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 ←Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 三時間目 →555《ファイズ》の世界・世界観及び設定まとめ
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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(2)

Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 四時間目

 ←Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 三時間目 →555《ファイズ》の世界・世界観及び設定まとめ
 555編はこれにて終了となります。



 初投稿からもう二年も経つのに、一向に本作のエンドマークが見えません。

◆◆◆

 地平の先に日が沈み、夕方から夜に変わろうとする夕闇の中、私立スマートブレイン学園は、百瀬の息のかかったオルフェノクたちに襲撃され、惨憺《さんたん》たる様相を呈していた。
 下校時刻はとうに過ぎており、この時間、学校にいるのは運動系文化系の部活動を行う生徒と顧問、明日の授業の準備に追われる教師たちだけではあったが、それでも百五十人近くの人間が中におり、わずかに生き残った生徒たちは暗がりや物陰に身を隠すも、彼らの手から逃れられずに命を奪われ、オルフェノクになりそこないの灰へと姿を変えて、学園の中を覆い尽くしている。

「ちきしょう……ちきしょお……、なんでだよ、なんで俺たちがこんな目に」
「ちょっとォ、大きな声出さないでよ三原! ”見つかったら”どうするのよ」
「お前こそ声がでけぇぞ阿部ェ! こっから叩き出されてぇか!」
「阿部も三原も落ちつけよ……、俺たちで仲間割れしてちゃどうにも」
「うるせぇ澤田! お前もここから追い出されてぇか!」
 そんな中、体育館の裏にひっそりと立つ体育倉庫の中では、オルフェノクの襲撃を逃れた生き残りの生徒が数人、身を潜め、息を殺していた。
 隠れているだけではどうにもならないことも、安全である保証など何もないことも重々承知している。恐怖と不安で生じた苛立ちは、荒らんだ言葉となって口を突き、”隠れる”行為自体を危ういものとさせていた。

 ――たすけて……たすけてよ! そこにいるんだろう!?
「この声、”青沼”君よ! まだ生きてたんだわ!」
「青沼……? 確かさっき、校舎の方に行ってなかったか!?」
「んなことはどうでもいいんだよ。まだ生きてる奴がいたんだ。助けてやらなきゃ」
 仲間でありながら、罵り合いによって一触即発の空気に包まれる中、彼らは何者かが弱々しく体育倉庫のドアを叩いているのに気付いた。
 ”澤田”はこの状況で生きていられるはずがないと、外の人物の申し出を突っぱねようとするが、残りの二人は彼の主張を反故にし、ゆっくりと引き戸を開いて行く。
「青沼、お前よく生きてたなぁ。早く中……に……!?」
「ありがとう三原君。ついでに悪いんだけどさ、僕の”友達”も中に入れてよ。いいよね? 別に」
 青沼は、三原が開けた引き戸の中に強引に手を突っ込む。引き戸は音を立てて一気に開け放され、同時に十数体のオルフェノクがなだれ込んで来た。青沼の瞳が淀んだ青色に光っている。彼は既に人間じゃない。これは倉庫から彼らを誘き出すための罠だったのだ。
 気付いたところで時既に遅し。青沼の号令に従い、オルフェノクたちが彼らの命を奪わんと襲いかかる。万事休すだ。

 ――待て待て、待てーェい!
 しかし、命を奪われたのは三原たちではない。先陣を切って体育倉庫に押し入ろうとした二体のオルフェノクは、何者かによって引き剥がされたのだ。
「三原、阿部、澤田……みんな、無事かッ!」
 オルフェノクを蹴散らした”何者か”は、倉庫の隅で怯える三人の生徒に声をかけ手を差し伸べる。
 三原たちはオルフェノクたちとはまた違った異形の姿に恐怖し、彼の手を振り払って背を向けるが、名前を呼ぶその声に聞き覚えを感じ、恐る恐る振り返った。
「その声……”ユウスケ”か、ユウスケなのか?」
「こんな時まで呼び捨てかよ。あぁ、そうだ。君たちの担任、小野寺ユウスケだ」
「あんた、その姿は一体……」
「説明は後。俺は君たちの味方だ。それは保障する」
 仮面ライダークウガ――小野寺ユウスケは、怯える生徒たちを落ち着かせるべく近寄って、彼らの頭を撫でるようとするが、同時に三原は、彼に「危ない」と声をかける。
「ユウスケ、後ろ、後ろ!」
 振り返るクウガの目の前に、オルフェノクに変異し、剣を振りかざした青沼が迫る。
 両腕でそれを挟み込み、間一髪のところで急所への一撃は防いだが、両腕を塞がれた隙を狙って数体のオルフェノクがクウガに襲いかかった。
 ――超変身!
 クウガはそれを見越し、両腕で剣を挟みつつベルト右腰のスイッチを押しこんで”紫のクウガ《タイタンフォーム》”に変身。青沼を振り払うと同時に、挟み込んだ剣をタイタンソードに変え、襲い来るオルフェノクたちを一刀両断に斬り捨てた。
「君たちはここで隠れていてほしい。信じてくれ、決して君たちを死なせやしない」
 一人一人の頭を優しく撫でて、群がるオルフェノクたちに立ち向かう紫のクウガ。
 ただの人間である三原たちにはどうにもできず、ただ見守ることしかできない。だからこそ、彼らは。
「頑張れ……頑張れ、小野寺先生ー!」
「あたしたちの……みんなの学校を、あんなやつらに渡さないで!」
「呼び捨てにしてごめんなさい! 今の先生、すごくかっこいい!」
 今の正直な気持ちを言葉に代え、精一杯の声でクウガにエールを送る。
 クウガは恥ずかしそうに小声でありがとうと返し、単身オルフェノクの大部隊の中に斬り込んでいった。

◆◆◆

「数々の同胞たちを葬ってきた君が、まさかこの程度だったとは……。がっかりだよ。やはり、ここがオルフェノクの『限界』……か」
 仮面ライダーデルタ――百瀬シュウジは強かった。狼のオルフェノクに変異した尾上タクミを容易くねじ伏せ、彼のパートナーであるオートバジンをあっという間にスクラップ同然にまで追い込んだ。
 タクミは血の代わりに灰を撒き散らし、うつ伏せになって虫の息。オートバジンは両足と連射砲がついた前輪を破壊され、自分の力で立ち上がることすら叶わない。
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう……!」
「おっと、話の途中で立つのはマナー違反だよ。授業で教わらなかったのかい」
 ――ファイア
 ――Burst Mode.
 それでもなお起き上がろうとするタクミに対し、百瀬は耳元にデルタムーバーを当ててささやき、光弾発射モードに切り替えて彼の右太ももを撃ち抜いた。
 タクミはもんどり打って放送席に叩きつけられ、撃ち抜かれた太ももからは大量の灰が噴き出し、ぽっかりと大穴が開く。百瀬は彼の頭を鷲掴みにし、自分の顔まで引き寄せた。
「分かっただろう、尾上タクミ君、君じゃあ僕には絶対に勝てない。大人しく僕に従えばいいのさ。僕は”オルフェノク”という脆弱で未熟な殻を抜け出し、種其の物を『さらなる段階』へと押し上げる。君たちは進化の瞬間に立ち会うことが出来るんだよ。さぁ、首を縦に振りたまえ」
 散々痛めつけ、自分には勝ち目はないと分からせた上で、タクミに対し仲間になるよう求めるも、彼は依然として首を縦に振ろうとはしない。百瀬はタクミの顔を放送機器の乗った机に押し付け、話を続ける。
「分かった、じゃあこうしよう。ラッキークローバーに入ればそこの彼女……友田由里の命は保証しよう。これならどうだ?」
 最上の譲歩案だ。さすがにここまでくれば乗ってくるだろう。百瀬は仮面の下でにやりと嫌らしい笑みをこぼすが、タクミはそれにすら首を横に振った。
 何が彼をそうさせるのか。百瀬はそのことに対して疑問を抱くと同時に、彼の頑なな態度に苛立ち、乱暴にタクミの頭を机に叩きつけ、声を荒げる。
「何故だ。この僕が、君を許し、友田由里をも許し、居場所を与え、しかもラッキークローバーに加えてやると言っているんだぞ! 何故拒む、何故首を縦に振らない」
「そこには由里ちゃんの”居場所”がないからだ。居場所って言うのは、人がいて、その人と関わる人々がいて、居るべき街があって、初めて出来るもの。
 お前らに”作られた”居場所なんて……、お前らに”生かされた”人生なんて、死んでいるのと何も変わらない! そんな場所に、由里ちゃんを行かせるなんて……絶対に嫌だ!」
「この状況でよくそんなことが言えるね。他人のために自分の命を捨てる気かい? 馬鹿馬鹿しい」
「他人じゃない、他人なんかじゃ……ない! 僕は彼女が、友田……由里ちゃんが、好きだ、好きだ! 大好きなんだッ!」

