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「二次創作」
それでも、わたしは魔法少女だから

まどマギxディケイド 『それでも、わたしは魔法少女だから』 そのさん

 ←まどマギxディケイド 『それでも、わたしは魔法少女だから』 そのに →まどマギxディケイド 『それでも、わたしは魔法少女だから』 そのよん

 説明しなきゃいけない設定が多い作品を二次創作化すると、必ずどこかで説明づくのしわ寄せが来てしまう……。今回はそんなお話です。

それでもわたしは、魔法少女だから:そのさん【原作:魔法少女まどか☆マギカ】

◆◆◆

 ”大食い”系少女。花も恥じらう奥床しき美少女が、実は相撲取り顔負けの大喰らいだった……、というような、一般人が考える美少女のイメージの逆をいったもの。
 ただ美しいだけのキャラクタに一味加え、より個性的に見せるための設定であり、ライトノベルなどでよく用いられている。
 フィクション以外ではそうそうお目にかかれない大層なものを、実際に目の当たりにした時の衝撃は凄まじい。
 門矢士と小野寺ユウスケは、テーブルの上に並べられた料理”すべて”を、『たった一人』で平らげる焔《ほむら》アケミの姿を目を点にして眺め呆けていた。
「こんなの絶対おかしいよアケミちゃん。っていうか、お腹大丈夫なの? 館長さんに胃薬をもらった方が」
「それには及ばないわカナメ。こんなもの、私にとっては食べたうちに入らない……うえっぷ」
「今げっぷみたいなものが聞こえたよ。やっぱり無理してるんじゃあ」
「円カナメ、あなたは優しすぎる。いいのよ、気にしないで。私のお腹も、この料理の支払いも」

「なぁお嬢さん。残りはもうこの食パンしかないんだけど、どうするんだい?」
「頂くわ。ブルーベリーのジャム、あるかしら」
「いや、マーマレードのしかないけど、それでもいいかな」
「えぇ」

 士たちがドクター・ケイトの元から逃げ出して数時間。
 アケミとカナメは士の口添えで光写真館に匿われることとなり、身を潜めた上でケイトへの対策を練らんとしていたのだが、その途中で栄次郎が傷ついたアケミの姿を見て治療と「軽食」を出したことでおかしな方向へと進み始めた。
 出された軽食を物の数秒で胃の中に落とし込んだアケミは、「治療など必要ないから、もっと食べ物を」と栄次郎に要求し、彼も嫌な顔をせずむしろ嬉々とした表情で料理を作って運び続けた結果がこれだ。
「なんでこんなに食べるんだアケミちゃん。やけ食いはよくないって」
「カナメじゃねぇが、大丈夫かよお前。食った分はちゃんと代金を払えよな」
 アケミはハンカチで口を拭い、げっぷに続いて二人の問いに答える。
「……失礼。傷の縫合は容易く出来るけど、欠損した臓器の補充となると話は別。戦わなければいけない敵はたくさんいるし、魔力をそうそう無駄にはできないわ」
「だからって、吐きそうなほど飯を掻き込むのとそれと、何の関係がある」
「食べたものを魔力で直接体の中に摂り入れ、それを血肉に変えて臓器を補修するの。魔力で全て補うより消費は少なくて済むわ」
「理屈としては分かった。分かったけどよ」
 士はむしろそちらの方が面倒なんじゃないかと思ったが、食べるごとに本当に血色が良くなって行くアケミを目にした今、士はそれ以上継ぐ言葉を持てなかった。

「っていうか、のほほんとしている場合かよ。夏海ちゃんも、ミキちゃんもサクラちゃんもあの怪人に拐われてしまったんだぞ。なんとかしないと……」
 士はアケミの大凡《おおよそ》女の子らしからぬ暴飲暴食ぶりに呆れて溜め息をつき、ユウスケはそんな場合かよと士に食ってかかる。
 士はそんなに目くじらを立てるなよと言い、ユウスケを手で御して引き剥がした。
「いいわけあるか。しかしな、アテがねぇだろアテが。空間を捻じ曲げて異空間を作り出すような相手だぜ。闇雲に探し回ったって時間の無駄だっての」
 拐われた夏海たちを救いたい気持ちは士も変わらない。しかし脇目も振らず逃げ出して来た彼らには、ケイトの居場所を示す手がかりがなかったのだ。
「そりゃアテは……ないけど、それだけで諦めるのかよ士。手がかりがないんなら足で捜して探して探し回るだけだろう。臆病風にでも吹かれたか」
「んなわけあるか。普通に探しても意味がないから無駄だと言っている。何故それが分からない」
「いつもの士らしくない。それこそ、やってみなきゃ分からないじゃないか。お前、あの魔女のことが怖いんじゃないの?」
「だから違うって言ってるだろうが! 喧嘩売ってんのかお前は」
 不安から来る動揺に駆られ、落ち着けないのは士も一緒だった。
 食ってかかるユウスケを宥《なだ》めようとしたものの御し切れず、互いに胸倉を掴み睨み合う言い争いへと発展してしまう。
「落ちついてください二人とも! アケミちゃんもほら、手伝ってよぉ」
「あれはあの人たちの問題。私たちには止められないし、止める権利もないわ。放っておきなさい」
「争ってたって何の解決にもならないんだよ。止めなくちゃダメだよ」
 カナメは仲裁にと二人の間に割って入ろうとするが、アケミにやるだけ無駄よと一蹴される。
 どうすればいいんだろうと、カナメが顔に戸惑いを浮かべ溜め息をついたところだっただろうか。その”声”は何の前触れもなく彼女たちの頭の中に響き渡る。

