを掻き分け、カナメの元へと脇目も振らずに駆けていた。彼女が一目散に駆ける様を、ディケイドは敵を薙ぎ倒しつつ横目に見る。彼女の目には輝きが満ちている。自棄になっての特攻ではない。彼にとってはそれで十分だった。
 しかし、彼女の行く手を阻むかのように、蝋燭頭の使い魔が立ちはだかる。カナメの祈りに依る浄化から逃れたのだろうか。
「くぅっ……! この期に及んで……」
 何かないかと盾の中を探るが、武器はかの魔女との戦いで使い尽くしてしまった。今のアケミに奴を倒す手立ては無い。
 使い魔の槍がアケミ目掛けて降り下ろされる。時を止めるのも忘れ、その場に立ち尽くすアケミ。しかし、降り下ろされた槍は彼女ではなく、ディケイドによって押し留められた。
「門矢士、あなた……」
「道は俺たちが切り開く! 先に進め!」
 ディケイドは前蹴りで蝋燭頭から距離を取ると、ライドブッカーをソードモードに切り替えて今一度構える。使い魔の体が白い煙に包まれ、姿が三つに増えた。
「数が増えたから何だ、こちとらお前の攻撃は全部見切ってんだよ」
 ――FAIZ.KAMEN RIDE『BLASTER』
 ――BLADE.KAMEN RIDE『KING』
 ――FINAL ATTACK RIDE『Fa-Fa-Fa-FAIZ・B-B-B-BLADE』
 腹部のケータッチを操作してファイズ・ブラスターフォームとブレイド・キングフォームを呼び出し、ファイナルアタックライドのカードを右腰のバックルに装填。ファイズブラスターの発射口とキングラウザーの切っ先に莫大なエネルギーが集束された。
 ディケイドの号令と共に、横並びの蝋燭頭三体を挟み込むようにして二大ライダーの光線が放たれる。分身二体は瞬く間に蒸発し、本体も倒されなかったとはいえ、相当な深傷を負って地に伏した。
「倒せない……か。それならそれで構わないが、こいつは返して貰う」
 蝋燭頭の胸に手を突っ込み、中からソウルジェムを引きずり出す。濁りが強くなっており、いつグリーフシードに変異してもおかしくない。
「これで良し。後は……」
 ディケイドは落ちていた剣を拾い、奥で横たわるユウスケにそれを投げ付ける。刃は彼の耳元に突き刺さり、何事かと飛び起きる。士はそれを見計らい、声を思いきり張り上げた。
「寝てばかりいねぇで起きろユウスケ! 俺たちでアケミの道を開くんだ!」
「は……ぁ!?」
 叩き起こされて微睡むユウスケには、何が起こっているのか分かる訳がない。だが花面の雑兵に襲われて目を覚まし、必死になってカナメの元へと駆けるアケミの姿を目に留めて、漸く事態を理解する。
 ならば自分のすべきことは一つ。ユウスケはディケイドに言われるまでもなく、アケミの行く手を塞ぐ戦闘員たちを散らし始めた。
 アケミは礼を口にし、振り返らずに進み続ける。距離はそう離れていないが、魔力の殆どを使い尽くし、先の戦いで脚を負傷したのも響き、未だに辿り着けないでいた。
 散らされたうちの一体が、先を急ぐアケミの足首を掴んだ。引っ張られるようにうつ伏せに倒れ、それを見た花面たちが彼女に覆い被さろうと突っ込んで来る。
 彼女の非力な力では、花面の怪物を引き剥がすことは出来ず、頼みの綱の士たちも、敵の余りの多さに苦戦を強いられており、助けは間に合いそうも無い。
 アケミはどうにもならないと目を閉じ、悔しさに歯噛みする。戦闘員たちが彼女を羽交い締めにし、どこかへと持ち去ろうとする。だがその時、不意に彼らの動きが止まった。花面の誰もが苦しそうに笑いこけ、何も出来ないでいたのだ。
 羽交い締めから抜け出し、何がどうなっているのかと周囲を見回す。剣を持った相手に怯むことなく、右の親指だけで戦闘員たちを倒して行く『光夏海』の姿がそこにあった。
「アケミちゃん!」夏海は笑い転げる花面たちを押し退け、アケミの体を抱きかかえた。「事情は存じませんが、あの場所まで連れて行けばいいんですよね? わたしの背に乗ってください」
「光夏海……、貴女……」
「あなたたちが何をしていて、何に苦しんでいるのか、わたしには分からないから……。せめて、このくらいはさせてください、ね?」
「……ありがとう」
 夏海はアケミを自身の背に乗せて駆け出し、近付く戦闘員たちを笑いのツボを突いて散らして行く。途中、肩にぽたり、ぽたりと滴が落ちたが、彼女が足を止めることはなかった。
 立ち上る瘴気が一層濃くなってきた。カナメはもう目と鼻の先だ。アケミは夏海の肩を叩き「ここでいい」と指示を出す。
「この先は生身の人間が行って良い場所じゃない。後は自分で行くわ」
「行く……って、魔法少女であろうとなかろうと危険ですよ! わたしも一緒に」
 アケミは夏海の忠告を振りきって、彼女の背から降りると、何か悟ったかのような晴れやかな顔で言葉を返した。
「本当にありがとう、光夏海。いいのよ、もう……いいの。さようなら」
 それだけ言い残し、焔アケミは黒い煙の中へと姿を消す。夏海は、寸前の彼女の晴れやかな表情に圧倒され、何も言い返すことなく呆然と立ち尽くした。

