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「二次創作」
それでも、わたしは魔法少女だから

まどマギxディケイド 『それでも、わたしは魔法少女だから』 そのよん

 ←まどマギxディケイド 『それでも、わたしは魔法少女だから』 そのさん →まどマギxディケイド 『それでも、わたしは魔法少女だから』 そのご
 今回更新分にはそれなりに”残酷描写”が含まれています。
 苦手な方……特にお食事中の方はご注意ください。

 どうせ「リ・イマジネーション」なら、原典の出来事やキャラをなぞるよりも、「まどかだけが魔法少女になり、他の四人がキュゥべえと契約するのを防ぐために戦っている」ような話の方が良かったのではないかと今更後悔。



それでもわたしは、魔法少女だから:そのよん【原作:魔法少女まどか☆マギカ】

「やめろ、やめるんだ夏ミカン! 俺の声が聞こえねぇのかよッ」
「”魔女の口付け”を受けた者に説得なんて……あはははっ、無駄よ無駄。無駄無駄」
 時を同じくし、結界内のドクター・ケイトの研究施設内。
 ディケイドはケイトによって仮面ライダーキバーラに変貌させられた夏海と対峙し、彼女が振るう剣をかわし、いなし、受け止めつつ、必死に彼女の名前を呼び続けていた。
 だがケイトの言う通り、その言葉は夏海には一切届かず、何も聞こえていない。彼女はただ、かつて自分が下した決断を呪い、嘆き、悲しみに押し潰され、耳を塞がれてしまっているのだから。

 剣にかかる力こそ大したものではないが、それを振るうのは光夏海その人。ディケイドが全力で戦えるわけがない。ディケイドの狙いは一つ。夏海に絶望を与えているあの首輪だ。
「ちょっと痛いかもしれねえが……、我慢しろよ、夏ミカン!」
 加減していてはこっちがやられる。襲い来る夏海を蹴り飛ばし、ディケイドはドライバーにカードを装填した。
 ――KAMEN RIDE 「KABUTO」
 ――ATTACK RIDE 「CLOOK UP」
 六面体の結晶がディケイドの体を包み込み、その姿を『仮面ライダーカブト』へ変える。
 次いで、『クロックアップ』のカードを引き抜く。周囲の時間を遅くさせ、素早く動き回る夏海を捉えようという算段だ。
 そう考え、バックルにカードを装填しようとしたのだが、そこで生じた一瞬の隙を縫い、夏海は彼の首筋に剣の柄の部分を押し込んだ。
「あは、はははははははははは! 夏ミカン、てめッ、ツボ押しまでしやがるのか……ッ!」
 光家秘伝・笑いのツボ。対象を強制的に笑わせる、光家の人間のみが知る謎のツボだ。
 不意と一緒にツボを突かれたディケイドは、カードを落とし、腹を抱えて笑い出してしまう。拾おうとするも、サーベルに突き刺され、ばらばらに千切られてしまった。

「ちきしょう、夏ミカンのくせにやりやがる。だったら、こいつでどうだ!」
 ――FORM RIDE 「KIVA BASSHAA」
 続いてディケイドがドライバーに装填したのは、『キバ・バッシャーフォーム』のカード。
 青い複眼に赤い一本角から、緑のボディに緑の複眼の異形に姿を変えたディケイドは、自身の足元に水の膜を張り、夏海の攻撃をかわして彼女の背後に回り込む。
 それに気付き、夏海は背後に向かい剣を振るうも、右へ左へ水面を滑るように移動するディケイドには当たらない。それどころか、溢れる水に足を取られ、夏海は動くことすらままらなくなった。
 夏海が追いつけないことを理解したディケイドは、手にした拳銃「バッシャーマグナム」で彼女を威嚇しつつ、ファイナルアタックライドのカードをドライバーに装填。
 ――FINAL ATTACK RIDE 「Ki-Ki-Ki-KIVA」
 周囲に張られた水の膜が、集まり連なってバッシャーマグナムに取り込まれて行く。
 水の拘束から逃れた夏海が飛びかかってくるが、ディケイドは迷うことなく引き金を引き、収束された水の塊を彼女に放つ。
 放たれた水の塊は夏海の体を凍りつかせ、体の自由を完全に奪った。
 彼女が動けなくなったのを見計らい、ディケイドは先の戦いで使用した「青く輝く三つの御魂」が描かれたカードをバックルに装填する。
 ――KAMEN RIDE 「HI-BI-KI」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「Hi-Hi-Hi-HIBIKI」
 仮面ライダー響鬼に変身したディケイドは、同時にファイナルアタックライドのカードを装填し、一対の音撃棒を構えて、凍り付いた夏海に向かい、それを振るう。
 魔法少女ではない夏海であれば、原因である首輪を取り除きさえすれば元に戻るはず。
 清めの音撃が魔女に通じるのなら、当然魔女が放った口付けにも効いて然るべき。ディケイドはそう考え、撥を叩き込まんとするが、それを遠巻きに見ていたドクター・ケイトは、待っていたと言わんばかりに口を引き吊らせ、嫌味な笑みを浮かべた。
「かかったわねディケイド。これであなたもおしまいよ!」
「オシマイだぁ? 何を言ってやが……るッ!?」
 全くもって予想外の事態だった。音撃棒を振るわんとしたその瞬間、夏海の首にかかった首輪は、溶けた蝋《ロウ》のように形を変え、腕輪となってディケイドの右手に取り付いたのだ。
 今の今まで夏海の体を巡っていた絶望の瘴気が、腕輪を通じディケイドの体に溜まって行く。膝をついて堪らずよろけるディケイドの首を、夏海は両の手で掴み、思い切り絞め付けた。

「残念だったわねぇディケイド。それは首輪であって首輪じゃない、私の口付け、魔力の塊なのよ? 外そうったって壊そうったって、無理無理無駄無駄! あーっはっはっは!」
 目論み当たって高笑うケイトをよそに、自分の首を絞める夏海の腕を剥がそうとするディケイド。
 しかし腕輪となって絶望を与える魔女の口付けは、ディケイドの気力と体力を奪って行き、それを許そうとはしない。絵に描いたような最悪の事態。窮地に追い込まれたディケイドに、反撃の手立てはあるのか――。

◆◆◆

 時を同じくして、ケイトの研究施設を抜けた先に広がる、奇怪で奇妙な野原。焔アケミは、杏子サクラと彩花ミキの二人に両腕を掴まれ、研究施設から遠ざけられていた。
 このまま引き離され続けるわけにはいかない。アケミは両の足で二人の腹部を蹴りつけて強引に拘束から逃れ、受け身を取りつつ野原の上を転がった。
 彼女が体勢を立て直して起き上がる頃には、ミキとサクラは各々の武器を構え、アケミの前に立っていた。
「彩花ミキ、杏子サクラ。こんなことをしている場合じゃないでしょう。私たちの敵はドクター・ケイトただ一人のはずよ」
 そう訴えるも、二人はうつむいて何かぶつぶつと言うばかりで、何の反応も示さない。
 首に嵌った不気味な首輪。これが何らかの作用を与えて、彼女たちをケイトにとって都合の良い操り人形にしているのだろう。
 そう理解したアケミは二人を迎撃すべく、左手の盾から拳銃を取り出そうとするが、彼女が銃を手にするよりも早く、サクラの槍が彼女の左腕を斬り捨てた。
 盾の中からこぼれ出す重火器を横目に見つつ、しまった、と唇を噛むアケミ。自分の攻撃の要はこの盾。時間を止めるにも重火器を取り出すにも、盾を起動させなければ話にならない。
 サクラは経験を積んだ優秀な手練れだ。拾えるだけの隙を与えてくれるとは思えない。振り下ろされた槍の穂先が、アケミの胸元目掛けて昇ってくる。成すがままに斬り裂かれることだけは、何としても阻止せねば。
「そう簡単に、やらせはしない!」
 アケミは盾の中から零れ落ちた拳銃を右手で拾うと、サクラが槍を振り上げるよりも早く引き金を引き、彼女の胸を狙い撃った。勿論彼女のソウルジェムを外してだ。
 火薬の炸裂する乾いた音と同時に、胸を撃ち抜かれてのけ反るサクラ。アケミは念のためにと、更に腹や足の付け根を狙い撃つ。憎いからではない。彼女は自分よりも遥かに高い身体能力と、魔法少女としての経験を積んだ存在。胸を撃ち抜いた程度ではまだまだ安心できないからだ。
 サクラは口から溢れんばかりの血を吐き、のけ反ったまま体勢を崩す。しかし彼女の肩を踏み台にし、その背後からもうひとつの影がアケミを襲う。青髪に白いマントの、剣の魔法少女・彩花ミキだ。
 予想出来てはいたが避けようがない。弾丸はサクラを撃って使い切った。どうするべきか。答えは決まっている。
 駄目で元々。アケミは千切れた左腕に意識を集中させ、盾の持つ本来の能力を発動させる。ほんの一瞬だけではあるが、時が止まった。だが、一瞬だけではかわすのが精一杯で、ミキに反撃する暇はない。