 ――”手掛かり”ね。ないことはないよ。そうだろう? 焔アケミ。
「この……声は、まさか」
「”キュゥべえ”だな。どこにいやがるんだ、姿を見せろ」
 頭の中に響き渡る少女とも少年とも取れない不可思議な声。未だに姿を見せようとしない謎の存在、”キュゥべえ”のものだ。
 カナメと士はどこにいるとばかりに周囲を見回すが、当然のようにその姿はどこにもない。そのことが分かっているのか、アケミだけは全く動じず、栄次郎が食後にと出したコーヒーを啜《すす》っていた。
 ――さっきも言っただろう? これは念話《テレパシー》。声ではなく君の心に直接語りかけているんだ。そんなにいきり立って大声を出さなくても、心の中で念じさえすれば通じるよ。″彼ら″に余計な心配をかけたくはないだろう?
「余計な心配って、どういうことだよ」

「”きゅうべぇ”って何だよ。士お前、誰と話しているんだ?」
「上向いて何を言っているんだい士君。あぁ、上の方にキバーラちゃんでもいるのかい? いやいや、さっきからどこに行ったのか分からなくてさぁ」
 上ばかり向いている士に対し、ユウスケと栄次郎は誰と話しているんだと問いかける。”念話”だと言うのなら、当然彼らにだって聞こえているはずだと思っていた士は、自分が今とんでもない奇行に走っていたことに気付かされ頭を抱えた。
 なんでもないと強引に押し切り、言い寄る二人を引き剥がすと、腕を組んで目を閉じ、キュゥべぇに生じた苛立ちを思い切りぶつけた。
「なんでこいつらには聞こえていないんだ。どう考えてもおかしいだろ!」
 ――僕の声は僕と出会ったことがある人間か、僕と契約を交わした魔法少女にしか聞こえないからね。そんな君が僕の声を聞くことが出来るのは、君がこの世界から拒絶されているからだろう。異端の存在だからこそ、僕は”交信”に必要な君の”波長”を特定することが出来た。というわけさ。
「分かったような分からないような。それはまぁ置いといて、だ」
「キュゥべえ! アケミちゃんが”手掛かり”を持ってるって話、本当なの!?」

 二人の会話に横槍を入れて割り込んだカナメ。士は不愉快そうに目を閉じたまま眉間に皺を寄せるが、彼にとっても気になる事柄だったので捨て置くことにする。
 キュゥべえがそれに答えるよりも早く、先程から沈黙を守っていたアケミが口を(正確に言えば心を)開いた。
「私の持っているソウルジェム。当然、これのことよね
」 ――理解が早くて助かるよ。ドクター・ケイトは今、”この街”のどこかにミキたちを連れ込んで”研究”を行っている。それがどこなのかは僕にも分からない。けれど、ソウルジェムには魔女や同類の”魔法少女の”気配を探る力がある。それを辿っていけば二人を見つけ出すことなど造作もない。
「そうは言うがな、何故奴がこの街にいると分かる。お前にだって居場所は掴めないんじゃなかったのか?」
 出るべくして出た当然の疑問に、キュゥべぇは何か考えるように軽く唸った後、口を開いた。
 ――そりゃあ分かるさ。何せ僕は今、ドクター・ケイトに”捕まって”彼女の研究の手伝いをさせられているんだからね。尤も、僕の持つ知識を彼女が勝手に抜き出して利用しているだけなんだが。

 キュゥべぇの口を突いて不意に出た衝撃の一言。
 カナメからは驚きの、士とアケミからは怒りの声が上がるが、キュゥべぇはそれらを無視して言葉を継いだ。
 ――今まで言えなくてすまない。けれどこちらにも事情があったんだ。
 ――ドクター・ケイトに捕らえられた僕は、テレパシーを遮断する特殊な空間の中に放り込まれて身動きが取れなくなった。どうにもならなくて困り果てていたんだが、そこにディケイド、君が現れた。君の波長を探り出して交信し、アケミと引き合わせて、君を電波の『中継地点』にすることで、君たちと話をすることができるようになったのさ。

「待てよ。じゃあなんで俺と話ができた時にそれを言わなかった。あの時伝えていればもっと早く事が済んだんじゃないのか」 ――勿論、そうしたかったさ。しかし君が大ショッカーの手の者である可能性も否定できない。敵でないという確証が持てない限り、話すべきじゃないと思ってね。

 奴の言っていることは正しい。姿も目的も異なるが、別の世界からの厄介者という意味では、彼ら二人に大した違いはない。押し黙る士に代わり、キュゥべえは更に話を進める。
 ――ドクター・ケイトは魔法少女を″人工的に″魔女にする技術を手に入れた。彩花ミキに杏子サクラ。あの二人もいつまで魔法少女でいられるものか……。
「ちょ、ちょっと待ってよキュゥべえ! 魔法少女を魔女にって、一体どういうことなの!?」
 魔法少女を魔女に変える。敵はそんな恐ろしいことまで出来るというのか。カナメはあまりのことに念話の言葉を声に出してしまう。キュゥべえはカナメの問いに、当然の疑問だねと淡白な言葉で返した。
 ――”希望と絶望は差し引きゼロ”。希望を願った分だけ、その心には絶望が溜まる。魔法少女は人々に希望を振りまく存在だ。けど、その心が絶望で埋め尽くされたら……どうなると思う?
「それは、えと、あの」
「希望の代わりに絶望を撒き散らす……。”魔女”と同じになる、ってことか」
 動揺し、心の中でさえ上手く言葉を継げないカナメの代わりに、士が言葉を返した。