 タクミの口を突いて出た言葉は、叩き付けられたことで一時的に動いた放送席のマイクを、校舎の中を、校庭を伝い、街全体に響き渡った。
「ばっ……ばっばっ馬鹿タクミぃ! な、なな……、なんてこと言い出すのよこんな時に!」
 尾上タクミ渾身の愛の告白を、思い切り不意打ちで喰らった由里は、熟れた林檎のように顔を紅潮させて叫ぶが、当の本人は「今だからこそ」と声を大にして続ける。
「僕は守る。由里ちゃんの居るべき場所を、由里ちゃんの夢を。だからお前たちラッキークローバーの仲間にはならない。お前たちなんかに彼女の夢を潰させはしない!」
 頭を抑えられていながらも、目をぎらぎらと輝かせてそう言い切ったタクミに対し、百瀬は救いようのない愚か者めと心底不快そうに吐き捨てた。
「そこまでして死にたいか。ならば、お望み通りにしてあげようじゃないか。ただし!」
 百瀬は再びタクミの頭を掴んで持ち上げると、不安げな表情を浮かべる由里の方へと向けた。
「玄田、彼女をしっかり抑えていろ。朱川、彼女の顔を押さえつけ目を見開かせ続けろ。絶対に横を向かせるんじゃあない」
「何をするつもりだ、生徒会長」
「ただじゃあ殺さない。オルフェノクでありながら僕たちを裏切った愚か者には、相応の罰を与えなくてはね。出来る限り惨たらしく殺してやるよ、尾上タクミ。君の最愛の彼女、友田由里の目の前でね」
「ひゅーっ! さっすが百瀬、やることが半端ねぇぜ!」
「あらあら、随分とえげつないことをするのね、百瀬君。あなたのそういう所……嫌いじゃないわよ」
 デルタに従い、嬉々として由里を押さえつける二人。精一杯もがいて見せるが、片や満身創痍で虫の息。片や押さえ付けられ、指一本動かすことすら敵わない。
「まずは目玉だ。両の目玉を順番に引き抜いて……、そうだ。友田由里、くり抜いたその目玉に口付けさせてあげよう。どうだ? なかなか面白そうだろう」
 弱りに弱ったタクミの左手目掛け、白く光輝くデルタの右腕が迫る。彼らにはもう止めようがなかった。そう、『彼らには』。

「な、なんだ……! なんだこれは!」
「『オートバジン』、お前!」
 デルタの体に頭から突っ込み、タクミを解き放った鉄の塊。
 二人の危機を救ったのは、足を壊され蹲っていたオートバジンだった。持ち主の叫びに呼応して再起動し、機能停止覚悟でホバージェットを噴射したのだろう。
 オートバジンはデルタの脇腹を掴んで一直線に飛び、彼をタクミたちから遠ざける。
「おのれ……、この僕にッ、歯向かうかッ! この……鉄屑があッ!」
 敵の虚を突けたとはいえ、廃車寸前のオートバジンがデルタを止められるはずがない。肘鉄や膝蹴りによって、バジンの拘束は徐々に緩んで行った。
「離せ、離せ! 離せーッ! ファイア、ファイア、ファイア!」
 拘束が緩んだ隙を突き、デルタは右腰のホルスターからデルタムーバーを引き抜いて、オートバジンの頭を撃ち続ける。警告を示すブザーが鳴り響き、黒い煙を吹かして火花を散らす。もう限界だ。
 放送室から叫ぶタクミの声も虚しく、オートバジンの頭部はデルタの光弾によって砕かれ、廊下の上に転がった。
「な……、なんだと!? これは」
 しかし、どうしたことだろう。オートバジンを引き剥がし、機能を停止させた彼は、同時に百瀬の姿へと戻ってしまっている。
 何が起こったと戸惑う百瀬は、自分の腹部に今まで巻いていたベルトがないことに気付く。
「そうか、そうか……、やってくれたなあの屑鉄めッ」
 頭を破壊されて機能を停止するその瞬間、オートバジンはデルタのベルトに手をかけて引き抜いていたのだ。バジンの最後の足掻きと、不気味なぐらい外れやすいベルトの構造に憤怒する百瀬だったが、直ぐ様ベルトの元へと駆け出した。
「屑鉄め……ッ、だが所詮無駄な足掻き! 待っていろ、すぐにまた変身してやるぞっ」
「ま……、待てッ」
 待てと手を伸ばし、立ち上がろうとするタクミだが、視界が歪み、息も絶え絶えで立ち上がることは敵わない。百瀬の手が指がデルタのベルトにかかる、まさにその時だった。
 ――FINAL ATTACK RIDE 「De-De-De-DECADE」
 黄色く縁取られたカードを潜り抜け、飛び蹴りを見舞ったディケイドによって、デルタのベルトは粉々に破壊されてしまった。
 百瀬はそれを掴むどころか、伸ばしていた手に蹴りの余波を喰って悲鳴を上げる。ディケイドは外したかと舌打ちし、両手を軽くはたいて立ち上がった。
「く……くうぅ! なんだ、一体何者だッ」
「『通りすがりの仮面ライダー』。この際だ、覚えておけ」

「仮面……ライダー……? 士《もやし》さん、ですか?」
「その声。お前……、タクミか?」
 タクミの問いにディケイドはやや首を傾げて頷き、その様子を見たタクミは、しまったと顔をすくめる。今の自分は“尾上タクミ”じゃない。狼の『オルフェノク』だ。ディケイドがそれを疑問に思うのは当然じゃないか。
 なんてことをしてしまったんだと項垂れるタクミに、ディケイドは彼の元へ駆け寄って手を伸べた。
「お前の放送、ばっちり聞かせてもらったぜ。こんな状況であんなことを言うとは、馬鹿というか度胸があると言うべきか……。まぁ、言葉にできるだけ立派か。誉めてやるよ」
「でも士さん、僕は……」
「こまけぇことはいいんだよ。大切なのは人間かオルフェノクかどうかじゃない、そいつが『誰のために』、『何をしたか』だ。お前は自分の信じる者のために、愛する者のためにここに来た。それでいいじゃねぇか」

