スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 二膳目 →Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 四膳目
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


総もくじ  3kaku_s_L.png Journey through the Decade Re-mix
総もくじ  3kaku_s_L.png これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー
もくじ  3kaku_s_L.png 観た映画の感想
もくじ  3kaku_s_L.png 自作のアレな絵
もくじ  3kaku_s_L.png わかめ新聞雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 二膳目】へ
  • 【Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 四膳目】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(1)

Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 三膳目

 ←Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 二膳目 →Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 四膳目

株式会社BOARD ランク・カテゴリー制度

 社内にはカテゴリー2〜Aまで、トランプのカテゴリーに則した、明確な「ランク」制度が敷かれており、
各種セクションにおいて成果を上げた者を登用・重用し、逆に失敗を重ねたものを厳しく処罰されている。

 カテゴリーごとの待遇の差は給与ばかりではなく、共用の社員食堂ではランクの低い社員は粗食しか出されないが、ランクの高い社員は『同じ値段で』高級なものを食すことが出来たり、残業を課されることがない、昼頃からの出勤が許されるなど、上位社員と下位社員との待遇の差は大きい。

 このようなランク制を敷いた理由について、代表取締役・四条ハジメは、人類を護るための企業であることを社員に自覚・発奮させるためと説明しているが、実際は、資本や収入のほとんどを仮面ライダーの維持・強化費に充てねばならず、全ての社員に同一の待遇を与えられないという金銭的な事情が大きい。

 高い資本を持った企業でありながら従業員数がそれほど多くないのは、そうした経営方針・形態に反発したか、途中で断念したなどで、毎年多くの社員が辞職しているためである。


参考文献
20XX年経済白書」「株式会社BOARD 〜進化し続ける企業の謎に迫る〜
何故BOARDは成功したのか?」などの関連書籍及び、会社の公式ホームページ、就職希望者用配布パンフレットより。

※参考文献において記述されている書籍は架空のものです

◆◆◆

 明くる日の朝。光写真館の面々は士から渡されたフリーペーパーを片手に働き口を模索していた。尤も、履歴書を買うお金すらないため、本当に模索する“だけ”なのだが。
「警備員のアルバイトは時給七ウェイ。喫茶店ので時給六ウェイ……。あぁくそッ、割に合うのか合わないのかさっぱり分からないぞ。そもそも何だよ“ウェイ”って。どこの道だよ、国道何号線だよ! 訳分かんねぇよ」
「落ち着いてくださいユウスケ。そんなことより、あなたはコーヒー淹れたり軽食を作ったりできるんですか?」
「当たり前さ。昔は喫茶店で下宿してたし、大抵のことは店長《おやっさん》から手ほどきを受けてる。そういう夏海ちゃんはどこにするのか決めたの?」
「わたしは……ここにしようかなって」夏海は求人広告のアミューズメントの分野から“映画館”の欄を指差す。「だって上映ミスをチェックするって建前で、ただで映画を見放題なんですよ?」
 夏海の楽天的な考えに、ユウスケは甘いよと鼻を鳴らして笑う。
「映画館のバイトなんて時給は安いし、週末はチケットの応対に、売店でポップコーンやドリンクの販売……、結局は目が回るぐらい忙しくなるんだぜ。それに素人なんだ。映画なんてきっと見せてもらえないよ」
「本当だ。時給がたったの四ウェイ……。それにしても詳しいですね、ユウスケ」
「大学時代に入社試験受けたことあるからさ。簡単そうだったし」
「……わたしが言うのも何ですけど、不純な理由で入社しても長続きしませんよ」

「まぁそう堅いこと言うなって。そもそも俺たち、フリーペーパー持っていても履歴書は持ってないし」
「そうなんですよね……。これからどうしましょう」
 世界が違うと言うだけで、働くことすら出来ない身の上を嘆いて、溜め息をひとつ。
 門矢士が写真館に戻ってきたのはその時だ。項垂れる二人を見て薄笑いを浮かべ、楽しげに声を掛ける。
「おーっす、無職共。景気はどうだ?」
「帰って来るなりなんだよその言い草! 喧嘩売ってンのか!?」
「士君、昨日からどこに行ってたんですか?」
「仕事だ仕事。暇なお前らと違って社会人は忙しいからなあ」
「じゃあ何だよ。笑いに来たんなら帰れよっ」
「馬鹿言え。見たところ、まだバイトを探しているようだな。喜べ無職共、俺が働き口を都合してやる」

「俺がぁ?」
「わたしが?」
 ――士君《こいつ》の下で働くぅ?
 やって来るなり何を言うのかと、素っ頓狂な表情を浮かべる二人。その反応が予想の範疇だったのか、士は顔色を変えずに続ける。
「あぁそうだ。時給は『完全歩合制』。働けば働くほど稼ぎが増える素晴らしいシステムだ。つべこべ言わずについて来い。明るい未来が待ってるぞ」
「マジでっ!? すっげェ! じゃあ俺、そこで働こうかなぁ」
 士の言葉に乗せられて彼の手を取るユウスケ。夏海は彼の言葉の中にある矛盾点に気付き、二人の間に割って入った。
「騙そうったってそうはいきませんよ士君。完全歩合制ってことは、働かなかったりすべき仕事が少なかったら貰える給料が少なくなるってことじゃないですか。お断りです」
「そうなの? ……あぁ、そうだそうだ! 自分のしたい仕事は自分で選ぶ。なんだかよく分からない仕事になんか行くもんか」
 流石にそう上手くは行かないか。士は小さく舌打ちをした上で、二人の手を強引に掴んだ。
「ならば俺も手段は選ばん。無理矢理連れて行ってやる」
「ちょっ、おい! 何しやがる! 一体どこに連れてくつもりだ士ァ」
「暴力反対! 人権尊重!」
 二人は必死に抵抗するが、士に腕力その他で適うはずもなく、夏海とユウスケは士の勤務先、株式会社BOARDの社員食堂へと、本人の同意なしに連れ去ってゆくのであった。

「いやはや。若い子は楽しそうでいいねぇ。後二十年若かったら私も……」
「やぁだぁ。栄次郎ちゃんだって十分若いわよぉ」
「それもそうか。はっはっは」

◆◆◆

 決戦の朝を迎えた株式会社BOARDの社員食堂では、剣立カズマと栗原シオリと広瀬コタロウの三人が、リニューアルした食堂に並ぶ新作メニューを作り終え、机の上に突っ伏して体を休めていた。
 厨房内に散乱する食料や調味料の量から、事態の凄絶さが見て取れる。