 ――その通りだ。そしてなるべく急いだ方が良い。あの二人を“そこにいる“麻未トモエのようにしたくなかったら、ね。
「そこにいる、って……トモエさん、わたしたちの近くにいるの?」
 ――居るも何も、トモエなら“君が”大事そうに握っているじゃないか、カナメ。
 何を馬鹿なことをと不思議な顔をし、掌の中の黒く濁った格子付きのソウルジェムに目をやるカナメ。トモエの大切な持ち物であることに違いはないが、それが一体何だと言うのか。意味が分からないよと首を傾げるカナメに、キュゥべぇは残酷な事実を容赦なく突き付けた。
 ――だから、“それが“麻未トモエなんだってば。肉体などという外付けハードウェアを廃した、魔法少女の『本来の姿』さ。
「え……っ!?」
 悪びれる様子もなく一歩調子で淡々と呟くキュゥべえ。自分が手にしているものの正体を知ったカナメは、麻未トモエの『魂』たるソウルジェムを強く握り、抱き留めるように体を丸めた。
「待ってよ、ちょっと待って。これはあの魔女の体の中から出てきたんだよ? じゃあこれは……トモエさんは一体どうなっちゃったの!?」
 蒼い顔をして歯を鳴らし、頭を抱え小刻みに震えるカナメ。彼女も薄々感付いていたのだ。
 ドクター・ケイトは魔法少女を魔女に変える技術を人工的に生み出した。円カナメが今手にしているのは、魔法少女・麻未トモエの魂の結晶たるソウルジェム。トモエは数日前からカナメたちに何も告げずに行方をくらませており、彼女たちはその行方をずっと追っていた。ここまでくれば、答えはもう一つしかない。
「トモエさんは『魔女にされて』、士さんに『殺された』ってこと……なの?」
 ――殺された? それは違うよカナメ。少し歪な形をしてはいるが、トモエは君の手の中で『生きている』じゃないか。ドクター・ケイトの研究は未だ未完成。魔法少女を魔女にし切ることはできないみたいだね。
「そういう……そういう問題じゃないよキュゥべえ! トモエさんが死んでしまったんだよ? なんでそんなに平気でいられるの!?」
 冷静さを欠き、目に涙を溜めてキュゥべぇを糾弾するカナメ。
 しかし当の本人はカナメに謝るどころか失望の意を込め、溜め息をついて彼女に言葉を返した。
 ――君たちはいつもそうだ。『肉体』なんて魂の″容れ物″でしかないのに。君たち人間はどうしてそうも魂の在りかに拘るんだい? わけがわからないよ。

 信じられないくらい話が噛み合っていない。怒りと絶望が込められたカナメの言葉を、悪びれることなくのらりくらりとかわして行くキュゥべぇに対し、一連のやりとりを聞いていた士は、人間とは違う”何か”と底知れぬ恐怖を抱いた。
 このままではカナメが真実の重さに耐え切れず、壊れてしまう。その場に膝をついて泣き出したカナメを、焔アケミは動揺する素振りすら見せずに抱き締めた。
「あいつの言う通り、麻未トモエはそうなった。それは変えようのない事実。でも彩花ミキと杏子サクラ、あの二人まで魔女になったと決まったわけじゃないわ」
 同じことを聞いたはずなのに、自分たちにとって大切な先輩が魔女となって死んだというのに、何故彼女はこうも冷静でいられるのだろう。カナメの疑問は増える一方だ。しかし、そうなると一つの疑問が浮かび上がる。士は彼女たちを尻目にキュゥべぇに自身の疑問を投げ掛けた。
「ちょっと待て。ミキとサクラについてはそれでいいかもしれないが、魔法少女じゃない夏ミカンはどうなるんだ。一人だけ特別待遇ってわけにはいかないだろう」

 ――光夏海。だったかな。彼女も同様の首輪を付けられているよ。魔法少女じゃないから魔女にはならないと思うけど、心の中に絶望が溜まったら、魔法少女じゃなくたって大変なことになると思うよ。耐えきれなくなって発狂するとか、やりきれなくて自ら命を絶ってしまうとかね。いずれにせよ、無事では済まないと思うな。
「予想してはいたが、やはりそうなるか。仕方がねぇな」
 士はキュゥべぇに当たり障りのない言葉を返すと、アケミに目配せをして立ち上がる。
敵を追う手掛かりは割れた。これ以上野放しにしておく理由もない。後は動き出すだけだ。二人は揃って扉の前に立ってドアノブを握るが、カナメとユウスケに待ってくれと呼び止められた。

