スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 一時間目 →Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 三時間目
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


総もくじ  3kaku_s_L.png Journey through the Decade Re-mix
総もくじ  3kaku_s_L.png これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー
もくじ  3kaku_s_L.png 観た映画の感想
もくじ  3kaku_s_L.png 自作のアレな絵
もくじ  3kaku_s_L.png わかめ新聞雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 一時間目】へ
  • 【Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 三時間目】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(2)

Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 二時間目

 ←Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 一時間目 →Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 三時間目
 前書きにて表記することがありません。

 スマートブレイン学園高校校歌の歌詞でも書いておくべきだったか。

 なお、学園校歌の歌詞は「仮面ライダーディケイド超全集 上巻」の「555の世界」の項にて確認することが出来ます。


◆◆◆

 尾上タクミが写真の現像液を飲み、卒倒してから数十分後。彼は学園に併設された病院に搬送され、医師の治療を受けていた。幸い大事には至らず、暫しの間安静にしていれば元気になるとのことで、由里他付き添いの一行はベッドの上ですやすやと寝息を立てるタクミを病室に預け、病院の中庭へと足を運んでいた。
「よかったよぉ、たっくんが無事で」
「一時はどうなるかと思ったわ。いっつも世話を焼かせてばっかりなんだからっ」
「そうは言うけどさ、たっくんが救急車に乗せられたとき、一番取り乱してたのは由里ちゃんじゃなかったっけ?」
「冗談っ! 部長として部員を心配するのは当然のことでしょうが。だいたいなんであたしが……」
「あ。ちょっと赤くなってる」
「う、うるさいうるさい! そんなこと言ってる暇があるんなら、とっととファイズの写真を撮って来なさぁい!」
 図星なのかどうなのか。照れ隠しにケイタロウを苛める由里。夏海と士はそんな二人の様子を一歩下がって遠巻きに見つめていた。
「見ていて飽きないやつらだな、まったく」
「ねぇ、士君。由里ちゃんとタクミ君って……、もしかしたら相思相愛なんじゃないでしょうか」
「なんでそう思うんだ? 俺にはナヨナヨした草食系男子をイビる、凄みのある肉食系女子とのやり取りにしか見えないぜ」
「女のカンです。あの二人からは友達以上の何かを感じましたし」
「勘で恋仲が分かりゃあこの世の占い師は須らく廃業だぜ。もっと客観的なデータを持ってこい」
「士君は女の子じゃないから分からないだけですよ。女の子には分かるんです」
 いつもより楽しげに笑ってそう語る夏海に、士はそういうものかねとため息をついて言葉を返した。勉強も運動も完璧な士だが、人の色恋沙汰を察知し、的確なアドバイスを与えることは不得手なようだ。
 和気《わき》藹々《あいあい》とした空気が中庭を包む中、それを切り裂き掻き消すかのような不気味な雰囲気を漂わせ、彼らの前に二人の男女が現れた。
「ごきげんよう、友田由里さん。校舎にいないものだから探したわよ」
「まったく、余計な手間ァかけさせやがってなあ」
「ラッキークローバーの。何の用?」
 彼女たちの前に現れたのは体育の時間に出会った玄田と朱川。先の一件もあってかとびきり鋭い目で二人を威嚇する由里だが、同時に朱川が色鮮やかな黄色い花束を抱えていることに気が付いた。
「何よその花束は。さっきのことを詫びようっての? それともタクミの見舞い?」
「どういう風に取るかは貴女次第ね。受け取りなさいな」
「なんだか腹の立つ言い回しだけど、もらえるものはもらっとくわ。ありがと」
 不本意ながらも朱川の差し出す花束を受け取ろうとする由里だったが、二人の間に割って入った士は、神妙な顔をしてそれを振り払った。
「何するのよもやし君。こいつらが気に入らないのは分かるけど、別に花束ぐらい」
「お前、コイツの花言葉を知らないのか? こいつはオトギリソウ。花言葉は”敵意”や”恨み”。少なくとも見舞いに持参するような代物じゃあない。それにこいつらが醸してる嫌な気配。気をつけろ、何かやばいぞ」
 花束を振り払われた朱川は、怒ることなく嫌らしく口元を歪ませ、愉しげに笑い始めた。
「博識ね門矢君。その通りよ。このオトギリソウは手向けの花。あなたたちのちっぽけな命へのね!」
 瞬間、彼女の顔に何か動物の模様が浮かび上がり、″海老″を模したかのようなオルフェノクへと変貌。
「しゃあッ! 俺も暴れてやるぜぇ、思う存分なあ」
 それに続いて、玄田も制服の上着を脱ぎ捨て″龍″を模したオルフェノクへと変身し、由里たちと向かい合った。
「おっ、おっおっ……、オルフェノク!」
「虫が好かない奴等だとは思ったけど、まさかオルフェノクだったとはね。強請るネタの提供、どうもありがとう」
「ゆする? そいつは無理だな。お前たちはみんな、ここで朽ち果てるんだからな!」
「そういうこと。悪いけど、″変身″する前に始末させてもらうわよ友田由里、いや″ファイズ″!」
「は、はぁ!? 何よそれ、意味分かんない! なんでそうなるの」
「以前ファイズがこの学校でオルフェノクを始末した時、現場にはあなたの撮った写真が残されていたのよ友田由里。大人しく死んでしまいなさい」
 襲われる云われなどないと必死に弁解するが、全く聞き入れられず、朱川は腰に差した細い刀身の剣を抜いて襲いかかる。
「士君!」
「分かってるよ。とっとと決めてやるさ」
 夏海に促され、士は慌てることなくバックルを腹部に押し当ててカードを装填しようとするが、
 ――そうは行きませんよ!
「何だ? うわああっ!」
 草葉の陰より飛んできた”鞭”に絡め取られ、訳も分からず中庭の林の中へと連れ去られてしまう。
体を縛りつける鞭を無理矢理引き剥がした士は、目の前の”ムカデ”を模した姿のオルフェノクと向かい合い、人差し指を突き立てた。
「なんなんだお前はッ! 今取り込み中なんだよ」
「スマートブレイン学園、生徒会副会長の城金イツロウと申します。あなたとは面識も恨みもありませんが、我々の計画のため、ここで死んでいただきます」
「ご丁寧にどうも。どくつもりはねぇってか。じゃあお前を踏み越えて行かせてもらうぜ」
 ――変身!
 ――KAMEN RIDE 「DECADE」!!
 ディケイドに変身した士はムカデのオルフェノクに向かい、ライドブッカーを振るった。