「おのれ……僕のベルトを、僕のデルタを……! 許さん、許さん、許さァん! 玄田ァ、朱川ァ! 女はもういい、その二人を殺せ! 四肢を引き裂いて僕の前に持ってこォい」
 デルタのベルトを奪われ激昂した百瀬は、喉が切れんばかりの雄叫びを上げ、虎のオルフェノクへと変身。玄田と朱川に彼らを襲うよう促し、自らも放送室に戻らんと駆け出す。
 再び立ち上がったタクミの前に、玄田と朱川、廊下より飛びかかってきた百瀬が迫る。ディケイドは二人を抑え込んで引き剥がし、タクミもまた、満身創痍の体を圧して朱川と向かい合った。
「百瀬君の理想が理解できない愚か者の上にッ、そんなぼろぼろな体で、どうやって私に勝つつもりなのかしらッ!? どうなの? ねぇッ! 教えて頂戴なッ、尾上タクミッ」
 百瀬によって痛めつけられて本来の力を殆ど出せず、かつ武器を持った朱川の前に、さしものタクミも攻め手をなくして追い込まれていた。
 二体のオルフェノクを相手にし、精一杯のディケイドに彼の援護を出来るはずもなく、タクミはあっという間に斬り伏せられ放送室の前に転がった。

 ――力が欲しいのかい? いいだろう、じゃあくれてやる。

 自分の力の無さと悔しさに唇を噛むタクミ。そんな彼の背後に、不敵な表情を浮かべ、これ見よがしにファイズギアを持った海東大樹が現れる。海東は百瀬たちを撃って遠ざけると共に、タクミの足元にそれを投げて寄越した。
「これ……は?」
「勘違いしないでくれたまえよ。これはもう僕のものだ。今は君が持っていた方が都合はいいが……終わったらちゃんと僕のところまで返しに来てもらうよ」
「海東……お前、どういう風の吹き回しだ?」
「まだ見せてもらってないからな、ファイズギアより『価値のあるお宝』ってやつを。それに、そこの生徒会長君を見て確信したよ。これ以上のお宝が学園内にあることをね。それじゃ、後はよろしく」
 ――変身
 ――KAMEN RIDE 「DI-END」!
 そう言い残し、ディエンドに変身して元来た道を戻って行く海東。彼の思惑は分からないが、千載一遇のチャンスであることは間違いない。タクミは人の姿に戻ってベルトを腰に巻き、携帯電話《ファイズフォン》の5キーに指をかけた。
 ――555. ENTER.
 ファイズフォンとベルトが互いに呼び合い、変身待機の電子音を響かせる。
 だが、それをバックルにセットしようとしたその時、百瀬と玄田はディケイドの攻撃を掻い潜り、変身せんとするタクミに鋭利な牙と爪を向けた。
「させるか、させるものかッ!」
「とっととくたばっちまえこの野郎ーッ!」
「あいつら……、変身中を狙うのはルール違反だろうが! あぁくそッ」
 二人の行動に、してやられたと悔しそうに舌打ちをつくディケイド。咄嗟のことでタクミは反応できず、かといって今から自分が動いても間に合わない。
「こうなったら……、頼むぜ、カズマぁ!」
 ――KAMEN RIDE 「BLADE」!!
 ディケイドはライドブッカーから“仮面ライダーブレイド”のカードを取り出してバックルに装填。
 瞬間、彼のバックルから「スペード」と「カブトムシ」を掛け合わせたかのような紋章の光の壁が現れ、タクミに襲いかからんとする二人を撥ね飛ばし、校舎の外へと叩き落とした。
「い、今のは……」
「こまけぇことは放っておけ! それよりもそこのエビ女、そいつはお前に任せたぜ、タクミ!」
 ディケイドは現れた光の壁を通り抜けてブレイドに変身すると、タクミに後を任せ、校庭へと落下した二人を追って飛び降りる。
 放送室の中にはタクミと朱川、そして捕われの身となっていた由里が残された。

「余計な茶々が入ったわね。まあいいわ。私はラッキークローバーに選ばれた上級のオルフェノク。手負いの貴方に私が倒せるかしら?」
「倒せるかじゃない……。『倒す』んだ。いくぞォ!」
 ディケイドの助けを借りてファイズに変身できた尾上タクミは、自分を見下して笑う朱川に飛びかかる。相手の武器は細身で先端の尖ったレイピア。腕前は先の戦いで重々承知している。距離を保って立ち回られては、勝ち目がないと考えたのだろう。
 しかし相手も経験を積んだ相当の手練《てだれ》。近寄らせる隙を与えずファイズの腿や腋の下、手首など弱い部分を狙い正確に突いて、反撃の隙を与えない。
「いくら意気込んでも、所詮はその程度。諦めて神の元へとお逝きなさいな、尾上タクミ」
「くう……う!」
 さしたるダメージも与えられないまま、あっという間に壁際まで追い込まれたファイズ。
 先の負傷が響いて横に動いてかわすことすらできず、朱川のレイピアが彼を正確に刺し貫いてゆく。いくらファイズと言えど、このままでは成す術がない。
 彼女たちから解放された友田由里は、どうすることもできない苛立ちを抱えて、ファイズの様子を見つめていた。
「このままじゃタクミが……タクミが死んじゃう! どうしよう、どうすれば……」
 朱川にいたぶられている姿をただ見つめ、自分にも何かできないものかと必死に周囲を見回す由里。
 そんな彼女の目に、廊下の真ん中で火花を噴いて倒れているオートバジンの姿が映った。それを見た由里の脳裏に、かつての出来事が過ぎる。
 オルフェノクに命を狙われ、仮面ライダーファイズに助けれたあの夜のことだ。