 皆の協力を得、焔アケミは漸くカナメの元へと辿り着く。雪のように白く弱々しい肌に、断続的に続く微かな呼吸。今までよく人の姿を保っていられたものだ。
 アケミは親友の変わり果てた姿に涙を溢し、そっと彼女の手を握った。

 ――今頃来て何なんだい焔アケミ。あの魔女から吸い取った絶望で、円カナメ自身が呪いを産み始めた。今となっては誰にも、どうすることも出来ないよ。

 キュゥべえの辛辣な言葉を無視し、アケミは左手の甲からソウルジェムを外して、カナメの胸元に差し出した。
「カナメ……、あなたは優しすぎる。優しすぎるのよ。魔法少女は神様なんかじゃない。何を願ったって全てを救うことは出来ないのよ。でも。私はあなたのそんなところが好きだった。あなたのそんな想いに救われてきた。
 辛かったよね? 苦しかったよね。もう、大丈夫。あなたを独りぼっちになんかさせない。私がずっと、傍にいるから――」

 アケミのソウルジェムは彼女の体を離れ、漆黒の闇に吸い込まれて行った。同時に、彼女の『体だったもの』の顔には深い皺が刻まれ、長く艶のあった黒髪は白髪になり、皮膚のあちこちがささくれて行く。
『時間を操る』能力を持った魔法少女・焔アケミの肉体は、ジェム体から離れると同時に、今まで止めてきた時間の流れを受けて老化を始めた。肉は腐り、骨は砕け、砂となって結界の中に浚われていく。

 ――なんだ、これは……どういうことなんだ!
 今尚空に昇り続ける黒い煙を見、キュゥべえは驚いて声を上げる。
 今の今まで勢い良く昇っていた漆黒の闇が、徐々にではあるが弱まり始めているのだ。焔アケミの犠牲を持ってしても、カナメの魔女化を止めることは叶わなかった。だが、彼女の心がカナメの絶望や呪いを癒し、魔女化を押し留めている。
 こんなこと、ある筈がない。穢れを溜め込んだソウルジェムは、例外なく魔女の卵《グリーフシード》に変化する筈なのだ。キュゥべえは今そこで起きている事態に困惑し、カナメの周りを何度も回る。

 瘴気の中で起こった怪異は、煙の外で戦う士にも理解出来た。徐々に薄く成り行く煙に、アケミのしたことを『だいたい』把握し、成る程なと一人頷いた。
「そうか、そういうことだったか。だが足りねえな。何か、何かないか……」
 アケミの狙いは的を射ているが、絶望に染まりかけた彼女のジェムだけでは、カナメの深い絶望を払い切れない。
『それ』が何であるのか理解した士は、背後で戦うユウスケに向けて、今一度声を張り上げた。
「おぉい、ユウスケ、ユウスケ!」
「何だよ! お前と一緒でこっちも取り込み中なんだ、後にしてくれ」
「手間は取らせねぇ。お前さっき『首なし』の化物をやっつけて、『青色の宝石』を手に入れ……なかったか?」
「宝石? 宝石……って、これのことか?」
 ユウスケは敵を蹴り付けて距離を取り、ポケットの中から、士のものと似た形の青い宝石を取り出す。これだ、これしかない。士は彼が宝石を持っていたことを確認し、「だったら」と更に言葉を続ける。
「そいつをあの煙の中に放り込め。カナメたちを助けるにゃあそれしかねぇ!」
「これを、放り込めって!? 何考えてんだよ士、そんなことしたって何も……」
「うだうだ言ってねぇでやれ! 手遅れになるだろう」
「あぁあ、分かった、分かったってば……」
 訳が分からないが、そこまで言うからには、何が意味があるのだろう。ユウスケは青い宝石を手に大きく振り被った。
「俺に呼吸を合わせろよ。せぇ……のッ!」
 士の掛け声と共に、赤と青のソウルジェムが空を舞い、暗黒の闇の中に吸い込まれていく。
「彩花ミキ、杏子サクラ。お前らのダチがピンチなんだ。カナメたちを……頼んだぞ」

