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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(1)

Journey through the Decade Re-mix 第五話 「ブレイド食堂いらっしゃいませ」 一膳目

 ←第五回爆音映画祭・自分が参加した部分だけの簡易レポ →これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十四年七月号
 仮面ライダー剣《ブレイド》。
 平成仮面ライダー第五作にして、カードを使うライダー作品の二作目。

会社から給料を貰って働く”仮面ライダー”」、「不死の怪人をカードに封印する」、「封印したカードの効力をポーカーの役のように組み合わせ、多彩な技で相手と戦う
 ……など、意欲的な設定が組まれていましたが、蓋を開けてみれば「オンドゥルルラギッタンディスカー」等に代表される、所謂「オンドゥル語」に脚光が当たり、序盤の展開構成も分かりにくいが災いし、気がつけば一部の層にばかり受けてしまうアレな作品になっていました。

 とはいえ、後半は前半で提示された設定を余すことなく使い切り、”世界崩壊を防いだこと”と、”主人公の哀しき別離”を同時に描きだした最終回は、今なおファンだけでなく、多くの特撮愛好家に愛されていることも事実。
 まるでトランプの裏と表のように異なる表情を持った作品だったと思います。

 そんな剣の世界を、本編で途中から忘れ去られていた「職業ライダー」の要素をクローズアップしつつ、『社員食堂』を絡めて描いた一作。
 キャラクタの描き方その他に不満の残る一作でしたので、そのあたりを重点的に変えて行けたらな、と思います。

「なろう」掲載時、他の作品と平行して執筆していたため、文章量は多くても中身がとっ散らかっていました。故に再掲載時の変化は本世界が一番多いかも知れません。もしかしたら。




 ある日の昼下がり。光写真館の面々は晩の買い出しに精を出す主婦たちに混じり、近所の大型スーパーに足を運んでいた。
「……ふむ。今日の買い出しはこれぐらい、かな」
 手押しカートの籠の中には、既に食材雑貨が山のように積まれ、引いて歩くのも一苦労。汗を拭って一息着く栄次郎の背後より、門矢士が何かを手に駆け寄って来た。
「おい、じいさん。パスタも追加だ。今日はミートスパゲッティで決まりだ」
「いやいや、今日の夕飯の献立はトマトシチューとポテトサラダ。スパゲッティは使わないから戻しておいで」
「そうですよ士君」身勝手な士を、横から入ってきた夏海がたしなめる。「家のご飯はおじいちゃんが作ってるんですから、勝手な真似は慎んで下さい」
「ロクに料理も作らない癖に偉そうな。そういうことはな夏ミカン、満足に飯を作れるようになってから言えよ」
「そっ……それとこれとは話は別です、放っといてください」
「話は別と言うならね」二人の会話に栄次郎が割って入った。「士君を注意しつつ、カゴからキュウリを抜くのはやめてくれないかな。使うんだから」
「人には買うなと言っておいて、自分は嫌いな食べ物を抜き取る……、子どもじゃあるまいし、恥ずかしくないのか? あァ」
「ぐぅう……」
「なぁなァ、栄次郎さん」士と夏海が言い争う中、ユウスケがこの隙にと大型のペットボトルをカートの中に放り込む。
「このジュース買ってくれよぉ。いいだろいいだろ、うめぇんだって、損はさせねぇって」
「待てよ」戸惑う栄次郎の間に士が割って入る。「お前の狙いは限定のボトルキャップだろう。コレクションなら自分の金でやれ、人を巻き込むな」
「何だよ何だよ冷てェな! 限定なんだぞ、プレミアなんだぞ! 今を逃すと一生手に入らないんだぞッ!」

「何なんですかユウスケ。キャップ如きでそんな……」白い目でユウスケを見、夏海が答える。
 ごめんなさいと、栄次郎も続く。「私、コレクションは箸袋集め専門だから」
「畜生! 俺はやっぱりマイノリティなのか? そうなのかッ!?」

「ねぇえ、栄次郎ちゃん」最後はキバーラだ。小さい翼を精一杯羽ばたかせ、口に咥えた箱をカートの中に放り込む。
「このお肌つやつや美容液買いましょうよぉ。茹で卵みたいなつるつるお肌になるんですってぇ。いいでしょぉー。……って栄次郎ちゃん、あたしの話聞いてるの? ねぇ? ねぇってばァ」

 いくつもの世界を巡り、家賃や水道光熱費などに悩まされることのない光写真館にとって、気がかりなのは食費だけ。大所帯と言うわけではないにしろ、食べ盛り働き盛りの若者が三人も同居しているとなると、一度に買う量も半端なものではない。しかも、今回は彼らが″荷物を持つとついてきたから尚更だ。
 栄次郎は如何にして食費を浮かせるかに頭を抱え、静かに溜め息をついていた。
「キュウリの袋が一点、パスタの束が二点、ゴージャスロイヤルジュースが一点……」
「よし、今日の晩飯はミートスパゲッティだ。じいさんの許しも出たしな」
「いいえ!今日の夕飯はトマトスープとオムライスです!パスタにはさせません」
「まぁまぁ。いいじゃないか二人共ぉ。レア物のキャップも無事確保できたことだし」
「ユウスケは黙ってろ」
「口を挟まないでください」
「……はい」
「ねぇ、あたしの美容液は!? 美容液はどこにいったのぉ!」