「なんとか間に合いましたねぇ、新しいメニュー」
「結局四品しか出来なかったけどね。もっと時間の猶予があればよかったんだけど」
「四品ありゃあ定食が出来る。勝負するには十分だ。そんなことより問題は……」
 テーブルに並んだ新メニューの見本品を見て不安がるカズマ。遅れてシオリとコタロウもそれに続く。
 士発案の炒飯が綺麗な円形に置かれ、隣にはカズマ発案のスペード型ハンバーグ。手前にはシオリお手製のポテトサラダとコタロウ考案の野菜スープが並ぶ。
「これじゃ、まるで……」
「お子様ランチ……、だよねぇ。そういえば、昔の仕事のツテでそういう”旗”を沢山貰ったんだけど、使う?」
「真に受けるなって。売れるのかよ、こんなので……」
 手を抜いたつもりは無く、美味く仕上がったという自負もある。しかし、こんなものであの黒葉ムツキを負かすことが出来るのか、そもそも従業員たちを満足させられるのか? 客観的な面で自信が持てず、三人の料理人はこれでいいのかと頭を抱える。
 そんな中、この改革を推し進めた社員食堂チーフが、二人の人員を引き連れ厨房に戻ってきた。
「よぉう料理人共。あと一時間でランチタイム開始だぞ。今後の調子を占う新装開店日なんだ、だらけてねぇで気合いを入れろ、気合いを!」
「勝手にどこかに行っといて、何だその言い草は! 喧嘩売ってるのか!?」
「……どこも似たようなもんだな。俺はお前らよりも先に一品メニューを作っている。責められる謂れは無い。それよりもほら、援軍を連れてきたぜ。入れ」
 士は知れっとした顔と言葉でカズマの追及を流し、手を叩いて背後の二人を呼びつける。
 彼の声に促されて厨房に足を踏み入れたのは、頭にヘッドドレスを、腰に純白のエプロンを纏い、黒を基調とした給仕服を着てぎこちなくはにかむ夏海と、キバの世界で士本人が身に纏っていたもの同じ、『ホスト風の格好』をしたユウスケの二人だった。
「あぁ、えっと……光、夏海です。宜しくお願いします」
「小野寺ユウスケっす。で、ここは何するところ? 売店?」

「ちょ、ちょっとちょっと! 何なのよあの二人!」
「援軍って、料理人じゃなくてウェイターやウエイトレスかよ!」
「当たり前だろ」どういうことだと詰め寄る二人を、士は面倒臭そうに引き剥がす。
「ここは何だ、昼時に多くの社員が利用する社員食堂だろうが。いくら料理が美味かろうが、それを配膳する人材が居なきゃ客は離れる一方だ。見てくれはどうだか知らんが、仮装させて立たせときゃあサマになるだろ?」

「確かに……頼りなさげだけどカッコいいことは認めるわ、彼」
「士チーフ、誰!? 誰なんですか! このウェイトレスさん! 僕、こんなに綺麗なウェイトレスさん見たの初めてですッ」
 食堂の無駄うんぬんを抜きにした率直な感想を述べるシオリとコタロウ。その言葉に赤面する二人を尻目に、
「それで、準備の程は?」
「はいッ、ハンバーグの種は用意しました!大量です」
「その他のものも後は作るだけ。十一時の開店までには余裕で間に合うわ」
「口は悪いが仕事の方は完璧か。いいだろう、さぁ始めるぞお前ら。気合い入れてけよ気合いを!」
 料理人三人を厨房に戻し、夏海とユウスケを食堂の入口に立たせ、自分は人差し指を差して食堂全体を見回しての最終確認。入口の前に妙な人影があることに気付いたのはその時だ。その姿に見覚えがあった士は、確認し終えた上で“彼”を食堂に招き入れた。
「……勝負は十一時からだぜ。もう少し待ってろよ」
「話は脇から聞いていました。準備ならもう出来ているんでしょう? だったらやってもらいますよ。僕は客なんですから」
 そこに居たのは、牛乳瓶蓋のような丸眼鏡の青年、黒葉ムツキ。彼は見るからに不機嫌そうに眉毛を歪ませ、乱暴に席について士たちに料理を出すよう詰め寄るが、士は意に介さず、不思議そうな顔で彼を見つめる。
「おいおい、そのしかめっ面はなんだ? 神聖な勝負には相応しくない顔だな。顔を洗って出直して来い」
「何を悠長なことを。まさか、知らないんじゃないでしょうね。ここで何が起こっているのか……」
「訳有りらしいな。だがよ、今お前が気にすることはそれじゃない」士はそう言うと、厨房の方を向いて手を叩く。「カズマ、お客様がお呼びだぜ」
 程無くして、厨房から剣立カズマが顔を出す。料理人らしい割烹着に身を包み、怒っているのとは違う凛とした表情を顔に浮かべている。
「……来たのか、ムツキ」
 カズマの顔を見たムツキは、確かにそうだ、と鼻を鳴らし。いつもの調子に戻って頷く。「えぇ。食券一年分はいただきますよカズマさん。尤も、僕を満足させられそうな料理を、あなたに作れるとは思いませんが」
「言ったな。だったらそこに座って大人しく待ってろ。逃げるなよ」
 怒気ではなく奮起の籠った声で言い返し、厨房に戻るカズマ。心配そうに自分を見つめるコタロウたちに「安心しろよ」と一声かけ、ハンバーグの種を一つ手に取る。
 二つのフライパンを同時に火にかけ、片方にはクッキー型のような種を、もう片方には湯通ししたニンジンやブロッコリーを入れて焼き始めた。

「カズマさん、本当に大丈夫なんですか……?」
「弱気になるなよ。自分の舌が信じられないのか? コタロウ」
「そっ、そんなことないよ! カズマ君のことも自分の感覚も信じてる」
「ならそこで見てろ。何も問題はない」
 焼き上げたハンバーグを皿に盛ってソースを滴し、焼き目のついた野菜を食べやすい大きさに切り揃え、お盆を持った夏海に差し出した。
「一丁上がり。お客様の元へと届けてくれ」
「早……あぁ、そうでしたね。はい」
 後は作るだけだとはいえ、カズマの手際の良さに圧倒され戸惑う夏海。彼女は戸惑いながらもムツキの座る席にぎこちなく皿を置いた。
「こ、こちらエースランチ・スペードスートのハンバーグでございます」
 ムツキの前に並べられたのは、トランプの『スペード』の形をしており、中央に小さなグリンピースが乗っかったハンバーグ。
 勝負と言うからにはどんな豪勢なものが出てくるのかと身構えたムツキは、あまりにも安着だと鼻を鳴らして嘲った。

「ずいぶんと貧相な料理だ。こんな料理で僕が満足するとでも? まったくお笑いだ」
「勝負はこいつが美味いか不味いかだ。御託を並べる前に食ってみな」
 いつものカズマなら怒り狂うところだが、穏やかな口調でハンバーグを食べるよう促す。一体何だと訝しむムツキだが、彼の態度に漸く折れた。
「分かった。分かりましたよ。食べればいいんでしょうこれを」
 約束だからとナイフとフォークを持ち、ハンバーグを口に運ぶ。開口一番”まずい”と言って彼を怒らせてやろう。そうしよう。と、思案を巡らせていたのだが。

 ――おいしい。
 息を吐くように自然と口から漏れ出た言葉。己の意思とは真逆の言葉が出たことに、ムツキは戸惑いを隠せない。
 その様子を傍から見ていた士は、「聞き逃さなかったぜ」と近付く。
「人間は本能に忠実な生き物だからな。美味いものを前に嘘なんてつけないってことさ。こうなった以上認めざるを得ないよな? お前の負けだ」
 士の言葉にムツキは何も言い返せ、自信を無くして項垂れる。
 勝利宣言を受けたカズマはガッツポーズをし、厨房の中にいたコタロウとシオリに声をかけた。