◆◆◆

「あわ、あわわわわ」
「ちょっとケイタロウ! なんとかしなさいよ、男でしょ!?」
「こういう時だけ女の子にならないでよ由里ちゃん。俺だって怖いよ」
「あぁもう! 役に立たないわねぇもう!」
「二人とも、そんなこと言ってないで早く逃げましょう」
 オルフェノクに唯一対抗できる士を失った三人は、じりじりと玄田と朱川によって病院の壁の前まで追い込まれていた。これ以上逃げ場はないがどうしようもない。由里はもっと写真を撮っておけばよかったと、ケイタロウは死にたくないと連呼しつつ両手で両目を覆う。
「思ったより手ごたえがなかったけど……まぁいいわ。それじゃあ、さよなら」
「あの世で懺悔しなッ! ファイズとそのお仲間よぉ」
 逃げることをあきらめ、壁にもたれかかって震える由里とケイタロウの眼前に、玄田の鋭利で太い爪が迫る。だが、その爪が彼女たちの体を切り裂くことはなかった。雲ひとつない青空より飛来したロボットが放った銃弾の雨により、玄田の爪は軌道をずらされ壁にぶつかったからだ。
「痛ってぇな! 何者だッ」
「まさか、これは……」
 玄田と朱川は周囲を見回し、視界に人型のロボットの姿を見込むが、彼らを本当に驚かせたのはロボットではなく、共にやってきて由里たちを庇う様にして彼らの前に立ちはだかる青年の姿だった。
「由里ちゃん、ケイタロウ君、夏海さん。大丈夫?」
「あんた……タクミ!? どうしてここに!」
「えっ、たっくん!? 病室で寝ていたんじゃ」
「みんなの悲鳴が聞こえたから。後は僕に任せて。みんなは早く逃げるんだ」
「逃げて、って……! あんたはどうするつもりなのタクミ」
「大丈夫。……”オートバジン”!」
 タクミは空で待機するロボット――、”オートバジン”の名を呼び、目の前でバイクに変形させると、荷台から一抱えあるジュラルミンケースを取り外し、”ベルト”のような装飾品を腰に巻き付けた。
「みんな、早くここから離れて。後は僕がなんとかするから」
 ――5・5・5 ENTER. Standing by.
 ――変身!
 ――Complete.
 携帯電話の五キーを三回プッシュし、バックルにセット。瞬間、赤い閃光がタクミの体を包んで取り囲み、アーマーを生成して行く。あまりの眩しさに目を背け、彼らが再び目を見開く頃には、その場に全身を駆け巡る紅い光のライン、顔の殆どを覆う黄色い複眼の戦士・『仮面ライダー555《ファイズ》』が立っていた。
「うそっ! あっ、あれって」
「まさか、タクミが……ファイズだったなんて!」
 まさかの真実に驚き、それでもなおタクミの身を案じ近寄ろうとするケイタロウと由里だったが、ひとりでに変形したオートバジンによって夏海と共に無理矢理その場から立ち退かされた。彼女らを巻き込みたくないと思うタクミの指示あってのものだろう。
「ちょっと、やめてよっ!」
「たっくんが危ないんだ、傍にいてあげなくちゃ! たっくん、たっくーん!」
 由里とケイタロウがそれをただ受け入れるはずもなく、二人は道を折り返してタクミの元に向かい、オートバジンによって阻まれてを繰り返し、なかなか安全圏へと出られずにいた。
「出やがったファイズぅ……。この際誰だっていい、ぶっつぶしてやるぜ」
「尾上タクミ。まさかあなたがファイズだったとはね。変身する前に倒したかったけど仕方がないわ」
「オルフェノク。由里ちゃんやケイタロウ君までも襲うなんて……許さない!」
大切な友人を襲ったことへの怒りに拳を震わせ、怒りの一撃を叩き込むファイズ。玄田の右胸に当たったそれは彼をよろけさせるも、致命的とまでは至らない。
 朱川はレイピアのような鋭く細い剣を構え、玄田は太く堅い爪のついた腕を振り上げて襲いかかる。ファイズの持つエネルギーブレード”ファイズエッジ”は、オートバジンのハンドルを引き抜かない限り使えない上に、相手は両方とも武器使い。彼らの攻撃を右腕でいなして左腕の裏拳で引き剥がすが、圧倒的不利は目に見えていた。
「おらおらぁ! どぉしたどぉしたぁ」
「ファイズと言えど、二体一ともなると大したことないわね。もっとも、『ラッキークローバー』戦っているのだから当然かしら。あなたが倒してきた雑魚たちとは違うのよ、雑魚たちとは」