「アケミちゃんお願い、わたしも連れて行って!」
「無理よ。いくらカナメの頼みでも、それだけは出来ない」
「嫌だよ、このまま黙って待ってなんかいられない! お願いだよアケミちゃん」
 気持ちは分かる。だが彼女を連れて行ってもいたずらに危険に曝すだけだ。カナメの目に気圧されて何も言えないアケミの代わりに、士が彼女たちの間に割って入った。
「俺ァ前に言ったよな。”お前はあいつらと同じ土俵にすら立っていない”ってよ。戦う力も意見する理屈もねぇくせに、文句ばかり垂れてんじゃねぇ」
 不機嫌そうな顔で荒々しく鼻を鳴らす士に、彼の言葉に打ちのめされ、カナメは今にも泣き出しそうな顔で俯《うつむ》いた。もういいだろうと言い、再びドアノブに手をかける士の手を、今度はユウスケが押さえ込む。
「お前まで何だ。急いでるんだ、後にしろ」
「カナメちゃんを巻き込みたくない気持ちは分かる。けど、俺まで放っておくことはないだろ」
 そう言って息巻くユウスケに対し、士は「そうじゃない」と彼の首を強引に捻って、視線をカナメの方へと向けさせた。
「お前はカナメの御守りだ。こういう輩は言ったって止まりやしねぇ。分かるか? これはお前にしかできない、お前だからこそ任せられる仕事なんだ、小野寺ユウスケ」
 士にそう諭され、ユウスケはカナメの方へと目をやった。納得したと言ってはいたが、今尚士の顔を親の仇だと言わんばかりの怒りを込めて睨み付けている。諦めてなど微塵もいないことは火を見るよりも明らかだ。
 ユウスケには士たちの話は全く伝わっておらず、従って何故カナメが彼にこんな目を向けているのかも分からない。しかし、この目をした人間が危険であることは分かる。今カナメを自由にしてしまえば、その行動によって彼女一人だけでなく、もっと多くの人々を悲しませてしまうだろう。
 納得したくはないが仕方がない。世界中の人々の笑顔を護るのが自分の仕事なのだから。ユウスケはドアノブから手を離し、その手でカナメの右腕を掴んで神妙な面持ちで首を縦に振った。
「そうだ、それでいい。後は頼んだぞユウスケ」
 今度こそ邪魔する者は誰もいない。ドアを開けて外に足を出す士に対し、再びカナメが声をかけた。
「しつこいぞ。いい加減にしろ」
「そうじゃありません。ありませんけど……、この先どうするつもりなんですか! 士さん、アケミちゃん」
 答えるのが嫌なのか、アケミは背を向けて何も言おうとはしない。
 逆に士は首だけカナメたちの方に向けて決まってるだろと言った上で踵を返す。
「そんなもん、俺たちにだって分からねぇよ」
 ぶっきらぼうにそう付け加え、アケミと二人で光写真館を後にした。

◆◆◆

「どうだ、反応は追えそうか?」
「ソウルジェムの輝きが徐々に強くなってる。次の交差点を左折して頂戴」
「あいよ」
 焔アケミは、門矢士の運転するバイク・マシンディケイダーの助手席に乗って街中を周り、異空間に隔離されたミキとサクラの行方を探っていた。
 頭よりも少し大きめのフルフェイスメットを被って助手席に座ったアケミは、右手で士の腰を掴み、左手に宝石の形を成したソウルジェムを掲げ、ミキとサクラの姿をイメージし続ける。捜索範囲は広いが、バイクに乗って街を駆け回っていることもあり、二人の反応を捕捉するのにそれほど時間は掛からなかった。
 求めに応じ、士はウィンカーを出すのとほぼ同時に、殆どスピードを落とさず交差点を左折する。アケミはそうして生じた慣性で振り落とされそうになるが、あばら骨が折れんばかりの勢いで士の腰を掴み、なんとか耐え凌いだ。
「なんてスピードなの。交通法規ぐらい守りなさい。殺すつもり?」
「三人もの人間が死にそうだって時だぜ。少しぐらい大目に見ろよ」
「違反者の定例句ね。私が警察官だったなら迷わずに反則切符を切るわ」
 そんなことを話しているうちに信号が赤に変わる。急いではいるが、赤ともなると話は別だ。士は仕方なくブレーキを踏んで横断歩道の前でバイクを止めた。
 信号が赤から青に変わるまでの間、気を紛らわそうと士は思案する。浚われた夏海やミキたちの安否、魔女のこと、ドクター・ケイトのこと。そして、自分の後ろに無愛想な顔をして跨るこの少女のこと。
 よくよく考えると焔アケミが一番の謎だ。知り合いが二人、醜悪な化け物の仲間入りを果たそうとしているというのに、何故こうも落ち着いていられる。何故取り乱さない。
 士がその疑問を口にしようとしたその時、アケミはそれに言葉を被せるように口を開いた。
「キュゥベえも言った通り、私たち魔法少女の核はソウルジェム。あの二人……特に彩花ミキは、ジェムを直接叩かない限り何度だって怪我を治して襲ってくるわ。あの子のソウルジェムは服の下の臍《へそ》の青い宝石、杏子サクラは胸元の赤い宝石がそれよ。しっかり覚えておきなさい」
「なんだいきなり。何故そんなことを言う」
「何故も何も、知っておく必要があるからよ。あの二人を相手にした時、それともしも私があの子たちと同じようになってしまった時のためにね。それで、私は……」
「そうじゃない。そんなことを言ってんじゃねぇんだよ俺は」

 淡々と話すアケミに向け、士は語気を強めて言葉を返す。
 諦め切ったように冷たく淡々とした口調で、ミキとサクラはおろか自分のことをも省みないアケミの言葉が気に食わなかったのだ。
「俺たちは今からあいつらを助けに行くんだぞ。やる前から諦めたような言い方をするのはやめろ」
 言い終わるが早いか、信号が赤から青へと切り替わる。背後の車のクラクションに急かされた士は、ブレーキレバーから手を離すと同時に、思い切りアクセルを踏み込んで街道を突っ切って行く。
 アケミは左手でソウルジェムを握り締め、振り落とされまいと士の腰を掴む右腕に力を込める。風すら追い越す猛スピードの中で、なんとか体を安定させたアケミは、無理なものは無理と士の問いに答えた。
「穢れを溜め込んで、絶望に打ちひしがれた魔法少女は魔女になるしかない。救うことなんて不可能よ」
「だったらその元とやら、あの首輪を叩き壊せばいい。穢れを浄化するグリーフシード、だっけか? そういう道具があるんだろう? 問題ないじゃねぇか」
「そうね、その通り。でもそれは一時の気休めに過ぎないわ。麻未トモエ、彩花ミキ、杏子サクラ。あの三人は遅かれ早かれ、魔女になる運命なのよ。それは変えられないわ」
「運命だぁ? 何故お前にそんなことが分かる」
 喫茶店で話をした時から思っていたことだが、焔アケミの態度や言動はどうにも理解し難い。同じ魔法少女であるミキやサクラとは違った意味で浮世離れしており、掴み所がない。アケミはヘルメットのバイザーを開き、言葉通りの意味よと話を起こす。