 しかし、そこは孫娘と若い同居人たちに甘い好好爺《こうこうや》。断り切れずに皆の欲しがるものを籠に詰め込んでしまう。
 自分は同居人たちに甘すぎるのか。もっと厳しく接するべきだろうか。カートを押してレジに向かう途中、栄次郎は一人思案を巡らせていた。

「……お客様、以上で宜しかったでしょうか」
「あぁ、はいはい。袋は結構ですよ」
 量が量だ、六千円もあれば足りるかなと財布の中を探る。だが彼は、いや光写真館一行は、自分たちが『幾多の世界を股にかけて旅をしている』ことを嫌でも思い知ることとなる。何故ならば。

「15オンドゥル10ウェイになります」
「……は?」
「オンドゥルに、ウェイ?」
「なんのことですか? 一体……」
 自分たちの持っていたお金で、満足に買い物すらできなくなったのだから。

◆◆◆

「な、なんなんですか″オンドゥル″に″ウェイ″って」
「落ち着け夏ミカン。店員の表情から察するに……多分この世界の″通貨″だ」
「通貨って、ここは日本だぞ。お金なら″円″で事足りるじゃないか」
「自分の世界の常識を持ち込むなユウスケ。俺たちは様々な世界を″旅″している。通貨単位が違う「日本」があっても不思議じゃねぇ」

「あのォ」後ろを向き、ひそひそ話を続ける士たちを不審に思い、店員が怪訝そうな声で尋ねて来る。「お買い求めにならないのでしたら、後ろのお客に順番を譲っていただけないでしょうか?」
「あぁあ、気が利かなくてすみません」
 四人と一匹はそそくさとレジを離れ、各々がカゴに入れた商品を棚に戻した後、店を出てどうするべきかと思案する。

「まずい……実にまずいぞ」
「どうしましょう士君、このままじゃわたしたち、この世界で一切買い物ができませんよ」
「あっ、俺にいい考えがある! これだってお金なんだし、どこかで両替してもらえば」
 ユウスケの案を、士がダメだと言って遮る。「日本円を見た時の店員の顔を見てないのか? ありゃあ間違いなく、″見たことがない″って目だぜ。きっと円そのものが流通していないんだろう。為替《かわせ》は不可能だ。となると……」
「と、なると?」
「アルバイトしか……道はなさそうだな」
 自分たちの持つ通貨はここでは使えない。となると、汗水たらして働く他道は無し。当然の帰結だ。
「やっぱり、それっきゃないか」
「したくはありませんが、それしかありませんよね。ところで……」
「どうした?」
「ずっと気になっているんですけど、その″スーパーのお惣菜屋さん″みたいな格好は何です?」

 夏海に指摘され、自分の姿を見込む。雑菌を弾いて輝く白い割烹着《かっぽうぎ》に、汚れを防ぐピンクのエプロンと帽子。少々大仰だが料理人に見える。

「役割……ですか? この世界の」
 そこにユウスケが口を挟む。「だとしたら、どこのレストランだ?」
「レストランかどうかは知らないが……、身分を証明しそうなものならあるぜ」
 士は割烹着の右胸に刺繍《ししゅう》されたマークを指差す。六面体の上にアルファベット五文字で「BOARD」。これは一体何を表しているのだろう。
「B……O……。″ボード″、でしょうか」
「レストランの名前にしては……変わってるな」
「レストラン、なのか? 俺にはもっと何か、別の」
 士が何かを言いかけた瞬間、街にけたたましいサイレンが鳴り響き、それに呼応するかのように商店街の建物が一斉にシャッターを閉めて行く。

「な、なんだ! なんだ!? 抜き打ち防災訓練なんて聞いてねぇぞ! やべっ、俺防災頭巾持ってくんの忘れてたッ!」
「落ち着きなさいユウスケ君。頭を覆うようにして姿勢を低く。こういうときは落下物への備えの方が先だよっ」
「やぁあん、キバーラこーわーいー。ユウスケェ、栄次郎ちゃーん、助けてぇ」

 当然、店の外に居た写真館一行は大混乱。唯一まともでいられた士は、他の三人と一匹を大声で制した。
「馬鹿よく見ろ、これは防災訓練じゃねぇ! 原因はあれだ、あれ」
 あれを見ろと商店街の中央付近を指差す。銀行と思しき建物、その側面部に大穴が開いており、中から「牛のような顔をした」派手な装飾を纏った怪物が、札束の入った袋を両手に掴み、出入口から悠々と現れた。
 その姿に見覚えがあったのか、士はまさかと声を上げる。
「まさか……って、知っているのか士!」
「あぁ、聞いたことがある。やつらの名は『アンデッド』。その名の通り絶対死なない、原生生物たちの始祖だ」
「死なないぃ? そんなの相手にどうするんだよ」
「そんなこと、俺が知るか! 兎に角やるぞ、準備しろユウスケ」