 ――あの時ファイズ……、タクミはどうやってオルフェノクを倒したんだっけ?
 ――えっと、確か……、光り輝く交通整理の誘導灯みたいなもので斬り裂いてた、はず。
 ――タクミは今それを持っていない。となると、その剣は一体どこから持ってきたの?
 ――それは……、そっか、それは!
 不思議な光の剣の出所を理解した由里は、一目散に駆け出しオートバジンの左肩の”ハンドル”を引き抜いて、壁に追い込まれ絶体絶命のファイズに向かって投げつける。
「タクミーッ! これ、使ってッ」
「由里ちゃん!? そうか……そうだ!」
 彼女が投げたものが何なのかを認識したファイズは、壁に背中をつけたまま、朱川の腹を蹴りつけてよろけさせると、ファイズエッジの柄にミッションメモリーを挿入して起動させ、そのまま横薙ぎに剣を振った。
「この……ッ、生意気なあッ!」
 体勢を立て直した朱川は、それを阻止せんとレイピアを振るって受け流そうとするが、後一歩のところで間に合わずにかちあい、逆にファイズはその勢いを借りて振り抜き、彼女の右わき腹に斬り込んだ。
「今だッ」
 ――Exceed Charge.
 刀身から発せられるフォトンブラッドをその身に受けた朱川は、振るいかけたレイピアを落とし、火傷のような痛みを感じて体をくの字に曲げる。
 ファイズはその隙を突いて左手でファイズフォンのエンターキーを押し込み、右手に体中のフォトンブラッドを集中させ、横薙ぎに骨肉共々力一杯振り抜いた。
「そ……そんな! 私が、ラッキークローバーの……この、私が……!」
 朱川は、敗北への怒りや体中を襲う激痛を意に介す間もなく、Φの文字を残して全身から青い炎を発して崩れ落ちた。敵を下し、糸の切れた人形のように崩れ落ちるファイズ。由里はそんな彼に駆け寄って優しく抱き留めた。
「タクミ! だいじょう……ぶ?」
「由里ちゃん。えっと、ぼくは、その……」
 言いたい言葉は星の数ほどにあるのにも関わらず、由里を目の前にした途端、気恥ずかしさからどもって下を向いてしまうファイズ。由里は、そんな彼の口にちょんと人差し指を乗せ、優しげな口調で答えた。
「校庭でみんながあんたの助けを待ってる。話なら全部終わった後に聞かせてもらうから、行って……タクミ」
「で、でも由里ちゃん。僕は」
 まだ話すべきことはたくさんあるんだ。動くことなんてできない。由里はうじうじと反論するファイズの顔に、勢いの乗った平手を叩きつけた。
「オルフェノクに怯えて、助けを待っているのはあたしだけじゃないのよ! あれをなんとかできるのはあんたともやし君しかいないんでしょ!? ぐだってないで、他のみんなを助けにいきなさいよ!
 あんた、さっき大声で言ったわよね。”あたしの夢を、あたしの居場所を『守る』”って! それが今! あいつらのせいで壊されそうになってるのよ!? 行かないでどうするの!」
 ファイズの反論を一切許さないまま、涙目に涙声でまくし立てる由里。
 オルフェノクが闊歩するこの空間に置き去りにされて、恐くないはずはない。だが、”自分の居場所”を壊されてしまうのは、彼女にとってそれより更に恐ろしかったのだ。ファイズはそのことを改めて悟り、手にした剣を杖にして立ち上がり、由里に背を向けた。
「わかった。ちょっとひとっ走り行って来るよ、由里ちゃんの居場所を守りにさ」
「さっさと行って帰ってきなさいよ。あんたには言いたいこと、たーっくさんあるんだから」
「それ、僕のセリフ。……待ってて。すぐ戻るから」
「うん、さっさと行ってこい。頑張れ、タクミ」
 由里の暖かで力強い言葉に後押しされたファイズは、その言葉に深く頷き、ディケイドが壊した窓から校庭に飛び降りる。
 ――ちゃんと生きて帰ってきてね、タクミ。あたし、信じてるから。
 ――タクミは……、あたしのタクミは、あんな奴らなんかに絶対負けないって。

◆◆◆

「オラオラ! どぉしたどうした!? てめぇの力はそんなもんかァ!?」
「ちょっと卑怯だけど、二人がかりで潰させてもらうよ」
「あぁもう、めんどくせぇな」
 一方、放送室からグラウンドへと戦いの場を移したディケイドは、百瀬と玄田。強力なオルフェノク二体を相手にし、かなりの苦戦を強いられていた。
 起き上がろうと膝をつくディケイドに、玄田の長く鋭く太い爪が迫る。これ以上彼らの攻撃を浴びるのは危険だ。ディケイドは降り下ろされる爪に臆することなく、ライドブッカーから“銀色に輝くブレイド“が描かれたカードを取り出す。
 ――ATTACK RIDE 「METAL」
 装填してバックルを閉じた瞬間、ディケイドの体は銀色に光輝き、自分を襲う玄田を弾き飛ばす。
 剣の世界のアンデッド、トリロバイトの“硬質化“能力だ。
「いっ、いででででっ! か、堅てェ……」
「驚くのはまだ早いぜ。そぉらよッ」
 ――ATTACK RIDE 「MACH」
 弾かれてよろける玄田の隙を突き、もう一枚のカードをドライバーに装填。
 “ジャガーアンデッド”の超加速能力を得たディケイドは、目にも止まらぬ早さで玄田を斬り伏せる。。
「さぁてと。ゲームオーバーだぜ、筋肉ダルマ」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「b-b-b-BLADE」
 ファイナルアタックライドのカードを装填し、閉じる。電撃の走った右足の飛び蹴りを、斬り伏せられて立ち上がれない玄田目掛け、力強く叩き込んだ。
 轟く稲妻の如き一撃をその身に浴びた玄田は、悪魔のような呻き声を上げて爆発し、大量の灰を残して消え去った。