 自分ひとりで二人同時に相手をする難しさに舌打ちをするファイズ。どちらか一人を倒さなければ勝機はないと確信した彼は、ベルトの左腰に取り付けられた”サーチライト型”のポイントマーカーユニットに、バックルの携帯電話からカードキーを取り外してポインターに取り付けたうえで右足の脛《スネ》に取り付ける。
 ――Ready.
 ――Exceed Charge.
「面倒だ。まずはひとり……、決めてやるッ」
 迫り来る朱川と玄田を蹴りつけて引き剥がし、携帯電話《ファイズフォン》のエンターキーを押しこむファイズ。体中を駆け巡るフォトンブラッドがバックルを介して右足脛のポインターに集束されてゆく。ポインターの中にフォトンブラッドが充実し切ったその瞬間、ファイズは地を強く蹴って跳び上がり、玄田に向かって必殺の跳び蹴りを見舞う。
「なんだ……こいつは、なんなんだよぉッ!」
 ファイズの繰り出したそれはただの飛び蹴りなどではない。右足脛のポインターから円錐《えんすい》上の光線が敵を捉えて動きを封じ、腹部を貫き体を焼いて行く。
 円錐の光線と共にファイズの体が玄田の体を潜り抜ければ、Φの紋章を残しての灰化は確実だ。
 だが、それを玄田が易々と受け入れるはずがない。
「ちきしょう……、なめんじゃねぇ、なめんじゃねぇぞぉ!」
 玄田は自分の体を焼くフォトンブラッドを両の手で掴み、引き剥がして上空に放り投げた。行き場をなくした円錐の光線は放出され切って消え、ファイズの体は重力に従ってゆっくりと落下して行く。
 ――Ready.
 ――Exceed Charge.
 しかしファイズも負けてはいない。落下しつつもポインターに填《は》まったカードキーを抜いて、ベルトの右腰についたパンチングユニットにつけかえて再び電話のエンターキーを押し込んだ。
 今の今まで右足に集束されていたエネルギーが脛を腿を腹を伝い右腕に集まって行く。正攻法では勝てないと理解したファイズは、吹き飛ばされた反動を逆に利用しようというのだ。
 集束されたフォトンブラッドと落下の勢いが上乗せされたその一撃は、腕を十字に組んだ玄田の防御をも貫き、彼の腕と胸の一部を焼けつかせ、灰に変えるほどに強烈であった。
「玄田君ッ」
「ぐぅ……おぉおおっ! 痛ェ、痛てェええッ!」
「なんだ、まだ足りないのか」
 青々とした草木が生い茂る病院の中庭に、玄田の野太く悲痛な悲鳴が轟く。痛みに耐えかね立ち上がることすらできない様子に朱川が心配して寄り添う中、ファイズは玄田の並々ならぬ耐久力に驚かされつつも、三度携帯電話のエンターキーを押し込んで再充填を始めた。
 ファイズが彼らに向けて一歩ずつ歩を進めるのと呼応し、右手のユニットに徐々に蓄積されていくフォトンブラッド。エネルギーが満ち満ち、拳の射程距離に入ったと同時に振り被るが、
 ――そうはさせませんよ、ファイズ!
 ファイズの視界の外、真横の木々の中から飛んできた鞭に弾かれ、寸前で阻止された。ディケイドとの戦いを放り出して彼らの援護に向かった城金の仕業だ。
 長く撓《しな》る鞭はファイズのベルトを絡めて奪い取り、体中を駆け巡るフォトンブラッドの統制が立ち行かなくなったことで、ファイズはエネルギーを放出して変身を解除してしまった。
 尾上タクミの姿に戻ったのを目視した城金は、玄田に肩を貸して起き上がらせる。
「二手……いや三手に分かれておいて正解でしたね。大丈夫ですか」
「えぇ。助かったわ城金君」
「城金ぇ!? そういえばさっきから姿が見えなかったな」
 城金と呼ばれたムカデのオルフェノクは玄田の言葉に耳を塞ぎ、タクミから取り上げたファイズのベルトをまじまじと見つめて口を開く。
「これがファイズのベルトですか。力も細工も素晴らしい……。これは君のような一般人などではなく、私たちラッキークローバーが持つべき代物だ。そうは思いませんか?」
「それは僕のベルトだ。君たちには渡さない! いや、渡せない」
 ベルトを取り戻そうと城金に掴みかかるタクミだったが、体勢を立て直した玄田に逆に首根っこを掴まれてしまう。傷の恨みもあってか、込める力も半端なものではない。
「くそっ、離れろ……離れろよッ」
「離すもんか。このままあの世にご招待だ。地獄の閻魔さまに宜しくなっ」