 不死だか何だか知らないが、出会ったならば戦うまで。士はズボンのポケットからディケイドライバーのバックルを、ユウスケは変身ベルトアークルを腹部に呼び出すが、バイクに乗った三人の男たちに行く手を遮られてしまう。
 皆揃いのジャンパーを羽織り、青のスペード、赤のダイヤ、緑のクローバーをあしらったバイクに乗る三人は、ヘルメットを脱いでバイクを降り、士たちには目もくれず、アンデッドの前に立ちはだかった。

 うち、真中に立つ中年の男が、両端の青年二人に指示を飛ばす。
「承認が下りたのは俺だけだ。剣立《けんたて》と菱形《ひしがた》は付近の避難と安全の確保の徹底。確認出来次第俺の援護に回れ。質問はあるか」
「いえ」
「必要ないっす」
「良し、では……状況開始!」
 命令と号令に従い、青のジャンパーを身に纏う栗色の髪の青年と、赤ジャンパーで黒髪の青年が周囲に散る。
 中年の男はそれを見計らい、トランプのカードのようなものと、掌に収まるほどの小さなカードケースを取り出し、カードをその中に装填。腹部に押し当てて一本のベルトとし、バックルに描かれたクローバー模様を横にスライドさせた。

 ――変身ッ
 瞬間、バックルから「蜘蛛」と『クローバー』をかけ合わせたような絵柄の、光の壁が飛び出し、彼の体を通り過ぎる。
 男の体を光の壁が通過しきる頃には、トランプスートの「クラブ」と、昆虫の「蜘蛛」を模した緑色の仮面ライダー「レンゲル」に変身していた。

「そこまでだ!」
 レンゲルは杖型の武器「レンゲルラウザー」を構え、牛の顔のアンデッドに飛びかかる。
 恰幅の良い体格で、それに見合った力を持っていたが、人知を超えた超生命体には力押しと棒術だけでは御し切れない。レンゲルはアンデッドに突き飛ばされ、尻餅をついてしまった。

「さすがに強い、か! ならば」
 ――STAB《スタッブ》
 ――SCREW《スクリュー》
 ――RUSH《ラッシュ》
 杖の逆サイドにセットされたカードリーダーに、「ハチ」「モグラ」「サイ」が描かれた三枚のカードを読み込ませる《ラウズ》。カードは緑色の光となってラウザーの中に取り込まれ、エネルギーを充実させてゆく。
 ――――スクリームスマッシュ
「こいつを喰らえッ!」
 レンゲルは緑色に輝くラウザーの刃をアンデッドの腹部に突き立てる。突き立てられたそれは怪物の頑丈な腹筋を突き破って激しく回転し、アンデッドをアスファルトの上に叩きつける。
 士たち光写真館一行は、そんなレンゲルとアンデッドとの戦いを、店の影から観戦していた。

「この世界のライダーもカード使いか。数枚のカードを組み合わせることで攻撃のバリエーションを幾重にも増やす……。シンジたちが契約モンスターの力を借りた攻撃補助なら、奴らは差し詰め戦闘能力の拡張ってところか」
「冷静に分析してる場合かよ。怪人が現れたんだぞ、助けに行かなきゃ」
「別段苦戦している様子も無いし、手を貸す必要なんかねぇよ。だいたい、自分たちの力で解決出来なきゃ、却って奴らの為にならん」
「そんな薄情な……。だったら俺が!」
 そうユウスケが言いかけた瞬間、青ジャンパーに栗色の髪の男が彼らに声をかけてきた。レンゲルの命で避難誘導を行っていたあの青年だ。

「ちょっとアンタら、何やってんの。あのサイレンが聞こえなかったのか? アンデッドが現れて危険なんだから、とっとと安全区域か最寄りのシェルターに逃げる! 分かったか? 解るよな?」

 青年の呼び掛けに対し、士はその場から離れず問い返す。「お前、あの緑色のライダーの仲間だろ?なんで変身しないんだ?」
「質問を質問で返すなよ。そりゃあ、俺だって出来るなら変身したいけど、承認が下りてないからできないの。
 アンデッド一体にたくさんライダーが出張ったら、予算や世間の目がうるさいんだよ。やれ街を壊し過ぎるなとか、保険が効かないだとか……って言うかとっとと逃げろよ! ジャマだって言ってるだろ!」
「俺たちのことは気にするな。お前たちの活躍を草葉の陰から見守ってやるから」
「気にするわ! 頼むからとっとと逃げてくれよ、もう。頼むから……」
 二人の男が取りとめのない話をしていたその時、彼らの頭上を一体のアンデッドが飛び越え、レンゲルの間に割って入った。
 白基調の体表に、黒縞が無数に入った”シマウマ”のアンデッドは戦いに参加せず、牛頭の怪物が銀行から奪ってきた袋を引ったくり、雑居ビルの上に飛び上がった。