「士、ここに来ていたのか!?」ブレイドのカードを引き抜いて一息着くディケイドに、クウガが声をかけて来る。
「遅いぞユウスケ。そっちの方はどうだ?」
「全部仕留めた。今生きている子たちは無事だ。生きている子……たちは」
 力無くそう呟き、自分の隣に立つクウガに、ディケイドはそうか、と一言かけて彼の肩を叩く。
「お前の兵隊は全部潰してやったぜ。後はてめぇだけだ」
「やめろ! こんな馬鹿な真似はもう……、やめるんだ」
 優位性を得、百瀬に告げるもう諦めろと告げる二人のライダー。だが当の本人は、悔しがるどころか、高笑いをして答えた。
「終わりだって? 違う違う。ここから始まるんだ。見せてあげよう。オルフェノクの……いや、世界の王となるべき、僕の力を!」
 そう言い放って高笑った百瀬は、指先や足先、肩の突起状のものを伸ばして、細く長くしなる触手とし、灰だらけになった自分の周囲や校庭の隅々に放った。触手の先からは青白い光が注がれ、日が落ちきった空を不気味な色で染めて行く。
 光が収まり、周囲が再び闇に包まれる頃には、校庭は瞳に青白い輝きを宿したオルフェノクたちが群れを成し、人とも獣とも取れない禍々しき唸り声を上げていた。
「どういうことだ。こいつら全部、俺たちが倒したはずなのに!」
 驚き狼狽えるクウガに対し、彼の右肩に手を乗せ落ち着けと声をかけるディケイド。
 百瀬は腹の立つぐらい嫌らしい笑みを浮かべ、自身の背後に立つオルフェノクたちを手で御した。
「この数を前にして、ずいぶんと冷静じゃあないか門矢君」
「驚いているさ。だが、同じ化け物なら、烏合の衆なんかよりもとんでもなく強い『一体の』化け物の方が恐いってだけだ。そいつがお前の能力だってのか? 百瀬」
「そうさ。ボクは死んだオルフェノクたちに魂を与え、灰になった体を構成し直してやれる。君たちには感謝しているよ。これで彼らは僕の思いのままだ。裏切ることも刃向かうこともなく、僕の命令には絶対服従……。最高の兵隊の誕生さ。
 僕はこの力でオルフェノクを制し! 世界を制し! オルフェノクをさらなる段階へと引き上げる。人を超えたオルフェノクの、さらなる段階、『アギト』にね」
 目をぎらぎらと輝かせそう語る百瀬に対して、ディケイドはくだらないと一蹴し、彼に人差し指を突き立てた。
「何が最高の兵隊だ。そんなもん、体のいい操り人形じゃねぇか。何がさらなる段階だ。自分の意思もくそもない軍隊率いて、一人ぼっちで王様やってて楽しいか? 俺ならお断りだね」
「分かってくれとは言わないさ。話はここで終わりだ。死んでよ、門矢君」
 彼の指摘に怒りを覚えたのか、百瀬はそれを言葉には出さず、苦虫を噛み潰したような顔でディケイドを睨みつけて手を振り上げ、さっと下ろした。
 百瀬の号令と共に、後ろで待機していたオルフェノクたちが二人を目掛け襲いかかる。
 一体一体相手なら烏合の衆なれど、一人を複数襲うとなると話は別。一人を倒す間に二体のオルフェノクに掴みかかられ、それを振り払えば、今度は四体のオルフェノクに襲いかかられ――。二人のライダーはあっという間にオルフェノクの波に取り込まれてしまった。彼らは百瀬に触れることなく、雑魚のオルフェノクに倒されてしまうのだろうか。
 ――Exceed Charge.
 ――three……、two……、one。Timeout. ReFormation.
 押し寄せるオルフェノクたちの瞳が、宵闇の校庭を青白く染める中、紅く輝く円錐上の光が、それを切り裂くように割って入った。
 紅く輝くその光は、ディケイドたちにまとわりつくオルフェノクを蹴散らし、そのうちの数体を再び灰の塊へと変えた。仮面ライダーファイズの必殺技『クリムゾンスマッシュ』、その複合攻撃だ。
 彼らがそのことに気付いて辺りを見回すと、多数の灰の中に赤い複眼に、銀色の光を発する、今までとは別の姿の”ファイズ”が立っていた。
 ファイズは元の姿に戻り、腕のストップウォッチに嵌ったミッションメモリーを、ファイズエッジの柄に挿し込むと、疲れ果てて膝をつくディケイドとクウガに駆け寄った。
「士さん、小野寺先生! 大丈夫ですか」
「その声は……タクミ君、か? そうか、君がこの世界の”仮面ライダー”だったんだな」
「馬ァ鹿、来るのが遅いんだよ。そっちはどうだ?」
「無事です。”やっつけてきて”、って言われちゃいました」
「気の強いこって。そんじゃ……とっとと片付けてやるかね」
 ファイズによって波の中から救い出された二人のライダーは、構えや武器を整えて、再びオルフェノクの群れの中に乗り込む。いくら数が多くても、彼らは一度どころか二度死んだ上に、自我の無い操り人形。本気を出した彼らの相手になる筈が無い。
 次々と自分の仲間が倒されて行く中、百瀬は鬼のような形相でディケイドに背後から飛びかかり、彼の背中に爪を突き立てた。
「目先のことしか考えられない愚か者が! 非力なだけの人間が! 僕はこの世界を変えようとしているんだぞ! 人類をさらなる段階へ引き上げようとしているんだぞ! 何故歯向かう、何故邪魔をするッ! たかだかちっぽけな夢しか持たないくせに、僕の邪魔をするんじゃないッ」
 ”ちっぽけな夢”。その言葉を聞きとったファイズは、組み合うオルフェノクを蹴りつけて引き剥がし、ディケイドを襲う百瀬の脇腹をファイズエッジで袈裟に斬りつけ、彼をディケイドから引き離した。
「違う! 夢はちっぽけだからこそ守らなきゃいけないんだ! 夢に大きさなんて関係ない! お前に……、他の人たちを犠牲にしてまで自分の夢を叶えようとするやつなんかに、由里ちゃんの夢を笑う資格なんてない!」
 百瀬を引き剥がし、ディケイドたちとの間に割って入ったファイズだったが、あっという間に他のオルフェノクたちによって円形にぐるりと取り囲まれてしまう。じりじりと間を詰められる中、ディケイドと背中合わせに並び立った。
「助かったぜタクミ。なかなかやるじゃねぇか」
「別に、そんな大したことは……」
「夢の守り人、か。いいじゃねぇか。お前らしくてよ。やってやろうぜ、由里の夢を、あいつらの居場所を、俺たちで取り戻すんだ」
「取り戻すんだ、って……一体どうやって」
 ファイズの問いに、ディケイドはライドブッカーから”Φ”のマークの入った、黄色く縁取られたカードを取り出して答える。
「タクミ、ちょっとくすぐったいぞッ」
「え、えぇっ!?」
 ――FINAL FORM RIDE 「Fa-Fa-Fa-FAIZ」
 ファイナルフォームライドのカードをバックルに装填し、ファイズの背中に強引に手を突っ込むディケイド。全身を駆け廻る深紅のフォトンブラッドが宵闇を紅く染め、両腕にはポインターのようなものがついて背中に回る。
 太腿や脹脛《ふくらはぎ》には物々しい装飾が追加され、足の裏には巨大な銃口が取り付き、首からは引き金が迫り出し、右腰のファイズポインターが取っ手へと変化した。
 尾上タクミ――仮面ライダーファイズは、バズーカ砲よりもさらに大きい手持ちの大砲『ファイズブラスター』へと、その姿を変えた。
[こっ、これは一体……]
「よっし、まずは雑魚の片づけと行こうかね」
 ――Burst Mode.
 オルフェノクの大群相手に一人で応戦するクウガにどけと言い、ディケイドは左手で取っ手を握り、右手で引き金に手をかけて、自分の周囲で円状に振り回した。
 ブラスターから「バーストモード」という電子音が鳴り響くと同時に、腕が変化した二本のポインターから、クリムゾンスマッシュと同じ深紅の円錐の光が発せられ、オルフェノクたちの腹に次々と突き刺さって行く。
 周囲のオルフェノク全てに円錐を突き刺し、ブラスターの引き金を引くディケイド。
 オルフェノクたちの腹に突き刺さった深紅の円錐は彼らの体を貫き、その全てを吹き飛ばして灰へと変えた。
「はっは、痛快、爽快! 今度こそ文字通り一人ぼっちの王様になっちまったな。なぁ、生徒会長さんよぉ」
「ふ、ふざけやがって……、たかが人間がッ、たかがオルフェノク風情がッ! 図に乗るんじゃないッ」
「まだ向かって来るか。なら一発で仕留めてやるぜ。覚悟しな!」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「Fa-Fa-Fa-FAIZ」
 ――Single Mode. Exceed Charge.
 圧倒的な力の差を目の当たりにしてなお、彼らに襲いかかる百瀬に対し、ディケイドはファイナルアタックライドのカードを装填。「シングルモード」という電子音と共に、両腕のポインターが後ろに退かれ、足の裏の銃口に高純度のフォトンブラッドが満ち満ちて行く。
 血に飢えた獣のような形相で飛びかかる百瀬に狙いをつけ、ディケイドは引き金を引いて満ち満ちて光弾となったエネルギーを彼に叩きつける。
 当たる寸前で両腕を十字に組み、急所への一撃は防いだものの、超高圧縮されたフォトンブラッドの光弾は、それに構わず百瀬の体を焼きながら、彼をグラウンドから南校舎まで押し込んで行く。

 ――僕は、僕はこんなところで死ぬのか?
 ――まだだ、まだ死にたくない。まだ何も成していないじゃないか。
 ――僕は変わる。オルフェノクなどという下等種族の殻を破るんだ、進化するんだ。
 ――嫌だ、死にたくない。こんなところで……死にたくない!