「へへっ、どうだい。勝ってきたぜ」
「なんだか信じられない。けど、やるじゃない」
「さっすがカズマ君! 僕信じてたよ」
「コタロウお前、さっき滅茶苦茶不安そうだったじゃねぇか」
「えぇっ、そうだったかなぁ」
 三人は厨房の中で勝利の喜びを噛み締める。カズマが食堂の二人と喜びを分かち合う様を目の当たりにし、ムツキは今まで自分が見てきたものとは違う彼の姿に、戸惑いを覚えていた。

「あの人……あんな顔、するんだ」
「人ってのは考え方と環境で如何様にだって変わる生き物だからな。お前もここで働くか? 少しは丸くなるかもしれないぜ」
 冗談混じりそういう話す士に、ムツキは無言で首を横に振って返す。
「そういえば……」士はそこで、この男が妙に苛立っていたことを思い出し、話を変えてムツキに振った。
「お前、何をそんなにイラついてたんだ。会社がどうとか言ってたな。俺に話してみろよ、聞くだけ聞いてやるぜ」
「それは……」
 表情が柔らかくなりかけていたムツキは、その一言で再び眉を引き釣らせ、丸めてポケットに放りこんだ書類を取り出す。そこに記されていたのは、紙面の半分以上を埋め尽くすほどに大きな『降格処分』の文字。
 その下でせせこましく綴られた降格理由を読み取ろうと目を凝らすが、ムツキはその書類を再度丸めてゴミ箱に放ってしまう。

「何の前触れもなく、出社していきなりこれだ! なんなんだよあのメイド! 僕が何をした!? なんで見ず知らずのメイドにレンゲルバックルを奪われなきゃならないんだ!
 社長の決定だって? そんな馬鹿な話があるもんか。話を聞こうにも社長はどこにも見当たらないし、何だっていうんだよ、これは……」
 ムツキの苛立ちは、厨房のカズマにも届いた。何だ何だとムツキの元に駆け寄るが、彼に弱みを見せるのが嫌なのか、ムツキは僕を見るなと言わんばかりに睨みつける。
「おぉい、探したぞムツキ。食堂にいたのか」
 何とも言えぬ微妙な空気を断ち切ったのは、彼らの先輩・菱形サクヤ。彼に呼ばれて我に帰ったムツキは、急いで居住まいを正す。

「サクヤ先輩。どうかしたんですか? まさか……」
「考えていることは同じらしいな。社長のお付きと名乗る女にバックルを奪われた。降格で没収されたカズマはさておき、俺たちのものまで奪うなんて、社長がそんなことする筈がない」
「つまり、どういうことです?」
「何か裏がある。一緒に来いムツキ。社長に事情を質しに行く」
「行くって、先輩どこに……」
 ムツキの制止も聞かぬまま、彼の手を引いて食堂を出てゆくサクヤ。カズマはどこか煮え切らない表情で、去ってゆく彼らを見つめる。
 きっと、料理人としての自分と、仮面ライダーだった頃の自分とがせめぎ合い、どうしてよいのか分からなくなっているのだろう。
 彼の上司である自分はどうしてやるべきか。士は顎に指を当てて思案を巡らせると、金庫から紙幣を何枚か取り出して、カズマに握らせた。

「おい、カズマ。これで”ウエハース”買ってこい」
「う、ウエハース? なんなんだよいきなり」
「食後のデザートをメニューに追加する。アイスシャーベットだ。ただアイスをぽんと載せただけじゃ味気がないだろ。近くのスーパーであるだけ掻き集めて来い」

「だから、いきなりなんだよ。そんなこと、さっきまで一言も言ってなかったじゃないか」
「そりゃあそうだ。今決めたんだからな。俺は既に命令した、早く行け、駆け足!」
 唐突な上司の命令に、何を考えているんだと頭を悩ますカズマ。
 そして同時に疑問に思う。この食堂にはアイスなんてものはない。シャーベットを作るのならまず用意すべきはアイスだろう。このちぐはぐさは一体何だ。

「あんた、まさか……」
「まさかもマサカリもねぇ。それにな、俺を”あんた”と呼ぶのはやめろ。曲がりなりにもここのチーフだぞ。口の利き方には気をつけろ」
 気に食わないが、士は自分の好きにやらせてくれようとしている。この機を逃さずしていつ這い上がるというのか。カズマは踵を返して出入り口に向かった。

「了解。さっさと買って帰ってくるぜ、チーズ」
「チーズ……? チーフだろうがこの馬鹿たれ」
 士の愚痴も聞かないまま、既に食堂の前に集まりつつあった社員たちを割って、カズマはサクヤとムツキの後を追って駆けだした。士はそれを見届け、厨房に残る四人に声をかける。

「さぁ、そろそろ開店だ。てめぇら、気合入れて行けよッ」
「おい、ちょっと待てよ士。あの人……カズマは放っといていいのかよ」
「経営者に文句を言いに行くってんだろ? そんなもんはあいつらが自分たちで解決すべき問題だ。よそ者の俺たちが無闇に口を出すことじゃねぇよ」
「冷たいなあ……、上司なんだから様子くらい見に行ってあげれば」
「つべこべ言うな。お前の仕事は客の注文を訊くのであって、俺に文句を言うことじゃない」
 ユウスケを厨房に向かうべく踵を返すが、低く老け込んだ声が彼を呼び止める。
 ――そうだな。彼の言う通りだディケイド。
「他人に指図される覚えはないぜ……って、何ッ!」
 薄茶色のコートを身に纏い、室内なのにも関わらずコートと同じ色のフェルト帽を被った不気味な男。定食のエースランチを口に運ぶ彼に、士は驚きながらも声をかける。
「おまえ……、鳴滝か?」
「人違いだ、と言ったら?」
「テキトーなことを言うな、鳴滝じゃなきゃ何なんだよ」
 士の声は心なしか震えている。恐怖でそうなったのではない。何の前触れも無く食堂に潜り込み、勝手に定食を口にしているこの光景が、堪らなく不気味だったのだ。鳴滝の唐突な登場に、士は二の句が継げず閉口してしまう。

「あれ……あなたは確か、鳴滝さん?」
「俺がベルトを手にした時に居た、あの!」
 代わりに、その様子を見ていた夏海とユウスケが声を上げる。鳴滝は奇異の目で自分を見る二人を無視し、ナプキンで口を拭って席を立つと、士の目の前でこう言った。

「確かに君の言う通りだ。異世界の人間が、その世界の者に干渉し過ぎるべきではない。しかし今回は事情が違うのだ。『これ』は君自身が決着を着けねばならぬ、絶対にな」
 鳴滝はコートから携帯電話ほどの大きさの、液晶ディスプレイの電子機器を取り出して電源を入れる。
 ややあってそこに映ったのは、『カマキリの化け物と戦い、傷ついた仮面ライダー』の映像だ。傷付き、衰弱したかのライダーは、地に伏したまま起き上がれず、人の姿に戻る。細身でくせ毛が目立つ、灰色のスーツを纏った中年の男性だ。
 自分はこの化け物のことを知っている。この世界に来ていたのか。カズマたちが向かった先はここなのでは。まずい、非常にまずい。士は血相を変え、食堂の出入口に手をかけた。