 ――弱い者いじめとは感心しないなぁ。まぁ、どうでもいい話だけど。
 このままでは死んでしまうともがくタクミだったが、ラッキークローバーの面々の注意は拍手をしながらその場に介入してきたひとりの青年に釘付けになり、腕に込められた力は唐突に立ち消え、尻もちをついてしまう。
 茶色の鍔付き帽を浅く被り直し、青年は城金に向かって手を伸ばす。
「それはそれ、これはこれ。契約成立だ。さぁ、そのベルトをこっちに頼むよ」
「ベルト……? あぁ、そういう約束もしていましたねぇ。ですが」
「これは私たちラッキークローバーの物よ。『過ぎたるは及ばざるが如し』って諺《ことわざ》、知っているでしょう? どうしても欲しいというのなら……」
「力ずくで来いって言ってんだよ。尤も、人間がオルフェノクに勝てる筈ねぇがな」
「……君たち怪人と約束すること自体間違いだったって訳か。いいだろう、お望み通り力ずくで行かせてもらう」
 青年——海東大樹はため息をつき、両手を軽くひらひらと振って言葉を返す。
 ――変身。
 懐から黒地に黄、銀、青のラインが入った大型の拳銃を取り出し、銃側部の挿入口にカードを挿入。それをオルフェノクたちにではなく空に向けて引き金を引いた。
 ――KAMEN RIDE 『DI-END』!
 引き金を引くと同時に無機質な電子音が鳴り響き、頭上には大小十六枚のカードが、海東の周囲には三人の『戦士』の虚像が周回し、虚像は海東の体を覆ってアーマーへと、カードはその全てが彼の顔に刺さり、海東の体を青《シアン》に染めて行く。
 彼こそがディケイドと対になるもう一人の『通りすがりの仮面ライダー』、ディエンドだったのだ。

「おいおいおいおい、なんだよあの青いのは」
「ディエンド。士君と同じ『世界を巡る』仮面ライダー……」
 それを見て驚いたのはラッキークローバーの面々だけではない。自分を放って逃げ出した城金を追ってきたディケイドも、由里を止めようと中庭まで戻ってきた夏海も、同様にその光景を目の当たりにして呆気に取られていた。
「やあ、士に夏メロン。来ていたのかい? 丁度いい、折角だから見て行きたまえ。これが僕の戦い方だ」
 高台の上からオルフェノクたちの下へと舞い降り、指でかかってこいと挑発をかけるディエンド。彼が何者なのかは分からないが、自分たちオルフェノクが人間に舐められて黙っているわけにはいかない。
 最初に動いたのは玄田。それに伴って鞭をしならせた城金とレイピアを構えた朱川が続く。
 ディエンドは城金の鞭を愛銃ディエンドライバーで受け止めて流し、朱川のレイピアを蹴りで軌道を反らせ、爪を振り下ろさんとする玄田にそれらを押し付けた。これにはいくら屈強な体を持ったオルフェノクとはいえ堪ったものではない。
「ぐおっ! てめぇら、何のつもりだっ」
「不可抗力よ玄田君、私たちのせいじゃないわ」
「うむむ、朱川さんのみならず私の鞭までも……」
「えぇい、ならもう一度!」
 何かの間違いだと武器を構え直し、再びディエンドに飛びかかる三体のオルフェノク。
 ディエンドは臆することも驚くこともなく玄田の顔に目眩ましの銃撃を放ち、城金の鞭にわざと左腕を差し出して自分の懐に引き寄せると、襲い来る朱川の突きの盾にし、その上で体を捻り二人を玄田の爪の餌食とした。
「芸がないねえ。それでラッキークローバーって言うのかい。全くお笑いだ」
 仮面の下で嫌味たらしくそう言うと、ディエンドはベルト左腰のカードホルダーに手を伸ばし、二枚のカードを掴み取る。
「三人相手ともなると骨が折れる。化け物には化け物。君たちの相手はこいつらに任せるとしよう」
 ――KAMEN RIDE 「REY」
 ――KAMEN RIDE 「KA-BU-KI」
 二枚のカードを装填して引き金を引くディエンド。銃口から発射されたのは弾丸ではなく、それぞれの紋章と三体の虚像。虚像と紋章が全て重なった瞬間、それは″雪男″を模した仮面ライダー『レイ』と、戦国の世で活躍した緑の鬼『歌舞鬼《カブキ》』へと姿を変えた。
「そこの灰色共の始末を頼む。行ってらっしゃい」
「あれは……、他のライダーを『呼び出した』のか!?」
 ライダーカードで絵柄のライダーに変身する力を持つ自分《ディケイド》と、見たこともない絵柄のカードで他の仮面ライダーを呼び出すディエンド。姿はおろかカードの使い方までこうも違うのかとディケイドは舌を巻いた。
「なんだこいつらッ! どこから現れたッ」
「そんなこと……より! なんて、強さなのッ」
 二人の仮面ライダーはディエンドの命に従い長く伸びた爪を、腰に差した音撃棒を構えて飛びかかる。
眼前のディエンド以上に未知の相手に対し、朱川と玄田はなすがままにされていた。
「君たちは彼らと遊んでいたまえ。おぉっと」
 そんな中、勝ち目がないと感じた城金は一人、ファイズのベルトを持って中庭から逃げ出してしまう。
玄田と朱川の相手を二人の仮面ライダーに任せ、ディエンドは城金の後を追って行く。
「チャンスだ夏ミカン、尾上たちを連れて早く逃げろ」
「逃げろって……、士君はどうするんです」
「あいつを追うに決まってんだろ。何がしたいかは知らんが放ってはおけないからな」
 これを好機と見たディケイドは夏海に対し、傷付いて立てないでいるタクミを連れ、由里たちと共に逃げろと促す。
 彼女が危険を冒してまでこの場に戻ってきたのはタクミの身を案じてのことであり、彼がこうして倒れている以上、由里たちにここに留まる理由はないはずだ。
「分かりました。……友田さん、タクミ君をここに残していては危険です。急いでお医者様に診せないと」
「そうね……、その通り! ケイタロウ、タクミを担いで逃げるわよ、早く!」
「えっ、俺!? あぁもう、分かった、分かりましたよ!」
 夏海は首を縦に振って由里を説得し、タクミをケイタロウに背負わせて今一度その場から逃れた。