 フォトンブラッドの光弾によってその身を焼かれ、南校舎に叩きつけられた百瀬は、死にたくないと叫びに叫び、巨大な”Φ”のマークを残し、倒壊して行く南校舎と共に”消え去った”。
 ディケイドは崩れ去る校舎を見つめつつ、握っていたファイズブラスターを空に放り投げ、元の姿へと戻ったファイズと向かい合った。
「終わり……ましたね。ようやく」
「果たして、終わったのかね。これで」
「えっ。それは一体どういうことですか?」
「何でもねぇ。勘だ勘。気にすんな」
 ディケイドは再び崩れ去った南校舎に目をやり、物思いに耽る。百瀬シュウジは今の爆発で完全に消え去った筈だ。
 ならば、今感じているこの胸騒ぎは何だ。何故安心できない。答えは簡単だ。百瀬が南校舎に叩きつけられ、Φのマークを残して消え去るその瞬間、校舎の奥に”光のオーロラ”が見えたからだ。
 彼はまだ死んでいないのではないか? 自分たちやあの鎌田のように、どこか別の世界に飛ばされたのではないか。見間違いの可能性も否定出来ない。少なくとも、今ここで答えの出るような問題ではなかった。
 ディケイドはその時はその時だと後ろ手で後頭部を軽く叩き、ドライバーからカードを抜いて変身を解除して『風を切って飛ぶ数台のヘリ』についてファイズに問うた。
「そんなことより、あれは何だ?」
「あぁ。えぇっと、あれは『スマートブレインの”特殊部隊”』のヘリです。特製の”強化スーツ”を身に纏い、紛争や暴動を鎮圧するために人知れず活動してる、ってどこかで噂になってたんですけど……、まさか本当にいたとは」
 説明を受けた上で、今一度ヘリを見つめる士。
 よく見ると窓の中から、ファイズに良く似た顔の茶色い戦士が数人、大仰な武装を携えているのが確認できる。なるほど、確かに問題ないなと頷き、士は背後にちらと目をやった後、にやりと笑ってファイズの肩に手を乗せた。
「だいたい分かった。後は俺に任せて、お前は行けよ。あそこにな」
 士は立てた親指を自身の背後に向け、ファイズに対しそちらを見るよう促す。
 彼の立てた親指の先、北校舎の昇降口では、友田由里が不安げな表情を浮かべて立っていた。
「由里ちゃん!? 待っててって言ったのに……」
 変身を解除し、立ち尽くす由里の元へと駆け寄るタクミ。
 そんなタクミに対し、由里は無防備に駆け寄ってきた”隙”を突いて、有無を言わさず彼の鳩尾に体重の乗った右ストレートを叩き込んだ。
「ゆり……ちゃ!? ななな、にに……」
「うるさい……、うっさいうっさいうっさい! 馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ッ! タクミの大馬鹿ッ! あたしがどれだけ心配したと思ってるの!? あんたの言い分は分かるし、あたしも悪かった……、けど! どれもこれも全部! 言ってくれなきゃ分からないよ! あたしも、ケイタロウも! 他のみんなも!
 あたしはもう逃げない。だからあんたも向き合ってよ! 世界と、自分と、それに……あたしたちと!」
 由里はよろけたタクミの肩を掴んで、彼の制止も聞かずに激しく上下に揺すり、自分の言いたいことをぶちまける。タクミは離して離してと嘆願しつつ、彼女の一言一句に哀しさを募らせていた。
 不意に肩を揺する由里の手が止まる。今だとばかりに彼女と目を合わせるタクミだったが、逆に彼女に抱き寄せられ、唇と唇が触れ合いそうなほどに密着した。
「由里ちゃん、ぼく、僕は……」
「今までのは、あたしたちをずっと騙して、本当のことを隠してきた罰。それで、これは……」
 由里はその体勢から背伸びをし、目を閉じてタクミと深い口付けを交わした。
 いくばくかの沈黙の後に唇を離し、何も言えず顔を真っ赤に染め、しどろもどろになっているタクミに対し、由里は彼の唇に人差し指をちょんと乗せ、頬を紅潮させる。
「こっちは、あたしたちを護ってきてくれたことへのお礼。あんたのさっきの言葉、すっごく嬉しい」
 彼らの周りの、いや学校中で彼らを見ていた者たちの時が凍りつく。
 一瞬の静寂の後、それは新カップル誕生への祝福と囃し立てとなり、陰鬱な空気を明るく楽しげなものへと変えた。
「あーもう! あぁもうあぁもうあぁもうッ! 見んなァ! 聞くなァ! 騒ぐなぁーッ!」
 とはいえ、祝福される側はたまったものではない。タクミはあまりのことに、熟れた林檎よりも顔を真っ赤にして卒倒し、由里もまた赤い顔で野次に喰ってかかった。

「態度がでかいだけのカメラっ子だと思っていたが、なかなか可愛いところがあるじゃあねぇか。お前たちの決定的瞬間、ばっちりカメラに収めたぜ」
 そしてここにも、祝福と嫌がらせが入り混じった野次を飛ばす男が一人。
 タクミと由里が口付けを交わしたその瞬間、士は待っていましたとばかりにシャッターを切り、その瞬間を写真に収めていたのだ。
 勿論、今の由里がそんなことを許すはずがない。彼女はタクミよりも顔を真っ赤にしてトイカメラを奪おうと士に飛びかかった。
「あんたねぇ! よこしなさい、それをよーこーしなーさーいー!」
「こいつは俺のカメラだ。撮った写真は俺のもの、俺のものは俺のものだ。誰が渡すか」
 士は襲い来る由里の動き一つ一つを難なくかわしてすり抜け、北校舎の中へと逃げて行く。由里も写真を奪い取ろうと追いすがるが、士はやめておけて一言かけた。
「未来の旦那様を、一人で校庭にほっぽっといていいのかよ。お前のために命懸けで頑張ったんだぜ。せめて今はそいつの傍にいてやれって」
「それとこれとは話は……」
 ”未来の旦那様”という言葉に頬を染め、タクミの方を見つめて押し黙る。彼は自分のために頑張ってくれた。ならば自分はそれに報いるべきだろう。如何にして? どうやって? 考えるよりも先に体が動いた。
 由里は写真を諦めて踵を返し、仰向け大の字で気絶しているタクミの元へと駆けて行く。
「末永く幸せになぁ。達者でやれよ」
 校舎の中へと消える士の言葉に、”余計なお世話だ”と一言かけて。

◆◆◆

 思わず鼻を覆いたくなるような臭気を放つ薬品に、不気味な音を立てて稼働する機械の山。視界に入るのは、赤青黄のどこに繋がっているのか分からない電源コードの束。
 地下へと続くエレベーターを降りて門矢士が目にしたのは、得体の知れない研究施設と、呑気に鼻歌を歌いながら、楽しげにその場を漁る海東大樹の姿だった。
 部屋の中に士が入って来たことを察した海東は、彼が何かを問うよりも早く、嬉々とした声を上げた。
「凄い……、凄すぎるよ! ここはまるで宝の山だ! ファイズの後継機『カイザ』に、天のベルト『サイガ』。その上この“帝王のベルト”『オーガ』! これらに比べればファイズのベルトなんて……。感謝するよ士。″ファイズギアよりも大切なお宝″……こういうこと、だったんだな」
 欲しいものを与えられて有頂天になった子どものように、お宝を握りしめ目をきらきらと輝かせる海東。士は「どう解釈すればそうなるんだ」と返答しては見たが、まさに有頂天の彼の耳に、たしなめの言葉など届くはずもなかった。
「それはそうと、よくここが分かったね士。君がここにいるってことは、あの生徒会長君はもう倒されたのかい」
「お前の通ってきた場所だけ、灰が異様に積もってたんでな。そいつを辿ってきただけだ。足跡を残した挙げ句、狩り場でガキみたいにはしゃいでいるとは……。怪盗失格なんじゃないか?」
 海東は、後ろ手で後頭部をくしゃくしゃと掻いて言葉を返す。
「申し訳ないことをしたと思っているよ。僕に楯突きさえしなければ、もう少し長生きできたのにね。あぁ、でも彼らは既に一回死んでいるんだっけか」
 申し訳ないと口にしつつも、悪びれる様子は一切なく、話し終わる頃には笑って見せてすらいる。
 自分と同じ“通りすがりの仮面ライダー”が、まさかこんなやつだとは。士は二の句を継げずに頭を抱え、気だるそうに溜息を一つ。
 海東は散らばったベルトの中から“Ω”のマークが入った携帯電話と金色のベルトを掴んで立ち上がると、踵を返して士に言った。
「さてと、そろそろ時間だ。なかなか楽しませてもらったよ、士」
「時間? 何を急ぐ必要がある」
「なぁに、見ていれば分かるさ、ほら」
 士の問いに答える代わりに、海東は腰に差したディエンドライバーを抜いて見せ付ける。
 心臓の鼓動のように力強く点滅し、光輝くそれに呼応するかのごとく、彼の目の前に、あの光のオーロラが現れた。
「こいつは……! なんでいきなり」
「僕はね、君や君のお仲間たちと違って、一つの世界に滞在できる時間が『短い』んだ。旅の恥はかき捨てっていうだろ? どうせ二度と来ることはないんだ。お宝の一つや二つ、許されたっていいとは思わないかい? 」
「だからって、盗みを肯定する理屈にゃあならねぇだろう。おい、ちょっと待て」
「自分で出来るのならそうしているさ。元より、君に納得してもらうつもりもないしね。今回の所はここまでだ。またどこかで出会うことがあっても、僕の邪魔だけはしないでくれよ? じゃあね」
 海東は士の反論を許さぬまま、平手をひらひらと振ってオーロラの中へと姿を消す。士は追おうとはせず、神妙な面持ちでオーロラを見つめ思案を巡らせた。
 ――”長くはいられない”か。お宝とやらを手に入れるため躍起になるのも頷ける。
 ――自分があいつと同じ立場なら、目的のために四の五の言っていられただろうか。
 ――考えるだけ野暮か。俺とあいつは違う人間だ。答えだってきっと違うだろう。
 ――しかし、ま。俺が言えるのは——
「どうにもこうにも……あいつは好きになれねぇな」
 士は再び溜め息をついて踵を返し、異臭のする研究施設から立ち去った。