「くそっ、くそッ! えぇい、くそッ! あぁもう、あぁもうあぁもうッ!」
 いくら剣を振るおうとも、時間を止めるアケミには届かない。苛立ちが口を突いて言葉となり、とめどなく漏れ出て行く。
「ちくしょう……ちきしょう、ちきしょう、ちきしょう! みんな嫌い、大嫌い! 自分のやりたいことも放っぽって、みんなのために戦って、何もかもずっと我慢してきたのに、その見返りがこんなものなのかよ。じゃああたしたちは、何のために今まで戦って来たって言うんだよ! ちきしょうちきしょう、ちきしょう!」
 ミキの口から漏れ出たのは、苛立ちばかりではなかった。思えども決して口に出来なかったことが、植え付けられた絶望によって溢れ出し、彼女の心を覆っているのだ。
 もう何も聞こえない。もう何も届かない。絶望を取り除かなければ、彼女も魔女の仲間入りをする他無い。時を止め彼女の攻撃をかわし続けるアケミは、ミキのそんな叫びを聞き「くだらない」と吐き捨てる。
 魔法少女は人知れず自分のために魔女を狩る存在だ。他人から感謝や称賛を得ようだなんて、それこそ馬鹿げている。
「彩花ミキ、あなたはいつだってそう。口では世のため人のためだと言っているけれど、あなたはその実、誰よりも他人からの感謝を求めて生きている。哀れな子。
 あなたさえカナメの傍にいなければ。魔法少女にならなければ、彼女は悲しまなかったのに。キュゥべぇと契約することもなかったのに。そのくせカナメの親友として、あの子の傍にいて。
 あぁ、憎い。あなたが憎い。カナメ最も近い場所にいながら、私には居られない場所にいながら、カナメを苦しめ続けるあなたが憎くて憎くてたまらない!」
 そんなことを思い、憎しみを募らせていたからか、アケミは足元をおろそかにし、体勢を崩して転んでしまう。
 間の悪いことに転んだ瞬間に時間停止の効力が消えてしまい、放たれたミキの剣に胸を貫かれ、地べたに釘付けとなってしまう。
 焔アケミは数多くの重火器を収納して持ち歩くか、時間停止以外に能のないひ弱な魔法少女だ。剣を武器とし、己の体捌きのみで戦うミキとの埋めがたい力の差は、自分の胸に刺さった剣を、満足に引き抜くことさえできない、という形で現れた。
 文字通り心臓が張り裂け、体中から運ばれてきた血液がポンプ運動を伴って、アケミの胸から噴き出して行く。
 刺された瞬間に痛覚を遮断したおかげで痛みはないが、ミキの左手に構えられた、逆手持ちになったもう一本の刃が、アケミの脳天目掛けて迫っている。立て続けに致命傷を喰えば、魔力による回復が追い付かなくなる。これではミイラ取りがミイラだ。
 どうにも立ち行かない状況であるにも拘わらず、アケミは口元を歪ませ、冷たい目つきでミキの顔を見る。
 絶望に身を裂かれ、涙すら枯れ果てたのだろう。ミキの頬には涙の跡が黒ずんで残り、発せられる言葉とは裏腹に、焦点の定まらない虚ろな顔をしていた。

「いい気なものね、彩花ミキ。魔法少女が人を助けて報われるわけないじゃない。あなたのその口先だけの正義の味方振り。前々から気に入らなかったの」
 そう吐き捨てたアケミは、自身の胸に刺さった剣を引き抜こうともせず、ミキの右の乳房を握り締め、彼女の体に直接魔力を注ぎ込んだ。
 自分のものと相反する魔力を注がれたからか、ミキの左手の手首が、自分の方へと返される。当然、逆手に持って今まさに振り下ろさんとしていた剣は、その勢いを伴って、ミキの胸へと突き刺さる。
 首輪から溢れ出る絶望によって、意思は封殺されてはいるものの、痛みは感じているらしく、ミキは己の胸に刺さった剣を目にし、口から血を噴き悲鳴を上げた。
 アケミはその上で、右足で地面を叩き、足の裏から魔力を地に流し込む。長くか細く伸びたそれは、サクラによって千切られた左腕、その周辺にばらまかれた銃器の元へ向かい、一丁の拳銃の引き金を引いた。
 拳銃から放たれた銃弾はミキの右顎を撃ち抜き、皮膚を貫き頬骨を砕き、生え揃った永久歯を粉々にして、辺りに散らばらせる。
 噴き出た血がアケミの顔を赤黒く染め上げ、粉々に砕けたミキの歯が、光に反射して辺りに燦々と降り注いだ。
 ミキは死んだ魚の様な目をして、両の腕をだらりと垂らし、アケミの方へ力なく突っ伏してしまう。
 刺さった剣がつっかえ棒となって、抱き合うことにはならなかったが、その重量が全て剣にかかり、引き抜くのはいっそう困難となった。
「こんな姿になってもなお、私を困らせるとは……彩花ミキ、あなたって人……はッ」
 アケミは血で顔じゅう赤く染まったミキの顔に一瞥をくれると、彼女の脇腹を蹴りつけてどかし、魔力と己の力を併用しつつ、腹に刺さった剣を引き抜いた。
 体を起こして立ち上がり、サクラに千切られた左腕を拾うと、残り少ない魔力を使って、風穴の開いた胸と一緒に取り付け、補修した。
 盾の中から拳銃を取り出して、うつ伏せになって倒れ込むミキを見下ろす。今すぐに反撃できるとは思えないが、ぴくぴくと体が動いている。頭を撃たれ、意識を失って尚、まだ体を修復しようと言うのか。
「ゾンビ」と形容すべきその再生能力に、アケミはおぞましさを覚え、体を震わせた。

 体がまだ動いている以上、反撃を喰う可能性はある。自分は非力で魔力も残り少ないのだ。ここまで来て下手を打つわけにはいかない。
 アケミは左腕の盾を操作し、自分以外のこの世界の『時間』全てを停止させた。
 風にそよいで舞い散る花びらも、何かを探し蠢く小動物も、辺りを飛び回る玩具の飛行機も不気味な触手も、何もかもが動くのをやめ、微動だにしない。焔アケミ、彼女だけの時間の到来だ。