「キュゥべえと契約して魔法少女になった女の子には、魔女と戦うための武器と、叶えたい願いに応じた″祈り″に沿って特殊な力が与えられるの。例えば、彩花ミキが持つ他者や自分に向けての回復能力。あれは彼女が″癒しの祈り″を契約に使ったからこそ得られたものよ」
「アフター・ケアってわけか? 命懸けの戦いを強いられる魔法少女に対する」
 何の気なしに士の口を突いて出たその言葉に、アケミは怒りに満ちた鋭い目付きで「そんな優しいものじゃないわ」と冷やかな口調で返した。
「それは兎も角、私に与えられたのは何でも無尽蔵に収納出来る”盾”と『時間を止め』、『時間を戻す』能力。私はこの力で何度も時を戻し、このくだらない世界を変えようと戦ってきた。時を戻して、何度も、何度もね」
 時間を操作・干渉する能力。滅茶苦茶ではあるが、突然消えたり現れたりを繰り返していた理由には納得がいく。どうりで気配すら掴めない訳だ。
 彼女の言うことが本当ならば、その不可解な言動や態度にも得心が行く。他の二人と比べて妙に落ち着いた態度。寸分の無駄なく能力を使役して戦う姿。他者の命はおろか、自分の命にさえも興味を示さない冷徹さ。そんな中で時折見せるカナメへの愛情と、他の魔法少女に対する不器用な接し方。焔アケミは元から冷たい人間だったのではなく、延々と続いた時間旅行の中で『壊れて』しまったのだろう。
「驚かないのね」
「ンなことで一々驚いてちゃ、世界を巡る旅なんて出来ねぇさ」
 内心かなり驚いているが、それを微塵も見せることなく素っ気ない言葉で返す。士はその上で、抱いていた疑問をアケミに投げ掛けた。
「お前のことはだいたい分かった。しかし何故あぁも必死に円カナメを護ろうとする。お前とあいつ、ただの友達同士の関係にしちゃあ行き過ぎてるように見えるんだがな」
 士が何気無く発した問いにアケミは何も答えない。
「おいおい、ここまで来てだんまりはないだろう。洗いざらい吐かなきゃ振り落とすぞ」
 黙して何も語らないアケミに対し、士は語気を強めると共にアクセルを踏み込んで物騒な脅しをかける。
 脅しに屈したのか、ようやく話す決心がついたのか、アケミは喉元から絞り出すような声で言葉を紡ぎ始めた。
「それが私の願いだからよ。もう一度過去をやり直したい、円カナメともう一度笑い合いたい。ただ、それだけだった……」
 士の返答を待たずして、徐々に声量を上げつつアケミの話は続く。
「あの子は、円カナメは『私を魔女から庇って』死んだの。私なんか放っておけばよかったのに、そうすれば勝てたっていうのに!」
「勝てた……って、あいつも魔法少女だったのか? そいつは初耳だぞ」
「″今″とは別の時間軸の話。円カナメは凄まじい力を持った魔法少女だったわ。ミキやサクラ、トモエさんだってあの子の足元にも及ばないくらいにね。それでも死んだわ、私なんかを庇ったせいでね。もうあんなことは二度と起こさせない。どんな犠牲を払っても、その果てに私がどうなろうと、カナメだけは魔法少女にさせない。だから私はここにいる。それだけよ」
「それがお前の存在理由か。だいたい分かった。分かったが……、はっは、全くお笑いだ」
 どうしたことか、アケミの話を聞き終えた士は突如大きな声で笑い始めた。こちらがどんな覚悟でこの話を切り出したかわからないのかと激昂し、両腕で士の首を絞めるアケミ。士は馬鹿野郎、二人揃って事故っちまうぞと声を荒げて切り返す。
「じゃあ何だと言うの、私を馬鹿にしているの?」
「いやな、おかしくておかしくて。時間旅行なんて大層なことが出来るくせに、発想のスケールがいやに小せぇなあと思ってよ」
「やっぱり馬鹿にしているのね。ふざけないで」
 首を締める感触が消え、その代わり背中に拳銃の硬く重々しい感触が掛かった。
 たちの悪い脅しだと笑う、バックミラー越しに見えるアケミの瞳は暗く濁っている。彼女は本気で撃とうとしているに違いない。
「落ち着けよ。そんなモンを突きつけられちゃあビビって話もできやしねぇ」
「だったら訂正なさい。それぐらいならできるでしょう」
「分からないな。本当のことを何故訂正しなきゃならない」
「まだそんな減らず口をッ」
 背中に銃を突きつけられても尚、まるで態度を変えようとしない士。彼に苛立ち、更に力を込めて彼の背中に銃口を突き付けるアケミ。話し合いは悪い意味で平行線を辿る一方だ。大人かどうかは分からないが、年齢だけ見れば自分の方が年上だ。士は仕方がないかと溜め息を漏らした。