「ちょ、ちょっとチーフ! どこに行くんです!」
「シャーベットをするのにアイスがないことに気付いてな。近くのスーパーで買い込んでくる」
「えぇっ、あれ本当にやるつもりだったんですか!?」
「とやかく言うな。おい、ユウスケお前も来い」
「俺もぉ!?」
 士は金庫から数枚のお札を抜き取ってポケットの中にしまい込むと、ユウスケの手を引いて無理矢理食堂を出て行ってしまう。
「そんな、今あなたたちに出て行かれたらここは……」
「すぐに戻る。何とか繋いでおいてくれ」
 待ってと彼らを呼び止めようとするシオリであったが、十一時になると共に、社員たちが続々と食堂の中に溢れ、それどころではなくなってしまった。

「あぁんもう! なんなのよアイツっ! コタロウ、早く厨房に入って! 夏海さん……だっけ? 来て早々で悪いけど、注文の方お願い」
「は、はい!」
「わかりましたっ」
 いそいそと厨房の中に入るコタロウと、帽子を被り直して気合を入れるシオリ。夏海も注文用の伝票を手に持って準備をするが、彼女はそこで、先程までそこに居た鳴滝が、空になった皿と“百円玉”七枚を残して消えていることに気がついた。

「鳴滝……さん?」
 夏海は彼が一体何なのか、どうしてこの場所に現れ、敵であるはずの士に忠告をしたのか疑問に思ったが、程無くしてその疑問は頭の片隅に追いやられ、忘れ去られてしまう。何しろ、たった一人で食堂のウェイトレスをやることになったのだから。

◆◆◆

 株式会社BOARDの地下に造られた研究セクションでは、仮面ライダーの新型装備の開発や、アンデッドそのものを用いた実験が日夜行われている。実験用アンデッドの暴走、ライダーシステムに依る想定外の事故、有事の際に備えた無数の起爆装置。地下にしか建造出来ない理由がそれだ。
 四条ハジメを社長職から引きずり下ろし、BOARDの全てを事実上掌握した鎌田は、直通のエレベーターを用いてこの場に足を踏み入れる。研究員たちも鎌田の命令で退去させられ、不気味な程静まり返っていた。
 一人ほくそ笑み、全面白色の実験場へと歩を進める鎌田。しかし、彼の眉間に銃口を突き付け、行く手を阻む者が居た。
「株を一手に集めて会社を掌握し、邪魔な経営者は手早く追放。金ではなく、会社そのものを狙っていたかのような口振り……。やはり此所に来たな。予想通りの展開だ」
「……貴方は最早ただの一般人の筈。なのに何故ここに居るのです? 四条君」
 銃を握る男――四条ハジメは、憤怒の籠った瞳で鎌田を睨む。「私の本職は経営者ではなく科学者だ。たとえ会社を失おうとも、研究の成果を渡す訳には行かん。
 私はここの開発主任だ。極秘の通路を増設するくらい訳は無い。解ったならとっとと出て行け、命だけは助けてやる」
「会社の経営権を返せ、とは言わないのですか?」引き金を引けば必ず当たる距離にも関わらず、鎌田の口調は穏やかだ。こいつには死の恐怖が無いのか。いや、もしかすると「死」の概念が分からないのではないか。それは、つまり――。
 四条の疑念が確信に変わる。こんなことを仕出かした理由、彼の目的、その正体。ばらばらだった謎が一つに繋がった。
「貴様、まさか……!」
「そのまさかですよ」鎌田にも「それ」を隠す素振りは無い。ここで彼の息の根を止めるつもりなのか。
「冥土の土産にお見せしましょう。私の、真の姿を!」

 そう言った瞬間、鎌田の口から鋭く長い牙が飛び出したかと思うと、目の部分は緑色に輝いて肥大化し、体中から無数の棘や角が飛び出した。膨張する筋肉によって鼠色のスーツは弾け飛び、茶と黒を基調とした筋骨隆々の躰《からだ》が顕《あらわ》となる。「パラドックス・カレハカマキリ」の始祖、カテゴリー”キング”の『パラドキサアンデッド』だ。
「成る程そうか、お前は……」四条は冷静さを取り戻し、落ち着き払って言葉を続ける。「人語を理解し、ヒトの姿に化身する”上級”のアンデッド。ここを直接狙ってくるとは……!」
「アンデッド……?」鎌田は不満気に目を細める。「私はヒトでもアンデッドでもない。それらの上に立ち、統べる者だ。”あんな奴等”と一緒にしないでくれたまえ」
「言っている意味が理解出来ないが……」手にした銃をその場に放る。奴がアンデッドだと分かった以上、持っていても仕方がない。「貴様はここから生きて帰さん。たとえ、どんな手を使ってもな」
 代わりに、羽織っていたスーツの内ポケットから、白とピンクを基調とし、「ハート」を象ったバックルを取り出して、腹部に押し当てる。

 ――変身。
 ――CHANGE《チェンジ》
 バ続け様に、「カマキリ」の絵柄の入ったカードをハート型のスラッシュリーダーにラウズ。彼の体を透明な壁が通り抜け、「戦士」の姿へと変えた。
 トランプの“ハート”にカマキリを掛け合わせた鎧を纏い、ピンク、黒、茶の配色が目を引く仮面ライダー。BOARD製ライダーシステム試作零号機・『カリス』の登場だ。

 四条の「変身」を目の当たりにし、鎌田は珍しいな、と楽しげに笑う。
「伝説のアンデッド・カリス……。成る程、他の奴等が人間如きに敗れていったのも頷ける。しかし私は万物の帝王だ。カリスの力だけで、果たして私を封印出来るかな?」
「そんなこと、やってみなければ判らない!」
 言うが早いか、醒弓《せいきゅう》カリスアローを構えて鎌田に飛び掛かる。不意の一撃で彼の左前腕を斬り落とし、緑色の体液を噴き出させるが、当人は意に介さない。
「せっかちだな。人の話は最後まで聞くものだよ、四条君」
 斬り落とされた部位から神経器官が伸び、その上を筋肉と外骨格が覆う。この程度の傷、彼らにとってはヒトが蚊に刺されたような些細なものなのだ。
 半端に戦っていても勝ち目はない。応援を呼ぼうにも、ギャレンとレンゲルのバックルは鎌田の手中にある。こんな状態で奴を一気に封印するなど、出来るのであろうか?
 内なる不安を払拭せんと、わざと声を荒げて吠える。「黙れ。ヒトで無い貴様の戯言など聞く耳持たん」
「面白いことを言うな。一本取られたよ」
「……」いや、迷っている暇はない。自分一人でなんとかしなくては。カリスは鎌田の隙を突いて彼の懐に潜り込み、バックルにカードをラウズさせる。
 ――CHOP
 ラウズしたのは「シュモクザメ」のカード『チョップ・ヘッド』。腕力を高めて放たれた正拳突きは鎌田の体を突き飛ばし、隙を生じさせる。
 ――TORNADO
 ――DRILL
 ――スピニング・アタック
 ベルトからバックル部だけを外し、カリスアローに取り付ける。弓形態となったアローに二枚のカードをラウズさせる。
『風』を起こす「トルネード」と、回転力を付加させる「ドリル」のカード。吹き荒ぶ風に乗って放たれたドリルキックが、鎌田の体を研究室の端まで吹き飛ばす。
 行き着いた場所は全面白色の実験場だ。幾重もに重なった特殊強化硝子と超高密度の壁の奥に鎌田を押し込んだカリスは、外部操作で彼を実験場に閉じ込める。
「ぐぉ……お!」
「これで終わりだ! 急速冷却装置、起動!」
 カリスはその上で「緊急用」と書かれたスイッチを押し込み、実験場内に強力な冷却剤を吹き付ける。ここはアンデッドの力を研究し、仮面ライダーを開発するための施設。検体の暴走に備えて堅牢な造りを施しており、冷凍して対象の行動を完全に遮断することが出来るのだ。
「私の力で貴様に勝てないのは重々承知だ。絶対零度で身も心も凍り付くが良い!」
 冷却剤が部屋中を覆い尽くし、場内を氷河期に変える。アンデッドとは言え虫の祖先、寒さには耐えられないだろうと考えてのことだったが、鎌田の力はカリスの予想を遥かに越えていた。
「調子に乗るなよ四条ォ、私の偉大さの前では、貴様など虫けらに過ぎんのだ!」
 家屋が重機で潰されるかのような音を立て、出入り口に迫る鎌田。身体中が凍り付く最中、全身を震わせて熱を発生させ、無理矢理体を動かしているのだ。
 鎌田の手が実験場の扉に触れた。左腕を振り被り、鋭利な刃を袈裟に振るう。厚さ3mにも達する超高密度の扉は、たった一度の斬撃により、意図しない形で開け放されてしまう。
「切り札が不発に終わって残念だったね四条君。さてさて、お仕置きと行こうか」