「仲間だと……! 待てッ、このまま逃がすか」
 レンゲルはシマウマのアンデッドを追おうと向き直るが、その隙を牛のアンデッドが逃すわけがない。彼の鉤爪の一撃を食い、レンゲルはよろけて膝をついてしまう。
 体勢を立て直さんとするレンゲルを、先程逃げたはずのシマウマのアンデッド「たち」が襲う。援軍かと思ったが、三体が三体とも全く同じ模様をしている。良く似た同一個体ではなく、質量を持った分身らしい。それより何より、彼らは現金の詰まった袋を持っていない。置いておく暇はなかった。となれば、本体は別に居るのか――。

 気にはなったが、熟考している隙は無い。加減して戦える相手ではなかった牛のアンデッドに加え、シマウマのアンデッド三体が加わるとなると、単騎では勝ち目が限りなく薄いのだ。

「あぁぁーっ。桐生隊長負けちまうじゃねぇか! くそっ、くそっ! まだか、まだかッ! 承認はまだ下りないのかよッ」
 栗色の髪の青年はレンゲルがアンデッドに圧倒される様を見て地団太を踏む。レンゲルを心配すると言うよりも、自分が戦いに参加できず悔しいと見える。
 そんな中、青年とは逆の方向で避難誘導を行っていた黒髪の先輩が駆け寄ってきた。
「カズマ、何をしている! 住民は速やかに退避させろと言われていただろう」
「すいませんサクヤ先輩。こいつら『俺たちは見てるだけだから勝手にやってろ』の一点張りで」
「ぐう……う。やむを得ないが、仕方がない。カズマ、ブレイバックルをセットしろ、隊長の援護に回る」
 ”援護に回る”。その言葉を聞いた栗色の髪の青年『カズマ』は、ガッツポーズを取って両の拳を天に突き上げ喜びを露にし、掌からはみ出るほど大きなバックルを取り出した。
「久々の『実戦』だぁッ。気合マックスで行くぜェ、覚悟しろよッアンデッド共」
 トランプの「A《エース》」に『カブトムシ』が掛け合わさったカードをバックルに挿し込み、腹部に押し当てる。
 彼の腰をカードの束が囲うようにしてまとわりつき、ベルトの形と相成った。
 バックル前部の取ってのような部分に左手の中、薬、人差し指をかけ、手の甲側を外に向けつつ、右人差し指をやや立てて構える。

「おい、何やってんだ! やつらが来てるぞ」
「なぁに、心配すんなって」
 そこに、シマウマのうち一体がカズマに向かって飛びかかってきた。ユウスケと士は早くしろと促すが、当の本人は落ち着き払い、手の甲を返しつつ叫ぶ。

 ――変身ッ!!
 取っ手を引くと同時にバックル前部が回転し、カードの絵柄がバックルの中に引っ込むと、代わりにスペードのマークが現れる。
 瞬間、バックルから先ほどスペードの裏に隠れたカードの絵柄と同じ、人一人ほどの大きさの『光の壁』が生じて、アンデッドの体を弾き飛ばした。
 アンデッドが壁に弾かれて吹き飛んだのを見計らい、カズマはそれを悠々と通り抜ける。
 壁を通過しきったカズマの姿は、青を基調とし、『スペード』と『カブトムシ』が混ざり合い絡みあったかのような、異形の戦士へと変わっていた。
 アンデッドを封印すべく、株式会社『BOARD』が開発した人工仮面ライダー第三号『ブレイド』である。

「よっしゃあ、行くぜ行くぜ、超行くぜェーッ」
 変身と同時に腰に装備された醒剣《せいけん》ブレイラウザーを手にし、レンゲルを襲うシマウマのアンデッド二体に斬りかかった。不意を突いて斬り伏せ、引き剥がすことは出来たが、彼らの傷はあっという間に癒え、標的をブレイドに変えて襲い来る。

「ブレイド!?」体勢を立て直し、周囲を見回しつつレンゲルが言う。「カズマ、何故お前が変身している」
 彼の問いにブレイドではなく、銃のライダー「ギャレン」に変身し、離れた所で戦うサクヤが答える。
「指令室に掛け合って承認許可を頂きました。恐れながら、隊長一人では殲滅に支障を来すのではと……」
 ギャレンはレンゲルを襲うシマウマのアンデッドに銃撃を撃ちこんで引き剥がし、レンゲルもまた牛のアンデッドをラウザーで振り払って言葉を返す。
「生意気な奴め、だが良い判断だ。俺たち三人で協力して始末する。復唱の要無し」
「了解ッ」
 ギャレンはレンゲルの言葉に頷き、言葉を返すが、一方でブレイドは返事もせず、ラウザーを構えてアンデッドに斬りかかっていた。
「桐生隊長、その大物は俺に任せてくれよっ。この牛野郎、細切れにして焼肉にしてやるぜ」
 ――TACKLE《タックル》
 ブレイドは”イノシシ”の絵柄のカードをラウザーのカードリーダーに通す。青色半透明になったカードはブレイドの胸部に吸い込まれ、彼の体に力を与えた。