「カナメも、門矢士も、この子たちを助けたいと言っていた。けれど無理。もう無理。彼女たちの心はとっくに絶望に支配されている。私には救えない。いいえ、きっとカナメたちにだって救えない。だから」
 アケミはミキの体を蹴りつけて仰向けにすると、拳銃の安全装置を外して撃鉄を起こす。
 助けられないのなら、呪いを伴って魔女になるというのなら、今この場で「魔法少女」として死んだ方が、彼女にとってもずっとマシだ。
 撃たれる当人がそう思っているかどうか、それは分からない。だがアケミはそう思い、そうすべきであると考えた。彼女の臍に輝く青い宝石に銃口を向け、引き金に手をかける。あとはそれを押し込むだけだ。そこからは全て拳銃がやってくれる。
 もう何度もやってきたことだ。無限とも言える遠大な時間旅行の中で、数えるのを諦める程に、悲しむという感情すら捨て去って、何度も何度もやってきたことだ。
 だが何故だ。引き金にかかったアケミの指は、それを持つ手は、「撃ち抜け」という命令を受け付けない。引き金と指の間に何かがつかえているかのようだ。もちろん、何もつかえてはいない。
 額を流れて頬を伝い、顎の先から汗が滴り落ちる。指先だけでなく手全体がぶるぶると震え、段々と表情が険しくなって行く。何故撃てない、何故殺せない。今まで何度もやって来たことだろうと自分自身に問いかける。元は同じ人間だ。それが魔女か魔法少女かの些細な違いじゃないか。どうした、何故だ。何故なんだ。
 ――ふぅん。焔アケミって言うんだ。あたし、彩花ミキ。カナメの嫁です! ……なぁんちゃって、よろしくねー。
 ――ま、ま。そんな落ち込むことないって。ずっと入院してたんだから、しゃあないじゃん? あたしだってほら、よく間違ってクラスのみんなに笑われたりするし。気にすんなって。
 ――ほぉら、あと10m! みんなに馬鹿にされないよーに、体力つけなきゃね体力! ほらほらー、ペース落ちてるぞー!
 ――あたし、あんたと友達になれて凄く嬉しかった。あんたがそう思ってるかは分からないし、あたしが一方的に思ってるだけかもしれないけど、それでも、さ。
 ――ごめんね、あたしのせいで、迷惑ばっかりかけちゃって。こんなこと言えた義理じゃないけどさ、カナメのこと、任せたよ――。

 アケミの脳裏に、いつか見た光景が浮かぶ。遠大な時間旅行に出る前の、もしくは出た後の記憶の欠片たちだ。二人は最初から険悪な仲ではなかった。時間旅行をする前や一部の時間軸のミキはとても優しくて、友達と呼べる関係を築けていた。時間旅行の中でその存在を知った杏子サクラも同様だ。
 しかしアケミは彼女たちを見捨て続けた。カナメを救うために何度も、何度も。笑い顔も泣き顔もその死に様も、幾度となく目にしてきた。彼女たちに流す涙など、とっくに枯れ果てたはずだった。
 なのにこれは何だ。こうなることを望んだのは自分なのに、何度も目にしてきたはずなのに、涙が溢れて止まらない。「撃て」という命令と「撃つな」という命令が頭の中でせめぎあい、どうすることもできなかった。
 盾の中の歯車がかち、かちと音を立てて動き出す。時間停止の効力が切れかけているのだ。魔力も残り少ない。再びこれだけの時間を止めるのは不可能だろう。彩花ミキを仕留めるのならば、これが最後のチャンスだ。
「あぁ、もうッ! 消えなさい、消えろ! 消えろ消えろ! 消えて……、なくなれッ!」
 気合を込めるためにと、あえて痛覚を遮断せずに己の左肩を撃つが、それでもなお震えは止まらない。
 円カナメを救うためだ。自分には助けられない。どうにもならないのだ。言葉にして自分に言い聞かせようとも止まらない。時が止まった中ではおかしな表現だが、時間停止解除の瞬間は、刻一刻と迫っている。
 やらなければこちらがやられる。自分が死んだらカナメはどうなる。今まで行ってきた全てのことが水泡に帰してしまう。
 ――あぁ、あああああああああっ!
 声にならない叫びを上げ、かけた指が折れんばかりの勢いで、アケミは引き金を引いて銃弾を放つ。同時に時間は再び動き出し、銃弾はミキの体を貫いた。

「あっ、あぁ……ッ!」
 放たれた銃弾は、ミキの体を確かに貫きはした。しかし実際に着弾したのは、彼女の脇腹。臍に嵌まったソウルジェムから、狙いが僅かに反れており、殺すことはできなかったのだ。
 加えて傷を癒し立ち上がったサクラが、背後からアケミの背を斬りつける。
 よろけ、前のめりに倒れかかるアケミの顔に、ミキの膝蹴りが飛ぶ。痛覚の遮断を忘れ、背の一撃をまともに喰らってしまったアケミは、時を止めることすらできずにそれらを直接喰い、背の神経を傷付け、鼻の骨と上下の前歯を砕かれてその場に突っ伏した。
 サクラは突っ伏したアケミの背を骨の軋む音がするほどに踏みつけ、ミキは柔肌の上から腕の骨の隙間に剣先を突っ込み、押し込んでかき混ぜて行く。慈悲も情けも、そこには一切なかった。
 想像を絶する激痛に苛まれ、意識が遠退いて行く中でアケミは思う。これは罰、受けてしかるべき制裁なのだと。カナメを救えなかった自分への。そして、その為に犠牲にしてきた別の時間軸の魔法少女たちへの。

 まだ死にたくない。けれど魔力がほぼ尽きかけた自分に、情に流され、殺すべき相手を手にかけられなかった自分に何ができる。
 そんなことを考えている間に、ミキは腕を刺し貫いていた剣を引き抜き、振り上げてアケミの後頭部に狙いを定めた。
 今のこの状態であんなものを喰らっては、魔力が尽きるよりも先に体の方が先に参ってしまう。
 もう、どうにもならないのか。唇を噛み、大粒の涙を流し、焔アケミは懺悔する。
 ――ごめんなさいカナメ。ごめんなさい、みんな。私は誰も……守ることができなかった。どうしようもなく非力で、無力な私を許して――。
 懺悔の言葉を聞いていたのかいないのか、杏子サクラは今まで以上に背を踏みつける足に力を込め、血で赤黒く濁った彩花ミキのその刃が、焔アケミの頭を砕こうと、今まさに降り下ろされた。

 しかし、どうしたことだろう。頭蓋が割られ、脳漿《のうしょう》が飛び散る音もせず、そもそも剣は地面に降り下ろされてすらいない。自分はまだ死んでいないのかと、きょろきょろと辺りを見回すアケミ。彼女は地面から少し浮いた所におり、自分を殺さんとしていた二人は、鍵のついた黄色いリボンで全身をぐるりと巻かれ、動けなくなっていた。
 空を飛んでいるわけではない。自分の体、腰回りに何か暖かな感触がある。自分は今、誰かに抱き止められているのだろうか。
 抱き抱えられていることが分かり、ならばそれは誰なんだと己の頭上に目を向ける。

 ――間一髪だったわね。ほむらさん。もう……大丈夫よ。
 焔アケミを抱き抱えていたのは、あまりにも意外な人物であった。
 黒い小さな帽子をちょこんと頭に乗せ、胸元には薄黄色のリボン。コルセットを締め、薄黄色の短めのスカートを穿き、スカートの先辺りまで伸び、白のラインの入った茶のソックスと、その上に履いた黄色いブーツ。
 こんなことが出来る人間――魔法少女は、アケミの知る限り一人しかいない。自分たちの先輩”麻未《マミ》トモエ”だけだ。
 アケミは自身の頭上に目をやり、その名前を呼ぼうとするが、彼女の顔を目にし言葉を失った。
「そんな……まさか! なんで、どうして!」
「落ち着いてほむらさん。もう大丈夫、大丈夫だから」
「落ち着いていられるわけ、ないじゃない! なんで、あなたが……あなたが!」
 ――円、カナメ!