◆◆◆

 姿を消した四条ハジメを追うサクヤとムツキは、本社地下の研究セクションに向かっていた。命令を下したのが社長だとして、没収したバックルを持って行く場所など、地下研究施設の他に考えられない。その上、エレベーターが何者かに依って使用された形跡があった。確証はないが、向かうだけの価値はある。
 施設入口に辿り着いたサクヤは、扉のリーダーに自身のカードを読み込ませ、その上でセンサーの前に顔を近付けて網膜認証と顔認証をパス。残りのロックを外そうと指紋認証センサーに手を伸ばすが、隣に立つムツキの声が、サクヤの手を止めた。
「待ってくださいサクヤ先輩。念のために起動しておいたんですが……、これって」
「こいつは……そんな馬鹿な!」
 ムツキの持っていた小型の通信機器を目にし、サクヤの前に顔に緊張が走る。
 マス目がついた全面緑色のモニターにて、円錐上のマーカーが点滅している。これは「アンデッド」の現在位置を特定する機械。小型ではあるが、索敵能力は正確だ。増してや、アンデッドの居場所が「扉の奥」ともなれば、間違いようがない。

「アンデッドが……、この中に居るってことですよね」
「いいや、そんなことはあり得ない。この会社には対アンデッド用の防壁《オリハルコン・シールド》が張られているんだ。侵入できるものか」
「ですが、現にアンデッド・サーチャーは反応しています。それをどう説明するんです」
「それは……」サクヤはモニターを食い入るように見つめ、思案する。「ここに立ち入れるのは上級ランク研究員と四条社長、そして俺たちライダーだけ。例外は認められていない。となれば……」
「となれば?」
「中に居るのはヒトでもアンデッドでもない、しかしそれらに非常に近い何かだ。そうとしか考えられん」
「判断材料が少ないとは言え、ずいぶんと曖昧な答えですね。何かって何なんです」
「それは今から確かめる。後に続けムツキ」
 分からないのなら、考え込んでいても仕方がない。サクヤはそう結論付け、指紋認証センサーに右手を押し付ける。ブザー音と共にロックが外れ、数メートルの厚さのドアが左右に開く。
 真っ先に彼らの目に飛び込んで来たのは、パラドキサアンデッド相手に完膚無きまでに叩きのめされた、社長・四条ハジメの姿であった。

「これがカリス……『伝説の』仮面ライダーの力か、弱すぎる」
 動けないカリスの奥襟を掴んでその場に放る。飛散した赤黒い血が、市松模様のタイルを赤く染めた。

「あれって、BOARD創設以前よりアンデッドを封印してきたっていう……」
「伝説の仮面ライダー・カリス。ギャレンとレンゲルの開発以前に活躍していた、ライダーシステムの試作機だ。その装着者は……」

「ほう、君たちは……」彼らの驚きとどよめきを耳にして、鎌田は二人がこの場に来たことに気付く。
「解任された身でここまで来るとは大したものだ。死に場所を求めて来たのなら後にしてくれたまえ。私は今、この死に損ないの前社長を始末するので忙しい」
 わざと二人の神経を逆撫でし、怒る二人を見て意地悪く笑う鎌田。鎌田の注意がそちらに向いたその隙を、カリスは見逃さなかった。

 ――BIO《バイオ》
 植物の蔓《つる》の絵柄のカードをリーダーにラウズ。
 弓の先から伸びた長く太い触手は、鎌田の持っていた二つのバックルを掠め取り、サクヤたちの足元へと投げ込んだ。
「この死に損ないが……味な真似を!」
「サクヤ……ムツキ、このバックルを持って逃げろッ、早く……、早くッ」

「その声……、まさか社長!?」
「やはりあなたが……。引退したあなたが、何でこんなところに!」
 四条の目論みは半分成功し、半分が失敗した。
 サクヤとムツキにバックルを渡せたのはこの上ない幸運だ。カテゴリーAが無事ならば、鎌田が目当てとする「もの」は無用の長物となるし、外部からの応援を呼べる。
 しかし、こんな凄まじい怪物を前にして、仮面ライダーである二人の中に、「逃げる」などという選択肢は、元より用意されていなかった。

 ギャレンは銃を構え、レンゲルは杖の刃を伸ばし、鎌田に襲いかかる。どちらも容易くいなされ、翻筋斗《もんどり》を打って床に叩きつけられてしまう。
「二人掛かりか。それも良い。しっかり足掻いてくれよ、ライダー諸君!」
 起き上がれないレンゲルに、鎌田の刃が迫る。ラウザーの柄で防いだは良いが、力比べでは適わず、徐々に押し込まれて行く。
「舐めるなよアンデッド、これならどうだ!」
 ――GEL《ゲル》
 杖のリーダーにラウズしたのは、使用者の体を液状化させる「ゲル」のカード。御し切れないと踏んだレンゲルは、敢えて構えを解き、「溶ける」ことで敵の攻撃を受け流したのだ。
「サクヤ先輩、今だ!」液状化したまま鎌田の腕を掴み、ギャレンに攻撃を促す。
 ――ROCK《ロック》
 対象を石化させる「ロック」のカードをラウズし、鎌田の体に撃ち込む。鎌田の体は瞬く間に灰色に染まり、石となって動かなくなった。

「決めるぞ、合わせろムツキ!」
「はいッ!」
 ――DROP《ドロップ》・FIRE《ファイア》・GEMINI《ジェミニ》
 ――――バーニングディバイド
 ――BLIZZARD《ブリザード》・BITE《バイト》
 ――――ブリザードクラッシュ
 二人のライダーは複数のカードを同時にラウズし、必殺の跳び蹴りを見舞う。
 炎の力を足先に集中し、二人に分身して放つ回転つま先蹴りのギャレン。
 足先から猛烈な吹雪を放ちつつ、両足挟み込み蹴りを放つレンゲル。
 ただのアンデッドならばひとたまりもない一撃だったであろう。
 鎌田が、『ただの』アンデッドだったなら。