「ふざけているのはお前の方だろ。自分や周りすら蔑ろにして、カナメさえ無事ならそれでいい。それで誰かを救った気になっているとしたら、それこそ馬鹿げている」
「それのどこがふざけてると言うの。私はただカナメのために」
「あぁあ、やっぱり何も分かっちゃいねぇ。自分を強く見せようと必死みたいだが、やはり子どもだな。底が浅いんだよ」
 士は何がおかしいのかと食い下がるアケミに向けて、とどめの一言を畳み掛けた。
「カナメのためだぁ? 結局はてめぇの自己満足じゃねぇか。お前はその果てに満足して逝けるだろうな。だが残された方はそうはいかねぇ。大切な友達が全員死んじまって、カナメがまともでいられると思うのか。馬鹿馬鹿しくてヘドが出らぁ」
 士が話し終える頃には彼の背中に当たっていた銃口の感触が消え、代わりにアケミの啜《すす》り泣く声が彼の耳に届いてきた。
 士は振り向かずにアケミに問う。「泣くってことはお前、そうなると分かってやってやがったな。ならば何故、運命に抗おうとしない。何故変えようとしない」
 アケミは左手の袖で涙と鼻水を拭い、涙ながらに答えを返す。
「やらないんじゃない、できないの。出来るのなら最初からそうしたわよ! でもカナメ一人の運命を変えるので精一杯の私に、大勢の人々の運命を変えることなんてできっこないじゃない! こんなことをしてもあの子の笑顔が戻るだなんて思ってない。それでも、あの子には生きていてほしいのよ」
 柄にもなく取り乱し、必死の弁解を続けるアケミ。士は悪かったと詫びを入れた上で、彼女を後ろ手で優しく撫でた。
「そりゃそうだ。一人でどうこう出来る話じゃない。でもよ、お前は忘れちゃあいないか? 自分の目の前に誰がいると思ってる」
「誰って、それは」
「そう、俺だ。お前が巡ってきた時間の旅にゃあいなかったはずだ。この俺、仮面ライダーディケイドはな」
 泣きじゃくるアケミを元気付けようと、士は明るく力強い声で語りかける。だが、バックミラー越しに見えるアケミの表情は依然として曇ったままだ。
「気持ちは分からんでもないが、そんなに信用できないかね、俺はよ」
 士の問いに対し、アケミは曇った表情のまま「信用してはいるわ」と返して言葉を継いだ。
「でも、この世界の闖入者《ちんにゅうしゃ》はあなたたちだけじゃないのよ。破壊者って意味ならドクター・ケイトだって同じじゃない」
「何かと思えばそんなことか。心配性だな、お前はよ」
 道路脇にバイクを止めて振り返り、肝っ玉の小さい奴だと呟くと、士は彼女の脇腹を思い切りくすぐった。不意討ちに対応できなかったアケミは執拗なくすぐりに堪えきれず、人目も気にせず大きな声を上げて笑い始める。もうやめてという言葉の代わりに自分の肩を何度も叩くアケミに応じ、士はくすぐるのをやめて口を開いた。
「お前の言う通り世界の破壊者は今二人いる。この先どう転ぶかは正直、俺にだって分からねぇ」
「それとっ、このくすぐりに何の関係があるのよッ」
「分からねぇなら分からねぇでいいじゃねぇか。だからその分”笑う”んだよ」
「笑うって……、こんな時に何を言うの」
「馬ァ鹿、こんな時だからこそだ。暗い顔して塞ぎ込んでちゃ、勝てる戦にだって負けちまう。いいか、お前はもう一人じゃない。世界の破壊者ディケイドが味方についてんだ。目ェ見開いて胸を張れ。何もかも奪い返してやろうぜ、あの生意気な薔薇の化け物からよ」
 右手で指鉄砲を作ってアケミの顔を狙い撃ち、口元を吊り上げて笑みを見せる士。
本当に彼がどうにかしてくれるのか、それは分からない。しかし事情を知っても尚、自分や仲間たちのために協力してくれると言ってくれている。これほど頼もしい相手もいない。
 上手く言葉を継げずに俯くアケミに、士はいたずらっぽい笑みを浮かべて彼女の額を人差し指で軽く突いた。
「いつまでも気負ってねぇで顔上げろ。ユウスケ《あいつ》じゃねぇが、同じ顔なら染ったれてるよりも笑ってる方がずっといい。さっきのあの笑顔、悪くはなかったぜ」
「……ばか」
 頬を紅潮させてそう呟くと、アケミは士の背中に顔を埋める。士は後ろ手で彼女の頭を撫でると、ディケイダーのハンドルに差さったエンジンキーを回し、右側のウインカーレバーに手をかけた。
「それで、ソウルジェムの方は今どうなってんだ?」
「あ……、大分近付いてきてるわ。一般道を抜けて、その先の路地を右にお願い」
「あいよ」
 バックミラーをちらと見て後続車両がいないことを確認した士は、アクセルペダルを思い切り踏み込んで再びマシンディケイダーを走らせた。