 服装や扱う魔法こそ、先輩魔法少女・麻未トモエのものだ。しかし、自分を抱きかかえている人物は、桃色の髪を赤いリボンで二つに纏め、顔にあどけなさを残したあの少女「円カナメ」だったのだ。
 焔アケミが取り乱すのも無理はない。数えるのを諦めるほどに多大な犠牲を払ってまで、彼女が遠大な時間旅行を行ってきたその理由は、「円カナメを魔法少女にさせない」ことなのだから。
 しかし、彼女を抱きかかえた当の本人は、優しげな微笑みを見せ、慌てふためくアケミの唇に人差し指をそっと乗せた。
「そうね、確かに私は円カナメ。でも今は麻未トモエなの。あなたとまたこうして話が出来るなんて。まどかさんに感謝しなきゃね」
「感謝って……一体、何を言ってるの、カナメ」
「飲み込みが悪いのね。ま、仕方ないか。実はね……」
 麻未トモエ(の格好をしたカナメ)はそこまで言うと、背後から迫り来るアケミの槍を飛び退いてかわし、アケミを抱きかかえたまま高台へ着地した。
 ミキとサクラの足元に、千切られて四散した黄色いリボンが見える。加減していたとはいえ、こうもあっさり破られるとは。トモエは小首を傾げて溜め息をついた。
「あなたと話していたいのは山々だけど、あっちをなんとかする方が先決ね。待ってて、すぐに終わらせてくるから」
 アケミを静かに床に降ろすと、トモエは高台を飛び降り、虚ろな目をして苦しげな声を上げる二人の魔法少女と向かい合った。
「杏子サクラ……しなやかで力強い体捌きに、どんなことにも折れない強靭な精神の持ち主。憧れ、ずっとずっと追い続けた、私の目標。けれど、今のあなたは違う。ただ力任せに振るうだけの槍じゃあ、私の体は貫けないわ」
 サクラの槍がトモエに向かって飛ぶ。トモエは恐れを抱くことなく、腰の動きだけで、飛んでくる槍を直接視認せずしなやかにかわす。サクラは戻ってきた槍の反動でよろけ、その隙を突かれ、トモエの回し蹴りを喰って地面に叩きつけられた。

 同時にトモエの背後から、剣を伴ってミキが迫る。
 トモエはそれに動じることなく、突き一つ一つを腕でいなして狙いを反らせ、無防備となった脇腹に正面蹴りを見舞う。
 吹き飛ばされ、地面に叩きつけられたミキは、地を踏み締めて飛び上がり、トモエの脳天目掛けて頭上から斬りかかる。
 しかしその一撃も、彼女の人差し指と中指の間に刃を挟まれ、斬り裂くことなく止められた。
「彩花ミキさん……私の、初めての後輩。勢い任せでちょっぴり頼りないところもあるけれど、自分のことをないがしろにしてまで、他人のために戦える優しくて強い魔法少女。あなたは私に憧れてくれてたみたいだけど、私だってあなたのそういうところに憧れていたのよ。でも、今のあなたにはそれがない。あなたはまだ、いくらだって輝けるの。諦めちゃダメ」

 トモエは刃を挟んだ指に力を込め、ミキの手から剣を奪い取ってその場に放り、蹴りを喰ってよろよろと立ち上がる、二人の魔法少女に人差し指を突き立てた。
「あなたたちは私とは違うの。お願い、目を覚まして。絶望なんかに負けてはいけないわ。……ま、聞こえないか。だったら、力づくしか、ないわねっ」
 戦うしかないかと覚悟を決め、被っていた黒い小さな帽子を掴み、目の前でさっと振るトモエ。
 瞬間、どこからともなく数丁の小銃が現れて、彼女の目の前に並んだ。そのうち二丁を掴み、向かい来る二人の魔法少女に向かい、引き金を引く。放たれた銃弾は、ミキには背中のマントで、サクラには槍の先で弾かれ、当たることなく地面に突き刺さった。
 その勢いを保ったまま、右と左から二人が迫る。トモエは手にした銃を振って二人を遠ざけつつ、代えの銃を引き抜いて跳び上がった。
 美しい曲線を描いて跳び、ミキとサクラの頭上に達したと同時に再び銃撃。しかし寸での所でかわされ、かすりすらしない。着地と共に後ろに飛び退き、銃弾を発射。二人の武器に弾かれ、これも当たらない。

 こちらの攻撃は二人の魔法少女には通用しない。槍と剣、二つの武器を同時にいなし切ることはできず、トモエは飛び退き様に二人の反撃を喰ってよろけ、サクラの”節同士が鎖で繋がった”槍に絡め取られ、地面に叩きつけられてしまう。
 振り払おうにも、自分の胸元目掛けてミキの剣が迫っている。時間の猶予は殆どない。
 まさに「絶体絶命」なのだが、トモエはぱちんと指を鳴らし、薄い微笑みを浮かべた。
「ふふっ。二人とも、まだまだ……ね」
 これは一体どういうことか。
 トモエが指を鳴らしたその瞬間、彼女を刺し貫こうとしていたミキが、槍で彼女を絡め取っていたサクラが、逆に無数の黄色いリボンによって、全身を絡め取られたのだ。
 腰回りだけを絡め取っていた先程までとは違い、今度は両腕両足腰に首と、拘束の範囲が全身に及び、その一つ一つが魔力を発しているからか、力づくで拘束を解くことは適わない。
 ミキとサクラが拘束されたのを見、アケミは魔力で傷を治し、槍に拘束され、地面に転がったままのトモエにの元へ向かい、声をかける。
「麻未トモエ、あなたまさか……、わざと外して撃っていたの?」
「そういうこと。大切な友達と後輩よ。傷つけたくなんか、ないじゃない?」
 麻未トモエの放つ銃弾は、アケミのものと違い、自身の魔力で精製されたものだ。外して地面に突き刺さったとしても、それらを別のものに変質させることなど、彼女にとっては造作もないこと。
 トモエはあえて、銃弾を外して地面に撃ち込ませ、それをリボンに変化させて蜘蛛の巣のようにし、ミキとサクラを絡め取った、と言うわけだ。

「さすが、ね。憎たらしい程に美しい戦い方だわ」
「褒めてくれてるの? じゃあ、素直に受け取っておこうかな。それはそうと……この鎖、外してもらえる? 一人じゃどうにもっ、ならなくって」
「えぇ」
 アケミに拘束を外してもらって立ち上がり、右手をひらひらと振ってリボンを操作して、ミキとサクラを自分の近くへと引き寄せるトモエ。
 ここまではいい。しかし問題なのはこの先だ。
 ”そのこと”を思い出したアケミは、余裕の笑みを浮かべ、二人に近付かんとするトモエに問いかける。
「待ちなさい麻未トモエ。彼女たちは魔女の口付けによって絶望に心を支配されているのよ。どうするつもりなの?」
「そんなに取り乱さなくても大丈夫よ、ほむらさん。”私だから”できることが、一つだけあるの」
「あなただから……できること?」
「大体のことは聞いてるわ。グリーフシードぐらいじゃ祓いきれないほどに、深くて暗い絶望を生じさせ、魔法少女を無理矢理魔女に変える悪魔の口付け。酷いものね……」
 トモエは二人の首にかけられた不気味な首輪を改めて見つめ、「可哀想に」と目を伏せた。
「この首輪がそれね。後は私に任せて頂戴、ほむらさん」
 不安そうな面持ちのアケミに対し、トモエは大丈夫よと微笑んで、頭の髪飾り——ソウルジェムを外し、二人の魔法少女に近付ける。
 首輪に内包された絶望が、黒い瘴気となってトモエのソウルジェムの中に吸い込まれていく様を目にし、アケミは彼女が何をしているのかを悟った。
「やめなさい麻未トモエ! それが一体何を意味しているのか、あなただって分かっている筈でしょう!?」
「承知の上よ。今の私はソウルジェムであり、グリーフシード。魔法少女と魔女、その中間の存在。グリーフシードに口付けの呪いを吸わせることはできないけど、グリーフシードの特性を持った私のソウルジェムでなら、首輪から発せられる絶望を吸収できる――」
「そんなことは分かってる! 違う、私が……言いたいのは……」
 絶望を吸収する毎に、徐々に悪くなって行くトモエの顔色を目にし、声を上げるアケミ。このままでは彼女はまた魔女になる。そんなことは彼女だって分かっている筈だ。
 しかし、当人はそうなることに恐れを抱いていないのか、アケミの方に向き直って微笑み返した。
「大丈夫よ、負けるもんですか。ほむらさん、あなたが傍にいてくれるのだから」
「なッ、こんな時に何を言うの!」
「こんな時だからこそ、よ。ふふふっ」
 あまりに唐突で意味深なその言葉に狼狽え、うまく継げずにどもってしまうアケミ。そんな彼女の様子を見て、トモエは「可愛い」と微笑み、アケミの頭を優しく撫でた。