「決める……? この程度じゃ満足出来ぬわ!」
 二人の蹴りが当たる瞬間、鎌田は石化した表皮を「脱皮」して剥がし、両腕を横にさっと振り上げる。瞬間、レンゲルには渦を巻く衝撃波が、ギャレンには手から伸びた鋭利な刃が襲いかかり、当てることが出来ないまま脚から血を噴き出して地に伏してしまう。

「弱いな……。自分たちの力量も知らず、その場の勢いで私に挑んできたのかね? 興醒めにも程がある」鎌田の攻撃はそれだけでは終わらない。肩から伸びた棘のような突起物を千切ると、それを二人のライダーの太腿《ふともも》に突き刺したのだ。
 血肉を貫通し、床に突き刺さる程深く刺さった棘は、そこから滲み出る血と激痛によってサクヤとムツキを文字通り“釘付け”にした。

「君たちなど、殺す価値もない。そこで大人しく見物していたまえ。私が“王”になる瞬間をな」
 二人のベルトから、変身に使うカテゴリーAのカードを抜き取った鎌田は、施設奥の厳重な扉を砕き、保管されていたスペードスートのカテゴリーAのカードを奪い取る。
 彼の手には四枚全てのカテゴリーAが握られた。

「……ッ!」恍惚の表情でカードを眺める鎌田を見、悔しさに顔を滲ませる四条。彼の視線に気づいた鎌田は、四枚のAを見せつけつつ、四条に話を振る。

「知りたいのかね? 私がこれから何をするのか、知りたくはないたのかね。あぁ、仰らなくて結構。直ぐに教えて差し上げますよ」
 言って、絵柄の部分が灰色に薄汚れたカードを天に掲げる。サクヤたちの角度からでは、それはただのカードにしか見えず、何の反応もなかったが、四条だけは目を剥いてそれを見つめ、大袈裟に震え出した。
「やめろ……、やめろ! そいつには、そいつにだけは手を出すな!」
「このカードが何であるか。人間で知っているのは君一人。よくぞここまで守り抜いて来たものだ。だが、その重責も今日で終わり。今ここで私が解き放って差し上げよう。
 アンデッドを滅ぼすアンデッド。最強最悪の狂戦士《バーサーカ》。……『ジョーカー』をね」
 鎌田は四枚のカードを宙に放り、ジョーカーのカードを右手に掲げた。瞬間、四枚のカテゴリーAから青赤紫桃色の光線がカードに照射され、灰色だった絵柄に色味と力が満ちて行く。
 四枚のカードが色味を失い、周囲に散らばる。ジョーカーのカードは緑色の稲妻を宿し、力を蓄えて蘇っていた。

「なんと……いうことだ、ジョーカーが……。決して開けてはならないパンドラの箱が……」
「ふぅ、む……」ジョーカーの復活に恐れ慄《おのの》く四条とは対照的に、どこか煮え切らない表情を浮かべる鎌田。彼はカードを見つめたまま思案を巡らせると、四条の体を持ち上げ、カリスラウザーのバックルを彼の腹部に取りつけた。
「カテゴリーキングならまだしも、Aでは力不足。肉体を持っての顕現は不可能と言う訳か。まぁ、それならそれで、やりようはあるがね」
「貴様……、一体何をするつもりだ」
「何、案ずることは無い。私の要求は至ってシンプルだ。四条ハジメ、君には……」
 ――ジョーカーの”躰”になってもらう。
 鎌田はジョーカーのカードを無理矢理カリスラウザーにラウズ。機械特有の起伏のない「ジョーカー」という音声が部屋中に鳴り響き、四条の体は毒々しい緑色の光に包まれた。
『カミキリムシ』を模したかのような暗い緑の体表、口からは鋭い無数の牙を生やし、右腕から伸びる銀色の長い刃。人間・四条ハジメは、猛々しい雄叫びを上げる異形の超生命体・ジョーカーへと姿を変えた。

「しゃ……社長!?」
「なんで社長がアンデッド……いや、ジョーカーに!」
 四条ハジメがジョーカーの媒体に選ばれたのには理由がある。
 サクヤとムツキが使うライダーシステムは、変身に使用するカテゴリーAのアンデッドと「融合」することで起動する。装着者が並外れた身体機能と打たれ強さを持つ理由がそれだ。
 しかし試作機の『カリス』にそのような機能は無い。ラウズしたアンデッドの”姿を借りて”変身を成立させているに過ぎないのだ。
 ライダーとしてのあの姿も、厳密にはカテゴリーAの”マンティスアンデッド”に化身していただけ。ジョーカーのカードは、封印されてなお、内外に強い影響力を持つ禁断の一枚。ライダーシステムという『フィルター』を持ってしても、凶暴性と溢るる力を抑えつけることは出来ないのである。

「君を連れて来てよかった。心の底から感謝するよ四条君。さぁて、最後の仕上げといこうか」
 雄叫びを上げ、今まさにサクヤとムツキに襲いかからんとするジョーカー。四条ハジメとしての人格は既に無く、その姿はまるで血に飢えた獣のよう。
 ジョーカーの鋭い刃が二人に迫り、横薙ぎに振らんと体を反らす。避けようにも間に合わない。

 ――待て待て待て待て、待てェい!
 刃が振られるより先に、ジョーカーの体が宙を舞った。背後から駆けてきた剣立カズマの突進を喰った為だ。
「何なんだよこの化け物……、分かんねぇ、なんだかよく分からねェけど!」
 ――変身!
 ――TURN UP
 カズマは落ちていたブレイバックルを腹部に押し当て、スペードのカテゴリーAのカードを拾ってブレイドに変身。オリハルコンゲートを発生させて、ジョーカーを実験場の中まで吹き飛ばした。
「これ以上ムツキと先輩に手は出させねぇ! こん中でケリをつけてやる!」
 腰のブレイラウザーを構え、ジョーカーを追って実験場に足を踏み入れるブレイド。今さら何をと舌打ちし、彼の後を追おうとする鎌田であったが、

 ――FINAL ATTACK RIDE 『De-De-De-DECADE』
 ――おりゃああああああッ!
 仮面ライダーディケイドとクウガのキックを同時に喰らって地に伏した。床に亀裂が走るほどの衝撃を受けたが、やはり致命傷にはなり得ない。
「おいおい、冗談だろ……」あまりの頑丈さにクウガが驚きの声を上げる。「あれを喰らって平然としているなんて……」
「前にも説明しただろう。こいつらは殺した程度じゃ“死なん”。驚いている暇があったら戦え。幾ら不死身でも、極限まで弱らせりゃあ動けなくなるさ」
 どこまでも冷静なディケイドの声を聴き、鎌田は漸く彼らの姿を眼下に見込む。
「驚いたな。よもやまた君と巡り合う日が来ようとは……。因縁めいたものを感じるとは思わないかね、『通りすがりの仮面ライダー』」
「野郎との因縁なんざ、さっさと断ち切りたいもんだがな。……それがあんたの本当の姿か」
「その通り。余計な茶々は入れないでくれたまえ。見て分かるだろう? 私は忙しいんだ」
 そう言って踵を返し、ブレイドとジョーカーの方へと向かうが、ディケイドはライドブッカーの刃を彼の首筋に突き立てる。下手に動けないでいる鎌田の前に、先程まで怯えていたクウガが立ち塞がった。
「悪いな。お前みたいなお高く止まった奴の邪魔が大好きなんでね」
「なんだか良く分からないけど、お前は倒すべき相手だってことは分かった」