◆◆◆

「えっと、昨日はありがとうございました。士さん、夏海さん、光さん、小野寺先生」
「もう行くのか。もう少しゆっくりしてったっていいんだぜ。学校はあんなだしな」
「もやし君たちはもう”行っちゃう”んでしょ? だったらあたしたちが長居するわけにはいかないわ」
 オルフェノクたちの学園襲撃から一夜明け、まだ陽が昇り切らず薄暗い早朝。朝露が草木を濡らし、吐く息が白くなって空に消える中、光写真館一行は出入り口前でタクミたちと別れの挨拶を交わしていた。
 タクミとケイタロウはややかしこまって謝辞を述べ、由里はあくびを一つした上で、引き留めようとする彼らにそうはいかないと頭を下げた。

「立つ鳥、後を濁さず……、いやそれは俺たちの方か。兎も角、変なところで潔いと言うか男らしいと言うか……、意外と似合いのカップルなのかもな、お前らは」
 二人の顔を交互に見てにやりと笑う。タクミは恥ずかしそうに頬を赤く染め肩をすくめ、由里はうるさいと一言入れた上で、士の頬を強く引っ張った。
 士はなんてことしやがるんだと悪態をついた後、懐から一枚の写真を取り出して由里に手渡した。
「何よ、これ」
「現像上がったぜ。さすがにネガは渡せねぇが、こっちはくれてやる。好きに使いな」
「写真って……まさか、あっ! 」
 由里はその写真を見て頬を赤らめると、写真を裏にして抱きかかえた。
「どうしたの由里ちゃん。それ、何が映って……」
「あぁ、もう! うっさいうっさいうっさい!」
 興味本位で問いかけるタクミに対し、由里は照れ隠しに彼の頬を引っ叩いて答え、写真を鞄の中に押し込んでしまう。見られては困る代物だということは彼にも理解出来た。

「それじゃあ、僕たちはこれで」
「本当に、色々とありがとうございました」
「はい。由里ちゃんもケイタロウ君もタクミ君も、お元気で」
 挨拶を済ませ、写真を受け取ったタクミたち一行は、ありがとうと手を振り踵を返す。しかし、タクミだけは不安げな顔で士の名を呼んで振り返った。
「士さん、また……会えますよね?」
「俺たちゃ風の向くまま気の向くまま、どこに行くかなんざ、自分たちにだって分かりゃあしねぇ。もう大丈夫だよな? 俺たちがいなくたってよ」
「……はい。なんとかします、僕が」
「なァにが”僕が”よ。”僕たちが”、でしょ?」
「そうそう。俺たちみんなで頑張らなくちゃね、たっくん」
「……うん!」
 自信なさげにつぶやくタクミの手を握り、一緒に頑張ろうと鼓舞する由里とケイタロウ。
 タクミは二人の手を握り返して頬笑み、踵を返して立ち去って行く。
 登り行く朝日に照らされた三人が、いつにも増して輝いて見えた。

◆◆◆

「これが、その写真ですか?」
「あぁ、よく撮れてるだろ」
「撮れてはいますけど……、よくないですよ、こういう写真」
「別にいいだろ。二人ともこれだけ笑ってるんだ」
「いや、だから、そういうことじゃ……」
 写真館の中に戻った士は、夏海にせがまれて、彼女にも由里に渡したあの写真を渡して見せる。
 そこに写っていたのは『タクミと由里が口付けを交わす』決定的な瞬間。なのだが、タクミの姿の上にぼんやりと”狼のオルフェノク”の姿が重なっており、オルフェノクと口付けを交わしているようにも見える不思議な写真となっていた。
 夏海はこの写真をぼんやりと眺めつつ、ソファに腰掛けてレンズのカメラを磨く士に問いかける。
「この世界……タクミ君たちは、うまくやれるでしょうか。キバの世界やこの写真みたいに、人間もオルフェノクも関係なく、手と手を取り合い、愛を語り合えるように……」
「オルフェノクだって元は人間だ。やってやれないことはないだろ。だが、両者の間にゃ埋めきれないほどの深い溝がある。そいつを取り除くのは至難の業だと思うぜ」
「なら、彼らは……」
「知らん。ここから先はあいつらの物語だからな、あいつらはあいつらで勝手にやってくさ。そこに口を挟むのは野暮だろう」
「そう……ですね。タクミ君たちなら、やってくれますよね」
「あれだけやっといて無駄にされちまったら俺が困る。しっかり頑張ってもらわないとな」
「相変わらず口が悪いんだから。もっと素直になってもいいんじゃないですか?」
「知ったことかよ。それより……」
 士はトイカメラをソファの上に置き、リビングの隅、タペストリーの前で何かを見つめ鼻をすするユウスケの背後に立ち、彼の頭を叩いて言った。
「お前は部屋の隅っこで何やってんだ。辛気臭ェんだよ」
「だって……だってよぉ……、見ろよこれ。ケイタロウ君が持ってきてくれたんだけどさ、学校の子たちが描いてくれた俺への寄せ書き、だってさぁ。俺、たった一日……いや、三つぐらいしか授業受け持ってなかったのに、それでもみんな”ありがとう”って、”また会おうね”って書いてくれたんだぜ!? 感動したっていいじゃねぇか、泣いたっていいじゃねぇか!」
「事情は分かった、分かったが……。いちいちうっとおしいんだよお前は! とっとと俺の視界から消えろ」
「なんだよその理不尽な理由は! さてはお前、俺は名残惜しんで寄せ書きまでもらえたのに、自分には何もないことをヒガんでんな? やんねぇぞ、こいつは絶対やらねぇかんな」
「誰がそんなもんヒガむか! その顔がうざいだけだって言ってるだろうが」
 言い争いは何時しか殴り合いに発展、士は彼の寄せ書きを奪おうと突き飛ばし、ユウスケは奪われまいと体を上下左右に激しく揺する。
「もう……、近所迷惑ですよ二人とも」
「ははは、いいじゃないか夏海。これぐらいやんちゃな方が元気でいい」
 夏海は呆れ顔でため息をつき、栄次郎は笑顔でその様子を見守った。