「ほぉら……ね。言った通りでしょう?」
 麻未トモエの言う通りだった。二人の首にかかった悪しき首輪は、内包された絶望の瘴気を放出し切って外れ、人の首から離れると同時に、ヒビ割れて塵に変わった。
「う、うぅ……うん?」
「なんなんだぁ? アタシたち、なんでこんなところに……」
 口付けの絶望から解放されたミキとサクラは、暫し微睡《まどろ》んだ後、目を覚まして周囲を見回す。二人の目に飛び込んできたのは、自分たちの見知った派手な黄色い衣装を身に纏う、その恰好をしているはずのない親友の姿。どういうことだと声を上げる二人の魔法少女の唇に、トモエは「落ち着いて」と軽く人差し指を触れた。
「そう、今の私は円カナメ。でも、『心は』麻未トモエなの。だからこの衣装を着ているし、魔法だって使えるってわけ」
「それはさっき聞いたわ。もっと具体的な説明をなさい、麻未トモエ」
「わ、わけがわからねぇよ。お前、何言ってんだ」
「トモエさんがカナメで……カナメがトモエさん、ってこと?」

「体は円カナメ」、「心は麻未トモエ」。的を射ない抽象的な回答に、訳が分からないと首を傾げる三人の魔法少女。どういうことだと首を傾げる三人に、トモエは髪飾りから濁りに濁ったソウルジェムを外して見せた。
「私たち魔法少女の本体はこのソウルジェム。まぁ本体と言っても、何も見えず聞こえず喋れない。五感を持たないただの石ころよ。あの戦いで体を失いはしたけど、グリーフシードとなった私のソウルジェムは、浄化されてソウルジェムに戻ったの。ま、少し濁りが残って、グリーフシードとソウルジェムの中間のようなものになっちゃったんだけどね」
 自分の魂の宿ったソウルジェムを握り締め、トモエは話を続ける。
「生きていくことに絶望して、呪いを産んで魔女になって……。自分が死んだことにすら気付けないまま一生を終える。酷いものよね。こうして”悲しい”と思うことすら、ソウルジェムのままじゃできないんですもの。事情はどうあれ、まどかさんには感謝しているわ。私に体を貸して、もう一度あなたたちに会わせてくれたのだから」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。じゃあ、カナメは今……」
 円カナメの中に麻未トモエの精神が宿っている。それは理解した。しかし、だとすれば今、体の持ち主の精神はどうなっているのだ。
 取り乱して胸倉を掴むアケミに対し、トモエは「大丈夫よ」と呟いて、唇に人差し指をちょんと乗せた。
「まどかさんは生きてるわ。ただちょっと眠っているだけ。”私”がこの体から離れれば、彼女の意識はすぐに戻るから」
「そう、なの? その根拠は」
「私が一度でも、あなたに嘘を言ったことがあるかしら? 焔アケミさん」
 屈託のない笑顔を浮かべてそう答えるトモエに、二の句を継げず押し黙るアケミ。そこに対してとやかく言うつもりはないのだが、同時にアケミの頭に疑問が過ぎる。
 カナメの意思がないというのなら、彼女をここまで誘導してきたのは誰だ。そもそも、魔法少女の“秘密”を彼女に教えたのは一体誰だ。
 考えなくても分かる。そんなことが出来るのは、自分たちを魔法少女にした張本人、キュゥべえをおいて他にないと。自分たちがいなくなった後、言葉巧みにカナメを唆し、彼女を危険極まりない戦場にまで連れてきたのだ。もしも麻未トモエが破れたとしても、カナメと契約させられればそれで良し。そういう算段もあってのことだろう。
 おかげで命を拾えたとはいえ、状況はなお悪化したと言わざるを得ない。アケミはキュゥべえの狡猾さに怒りを覚え拳を震わせたが、そんな拳をトモエは自身の両の手で優しく包んだ。
「女の子がそんな顔をしてはだめよ、はしたない。まぁでも、それだけ元気なら大丈夫ね」
 アケミの様子を見て何かに踏ん切りが付いたのか、トモエは自身のソウルジェムを握り締め「最後の仕上げね」と呟いた。
 意味深な言葉を吐くトモエに対し、ミキとサクラは何を言っているんだと笑い合う。しかし、彼女が自身のソウルジェムを握り締めていることに気付いて凍り付き、何をやっているんだと声を上げる。
 握っている”だけ”ならまだいい。しかしトモエはそれを”握り潰さん”勢いで力を込めているのだ。それが何を意味する行為であるか、もはや分からない二人ではない。
 ミキとサクラはトモエの右手を掴み、アケミは拳銃を構えて、ソウルジェムから引き剥がそうとするが、地中から伸びてきた黄色のリボンに全身を絡め取られ、逆に引き剥がされてしまった。
「ちょっ、ちょっとトモエさん!? 一体何をッ」
「自分が何をしようとしてるのか、分かっているのかよ!? それを握り潰すって事は……」
「だからきちんと説明したのよ。私、もう魔女にはなりたくない。あなたたちを傷付けたくないの。凄く残酷なことだってのは分かってる。けれどお願い。人間の……いや、魔法少女のままで、人生の幕引きをさせて頂戴」
 二人の魔法少女は改めて、トモエのソウルジェムをまじまじと見つめる。
 かつて陽光のように暖かに、誰よりも美しく輝いていた頃の面影は見る影もなく、どす黒く濁り、所々にヒビが入っている。溜まりに溜まった絶望が放出されかけており、いつ魔女の卵《グリーフシード》に変わってもおかしくない。
 ミキとサクラが息を呑んで言葉を詰まらせる中、トモエはよろよろと腰を降ろし、額に脂汗を浮かべ、力なく微笑んだ。
「後はあなたたち次の世代に任せるわ。先輩の私は……、退散しちゃおうかしらね」
「そんな……そんな! やめてくださいトモエさん!」
「馬鹿な真似は止せ! グリーフシードならいくらだってある。何もアンタが消えることはねぇだろ!」
「それはあなたたちがすべきことのために使いなさい。今の私には必要のないもの、だから……」