「喰らえッ! ボアタックルーッ!」
 そのまま剣を構え、牛のアンデッド相手に突っ込むブレイド。
突進力を強化するカードを使っての特攻だ。しかし、あまりにも単調すぎるそれはアンデッドに当たるどころか、勢いを殺し切れず雑居ビルに激突。めり込んで動けなくなってしまう。

「何やってんだぁこの馬鹿はッ、むやみやたらに被害を増やすなといつも言ってるだろうが」
 ブレイドの破天荒な行動に、レンゲルは激昂して当たり散らす。
 その行動がレンゲルの運命を分けた。牛のアンデッドはその隙を突いて即座にレンゲルの背後を取り、鉤爪で彼の背中を、右腕を切り裂いたのだ。

「隊長!?」
「桐生隊長!」
 堅牢な装甲のおかげで引き千切られはしなかったものの、受けたダメージはかなり大きい。
「こんにゃろう……よくも桐生隊長を!」
「どう見てもお前の責任だろう、カズマ!」
「サクヤ先輩、こいつは俺がやります。先輩はあのシマウマを!」
「くぅ……、やるならやるで確実に仕留めるんだぞ、いいな!」
「当たり前っしょ!」
 隊長を討たれた怒りに燃えるブレイドは牛のアンデッドを、そんな彼の行動に呆れ顔のギャレンは銃を構え、複数体のシマウマのアンデッドを迎え撃つ。

「カテゴリー9か。面白い。数は多いが全部質量ある分身。となれば……こいつが適任だな」

 ――SCOPE《スコープ》
 ギャレンは”コウモリ”の絵柄のカードを取りだし、醒銃《せいじゅう》『ギャレンラウザー』に備え付けられたカードリーダーに通す《ラウズ》。
 彼の複眼が青く輝き、シマウマのアンデッドたちの姿を捉える。
サーモグラフィのようになった彼の目に映るそれは、どれもが淀んだ緑色をしており、実体があるようには見えない。
 本体はどこだと銃を構え、周囲を見回す。先ほどの雑居ビルの上から赤く輝く反応を見つけた。眼前の数体と違い、心臓の鼓動のような一定のリズムを刻んで揺らめいている。こいつに間違いない。

「見つけたぞ、そこだッ」
 赤く輝く反応に向けて照準を固定し、引き金を引く。銃弾は空中の障害をかわし、ビルの陰に隠れたアンデッドを正確に叩き込まれ、ビルの上から彼らの戦う商店街の往来へと叩き落とした。
 同時に、それまで幅を利かせていた数体のアンデッドたちが忽然と姿を消した。不意を突かれ、能力を解除してしまったのだろうか。

「これで終わりにさせてもらうぞ」
 ――BULLET《バレット》
 ――RAPID《ラピッド》
 ――FIRE《ファイア》
 ――――バーニングショット
 ギャレンはラウザーの弾倉部分を扇状に展開し、中に納められていた「アルマジロ」「キツツキ」「ホタル」の三枚のカードを順番にラウズ。ラウザーに炎のエネルギーが充実し、真っ赤に燃え上がった。
 ギャレンはそのエネルギー全てを銃弾に込め、よろけたままのシマウマを狙い撃つ。数十発の炎の光弾が直撃し、アンデッドの体を焼き付くした。

「おっと、さっすが先輩。俺も負けてらんねぇな!」
 ――KICK《キック》
 ――THUNDER《サンダー》
 自分の失敗を知ってか知らずか、柄部分を扇状に展開し、「イナゴ」と「ヘラジカ」の二枚のカードを同時にラウズするブレイド。
 彼の右足は雷のように激しく光輝き、余剰エネルギーが彼の顔を真っ赤に染めた。

 ――――ライトニングブラスト
「締めはコイツだ! 喰らいやがれぇええっ!」
 天高く跳び上がり、雷の力が充実したその右足を、牛のアンデッドの顔目掛けて叩き込む。
 衝撃に耐えきれず、牛のアンデッドは悲鳴を上げて爆炎と共に吹き飛んだ。

 倒されたアンデッドを見つめ、士はある違和感に気付く。シマウマのものも、牛のものも二人のライダーの攻撃を受けて爆散したはずだ。なのに横たわったまま四散しておらず、腹部のバックルと思しき部分が開いている以外に差異はない。そこに、ブレイドとギャレンが駆け寄って来た。
「……っと、俺の勝ちぃ」
「待てカズマ。まだ封印が終わっていないぞ」
「あっと。そうでしたそうでしたっ」
 各々、ラウザーを扇状に展開し、何の絵柄も書かれていないカードを引き抜くと、それを開いたバックルに投げつけた。
 横たわる二体のアンデッドは、目映い光を放ってそのカードの中に吸い込まれ、絵柄のないカードは『シマウマ』と『バッファロー』の絵の入ったものへと変化する。
 アンデッドは死なない。こうしてカードに封印することでしか、その活動を止めることが出来ないのだ。