◆◆◆

 そこには何も無く、何も聞こえず、何も見えない漆黒の闇の中だった。何故自分はここにいるのか。誰か、助けてくれる人はいないのか。孤独の身を切るような寂しさが、未だ幼い円カナメの心を包み込む。
 頭の中に声が響いた。顔も名も知らぬ誰かの為に願いを掛けた自分を嘲笑うかのような、嫌味な笑い声がこだまする。
「やめて……、嫌ッ、助けて! 助けて……」
 どこに助けを求めても、答えはどこからも返ってはこない。これが現実なのか。皆のために命を賭けたのに、帰ってきたのはこんな仕打ちだけか。虚しいにも程がある。哀しいにも程がある。
 もう嫌だ。何処へ逃げても何も変わらず、どうして良いか分からない。友達は皆死んだ。こんな自分のために命を張って、報われることなく一つしかないそれを散らして行ったのだ。
 何もかもが嫌になった。誰かの笑顔が何だ。自分の笑顔すら護れないのに、人のものまで護っていられるか。壊してやりたい、何もかも壊してすっきりしたい。
 自分の心がどす黒い何かに染まり行くのが分かる。悪くない感覚だ。このまま闇に身を委ねるのも良いかも知れない。無数の腕が自分に向けて手を伸ばしているのが見える。あれを掴もう。あれを掴んで闇に心を委ねよう。
 苦しみや悲しみから逃れようと、無数の腕にすがろうとするカナメの手を、彼女の背後から焔アケミが力強く掴んだ。
「そっちに行っては駄目。魔女の呪いから逃れられなくなるわ」
「アケミ……ちゃん!?」カナメは驚いた様子で振り返る。「ちょっと、ちょっと待ってよ……。アケミちゃんがここにいるってことは、まさか」
 アケミはカナメの唇に人差し指を触れさせ、彼女の言葉を遮った。「いいのよ。もう、いいの。私は十分幸せよ。これでようやく、あなたの傍にいられるようになったから」
「よくない……全然良くないよ! それってアケミちゃんも“死んじゃった“ってことじゃない。わたしの、わたしなんかの為に……命を捨てるなんて」
 死んでも尚、自分は友達に迷惑を掛け続けるのか。カナメは自分の不甲斐なさに泣き崩れ、啜り泣きと鼻水で言葉にならなくなろうとも、謝罪の言葉を口にし続ける。
 焔アケミは、泣きじゃくる親友の肩を抱き、「いいのよ」と励ます。
「あなたが悔やむことなんてないわ。私たちは自分のしたいことをしただけなんだから」
 ――そぉそ。アタシら魔法少女は自分のしたいようにして、生きたいように生きる。シンプルでいいだろ?
 ――ちょっと、あんたと一緒にしないでよ。あたしまで馬鹿みたいに思われるじゃんかぁ。
「……え、っ!?」
 聞き覚えのある声に気付き、カナメは驚いて顔を上げる。そこに居たのは、先程魔女に喰われて死んだ筈の、彩花ミキと杏子サクラの二人であった。士たちが投げた二色のソウルジェムが、闇の中でカナメの体に吸収されたのだろう。
「ミキちゃん、サクラちゃん! どうしてここ……おっ!?」
 カナメの問いを遮り、彩花ミキは彼女の背中に抱きついた。「細かいことは言いっ子なしよ。ま、強いて言えば……愛の力ってやつ? カナメはあたしの嫁だしねぇ」
「ちょ、ちょっと彩花ミキ!」ミキの発言に、アケミが声を荒げる。「カナメは誰のものでも無いわ、私のものよ。そこから離れなさい」
「のっけから矛盾してんじゃん……。誰のものでも無いんなら、誰が何をしようと自由でしょ。ねー、カナメー」
「彩花ミキ……、あなたはいつもいつも、どうしてそうも愚かなの」
 口ではそう言っているが、ミキの遠慮のない行動を内心羨ましく思っているらしく、アケミは目を血走らせ歯噛みしている。このまま痴話喧嘩が続くと厄介だ。そう考えた杏子サクラは、軽く手を叩いて、火花を散らし合う二人の間に割って入る。
「はいはい。目の毒なモン見せ付けてくれてどーもありがとう。続きはあの世ででもやんな。んなことより、さ」
 サクラは二人をカナメから強引に引き剥がし、彼女の手を握って言った。
「……ま、結局はそういうことなんだよ。アタシたちは自分の好きなように生き、好きなことをやって死んだ。んで、とうとうお前もそっちの道に足を踏み入れちまった訳だ。好きでやったんなら、アタシたちも文句は言えねぇ。だからよ、お前も『好きなように』生きろ。魔法少女として、さ」
「好きなように……生きる?」
「そうだ。アタシたちの意志を継ぐんだとか、誰かの為に自分を犠牲にする必要はねぇ。お前のしたいようにしろ。難しい事を考えて悩んだり悲しんだりするな。それだけでいいんだ」
「そうそう。あたしたちみんな、カナメの泣き顔なんて見たくないしさ」言いつつ、ミキがカナメの右手を掴む。
「カナメのやりたいことは私たちにみんなのしたいこと。さぁ、教えて頂戴。あなたの願いを、その祈りを」アケミは今まで誰にも見せたことのないような晴れやかな顔で、カナメの左手を優しく握る。
「遠慮すんなって、ばばーっと言っちまえよ。アタシたちがついてんだ。何も心配はいらねぇ」最後にサクラがミキとアケミの肩に手を伸ばし、カナメと向かい合って円陣を組む。
 何故、あんなことで悩み、塞ぎこんでいたのだろう。自分にはこんなに素敵な友達がいたじゃないか。ここまで来て何を恐れる必要がある。
「わたしの……願いは――」
 円カナメはそっと目を閉じ、静かに口を開いた。