◆◆◆

「ひぃ、ひぃ、ひぃ……」
「男の尻を追い掛けるのは嫌いなんだ。悪いけどそこで止まってくれないかな」
 病院の中庭を抜け、川沿いの大きな公園に出てもなお、逃げる城金とそれを追うディエンドとの小競り合いは続いていた。
 追い掛けっこに飽き飽きしたディエンドは、ディエンドライバーのグリップを数度引き、銃口に″アンカー″のようなものを取り付けると、城金の足首を狙って引き金を引いた。
 城金の右足首はアンカーによって絡め取られ、無様にも前のめりに転んで額をしこたまぶつけてしまう。
「さぁて、鬼ごっこはこれで終いだ。早くそれを渡したまえ」
「これは我々が持つべき代物だ。君ごとき人間などに渡すものか。ファイズのベルトの持つ本当の価値すら分からぬ愚か者のくせに」
「心外だな、君たち化け物よりは分かっているつもりなんだけどね。大人しく渡していれば死ぬこともなかったのに。あぁ、君たちは既に死んでるんだったか」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「De-De-De-DIEND」
 ディエンドは金色の縁取りのカードをドライバーに装填して引き金を引く。絵柄の入っていない薄い青に緑に黒のカードの束が螺旋状に広がり、逃げようとする城金の体を捉えて離さない。
 身動き一つ取れない城金に向け、螺旋の中で集束されたエネルギーを一気に放つディエンド。青緑に黒の混ざった毒々しい極太のエネルギー波をその身に浴びた城金は、悲鳴を上げる間もなく焼き尽くされ、体を構成していた灰の山と手に持っていたファイズギア、そして『ムカデのオルフェノクの絵』が描かれたカードを残して消え去った。
「”KAIJIN RIDE”カードか。こんなものに興味はない。それよりも」
 集める価値なしと判断したのか、ディエンドは拾い上げたカードを破り捨てて灰の上に放り、手を伸ばして近くに転がっていたファイズのベルトを掴み取った。
「ちょっと待った。こいつはお前には渡さねぇぜ」
 しかし、持ち去ろうとするディエンドに待ったをかける者がいた。後手を踏んで到着したディケイドだ。ライドブッカーをガンモードにして構え、いつでも撃てるぜと威嚇をかけている。
「酷いなあ士。もしかして横取りでもするつもりかい」
「こいつの所有者は尾上タクミ。俺は持ち主にこれを返してやるだけだ。それのどこが横取りだっていうんだ?」
「君も分からないやつだね。今朝言わなかったかな?」
「”邪魔をするのなら容赦はしない”だったか? 上等だ。こちとら、お前の面とやることが気に食わないんでね」
「分かった、分かったよ。いい機会だ、”本物の”通りすがりの仮面ライダーの力、見せてあげよう」
 ――ATTACK RIDE 「BLAST」
 ディエンドはディケイドが引き金を引くよりも早く全自動《フルオート》の銃弾を放った。両方が両方に胸に銃弾を喰い、反動によろけて膝をつく。
「……能力は互角ってところか、こいつは」
「互角じゃない。僕の方が上さ。何せ君よりもずっと前から通りすがりの仮面ライダーだったんだからね。そして断言しよう。今の君程度、片手で倒せるとね」
「減らず口を抜かすなよ。だったら」
 ――ATTACK RIDE 「SLASH」
 撃ち合いに見切りをつけたディケイドは、スラッシュのカードを装填しソードモードでディエンドに斬りかかる。彼もそうなることを予期していたようで、慌てることなくカードを装填し、ディケイドに向けて引き金を引いた。
 ――ATTACK RIDE 「BARRIER」
 ブッカーを構えディエンドに斬りかかるディケイドだったが、目の前に割り込んだ青色半透明のバリア光弾によって阻まれ、公園前のガードレールまで吹き飛ばされてしまう。
 ひしゃけて体にまとわりつくガードレールを引き剥がして何とか立ち上がるディケイドに対し、ディエンドは仮面の中で嫌味たらしい笑みを浮かべた。
「言ったろ? 僕の方が上なのさ。何につけてもね」
「やっぱりお前は気に入らねぇ、あぁ気に入らねぇな。こうなったらなんとしても俺を認めさせてやる」
「君も負けず嫌いだね。分かった、とことん付き合ってあげるよ」
 ――ATTACK RIDE 「BLAST」
 ディエンドは『ブラスト』のカードをドライバーに装填し、空に向けて引き金を引いた。
どうして自分を狙わず空に向けたのかと不思議がるディケイドであったが、空に向けて放たれたそれは何股にも分裂し、まるで流星のように降り注いでディケイドを襲った。一発一発の精度は良くないものの、その全てが自身のそれと同じ威力なのだからたまらない。
「さて、そろそろいいだろう。終わりにしようか士」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「De-De-De-DIEND」
 ファイナルアタックライドのカードを装填し、螺旋状のカードの束を発生させるディエンド。
「なろっ、負けてたまるかッ」
 ――FINAL ATTACK RIDE 「De-De-De-DECADE」
 ディケイドは負けじとファイナルアタックライドのカードをドライバーに挿入し、縦並びのカードをぶつけてディエンドのカードの束と相殺し合う。互いの力は拮抗し合い、電動鋸で鉱物を切るような音と火花が周囲に舞った。
「無駄だよ士。その攻撃じゃあこいつは防げない。まだ分からないのかい?」
「あぁ理解したさ。だから、こいつでどうだ!」
 ――ATTACK RIDE 「ILLUSION」
 ディケイドは一瞬の隙を突き、ファイナルアタックライドの裏に忍ばせた『イリュージョン』のカードをドライバーに装填。ライドブッカーをソードモードにして構えた分身は、すれ違い様にディエンドの胸部に刃を叩き込んでファイズのベルトをはたき落とし、それを掴んでディケイドの元へと戻り、一体となった。
「銃は剣より強しって? ありゃあ嘘だな。剣だって使い様によっちゃあ銃にだって十分勝てる」
「くっ……、小癪な真似を。それを返したまえ士」
「おっと、余所見してていいのかい? 今自分が何をしているか、分からないわけじゃないだろう」
 彼に言われ目線を正面に戻すディエンド。今自分たちが何をしているか? 決まっている。”必殺技同士の撃ち合い”だ。だが今はどうなっている、ディケイドの分身の一撃が入ってよろけたことで、撃ち合いになっていた光線と光線が逸れ、自分たちの体に直接向かっているではないか。
「これは……! 士、分かっているのか、これは」
「あぁ。俺とお前……、どっちが打たれ強いのか、賭けてみるのも悪くねぇってな」
 二人はそれぞれの光線をその身に浴び、火花を散らして吹き飛び、もんどりを打つ。
 アーマーの強度が光線に耐えきれず、変身を解除したのは言うまでもないが、意外にも先に立ち上がったのは士の方であった。
「はっは。どうだこの野郎。俺の方が強いンだよ」
「僕より頑丈だったってだけだろう。強さの証明にはならないね」
「負け惜しみまでムカつくとは大した野郎だな。腹が立つのを通り越して尊敬するぜ」
 士は膝をついて肩で息をする海東に、これ見よがしにファイズのベルトを見せつけつつ、彼に対する疑問を口にした。
「しかし世界が崩壊の危機だってぇのにコソ泥とは感心しねぇな。火事場泥棒は嫌われるぜ?」
「コソ泥って言葉は好きじゃないな。”トレジャーハンター”と呼びたまえ。僕からすれば、そうして世界を守ろうとする君たちの方が滑稽に見えるけどね。
 どうせ放っておこうが何をしようが世界は消滅するんだ、”世界を巡る力を持つ者以外”は。だったら自分の好きなことを好きなようにやる方が前向きだろう。そうは思わないかい?
 それに、世界は滅んでもお宝は消えない。その世界が存在したという事実は残るんだ。僕がそれを手に入れ、コレクションすることでさ。僕は僕で”世界を守る”ことに貢献しているつもりなんだけどね」