◆◆◆

「……ここで、間違いないんだな?」
「彩花ミキ、杏子サクラ。暗く淀んだ二人のジェムの感覚が私の心に直接伝わってくる。間違いようがないわ」
 ソウルジェムの反応を追って士とアケミが足を踏み入れたのは、街外れにひっそりと建った鋳物工場の跡地。
 所狭しと並んだ赤錆だらけの鋳造機に、鼻を突く錆びた鉄の臭い。稼働を停止してからかなりの年月が経過したことが見て取れる。
 焔アケミはその奥にある、立入禁止の札が架けられた扉の前で足を止めた。札を外して中に入ってみるが、そこにあったのは鋳造しそこなった歪な形の鉄鋼資材だらけで、ドクター・ケイトたちの姿は影も形もない。
「おいおい、奴らどころか手掛かりすらないぜ。本当にここでいいのかよ」
「問題ないわ。扉を閉めて」
 求めに応じ扉を閉めたのを見計らい、アケミはソウルジェムを握り締めて魔法少女に変身して扉の前に右手を翳《かざ》す。翳した右手が淡く紫色に光る。それと同時に何もなかった扉に怪しげな魔法陣が現れた。
「なんだなんだ、お前何しやがった」
「結界に繋がる”道”を開いたのよ。自発的に魔女の結界に入り込むことが出来るのは魔法少女だけだから」
「そうかい。んじゃ、とっとと乗り込むとしようぜ」
 眼前に広がるどこまでも深い闇に物怖じすることなく、先陣を切って魔女の結界へと足を踏み入れる士。恐怖だとかそういうものはないの、と一言かけた上で、焔アケミも後に続いた。


 右も左も上も下も分からない闇の中をただひたすら前に進み続けた先に広がっていたのは、『不気味』としか形容しようがない空間だった。虹色の空の下、一面に綺麗な薔薇が咲き乱れた中で、小さな子どものような”何か”が玩具の飛行機を持って薔薇園を踏み荒らし、羽の生えた裸の操り人形がその子どもをどこかに連れ去り、足元に目をやると苺の実に犬のような手足の生えた生き物が、忙しなく辺りを駆け回っている。
 地上の様子に辟易し視界を頭上に移すと、何も入っていない無数の鳥篭が所狭しと空を舞い、黒い影の触手が先の子どもを抱えた操り人形を絡め取り、次から次へ地表に叩きつけ壊している。

 先刻戦った魔女――、麻未トモエの創りだした結界にはまだ規則性があった。しかしこの空間にはそれがない。単色のパレットの中に無秩序に絵具を混ぜ込んでぶちまけたような気持ち悪さだ。
「どこに目をやっても気色悪いな。どうなってんだよ」
「あの薔薇の化け物は”魔女を精製”するために『複数の魔法少女』を攫ったと言っていた。魔女の結界はその元となった魔法少女が、生前望んだ”願い”が歪んで生まれる。だとすれば答えは簡単でしょう?」
「魔女になって歪んだ魔法少女たちの願いが、ごちゃ混ぜにされてこうなった……、ってのか?」
 その答えにアケミは何も言わず頷いた。士はひでぇことしやがると吐き捨て、物憂げな顔で結界の中を跋扈する怪生物たちを見つめる。ドクター・ケイトに対し怒りの炎を燃やしているのか、彼女によってこのような姿に変えられた顔も知れない魔法少女たちを憂いているのかは分からない。
 二人は互いの顔を見合わせることなく、ソウルジェムの反応を頼りにし、ただひたすら前へ前へと進んで行った。

 薔薇の咲き乱れる平野道を抜け、二人は『凱旋門』を模した見上げるほど大きな門の元へと辿り着く。門の前には分厚い鉄の扉が立てられており、中がどうなっているのかは窺い知れないが、門の前に立ったアケミの顔が熟れ足りないトマトのように蒼褪《あおざ》め始めた。
 士はそれほどまでの穢れがこの先に広がっているのだろうと理解し、荒い息を吐いて足元をぐらつかせるアケミに肩を貸した。
「おいおい、戦いを前にして何へばってんだよ。ここまで来て怖くなったか?」
「見損なわないで。立ちくらみがしただけよ」
 自分は戦える。助けはいらないと言わんばかりに、士の手を強く撥ね退けるアケミ。士は怖い怖いと大袈裟に両手を振って、彼女の頭を軽く叩いた。
「痩せ我慢でも何でも、そんだけ言えりゃあ十分だ」
「だから、そんなのじゃない」
「隠すな隠すな。んじゃ、いっちょ派手におっぱじめようかね」
 ――変身
 ――KAMEN RIDE 「DECADE」!
 バックルを腹部に押し当て、ライダーカードをドライバーに装填。仮面ライダーディケイドに変身した士は、ライドブッカーからファイナルアタックライドのカードを取り出してガンモードへと組み換えた。
「何をするつもりなの」
「こっからが本番なんだろ。魔力を無駄遣いするなって」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「De-De-De-DECADE」
 軽快なスクラッチ音と共に銃口から放たれた桃色の光弾は、分厚い鉄の扉を粉々に砕いて吹き飛ばす。ディケイドは銃口を口元に寄せて吹き消すような仕草を見せると、砂埃舞う扉の奥へと足を踏み入れた。