「どうあっても退かない……、と。成程、それもいいでしょう。肩慣らしにもならない三下ばかりの相手で退屈していたのでね、期待していますよ。通りすがりの仮面ライダー諸君」
 鎌田は鈍色《ニビイロ》に輝く左手の刃を右手でさっと払い、二人に襲いかかる。ディケイドはライドブッカーでそれを受けて鍔迫《つばぜ》り合い、クウガは刃を腕や足でいなしつつ、自身の拳を打ち込んで行く。
 反撃の暇を与えず、圧してはいるものの、鎌田は息一つ乱さずに攻撃を受け切っては返しが続き、双方決め手を見出せずにいた。

「おいおい、二人がかりで押してるんだぞ、どうなってんだよ」
「狼狽えるなユウスケ。気合いで負けてちゃどうしようもねェだろう」
「おっと。口喧嘩をしていて良いのかね? 命の取り合いをしていると言うのに」
 鎌田は彼らの隙を突いて、ライドブッカーを振り払ってディケイドを突き飛ばすと、腰を捻ってクウガの拳をかわしつつ、代わりに彼の胸部を殴りつける。
 ディケイドは上に載った研究器具や薬品を散らして机の上に落下し、クウガは空中で弧を描いてエレベーターの中へと飛ばされた。

「かーっ、やってくれるぜこの野郎」
「どうしろってんだよ、こんなやつ……」
 仁王立ちで自分たちを見据える鎌田に舌打ちをひとつ。対する鎌田はディケイドの力に落胆したらしく、つまらなそうに首を左右に振る。

「強すぎると言うのも考え物だな。練習相手が弱過ぎて話にならん。なぁ、もっと本気を出してはくれないかね。『世界の理《ことわり》』を超えた仲じゃないか。まさか、この程度って訳じゃあるまい」
「世界の”理”……?」
「それとお前が強いのと、何の関係がある!」
「おぉ失礼。君たち人間にも解る言葉で説明せんといかん。そうだな……」
 鎌田は親指と人差し指の間に顎を載せ、暫し思案を巡らせた上で答える。

「生き物には、気の持ちようや努力だのでは決して超えられない”理“がある。“壁”と言っても差支え無いかな。生命の力の限界、持ち得る能力の限界、成長の限界……。誰もが皆、誰が定めたかも分からぬ理に縛られて生きている。
 私も解放されて暫くは……、そう、自身の目覚めた理由がこの星の覇権を握る”バトルファイト”などではなく、人間の身勝手だと知って絶望していたな。繁栄の為の戦いに何の意味も無いと知った時の虚しさは、筆舌に尽くし難いものだったよ。
 しかし、私は知ったのだ。この世界が”全てではない”ということに。世界とは、私たちには数え切れないほど、無数に存在していることに。バトルファイト? 繁栄のための聖戦? そんなものがちっぽけに感じたね。曇天の空に光が差すように、とても晴れやかな気分だった。
 私は変わったのだ。世界の壁を超え、理を破壊し、自分すらも乗り越えた! この世界のちんけな理に縛られる者に、私を倒すことなど出来はしない。絶対にな!」
 言い終え、己の力を誇示するかのように高笑いをする鎌田。周囲の男たちは何がなんだか分からないと言うような表情でそれを見つめる。

 彼の言葉に恐怖を感じたのはディケイドだけだ。
 彼とてその全てが理解出来たわけではない。しかし平行世界崩壊を救うべく旅を続け、別世界の仲間たちと絆を深め、更に力を増している彼には、鎌田の言葉の持つ意味が、直接心に伝わってきていたのだ。
「だいたい分かった。世界を巡って強くなるのは、俺だけじゃないってことか……」
「君だけが特別じゃないのだよ仮面ライダー君。だからこそ、私は君たちを始末する。世界を巡る力を持つ者は、一人居れば十分だからね」
 言い終わるが早いか、ディケイドの懐に潜り込み、右腕を振る鎌田。普段なら近付かれる前に弾いていたのだが、驚き呆けていた今はその暇すら無かった。実験場の特殊強化扉をも裂いた刃がディケイドの首筋に迫る。あれを喰らってはまずい。
「の野郎ッ、士に手を出すんじゃねぇ!」
 ――超変身!
 周囲を見回したクウガの目に、先程四条が投げ捨てた拳銃が留まる。それを拾い上げたクウガは緑の力《ペガサスフォーム》を発現させ、手にした拳銃をボウガンとし、鎌田に向かい空気弾を撃ち込んだ。
 さしたる手傷は負わせられなかったが、鎌田の狙いは大きく外れ、右肩の鋭利な装飾を千切り飛ばした。
「まだまだァ! もいっちょ超変身!」
 それを見たクウガは、ボウガンを捨ててその棘を拾い、続け様に”紫のクウガ《タイタンフォーム》”へ姿を変え、タイタンソードで鎌田の体を袈裟に一太刀、逆袈裟に一太刀叩き込む。緑色の体液が周囲に飛散し、鎌田の膝が大きく揺れた。

「う……む。ユウスケ、か?」
「油断するなって言ったのお前だろ? ぼけーっとしてるなよ」
 クウガは虚を突かれて右膝をつく鎌田に一瞥をくれると、ディケイドの元へ駆け寄って、彼の頬を叩いて気付けをかける。
 我に帰ったディケイドは頬を叩いて調子を取ると、床に刺さったライドブッカーを引き抜いた。
「理を超えただかなんだか知らねぇが、倒しちまえば一緒だろ。俺は世界の破壊者だ、てめぇなんかに負けてたまるかよ」
 自分たちの理解の及ばないものに見切りをつけ刃を向ける二人のライダーに、鎌田はうっとおしそうにやれやれと首を振って答える。

「何度でも立ち上がる。その根性は認めましょう。だがいい加減興醒めだ。終わりにさせてもらいますよ」
 鎌田は両側から襲い来る刃を、肘側に伸びた刃を腕の方に向けて受け止め、力に任せて振り払って二人をよろけさせると、
「まずは君だ。紫色のクワガタムシ」
 クウガがタイタンソードを握り直すよりも早く、紫のクウガの強固な装甲ごと彼の胸部をその刃で切り裂いた。
 一瞬の静寂の後、鎧に一筋の切り傷が走り、鉄臭い血が飛散する。色味を失って白くなったクウガは、程なくユウスケの姿に戻り、血を大量に噴出しながらその場に突っ伏した。

「ユウスケ!? お前一体何が」
「おっと、次は君ですよ。通りすがりの仮面ライダー」
「何を……舐めんなッ!」
 ――ATTACK RIDE 「SLASH」
 声もなく敗れ去ったユウスケに気を取られ、鎌田に先手を許してしまったディケイド。しかし、ライドブッカーから素早く「スラッシュ」のカードを取り出して、バックルに装填し、鎌田の刃を防ぐことには成功。
 次はどうすべきかと思案するが、鎌田は止めを仕損じたにも関わらず、「やるじゃないか」と楽しげに笑う。