「思わねぇな。何の根拠もねぇのに諦めるのは腰抜けのすることだ」
「どうやら、君とは根本から分かり合えないらしい。同じ力を持つ同士、仲良くしようと思ったんだけど」
「あぁ、もう付き合ってられん。お前、俺の過去を知っているんだろう? そいつを洗いざらいしゃべってもらおうか」
 そう言ってベルトから外したライドブッカーを構える士だったが、海東は彼が構えるよりも早く引き金を引いて彼の手から弾き飛ばした。
 海東はその上で宙を舞うライドブッカーに対し、落下位置を調整するように軽く銃弾を当てつつ、自分の掌まで引き寄せる。
「おっと、これ以上変身されると困るからね。しかし、ま。大したお宝じゃないなぁ」
「てめぇ、そいつを返せよッ」
「口の利き方には気をつけた方がいいな。これがなければどうなるか。分かっているだろう」
 奪い返さんと彼に殴りかかろうとした士に対し、海東は銃口をライドブッカーに向けて彼を威嚇する。ライドブッカーにはディケイドに変身するためのカードが内包されている。あれがなければ彼は変身することすらできないのだ。壊されてしまってはどうしようもない。
「性格捩じ曲がってんな、お前ってやつはよ」
「よく言われるよ。さぁ、ファイズギアをこちらに渡したまえ。君の武器をポンコツにされたくなかったらね」
 タクミへの義理立てはあるが、自分が変身できなくなるのも困る。士は歯を食いしばり、目を見開いて海東を睨みつけた。どう答えるべきなのか、彼自身には決められない。
「黙んまりで時間を稼がれるのは困るんだけどなぁ。男ならすぱっと決めてくれたまえ、士」
 決めあぐねる士に苛立ちを隠せず、ライドブッカーに銃口をぐりぐりと押し付ける海東。奴は気の長い相手ではないと理解した士は、やむなく手に握ったファイズのベルトを彼に差し出そうとするが、