 仕事を終えた二人のライダーは、共にバックルを開き、先ほどの壁を通り抜けて変身を解除。サクヤは「指令室」に事後報告を入れるべく、自身のバイクに備え付けられた無線の電源を入れる。
「……こちら『ダイヤスート』の菱形。アンデッド二体の封印に成功。周囲の被害は軽度。戦闘中に桐生隊長が負傷しました。至急こちらに救急車を一台御願いします」
「――確認しました。今そちらに一台向かわせています。それと、剣立カズマさん。戻り次第社長室に来てくれ、との言伝が」
「何、社長室!?」無線口の言葉に、カズマは特別賞与でも出るのかと顔を綻ばせ、サクヤはどうせまたお説教だろうと頭を抱えた。

 そして、その様相を傍目から見ていた士たちは。
「取り敢えず、やつらの元に行くことから始めなきゃならんのか。この世界でやるべきことってのはよ」
「なんでそういう結論になるんだよ」
「何でって……、あれ見ろ、あれ」
 ユウスケに問われ、サクヤたちが乗るバイクを指差す。彼らのバイクのエンジンタンク部には、士の着ている割烹着と同じマークが大写しになっていたのだ。

「と、言うわけだ。俺は先に行くぜ」
「ちょっと待てよ。じゃあ俺たちは」
「適当に考えとけよ。フリーペーパーはどこの世界でもタダだ」
 ――ATTACK RIDE 「MACHINE DECADER」
 士は近くに転がっていた自転車をマシンディケイダーに変え、”社”に戻ろうとするカズマとサクヤの後を追った。

「待ってください士君! フリーペーパーはタダでも、履歴書は有料なんですよ!」
「まいったなぁ、どうしようか夏海ちゃん……」
「戻るしか……ないですよねぇ、やっぱり」
 二人は店の前に置かれていたフリーペーパーを何枚か抜き取ると、肩を竦め、栄次郎とキバーラ共に写真館に戻って行った。

◆◆◆

 株式会社「BOARD」。この世界に蔓延る謎の不死生物アンデッドを狩り、人々の平和を護る一大組織。同時に日本有数の大企業でもある。
 アンデッドを封印出来る唯一の存在、仮面ライダーを擁する同社は、ギャレン、レンゲル、ブレイドの三ライダーを有事の際に呼び出し、アンデッドを封印すると同時に、彼らの持つ不死の力を人類の為に役立てる研究を行っている。
 既に癌治療、心臓の病などに対して成果を上げており、今後の成長を期待しての株式投資が非常に高い。ここに就職すれば定年まで生活が保証されるとまで言われ、入社希望者は後を立たない。

 ライダーへの変身資格を持った同社の社員、剣立カズマと菱形サクヤは、負傷者桐生の容態確認を終えると、その足で社長室へと向かっていた。

「ひい……ふう……みい……、やりぃ、40ボドボド! へっへへー。エースは給料もエース級だぜ。たまんねぇな」
 道中手にした給料を、歩きながらにたにたとだらしなく数え、その額に涎を垂らすカズマ。先輩であるサクヤはいい加減にしないかと、彼の額を小突いて言った。
「お前のせいで桐生隊長が負傷したんだぞ。少しは反省しないか」
「何言ってんすか先輩。俺たち、仮面ライダーなんですよ? 隊長ならそんな怪我、ちょちょいのちょいで治して復帰しますって」
「お前は何故そうも楽観的なんだ! 隊長が居ない今、アンデッドが市街地を襲ったらどうする。半人前の癖に知ったような口を利くな」
「へぇへぇ。分かりましたよ、すいません」
 カズマは自分の力とそうして得た報酬を楽観的に語り、サクヤは生じた二次的被害について彼をたしなめ、愚痴を溢す。聞いてはいるがそれをまったく受け入れようとしない後輩の姿に、サクヤは頭を痛める他無かった。

 そうしているうちに、社内最上階の社長室へと辿り着く。軽いノックと社長の「入れ」という言葉に続いて入室。中で待つ人物に二人して会釈する。

「菱形サクヤ、剣立カズマ。ただいま戻りました」
「む、ご苦労」
 掃除が行き届き、埃一つ無い部屋の中では、壮年の男性が琥珀色に鈍く輝くマボガニー製のどっしりとした机に座り、厳粛な表情で彼らを見つめている。

「アンデッド二体の封印に成功。人的被害も無し。まずは、よくやったと褒めておこう」
「いやいやははは。社長、褒めても何も出ないっすよ」
 男の言葉に、カズマは空気も読まず、笑いながら答えるが、彼は更に険しい表情を作り、こう言い返した。
「だが、銀行の預金は回収できず、隊長桐生ヨシトの負傷。”レンゲル”装着者の消失。その上、仮面ライダーによる器物破損によって、馬鹿みたいに高い被害届が出ている。お前は何だ? 我が社を破産させたいのか?」
 言い終わるが早いか、軽く指を鳴らして、社長室に人を呼びつける。求めに応じて入室した、牛乳瓶の底のような丸眼鏡をかけた青年は、カズマの持っていた給料袋を奪い取ると、その中から半分以上の札束を抜き取って机の上に置いた。