 その先にあったのは、長椅子が末広がりになり、七色のステンドグラスが周囲を照らす奥行きの広い礼拝堂のような場所だった。”ような”場所ではあったが、建物の億に置かれていたのはパイプオルガンでも偶像でもなく、体に悪そうな液体が詰まった、目を覆うほどに巨大なカプセルと、それを制御する計器類の山、山、山。
 二人は唇を噛み締め銃を構えて、そろりそろりと歩を進めて行く。ドクター・ケイトはそのカプセルの前に居た。二人はケイトが足音に気付いて振り返った瞬間に光弾と銃弾を叩き込み、彼女を地に伏せさせた。
「く、うぅ……あなたたち、どうしてここが分かったの!」
「悪いがそいつは企業秘密だ。知りたきゃ俺たちに勝ってみな」
「あの二人はどこにいるの?」
 机に寄りかかり、必死になって立ち上がろうとするケイトに、尚も銃弾を浴びせるアケミ。そのうち数発が机の上に跳弾し、色取り取りのコードが刺さった小動物用のケージに当たる。大鋸屑《おがくず》を敷き詰めたケージの中には、白い体に耳の穴からさらに長い耳を生やした、赤い目の猫のような生き物が入れられていた。
「なんだこいつは。ペットか何かか」
「こいつが”キュゥべえ”よ。私たちの頭にテレパシーを送り込んできた張本人」
「キュゥべえってあのキュゥベェ!? こいつがそうだってのか?」
 目の前にいるのは可愛らしい小動物だ。俺たちはこんなやつに踊らされていたというのか。そんな馬鹿なと声を上げるディケイドの頭に、少女とも少年ともつかない声が響いた。
 ――そう、僕がキュゥべえだ。とてもぶん殴る気にはなれないだろう?
「あぁもう、喋ンな。マジかよ……、おい」
「今はそんなことどうでもいいでしょう。それよりも」
 ディケイドの脹脛を蹴り付け、彼の注意をケイトに向けさせようとするアケミ。ディケイドは蹴られた右足の脹脛をさすりつつ、未だに立ち上がれないでいるケイトの頭にライドブッカーの銃口を向けた。
「あぁもうッ、やってくれるじゃない。お探しの女の子たちは……この子たちかしら?」
 脚ばかりを執拗に狙うアケミの銃撃に辟易し立ち上がるのを諦め、代わりに右手をさっと振り上げるケイト。風をも切り裂く鋭い音が耳に届いたその刹那、アケミの体は礼拝堂のステンドグラスを破って、先の不気味な空間へと放り出された。
 涙の跡が痣のように顔に残り、刺々しく黒い首輪を付け、生気の感じられない表情を顔に浮かべた彩花ミキと杏子サクラの二人によって。
「アケミ! 待ってろ、今行くッ」
「お待ちなさいなディケイド。あなたの相手は、この娘よ」
 右手に続いて左手を振り上げるケイト。彼女の求めに応じ姿を現したのは、ミキたちと同じように涙で顔を腫らし、絶望し切った表情を浮かべた光夏海だった。
「夏ミカン……、お前何やってんだ。さっさと爺さんとこに帰るぞ」
 ディケイドの言葉に夏海は何も答えず首を横に振り、どこからともなく飛んできた”白いコウモリ型のモンスター”を掴んで彼の目の前に掲げた。
「あなたにディケイドライバーを渡したのは大きな過ちでした。士君、あなたは世界の破壊者です。その運命からは逃れられないし、どうやっても変えられない。これ以上世界を破壊すると言うのなら、わたしがあなたを倒します」

 ――変身。
 ディケイドの制止も聞かぬまま、白いコウモリを自分の右手に噛ませる夏海。
 彼女の頬にステンドグラスのような模様が浮かび、同時に腹部に現れたベルトにコウモリが取り付き、一体となる。眩い光に包まれた夏海は、白と紫を基調とし「仮面ライダーキバ」にも似た異形の戦士へと姿を変えていた。
「わたしは……『仮面ライダーキバーラ』!」
「そんなことは聞いてねぇ! やめろ、やめるんだ夏海」
 腰に差したサーベルを構え、ディケイドに斬りかかる夏海。ケイトはよろよろと起き上がって椅子に座り、争い合う二人を見て嫌味たらしく口元を歪ませた。
「魔法少女じゃなくてどうしようかと思ったけど、まさかこういう使い方が出来たとはねぇ。私のことに気付いて色々と嗅ぎ回ってたコウモリちゃん様々、ってとこかしら。さぁお嬢さん、貴女の敵、世界の破壊者ディケイドを倒してしまいなさい!」

◆◆◆

 時を同じくして光写真館の応接間。
 不安げな面持ちでアケミたちの帰りを待つ円カナメの頭に、ケージから抜け出して自由になったキュゥべぇの声が届いた。
 ――カナメ、大変だ! アケミとディケイドがミキたちに襲われている。二人だけじゃ手に負えない。
「ミキちゃんたちって……本当なの、キュゥべえ」
 ――この場で嘘を言って何になるんだい。二人のソウルジェムはケイトによってかなり濁らされている。このままじゃ危険だ。
「そんなこと言われても、わたしには何も出来ないよ! 分かっているでしょう?」
 円カナメには分からなかった。魔法少女でない自分には何の力もないし、そもそも結界の場所だった分かるはずもない。他に頼れる人間がいないのは分かるが、自分にそれを伝えてどうしようと言うのか。
 そんなカナメを宥めつつ、キュゥべぇはそんなことはないよと優しげな口調で語りかける。
 ――ならば僕と契約して魔法少女に……と言いたいところだが、僕は今そこにはいない。けど、君になら、いいや君だからこそできることが一つだけあるんだ、カナメ。
「わたしにしか……できないこと?」
 ――あぁ。その力さえあれば、ディケイドやアケミたちを助けられるかもしれない。君にしかできないこと。それは……。

「おい、ちょっと待てよカナメちゃん! 一体どこに行くんだ」
「お出かけかい? 外は寒いから気を付けてねぇ」
 キュゥべぇからの言葉を聞き取ったカナメは、数度頷いた後唇を噛み締め凛とした表情を作ると、ユウスケたちに何も告げず突如光写真館から出て行った。不意を突かれ、慌てて訳も分からずその後を追うユウスケ。
 円カナメは一体、キュゥべぇから何を聞いたと言うのか。
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