 自身のソウルジェムを省みてトモエは言う。
 口付けの穢れを吸い尽くす前、魔女から蘇った時点で、自分は既に魔女に近い何かに変質しており、グリーフシードで穢れを消すことすら出来なくなっていた。存在するだけで周囲に絶望を撒き散らす魔女となる。今までの生活に戻ることなど、最初から不可能だったのだ。
 その姿を不安そうに見つめるミキたちに対し、トモエは弱々しく微笑んで、彼女たちの額に短く唇を重ねた。
「いいのよ、もういいの。一人寂しく殺されるはずだった私が、大好きな後輩たちに見守られて逝けるんですもの。私今、最高に幸せよ」
 ミキたちはもう何も言えなかった。目は虚ろで息も絶え絶え、いつ倒れてしまってもおかしくない程に弱り、先輩魔法少女としての面影は、もはやこの場の誰よりも辛いはずなのに、 それでもなお自分たち後輩への感謝の言葉を述べる彼女に、誰も継ぐべき言葉を持たなかった。
 各々が武器を落とし、目元に涙を溜めてうつ向く様を目にし、トモエは目を伏せて再び自身のソウルジェムを握り締めた。
「未練……だとは言わないけど、まどかさんにお別れできないのはちょっと心残りかな。さよならの言伝て、宜しく頼むわね。それじゃあ……ばいばい、みんな」
 最後の最後まで涙を見せず、優しげな微笑みを残して、麻未トモエは自身のソウルジェムを握り潰す。どす黒く濁った宝石は粉々に砕けると同時に穢れを瘴気として放出し、黄色く輝く欠片となって、彼女の足元に雨のように降り注いで行った。

 瞬時に魔法少女の衣装から、普段着ていた見滝原の制服姿に戻り、意識を失って前のめりに倒れるカナメ。トモエの命が散り、彼女の魔法の拘束から逃れられたアケミは、カナメが地面に額を打ち付けるよりも速く、彼女を抱き止めて声をかけた。
「カナメ、円カナメ! 返事をして、円カナメ!」
「うぅ……うん? アケミ……ちゃん?」
 アケミの呼び掛けに応じ、目を覚まして周囲を見回すカナメ。
 彩花ミキに杏子サクラ。親友の変わらない姿がそこにあった。しかし、何かがおかしい。目の前の二人はどこかやりきれない面持ちで自分を見つめている。
 カナメはどうしたのかと彼女たちに問いただそうとするが、同時に黄色く輝く石の欠片を握っていることに気付き、カナメは今一度辺りを見回した。
「ねぇ、トモエさんは? トモエさんはどこに行っちゃったの!?」
 必死そうな表情と声で答えを求めるカナメの姿を目にし、三人は改めて「麻未トモエはもういない」という事実を痛感し、口をつぐんでうなだれる。
 はっきりとした答えは得られなかったものの、この場所で何があったのか、麻未トモエはどうなったのか、何故何も言おうとしないのか。その理由はカナメにも薄々分かり始めていた。
 周囲に気まずい沈黙が流れる中、焔アケミはあえて凛とした表情を作り、カナメの目を真正面から見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「あなたが気に病む必要はないわ。麻未トモエは……行ってしまっただけよ。『円環の理』に導かれて、ね」
「”円環の理”!? それって一体何なの? 訳が分からないよアケミちゃん」
「一杯の夢と希望を持って産まれた少女が、その夢を叶えるために魔法少女となり、今度は誰かの夢と希望を護る。その志を胸に抱いたまま命を散らして、転生の後、再び夢と希望に祝福されてこの世に生まれ落ちる……それが魔法少女の円環の理。麻未トモエは自分の人生に納得し、自らの意思で消えることを選んだの。あなたのせいじゃないわ」
 アケミの言うことは、魔法少女でないカナメには理解し難いものであったが、彼女は彼女なりに自分を慰めてくれているのだと理解した。
 しかし、理解と納得は別問題。そんな言葉で納得できるはずがない。そう思っていたのは、ミキとサクラも同じであった。
「トモエさん……あたしたちの、あたしたちなんかのために……」
「ふざけんじゃねぇぞ、バカ野郎……あんなに幸せそうな面して、とんでもねえ爆弾残して行きやがって……、許さねぇ、絶対に許さねェぞトモエぇ!」
 ミキは泣きながら地面に突っ伏し、サクラは今にも泣き出してしまいそうな顔をし、悲しみを誤魔化すように声を荒げて怒りを見せる。していることは違えど、トモエの死に責任を感じているのは双方とも同じなようだ。
 事態をようやく飲み込み、トモエの死を悼んで泣きじゃくるカナメを尻目に、アケミは傷だらけの体に鞭を打って踵を返す。「どこに行くんだ」と問うサクラに、アケミはドクター・ケイトのアジトを指差し、「決まっているでしょう」と冷たく返した。
「戦いはまだ終わっていない。あの化け物がいるかぎり私たちに未来はないわ。今はくだらない感傷に浸っている場合じゃないのよ」
「くだらないって……あんたそれ、本気で言ってるの」
「ヒト一人死んだんだぞ、何故そんなに冷静でいられるんだよ」
 仲間が死んだというのに、この物言いにこの態度。ミキとサクラはアケミに詰め寄って彼女の胸倉を掴むが、当人は「くだらないわ」と返して、胸倉を掴む二人の手を引き剥がした。
「泣いて塞ぎ込んでいれば、故人が喜ぶとでも言うの? 死人は口を利かない。いない人間に振り回されるより、今、自分たちのことを考えるべきでしょう」
 アケミの言い分は尤もだ。麻未トモエは死んだ。その意思を代弁できる人間もいない。トモエが何を望んでいるかなど、誰にも分かるはずがない。
 理屈はそうだ。筋も通ってはいる。しかし、こんな説明で納得できるものか。二人の魔法少女は拳をかたく握り締め、背を向けるアケミに放とうとするが、涙ながらに「やめて」と叫ぶカナメに止められた。

「やめて、やめてよ二人とも……。辛くないわけがないよ。だって、だって……」
 カナメの叫びを耳にしたミキは、握り拳を解いてアケミの顔を自分の方へと向ける。
 焔アケミは泣いていた。唇を噛み、刃物を腕に刺して震えを止めて、泣いているのを二人に気取られぬようにしていたのだ。
 辛くないわけがない。しかし、立ち止まっていても何になる。あえて冷徹に振る舞うアケミの姿を目にし、ミキは言葉を失いうなだれた。
 その様子を横目に見ていたサクラは、改めてアケミの傷だらけの体を目にし、「こんな体で戦うつもりなのか」と驚いた。ドクター・ケイトがどのような力を持った相手なのか。対峙して間もなく口付けを植え付けられたサクラには窺い知れないが、こんな体で挑むなど、無謀以外の何物でもないことは分かる。

 先に動いたのは彩花ミキだ。顔を上げてアケミの顔を見据えると、握り拳を開いて彼女の胸元に押し付ける。同時に血だらけで所々骨が剥き出しになっていたアケミの体が、青色の光と共に修復されて行く。
 何をするのと声を上げるアケミに対し、ミキはうつむいたまま「動かないで」と言葉を返した。
「あんたの体の傷、殆どあたしが付けたものだから……、これでおあいこ。文句ある?」
「文句は……ないけど、何で急に」
「あのチューリップの化け物、倒しに行くんでしょ? そんなぼろぼろの体でどうしようっての?」
 ぶっきらぼうにそう答えて顔を上げ、穏やかな微笑みを浮かべるミキ。
 唐突な心変りに戸惑い、二の句を継げないでいたアケミの体を、杏子サクラが背負い込んだ。
「よっ……っと。物騒な武器ばかり携帯しているくせに、案外軽いのな」
「杏子サクラ、あなたまで何を」
「病み上がりで全力ダッシュはきついだろ。乗んな、連れて行ってやる」
 サクラの言っていることは正しい。焔アケミは時を止める反則的な力を除けば、運動能力は殆ど人並みであり、運動能力を強化し、剣や槍で戦うミキとサクラには到底及ばず、常日頃そうした戦いを続けるサクラにとって、アケミ一人おぶさった所で、移動に何ら支障はない。
 だが、アケミには彼女たちが何故そうするのかが分からない。疑問に思って問い掛けると、二人は鼻を鳴らし「決まってんだろ」と答えた。
「あんたの言いなりになるのは癪《シャク》だけどさ、あのチューリップをなんとかしなきゃやばいってのは、あたしたちが一番よく分かってるし、それに……」
「トモエのやつの弔い合戦だ。あんなやつでも、一宿一飯の恩義があるしな」
 そう言って、歯を覗かせにかりと笑う二人の魔法少女。
 焔アケミはサクラの赤く伸びた艶やかな髪に顔を埋めて言葉を返す。
「ふふ、あなたたちって、本当に馬鹿ね。それと杏子サクラ。あの化け物はチューリップじゃないわ、薔薇よ」
「馬鹿とは何よ馬鹿って。せっかく手伝ってあげようとしてるのに。馬鹿って言うやつが馬鹿なんですぅー」
「うっせぇな。重箱の隅つつくようなことばかり言ってっと、いつか友達なくしちまうぜ? あぁ、元から友達なんかいなかったか。アタシたちを除いてよ」
 物言いは酷いが、誰も腹を立ててはいなかった。ミキとサクラは“馬鹿”という言葉に隠された意味を読み取り、アケミもまた、二人の優しさを素直に受け止められたのだろう。
 一様に顔を見合わせて頷き返す。乗り込む準備は整った。
 三人の魔法少女が再びケイトのアジトに乗り込まんとしたその時、一人残された円カナメが声を上げた。
「行くんだよね? あそこに。じゃあわたしも……」
 声や面持ちに怯えはない。それどころかその目から、死ぬことすらいとわないという覚悟まで伝わってくる。
 麻未トモエが命を落として悲しいのは自分たちばかりではない。その気持ちは痛い程よく分かる。だからこそ三人の魔法少女は、カナメと自分たちの間に赤と青の格子で隔たりを作り、彼女をその中に閉じ込めた。
「な……何これッ!? 出して、出してよぉ!」
 自分も連れて行ってと必死に格子を叩くカナメに対し、三人の魔法少女は振り向いて答えた。