「よって、これはその修繕費及びその他各方面への迷惑料として徴収させてもらう。異論はないな?」
「異論ありまくりっすよ社長! 良いも何も、そりゃあ俺の給料であって」
「君の、ではない。会社のものだ。お嫌かな。ならば即刻辞めたまえ。引き留めはしない」

「ぐ……う!」カズマは拳を握りしめ、下を向いて唇を震わせる。理不尽だが、辞める辞めないをちらつかされては、反論のしょうが無い。
 カズマが何も言わなくなったためか、社長は机を人差し指で軽く叩きつつ、今後の予定について淡々と話し始めた。
「さて。こうなった以上、今危惧すべきはレンゲルの後任だ。アンデッドは待ってはくれない。今から高い融合計数の人材を用意できるか……」
「そのことでしたら、僕にお任せいただけませんでしょうか社長」
 社長の言葉に、今まで黙っていた丸眼鏡が声と手を上げる。
 名を「黒葉《くろば》ムツキ」と言い、敵アンデッドの能力分析、物的人的被害の処理などを行う、『エースランク』の社員だ。

 彼の本職はライダーのサポートであり、戦闘経験は皆無。断るべきなのだろうが、レンゲルの変身者は代えが効きにくい。社長は両手を組み、そこに顎を乗せて暫し思案を巡らせる。
 サクヤの顔、意気消沈して項垂れるカズマの顔を見つつ、社長は仕方がない、と首を縦に振った。
「今一度戦闘訓練を受けた上で、必要技量に足ると判断できたならば」
「ありがとうございます、社長」
 社長の承認に小さくガッツポーズをして喜ぶムツキ。だが逆にうなだれていたカズマは机を強く叩いて抗議する。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ社長! こいつは変身して暴れたいだけだ。ライダーは俺の方が適任です」
「ライダーになって暴れたいのはカズマさんの方じゃないですか? 暴れた挙句こうした被害を出すような人にだけは言われたくないですね!」
「ンだとォ、この青二才! 表に出ろ表に!」

「よさないか」二人の言い争いを社長が御す。「カズマ、君に反論する権利はない。今回の件と今の暴言……合わせて一週間の謹慎処分とする。用件は以上だ。さっさと出て行きたまえ」
「ちょっと待ってくださいよ社長……」
「同じことを二度も言わせるな。とっとと出て行け。口答えは許さん」
「ぐ……ぐぐぐ」
 反論してどうとなる問題では無いし、反論出来る理屈も持ち合わせない。食い下がれば食い下がるだけ自分の立場が悪くなる一方だ。
 カズマはそのことを理解すると、煮え切らない表情で踵を返し、扉を勢い良く閉めて出ていった。

「ムツキの奴……、絶対に許さねえ、絶対に……」


◆◆◆

 時を同じくし、株式会社『BOARD』のエントランス内。門矢士はこの世界の調査の為、”会社員”という役職を行使して、合法的に会社に潜入。社長に目通りをと考えたのだが、受付で留められ、それ以上先に進めずにいた。

「おい、それは一体どういうことだ」
「ですから、弊社ではカテゴリー”J”以上の社員でないと、社長への謁見は許可されていないのです。何度言えば解るのですか」
「だから、その『カテゴリー』と言うものが分からん」
「ここに入って来た時にID認証を行わなかったのですか? あぁほら、あなたの右胸のポケットに収まっているそれですよ」
 受付嬢に言われ、胸ポケットにしまわれていた「カード」らしきものを抜き出す。この世界のライダーたちが使っていたものと似ているが、描かれているのは自分の顔と名前であって、彼らのそれとは異なっている。

「あなたのランクはカテゴリー”10”。社長に意見なさるというのなら、もう一ランク上げなければお会いすることすら叶わないと言うことです」
「なるほど……ね」要するに平社員のままじゃ重役とは話せないと言うことか。同じことを何度も主張する辺り、このまま折れるとは思えない。
「なら、質問を変えよう。どうすればこれは上がるんだ」
「我が社の社員は皆『出来高主義』です。ランクを上げたいとお思いなら、何か、我が社にとって有益な行動を取り、貢献することから始められては?」
「有益なこと、ね」
 随分と抽象的だな。何かないのかと、士はズボンのポケットに手を突っ込み、苦々しげに受付嬢を睨み付ける。こうした対応に慣れているのか、彼女は目線を外し、涼しい顔で業務へと戻る。これ以上の問答は時間の無駄だろう。
 さて、どうしたものかと踵を返す士を、若い男の声が呼び止めた。
「あぁーっ。こんなところにいた」
「もう、早くしてくださいよチーフ。そろそろディナータイムの仕込みを始めないと」
 呼び止めた若い男に続き、薄茶の長髪を後ろで一纏めに括った女性も続く。両者共に士と同じ割烹着を纏い、顔写真入りのカードを首からぶら下げている。何らかの関わりがありそうだ。
「誰だお前ら。チーフってのは、俺のことか?」
「他に誰がいるんですか。新しいチーフでしょ。うちの食堂の」
「前のチーフが耐えかね……あぁいや依願退職しちゃってて、後任が来るのを待ってたんですよぉ」
 物騒な単語が言葉の中に紛れ込んでいたが、情報を得ることの方が先だと、士は流して相槌を打った。
「何だか知らんが好都合だ、その食堂ってのに案内してもらおうか」
「勿論ですぅ、ささ、どぉぞ、どうぞ」
「……まぁ、言われなくても『連行』するんだけどね」
 薄茶の女性が気だるそうに発した、”連行”という言葉が気になったのだが――。