 ――見つけた、見つけたぞディエンド! 今度こそ、今度こそ抹殺してくれる!
「なんだ! 一体何が起こった」
「こいつは……、まさか!」
 突如現れた光のオーロラがそれを遮り、彼らをここではないどこかへと連れ去ってしまう。
 二人は否応無しにオーロラに飲み込まれ、気が付くと波打ち際の岩肌に立っており、一際大きな岩石の上には彼らの見知った男が座っていた。
「ディエンドォ……。ディケイドも一緒なのは計算外だったが、まぁいい。盗人め、貴様は……貴様だけは絶対に許さん!」
「やあ。君もしつこいねぇ”鳴滝”。そうまでして僕を殺したいのかい?」
 鳴滝は海東を親の仇を観るかのような目つきで睨みつけ、海東は面倒臭そうに鼻を鳴らす。
 この二人が只ならぬ因縁を持った知り合い同士であることは見て分かる。だが今鳴滝は何と言った?ディケイドである自分がここにいるのに、『まぁいい』と、そう言わなかったか?
 それほどまでに海東という男が憎いのか。そうでないとすれば理由は何だ?
「邪魔だの破壊者だのと言っておいて……、俺を本気で殺すつもりはあるのか?」
 一人疑問を口にする士だったが、誰もその問いに答えてはくれなかった。その代わりに鳴滝は、天に右手を掲げ怒りに満ち満ちた声で叫ぶ。
「ここが貴様の墓場だ、ディエンドぉぉおお! 出でよ、仮面ライダー幽汽《ゆうき》ぃいいい!」
 彼の叫びに呼応するかのように現れた光のオーロラ。中央に髑髏《ドクロ》が入った海賊帽のような顔に、首に銀色のマフラーを巻いた仮面ライダー。イマジンが変身する悪の電王、『幽汽』だ。
「なんだかよく分かんねぇけど、せいぜい楽しませてくれよな、お前も、お前も!」
 幽汽は士と海東の顔を見て、立てた親指をこれ見よがしに下に向け、嫌味たらしい大声で笑ってみせた。