「必死ですねえ。折角だ、世界の”理”を超えた者の力。その一端を見せてあげよう」
「な……にッ!?」
 鎌田は鍔迫り合う刃に力を込める。するとどうしたことか、ライドブッカーに宿るピンク色の光が、そっくりそのまま、鎌田の腕の刃に”移し替えられて”しまつた。
 移し替えられたカードの威力はライドブッカーの刀身を直撃し、それを易々と『叩き折る』ほどに強大。その瞬間に首を捻ったことで致命傷は免れたものの、これではもう、戦いようがない。
「刃と自信は砕けた。次は、君の命を貰う」
 鎌田は左掌に風を集め、集束された空気弾をディケイドに放つ。空気弾は鎌田の不可思議な力と相まって見えない刃と化し、ディケイドの体を一瞬で斬り裂く。所謂「かまいたち」というものだ。
 風は周囲を刻みに刻んで掻き消え、変身解除を余儀なくされたディケイドは、身体中から血を流し、力なく倒れ込んでしまう。
 彼の周りで楕円を描くように溢れる流血が、技の威力とその凄惨さを物語っている。

「忠告はしましたよ。耳を貸さなかったあなたたちが悪い。無駄な時間を取らせてくださって、本当にありがとうございました」
 士とユウスケを見下ろし、吐き捨てるように呟いた鎌田は、改めて実験場へと歩を進めた。

◆◆◆

 実験場では、ブレイドとジョーカーが攻め手無きままに争い続け、事態はただただ泥沼の様相を呈していた。
 いや、本当はどうすれば良いのか分かっている。ジョーカーのカードをラウズされた四条に自我は皆無。生かしておいて、大勢の人々を危険に曝すわけには行かない。元より封印する以外に道など無いのだ。
 ジョーカーは復活したばかりで、思うように力を操れてはいない。ブレイドにだって勝算はある。ならば何故そうしないのか。自分の使命を分かっていつつも、奴によって生じる被害を理解していながらも、自ら己の雇い主の命を奪うことなど、剣立カズマには出来なかったからだ。
「やめろよ……、やめてくれよ社長! あんたはアンデッドの力に操られているんだ、あんな奴の支配くらい跳ね除けてくれよ!」
 相手の剣戟を捌きつつ、四条に向かい訴えかける。ジョーカーはブレイドの腹を蹴り飛ばして距離を取り、右腕の刃で彼の体を斬り付けた。アーマーの各所から火花が散り、視界に霞がかかるが、寝ているわけには行かない、振り下ろされるジョーカーの追撃を素手で受け止め、彼を自分の方へと引き寄せた。

「あんた……俺をスカウトした日に言ってたじゃないか、『仮面ライダーは人類の未来と平和を護る誇りある仕事だ。ライダーとして生きるからには、自分の為にではなく、誇りに恥じぬ戦いをしろ』って!
 認めるよ、働き始めてこの方、自分勝手に生きるばかりで、誇りなんかどうだってよかった。後ろ指差されたってしようのない戦いしかしてこなかった。けどよ、そんな俺でも、誇りに思えるものが、心の底から護りたいと思えるものが出来たんだ。あんたが俺をライダーから遠ざけてくれたおかげだ。あんたにはたくさんの借りがあるんだよ!
 俺はまだ何も返しちゃいない、礼だって言っちゃいないんだ! なのに……、なのに! こんな形ではい、サヨナラなんて……。認められるわけがねぇ! 戻って来いよ社長、あんたがトップに居ないBOARDになんて居たくねぇんだ!」
 必死の説得が続くが、ジョーカーの攻撃は止まらない。掴まれた刃を力づくで引き剥がし、頭突きでブレイドを怯ませた隙に、残る左腕を横薙ぎに振る。
 不意を喰ったブレイドは床を二三度転がり、とうとう胸部に穴が開いた。生身の部分にジョーカーの攻撃を喰らえば無事では済まない。言葉で暴れる猛獣を止めることなど、最初から不可能だったのか。
「社長、社長よォ……、完ッ全に人の心を無くしちまったのかよぉぉッ!」
 最早どうすることも出来ないのか。膝を床につき、仮面の下で涙を流し苦悩するブレイドの前に、低い唸り声を上げるジョーカーが迫る。
「ちきしょう……ちきしょう、ちきしょう、ちきしょォォォーッ!」
 ブレイドの慟哭が実験場内に響く。同時に彼はブレイラウザーを掴み、ジョーカーを逆手で一文字に斬り付けた。黄緑色のペンキのような体液がアーマー各所に飛散し、ブレイドの視界を緑色に染めるが、彼は止まらない。
 ラウザーを正しく握り直し、片手で袈裟に、両手で逆袈裟にそれぞれ一撃ずつ与え、苦し紛れに振るわれたジョーカーの右手首を斬り捨て、再生するよりも早く残る左腕を千切り飛ばす。
 左腕に付いた刃でジョーカー両腿の腱《けん》を切断し、彼の眉間をラウザーの刃で刺し貫く。腹部のジョーカーラウザーが開いた。ブレイドの予想外の猛攻に、復活したばかりのジョーカーは成す術が無かったのだ。

 赤い複眼に付着したジョーカーの体液が、熱を帯びて滴り落ちる。ジョーカーを封印していた無地のカード《プロパー・ブランク》がブレイドの目に留まる。こいつを使えば戦いは終わる、だがそれでいいのか? ここへ来て封印を躊躇うブレイドを、何者かが背後から突き飛ばした。
「ご苦労だったね。君はもういい。下がっていたまえ」
「お前は……!」
 現れたのは、士たちを倒してやって来た鎌田だ。彼はまとわりつくブレイドを容易く引き剥がし、ジョーカーの首根を掴んで持ち上げた。
「いよいよ『計画』の最終段階だ。待ちわびたよ……この時を!」
 鎌田はジョーカーの背中に右手を突き刺す。瞬間、彼は血を噴き出すこともなく鈍い緑色の光を発して鎌田の体の中に『吸い込まれていった』。
 ブレイドが眩しさに目を背け、再び目を見開いた時には、頭の先から肩ほどまで伸びる長い二本の触角を生やし、顔を薄い緑のゴーグルのようなもので覆い、身の丈ほどもある大鎌を背負ったアンデッドが立っていた。

 彼の目の前のアンデッドは、驚きに声の出ないブレイドを無視し、自分の姿を誇らしげに眺め、高笑いを始めた。

「ついに……、ついにこの時が来た! 私は最強の存在となったのだッ!
 これより、世界の恐怖と安全のバランスは私が決める! アンデッドをも超越した万物の王、『ジョーカーパラドキサ』がなッ!」
スポンサーサイト
総もくじ 3kaku_s_L.png Journey through the Decade Re-mix
総もくじ 3kaku_s_L.png これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー
総もくじ  3kaku_s_L.png Journey through the Decade Re-mix
総もくじ  3kaku_s_L.png これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー
もくじ  3kaku_s_L.png 観た映画の感想
もくじ  3kaku_s_L.png 自作のアレな絵
もくじ  3kaku_s_L.png わかめ新聞雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 二膳目】へ
  • 【Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 四膳目】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 二膳目】へ
  • 【Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 四膳目】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。