◆◆◆

 ドクター・ケイトの繰り出す花面の戦闘員たちと、ディケイドたちとの争い。戦況はケイト側に傾き始めていた。変身を解除させられて尚、気力だけを支えに立ち向かう二人の男と、『笑いのツボ』という武器はあるものの、身体能力は並の女性の夏海だけでは、倒せども倒せども増え続ける戦闘員たちを捌き切ることは不可能だったのだ。
 ここまで、笑いのツボで近寄る花面たちを散らしてきた夏海だったが、ついに疲労のピークを迎えてしまった。肩で息をしている隙に背後から羽交い絞めにされて、ツボ突きを封じられてしまう。
「嫌ッ、離して! 離してくださいッ!」叫べども喚けども、助ける者はいない。士もユウスケも目の前の火の粉を払うだけで精一杯なのだ。
 夏海の眼前に、両方の手をわきわきと嫌らしく蠢かす、気味の悪い花面が迫る。諦めたくない、だが、諦める以外に道はない。夏海は恐れに身を震わせ、目を閉じて甲高い声で叫んだ。

 辺りに凄まじい風が吹き荒れ、ケイトの戦闘員たちを皆吹き飛ばしたのはその時だ。彼らに捕まっていた夏海も、当然その風に煽られて宙を舞うが、自分より背丈の小さい何者かに抱きかかえられ、瓦礫が連なり、高台となっている場所に着地する。
「今の……は」信じられないと言った表情を顔に浮かべ、夏海は自分を抱きかかえる者の姿を目にする。
 白とピンクを基調とし、全身にフリルがあしらわれたドレスを身に纏い、右手には赤の宝石を、左手には青の宝石、そして胸元には桃と黒の二色が混ざった宝石が輝いている。
 焔アケミ、彩花ミキ、杏子サクラ。三人の力を取り込んで『魔法少女』としての存在を確立した円カナメがそこにいた。




・サーカステントの魔女
 その性質は”混沌”。ドクター・ケイトによって、多種多様の魔法少女の絶望、呪いが混ぜ合わされ、『個』というものが完全に欠落している。
 檻の中から無数の腕を伸ばし、中にいるサーカス団員たちを放ち、自身もその腕で敵を襲う。
 創造主であるケイト以外の動く者が消えるまで暴走し続ける。いつまでもいつまでもいつまでも。

・サーカステントの魔女の使い魔
 魔女の体内から投てきされ、敵という敵を抹殺するまで止まらない。ここには劇中に登場した三種を記す。

◎鳩時計型の使い魔
 魔女の檻に備え付けられた扉から飛び出す、芋虫に道化師の顔を張り付けたような怪物。役割はサーカス団の道化師。標的を喰らうことしか出来ないが、その速さは人間には知覚出来ない。肉付きの良い人間を好み、そうでない人間は何度か咀嚼した後、飲み込まずに吐き出してしまう。

首無し騎士型の使い魔
 千切られた腕から発生した魔女。役割はテント内・ホラーハウスの首無し騎士。
 彩花ミキのソウルジェムを核として産まれており、外見に彼女の面影が散見される。

騎馬兵型の使い魔
 発生理由・役割共に同上。杏子サクラの面影を残す武旦《ウーダン》の騎馬兵。
 サクラ自身は使用しなかった幻惑・分身の魔法を用いて相手を翻弄する。
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