◆◆◆

 時を同じくし、夏海たちは傷付いたタクミを連れて中庭の並木通りを逃げていた。士や海東と戦っているからなのか、自分たちを追ってくる者は誰もいない。
「知らなかった……、まさか、タクミが」
「俺もだよ由里ちゃん。たっくんとは入学からの付き合いだったのに……、どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ」
「特別扱いされたくない……。二人とは普通の友達でいたかったんじゃないでしょうか。部外者のわたしが言うべきじゃないのは分かっていますけど」
 タクミがファイズだったことに戸惑う二人に、彼女なりにタクミの心情にフォローを入れる夏海。
 オルフェノクを倒し、学園の平和を守る英雄が同級生で同じクラスにいると知り、それでもなお今までと同じ態度で接することができただろうか。
 二人は押し黙り、申し訳なさそうな表情でタクミの顔を見つめた。
「光さん、友田さん、海堂君。大丈夫ですか」
「あっ、生徒会長! 大変なんです、たっくん……、尾上君が襲われてぼろぼろに」
「分かっている。担ぐ方は僕が代わるから、君たちは先に病院に戻ってお医者様に治療の準備を頼んで来てくれないか」
「はい。じゃあたっくんのことを」
 そんな三人の前に生徒会長の百瀬が駆け寄ってきた。百瀬は彼らに院に戻って医者に緊急治療の依頼を取り付けるよう促し、意識を失ったタクミを代わりに担ごうと持ちかけた。
 ケイタロウはタクミを降ろし代わろうとするが、由里によって途中で止められてしまう。
「待ってケイタロウ。ラッキークローバーの他の三人、みんなオルフェノクだったのよ? 生徒会長であるこいつがそれを知らないはずがないし、もしかしたら……」
 身の危険を感じ、ケイタロウたちを彼の元から遠ざける由里。百瀬は驚くどころか察しがいいなと笑みを溢し、高笑いを始めた。
「なるほど。どうやら馬鹿ではないらしい。じゃあつべこべ言わずに死んでくれよ」
 そう言った百瀬の顔に何か不気味な紋様が浮かび上がったかと思うと、彼の体は一瞬のうちに”虎”を模したオルフェノクの姿へと変質し、由里たちに襲いかかる。
 逃げようと後ろを振り向くが、そちらからはディエンドの召喚したライダーたちの追走を逃れた玄田と朱川の二人が迫る。頼りになるファイズもディケイドももういない。絵に描いたような最悪の事態到来だ。
 逃げ道を塞がれた三人の右胸目掛け、百瀬の肩の装飾より伸びる触手が飛ぶ。一度でも突かれてしまえば命はない。由里の首筋に百瀬の触手が迫る。もう止められないのか。
 ――由里ちゃんを、みんなを……! 傷つけるなぁあああああああッ!
 百瀬の殺気と由里の悲鳴に目を覚ましたタクミは、ケイタロウの背中を踏み台にして飛んで百瀬の眼前に割り込み、彼女たちの身代わりにその体を触手に貫かせた。由里とケイタロウの悲鳴が一拍遅れて中庭内に響き渡る。
 だがどうしたことだろう。内臓や肺、急所である心臓を触手で突き刺されたというのに、タクミの体は灰にならないばかりか、逆に触手を握って自分の側に手繰り寄せているではないか。
「馬鹿な、人間が心臓を貫かれて死なないはずがない! どういうことだ!」
 いや、ちょっと待てよ。予想外の出来事に動揺する百瀬は我に帰って思案を巡らせる。″人間が″心臓を貫かれて無事でいられるはずがない。となるとこいつは、尾上タクミは何者なのだと。
 答えは百瀬が解くよりも早く、彼が自身の手で明かすことになる。
 ――うぉぉぉおおおっ!
 鉄板をも易々と噛み砕く強靭な顎と牙、後頭部から脊柱の中程まで伸びた雄々しき鬣《たてがみ》を生やした″狼″の『オルフェノク』へ姿を変えたことによって。
 自分に飛び掛かり、体に爪を、喉元に牙を突き立てるタクミの姿を見込み、百瀬は唐突に理解する。
オルフェノクを倒すほどに強力な力を人間ごときが扱えるはずがない。身に纏う者もオルフェノクだからこそできたのだと。だがそう納得してばかりもいられない。タクミの爪と牙は確実に自身の肉を引き裂き、削り取っているのだから。
「玄田! 朱川! 何をしている、こいつを早く引き剥がせッ」
 百瀬は玄田と朱川に自分にまとわりつくタクミを引き剥がすよう急かすが、空から降り注ぐ銃弾の雨、オートバジンの援護射撃によって阻まれた。
「ちくしょう、いてッ、痛ててッ! 何しやがんだこのポンコツ野郎」
「やめなさい! あぁもう、うっとおしい!」
「えぇいくそッ、役に立たない奴らめッ……うをっ!?」
 オートバジンに阻まれる二人を睨みつけ悪態を突く百瀬。タクミはその隙を突いて彼の両肩を掴むと、両足を厚い胸板に押し付け蹴り付けた。オルフェノクの強靭な足腰より繰り出された両足蹴りは、百瀬の体を吹き飛ばし、真新しい病院の壁にめり込ませた。
「みんな、怪我はない!?」
 百瀬は離れ、二人のオルフェノクもバジンに阻まれているなか、三人の無事を気遣い声をかける。しかしそれに伴って返ってきたのは言葉ではなく、オルフェノクである自分に対する怯えに満ちた目と、拒絶を示す体の震えだけだった。
 このまま放っておくわけにはいかない。しかし自分の言うことを彼らが素直に聞いてくれるとも思えない。どうすべきかと思案を巡らせたタクミは、
「由里ちゃん。ごめん」
「タクミ、何……を」
 怯える由里に近づき、握り拳をそっと彼女の腹部に押し当てて、ほんの一瞬だけ力を込める。
 鳩尾内部の神経器官を刺激された由里は意識を失って崩れ落ち、タクミに抱きかかえられた上で背負われた。
 由里が無事であることを確かめたタクミは、さらに両脇に夏海とケイタロウを抱える。
「二人ともしっかり掴まってて。とにかくここから離れなくちゃ」
「離れるって……たっくん、君は一体何者なんだ!?」
「細かい話は後にして。ほら、飛ぶよ」
「飛ぶ? 飛ぶって一体……う、わあああっ!」
 タクミはケイタロウの質問に答えないまま、強靭な足腰で強く地を蹴って跳び上がる。病院の屋上までひと跳びで上がると、さらにそこで地を蹴り付け、市街地の中へと消えて行く。それに呼応してオートバジンも彼を追って飛び去って行ったが、もはや百瀬たちに彼らを追うのは不可能であった。
 百瀬は苦々しい顔で舌打ちを突いて病院の壁から抜け出すと、群がってきた医者たちを一人残らず灰に変え、人間の姿に戻った上で、並木道で膝をつく玄田と朱川の元へと近寄った。
「まったく……、なんて奴だ。オルフェノクでありながら僕たちに歯向かうとは」
「いやいやそれどころじゃねぇだろ百瀬。あいつ、街ん中に逃げちまったんだぜ」
「そうよ百瀬君。彼女たちは私たちのことを知っているわ。まだ”計画”は準備段階。広められるのはいくらなんでもまずいわ」
 二人の不安げな忠告に、百瀬は口元を歪ませにやりと笑って答える。
「なら”計画”を『フェーズ・3』まで早めるだけのこと。ファイズのベルトは尾上タクミの元を離れた。我々を阻むものは最早何もない。そろそろ五時間目が終わる時間だ。決行は放課後の五時きっかり。街中に散らばったオルフェノクたちに召集をかけろ。”この街を乗っ取る。僕たちを虐げた人間共に今こそ復讐するチャンスだと”、そう伝えるんだ」
「決起の日を早めるの? それはそれで構わないけれど……」
「ちょっと行き当たりばったりすぎねぇか? お前らしくもない」
「臨機応変だと言いたまえ。質問はあるか? 無いなら口ではなく体を動かせ。以上だ」
 五時間目終了を告げるチャイムが鳴り響く中、人間の姿に戻った三人は、”計画”を発動させるべく、それぞれの持ち場へと消えて行った。
スポンサーサイト
総もくじ 3kaku_s_L.png Journey through the Decade Re-mix
総もくじ 3kaku_s_L.png これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー
総もくじ  3kaku_s_L.png Journey through the Decade Re-mix
総もくじ  3kaku_s_L.png これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー
もくじ  3kaku_s_L.png 観た映画の感想
もくじ  3kaku_s_L.png 自作のアレな絵
もくじ  3kaku_s_L.png わかめ新聞雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 一時間目】へ
  • 【Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 三時間目】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 一時間目】へ
  • 【Journey through the Decade Re-mix 第六話 「555つの顔、一つの宝」 三時間目】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。