「そーそー。無茶や馬鹿ができるのは若いうちだけなんだから、やらせとけばいいのよ、やらせとけば」
 そんな二人をよそに、薄く開いた窓の外からキバーラが写真館の中に戻ってきた。
 心なしか頬が腫れ、顔が横に長くなっているが、事情を問いただとしても、どうせ何も言わないだろうなと思い、夏海はあえて無視した。
「おぉ、キバーラちゃんおかえり。ほら、見てごらん。キバーラちゃん用にコーヒーカップを作ったんだよ」
「まぁっ、あたし好みの白いカップですごくかわいいっ。さすが栄次郎ちゃんねっ。あははっ」
「さぁさ、コーヒーを入れてあげるからちょっと待っててねぇ」
 キバーラの帰宅を喜んで台所に引っ込む栄次郎に、それをうきうきしながら待つキバーラ。光写真館の中に、いつもの日常が戻ってきた。
 いや、一つだけ違うものがある。士とユウスケのじゃれあいのせいか、この世界でやるべきことが終わったからか、写真館の背景ロールが別のものへと変化していたのだ。

「ちょ、ちょっと……! 見てくださいよこれ、また変わってます」
「あぁ? ……あぁ。確かに、変わったな」
「でもこれ、何の世界だ?」
 背景ロールに現れたのは、細部まで異常なほど描き込まれた神々しい「壁画」の写し。
 ”神”を中心にし二つに分かれて争う天使たち、”下界”の人間たちに進むべき道を指し示さんとする、人とも怪物とも取れない謎の存在。
 一見しただけでは何だか分からないこの絵画に、光写真館一行は頭を抱えた。
「……ユウスケ、これが何だか分かるか?」
「お前だって分からないんだろ? じゃあ俺にだって分かるもんか」
「ごめんなさい、わたしにも何が何だか」

 ――警邏《けいら》中の各移動に連絡。峰岸埠頭の二番倉庫にて『未確認生命体』の出現を確認。

 ――事件現場の指揮は警視庁の未確認生命体対策班が担当する。

 ――現場にて対応する署員は『神経断裂弾』を装填して待機し、未確認の接近に注意。

 ――以上、警視庁。

 自分たちは一体どこに来たのかと頭を悩ませる中、士たちの耳に”無線”の声が届く。
 どこからするのかと耳を澄ませて周囲を見回すうち、士のダメ写真入れの近くの引き出しの中からノイズ交じりの男の声がすることに気付き、引き出しを開いてそれを取りだす。
 中に入っていたのは、”クウガの世界”にて士が着用していた警察官の制服と、それに付属する無線機であった。
「これって、確か……。なんでこんなところに」
「あぁ、記念ってことで貰ってきた。しかし妙だな。いくらなんでも無線の電源ぐらいは切っておいたはずだが……」

「おぉい、士君。テレビテレビ、なんか前に見たようなやつがいるよ」
「前に見たやつ? なんだそりゃ」
 栄次郎に促され、テレビの方に目線を映す写真館一行。
 ――御覧下さい、未確認です。未確認生命体『四十七号』の姿が確認できます。なんという獰猛で野蛮な姿でしょう。
 ――あっ、警官隊の方に向かってきました。恐ろしい速さ、凄まじい腕力です。

 テレビに映っているのは”中継”と称しての、警察官と怪物との戦いの様相。怪物は埠頭前の倉庫前に数台のパトカーと十数人の警察官によって包囲され、警官隊と衝突しているところだ。
 切ったはずなのに鳴り響く無線。”未確認生命体”と戦う警察の報。どこかで観たことのある光景だ。
「警察無線に未確認生命体の包囲、そして衝突。……とくれば残りは、未確認生命体『第四号』、”仮面ライダークウガ”の登場だな」
「おい、ちょっと待てよ。クウガは俺だぜ。おかしいだろ」
「パラレルワールドってのは無数にあるんだ。お前じゃないクウガが複数いたって別におかしくないだろう」
「そりゃまぁ……そうだけど」
 自分じゃないクウガの世界。にわかには信じがたいとユウスケは頭を抱えるが、それ以上に彼の頭を悩ませる光景が、現場の中継を続けるテレビの前に飛び込んできた。
 ――あぁっ、テレビの前の皆様、御覧下さい。G3……『G3-X』が現場に姿を現しました!
 機動隊の白バイを改造したと思しき、仰々しい二輪車に乗ってやってきたのはクウガではなく、全身を”青色”の鎧に身を包み、左肩に警視庁の紋章がプリントされた、赤い複眼の戦士。
 彼は一体何者なのか、これは一体何の冗談だ。それはまだ何も分からない。分からないが……、
「な……なんじゃ、ありゃ……!」
 ユウスケは目を見開き、大福が一つ入りそうなほど口をあんぐりと開けて、ただただ呆ける他なかった。

◆◆◆

◎次回、「Journey through the Decade Re-mix」!

 ――神経断裂弾にも耐え得る未確認が出現し、”四号”の力をあてにすることが出来ない今! G3-Xを失うわけにはいかないんです! あなた方が何故、そんなことも分からないのですか!

 ――あねさん……!? なんで、そんな、あねさんが……。嘘だろ!? マジかよ!?

 ――お前、分かっているのか? ここはお前がいた世界とは違うパラレルワールド。いくら似ていたとしても、あの女ははお前が好きだった八代刑事とは別人だ。いいか、思い出せ。お前の好きだった『八代藍』はもう、死んだんだよ。

 ――それでも……あねさんは、あねさんなんだ!


 ――俺はもう戻れない。自分の居場所も、彼女の居場所も守ってやることはできないんだ!

 ――ふざけんな! あの人にはあんたしかいないんだぞ、あんたが護ってやらなくて、誰があの人を護ってやれるって言うんだ!

 ――ここだ、この地だ……! 僕は今度こそ手に入れる! 神なる力『アギト』の力を!


 ――恐れるな。その力は誰かを傷つけ、遠ざけるためにあるんじゃない。信じろ。お前の護りたいものを、そして思い出せ、お前が一体、何をしたいのかを。目覚めさせるんだ、お前のその『魂』を!

 次回、『覚醒、魂のトルネード』に、ご期待ください。






 まず最初に、学園ネタにも関わらず「仮面ライダーフォーゼ」ネタが無くてすみません。やってもよかったのですが、盛り込んでも違和感が無いように処理するのがキツくて……。そもそも「フォーゼ」のノリで動けそうなキャラが居ないしで……。

 最後の最後、『タクミと由里のキス』がやりたくてこの文章をいじっていたのですが、妙にハズしている気がしてなりません。あと、あれだけ大仰に振っておいてケイタロウの出番が少ないのも申し訳ないです。あいつの方が由里よりもヒロインっぽいのに。

 クロスオーバーの醍醐味というか、作品としての繋がりを出すため、百瀬が別の世界へと連れて行かれてしまいました。「なろう」掲載当日の朝まで悩んで迷ったこのことが、後のアギト編で更に書き手を悩ませることになろうとは……。
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