「こっからはアタシたち魔法少女だけの問題だ。ただの人間はすっこんでな」
「心配しないで待っててよ、チューリップの化け物なんかちょちょいっとやっつけてきちゃうからさ」
「あなたのおかげでこの二人を殺さずに済んだ。それは感謝している。けれどこれ以上あなたを危険な目に遭わせたくないの。お願いだから分かって頂戴、円カナメ。私のためにも、あなたのためにも」
 各々が各々の言葉で、カナメにここに留まるよう促す。説得などではどうにもならないことを悟ったカナメは、格子から手を離し、分かったと呟いてうなだれた。
 アケミはありがとうと言ってすぐに踵を返し、自分をおぶったサクラの尻を軽く数度叩いた。
「さっさと片付けるわよ。行って」
「いちいち命令すんなっての。アタシはあんたのタクシーじゃねぇ」
 取り留めのない会話を残し、ケイトの研究施設に向かって駆け出す三人の魔法少女。
 一人取り残された円カナメは、何も出来ない歯痒さに唇を噛み、彼女たちの後姿を不安そうな面持ちで見つめていた。

「どうして、なのかな……。みんなのこと、信じたいって思うのに、どうしても、そんな気になれないよ……アケミちゃん、ミキちゃん、サクラちゃん……」


◆◆◆

 ――あぁ、もうどうでもよくなってきやがった。
 ――遅かれ早かれ、生きてる以上死からは逃れられない。
 ――ここらで幕引きをしようじゃあねぇか。過去も何も見つけてねぇが、とっかかりを残したまま消えてくってぇのも乙なもんだ。
 ――頼むぜ夏ミカン。俺を早く黄泉の世界とやらに連れて行ってくれ――。

 門矢士の心は、夜の闇よりも黒く深い絶望に支配されかけていた。夏海を救うことはおろか、自分の命さえも、どうでもよいことになりかけていた。
 何もかも諦め、握っていた武器を捨てた士は、自分の首を絞める夏海の手に自身の手を載せ、その全てを彼女に委ね、目を閉じる。

 それで全てが終わった。自分は喉を潰され、呼吸困難で死んだはずだ。
 しかし今の自分は先ほどまでと同じように空気が吸える。首を絞められていると言うのに痛みはない。
 なんだ、もう死んでしまったのかと辺りを見回すも、目の前に広がるのは、先程までと同じ趣味の悪い礼拝堂の中。おかしいのはそれだけではない。士の首を絞めていた夏海の腕が、今度は自分の首輪を掴んで苦しがっているではないか。
 虚ろだった意識を覚醒させ、どういうことだと再び辺りを見回す士。
 意識を取り戻した彼の目に映ったのは、青色の棒で夏海の首輪を刺す、仮面ライダークウガの姿があった。

「――馬鹿野郎、何ぼぉっとしてやがんだ士ァ! 夏海ちゃんがピンチなんだぞ!」
 予期せぬクウガの登場に、ディケイドの仮面の中で目を見開いて驚く士。
「馬鹿はお前だ! 子どもの御守りすら満足にできねぇのか」
 同時に、自身がユウスケに課したことを思い出し、助けられたことも忘れて、荒い口調で言及するディケイド。クウガは即座に「言いがかりだ」と反論する。
「そのカナメちゃんを追ってたら、こんなわけのわからない場所に出ちゃったんだ、不可抗力なんだって」
「何が言いがかりだ。逃がした時点でお前が悪いだろ」
 悪いのはお前だと、みっともない言い合いを続ける二人のライダー。その最中、首輪を掴んで苦しがる夏海の姿をちらと見たディケイドは、ある疑問を抱く。首を棒で刺されて痛みを感じ、それを引き剥がそうとするのは分かる。しかし、それで自分が絶望から解放されるのはおかしいのではないか。
 クウガと言い合いを続ける中、何故こうなっているのかと思案を巡らせる。ディケイドは彼が夏海の首筋に刺した棒と、彼の体表を目にして、一つの結論に達した。
「そうか……そういうことかよ」
 彼が今目にしているのは、青のクウガ・ドラゴンフォーム。手持ちの武器はドラゴンロッド。仮面ライダークウガは手足や手持ちの武器から「封印エネルギー」を放出して、グロンギたちを倒す戦士だ。そのエネルギーが首輪を伝い、自分の中に巣食いかけていた絶望を断ち切ったのではないか。ディケイドはそう結論付けた。
 その証拠に首輪が形を変え、自分の腕に取り付かんとしていたあの腕輪は、砕けて千切れ床に散乱している。ディケイドは「助かったぜ」と仮面の下でにやりと笑った。
「その話は後だ! そこを動くなよユウスケ、夏ミカン!」
「えぇ、えッ?」
 床に落とした音撃棒を拾い上げ、念には念をと、ライドブッカーからカードを引き抜いてドライバーに装填。
 ――FORM RIDE「HI-BI-KI KURENAI」
 ドライバーから無機質な電子音が発せられると同時に、ディケイドの体を灼熱の炎が包み込み、紫の体表を真っ赤に染め上げる。仮面ライダー響鬼の強化形態「響鬼・紅」だ。
「一発で決めてやる、音撃打・灼熱深紅の型!」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「Hi-Hi-Hi-HIBIKI」
 ファイナルアタックライドのカードを装填すると同時に、ディケイドは夏海の腹部目掛けて、勢い良く音撃棒を振るう。
 清めの音を叩き込まれた夏海は、炎の紋を体に刻み、それが弾けると同時に、長机の間と間に吹き飛ばされてしまった。
 
「痛てててて……いきなり何するんだよ士」
 夏海と共に吹き飛ばされ、机や椅子の下敷きになったクウガが、よろよろと起き上がる。
 ディケイドは「夏海のためだ」と彼の言葉を遮って、近くに倒れている夏海の様子を見るよう促した。
「夏海ちゃん、夏海ちゃん! 大丈夫か、夏海ちゃん!」
 机と机の間に挟まって横たわる夏海を抱き上げ、軽く揺すって無事を確かめるクウガ。
 清めの音撃が効いたのか、変身は既に解けており、絶望を増幅させるあの首輪も、跡形もなく消え去っていた。
 意識はないが、寝息にも似た穏やかな息遣いが聞こえてくる。無事にケイトの呪縛から解き放たれたようだ。二人のライダーは仮面の下で安堵の溜め息を漏らした。

「私の口付けが破られるなんて……! けれどまだ終わりじゃないわよ、今度はあなたたちが喰らいなさいッ!」
 その一瞬の隙を、ドクター・ケイトは逃さなかった。夏海に気を取られた二人のライダーに向かい、杖を振り上げてあの光線を放ったのだ。
 気付いた所で時遅し。光線は彼らの首筋近くにまで迫っていて、避けようがない。あのディケイドを自分が仕留め、手駒に変えた。ケイトはこれで昇進だと高笑うが、杖を握る右手目掛けて銃弾が迫っていることには、全く気付いていなかった。
「あぁ……ッ、なんで、いきなりッ!」
 銃弾はケイトの右掌を貫き、握っていた杖を叩き落とす。
 音もなく突然放たれた銃弾に動揺し、何奴かと必死になって辺りを見回すケイト。
 彼女が施設の入り口に、拳銃を構えてこちらを狙っている焔アケミの姿を見つけるのに、それほど時間はかからなかった。
 彼女に気を取られ、杖を拾うことすら忘れたことがケイトの運命を分けた。アケミに気を取られたことで反応が遅れたケイトは、左脇から飛び込んできた彩花ミキの突撃を避けることが出来なかった。
「トモエさんの、仇ぃいいいいいいいいいッ!」
「う……、ぐッ!」
 両手に構えたミキの剣が、ケイトの両手を刺し貫いて、そのまま壁に叩きつけて釘付けにする。ミキはケイトの顔に膝蹴りを見舞って、空中で一回転し、痛みに悶えるケイトの顔を横目に着地した。
「なるほどね、こんなもんのためにトモエのやつはねぇ……。けどよ、これで終わりだ!」
 その上で、杏子サクラが右脇からケイトのいる大壇に登り、転がっていた杖を折って投げ捨てる。放られた杖はサクラの魔法の力によるものか、炎に包まれて消し炭と化した。

 鮮やかな形勢逆転だ。ディケイドは壇上に立つミキとサクラ、入り口の前で拳銃を構えるアケミの姿を見て口元を歪ませた。
「お前ら……やりゃあ出来んじゃねぇか、見直したぜ」
「私の力じゃないわ。強いて言えばあなたと……あいつ」
 苦々しくそう語り、アケミはディケイドと、その背後に立つ二足歩行の白い生き物を指差す。円カナメにソウルジェムの秘密を教え、この場所まで誘導し、ユウスケに彼女を追わせる算段を立てた者、「キュゥべえ」だ。
「やってくれるわね。麻未トモエまで引っ張り出して……そこまでしてカナメを魔法少女にしたいっていうの?」
 鋭い目付きで銃口を向け、怒りに満ち満ちた表情を見せるアケミ。
 キュゥべえはそれに一切気圧されることなく、無表情のまま淡々と言葉を返した。
 ――酷い言われようだなあ、今君たちが生きていられるのは僕のお陰だっていうのにさ。わけがわからないよ。
「黙りなさい。けれど、お前の企みもここまでよ。ドクター・ケイトを倒して、何もかも終わりにしてやる」
 ――そうだね。ディケイドに大ショッカーに麻未トモエのソウルジェム……。イレギュラーな事態はもう勘弁してほしいよ。
 悪びれることなく切り返すキュゥべえに、苛立ちを募らせるアケミ。ディケイドは「放っておけよ」と平手を振って、剣で両腕を刺され、壁に釘付けとなったドクター・ケイトの方に目を向けさせた。
「それよりも、まずはこいつだ。とっとと終わらせてメシにしようじゃねぇか。この小動物の摂関もな」
「……そう、ね。その通り」
 ディケイドの一言で我に返ったアケミは、ケイトの方に向き直り、未だ抵抗を続ける彼女の足に鉛弾を撃ち込んだ。
「もう逃げられないわよ、イレギュラー。大人しくここで消えなさい」
「トモエさんの仇……、討たせてもらうわ!」アケミに続き、剣先をケイトの顔に向けてミキが叫ぶ。
「あんたから受けた借り、きっちりと返させてもらうぜ、覚悟しな!」自慢の槍を抜いたサクラが、それをこれ見よがしにぶんぶんと回しながら自信たっぷりに言う。

 三人の魔法少女と二人のライダーは、各々武器を構え、とどめの一撃を放つべくじりじりと迫る。
 自分たちの勝利を確信していたからか、ケイトがうつむいて、その下で不気味な薄笑いを浮かべていたことに、彼女たちは気付けなかった。

「ふふ、ふふふふふ。あなたたちまさか、「これで終わり」だなんて……、そんなこと考えているんじゃないでしょうねぇ?」
「な、なんだよ。事実その通りだろ。この期に及んで負け惜しみ?」
 そのことを最初に不審がったのは彩花ミキだ。痛みを堪えて苦悶の表情を見せてはいるものの、これから殺されるというのに、恐怖を全く表に出していないのだ。
 痩せ我慢か、大ショッカーの幹部であるという|矜持《プライド》からか、はたまた、何か策があるとでも言うのか。彼女の脳裏に一抹の不安が過った。
 ミキの疑問をよそに、ケイトは震える声で話を続ける。
「この『カプセル』……、いつから空っぽだったか分かる? まぁ、分からないでしょうねぇ。ふふ、ふふふ」
「カプセルぅ? あんた、一体何のこと言ってんのよ」
「何やってんだ馬鹿ミキ。そいつはもう虫の息なんだぞ、ちょちょいっとトドメ、刺しちまえよ」
 ケイトの言葉に聞く耳を持たず、戸惑うミキにとどめを刺せと促すサクラ。それに応じ、疑問は一先ず横に置いて、手にした剣を振り上げるミキ。

 それが、彼女たちの最期の言葉となった。
 早くしろと野次を飛ばしていたサクラの声が消えた。どうしたのかと彼女の方に顔を向けると、杏子サクラは、鳥の羽根の様な耳を生やし、道化師のような顔の化け物に上半身を喰われ、残された胴体は炎に包まれ消し炭となった。
 どうなっているんだとディケイドたちが考えるよりも早く、今度はケイトに剣先を向けていた彩花ミキが、空から伸びた巨大な手に捕まり、頭と両足を残して握り潰されてしまう。ミキの頭と足は、泡に包まれて気化し、跡形もなくこの世界から消え去った。

 瞬く間に二人の魔法少女が死んだ。何故、誰が、どうやって。わけが分からないにも程がある。
 彼らのそんな姿を見て、ドクター・ケイトがさも可笑しそうに笑っている。彼女の仕業なのは間違いないが、腕や足を潰され、魔女の口付けさえも封じられた今、ケイトにこんなことが出来るのだろうか。否、不可能だ。
 三人が驚き戸惑う中、ドクター・ケイトは勝ち誇ったように、痛みも忘れて高笑いを上げた。
「これでおしまい? 違うわ、終わりなのは私じゃない、あなたたちの方。見せてあげるわ、私の研究成果、人口魔女の合成・融合態の力をね」
 ケイトの求めに応じ、天井から何かが姿を現した。
 薄い暗幕の張られた鳥籠に、青いショルダードレスを纏った女性(のような何か)が入れられ、格子の隙間からは無数の腕と不気味な小窓。登頂部には、何本もの剣が刺さった蓄音機。籠の下では巨大な歯車が不気味な音を立てて回っている。

「なん……なんだよ、こりゃあ!」
「分からない、分からないけど……怖い!」
 これも”魔女”だと言うのか。二人の仮面ライダーは恐怖に顔をひきつらせ、焔アケミは強大過ぎる敵の出現に、ただただ唇を噛んでいた。
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