◆◆◆

 使い古されたフライパンや両手鍋、大小数々の包丁にまな板。極々ありふれた調理器具がずらりと並ぶ奥行きのある一室。門矢士が”連行”されて来たのは、社員食堂の「厨房」のようだ。
 取り敢えず周囲を見回して、おかしいな、と士は思う。大企業の胃袋を支える社員食堂なだけに、敷地も機材もしっかりしているが、そこを支える料理人は自分たちを含めて三人だけ。その上大仰な設備も、その殆ど埃を被っており、動かした形跡が無い。
 そのことを問い質さんとした瞬間、青年の方が狙い済ましたかのように言葉を被せてきた。

「じゃあまず自己紹介。僕は”栗原コタロウ”。ここの副料理長です」
「私は”深沢シオリ”。ここの料理長よ。よろしくね」
「いや、待て。ちょっと待て。こんなところで一体何をしているんだお前たちは」
「何って、料理ですけど?」
「馬鹿言うな。俺の目は節穴じゃねぇ。従業員はお前らだけ、その上設備の殆どが埃を被っていて、何を作るって言うんだよ」
「何って……、ねぇ?」
 コタロウは申し訳なさそうに床に視線を這わせ、シオリは何も分かっていないのねと冷たい目を士に向けた。
「この会社は文字通り”弱肉強食”なのよ。あなたがさっき受付で文句を言っていた”カテゴリー”。あそこに書かれた数字の大きさが、文字通り社内での力の強さを表してる。私はカテゴリー6、コタロウはカテゴリー5で、あなたは10。あなたのことはよく知らないけど、カテゴリーが上なら従うしかない。そういうものよ」
「逆らったらどうなる」
「野暮なことを聞かないで。左遷《させん》に減俸《げんぽう》、依願退職。何でもありよ」
 横から、コタロウが口を挟む。「本当は僕たちも食堂なんて志望してなかったんですけど、適性検査とか試験とかに落ちちゃって、たらい回しにされちゃいました」

「弱肉強食ねぇ……」競争なんてものは大なり小なり、どこにだってあるものだが、ここまで露骨なのは初めてだ。嫌なら辞めれば良いだろうに。
 しかし、それだけではこの食堂の様相に説明がつかない。

「だから何だ。それとこの食堂に何の関係がある」
「では、もう少し詳しく説明します。うちの場合、カテゴリーによる優遇は福利厚生にも表れてまして、高ランク社員でなければ使えない施設や待遇に差があるんですよ。
 社員食堂でのメニュー格差もその一つです。仮面ライダーとして一級線で働く人たちには”エースランチ”って、高級な食材を使った高級な料理をお出し出来るんですけど、逆に僕たちみたいにランクの低い平社員には、高校の学生食堂の素うどんみたいなしょぼいご飯しか食べられなくて……」

「選べないって……、好き好んでここで食う必要はないだろ。弁当を持ってくれば済む話じゃねぇか」
「ダメよ」士の尤もな意見に、シオリは首を横に振って言葉を返す。
「それじゃあ分けた意味がないって、社長が弁当の持ち込みを禁止しているの。見つかったら厳罰だからね。惨めさを紛わしつつ、空腹を満たす為には、昼休みに社を抜け出して外で食べるしかないってわけ。
 つまり、ここでの食事は数少ないエース社員の為のもの。使われる回数が少ないんだから、埃被ってたって不思議じゃないでしょ?」
「お前らの怠慢と会社の制度は別だと思うがな。しかし……」
 聞き終えるが早いか、士は周囲をを見回し「金庫」らしき鉄の扉を見付けると、開け放さんと手をかける。
 当然、二人は黙っていられない。「ちょっと、何をするんですチーフ!」
「それ、ここの一月分の予算なんですよ!」
「やはり、金庫か」士は悪びれることも手を離すこともせず、語気を強めて話を続ける。
「どっかのお偉いさんが言っていた。『良い仕事は上手い飯から』ってな。ライダーに変身して日夜命を削る輩がいい飯を食うのは理に適っているし、社員を焚きつけ、成長させるためのランク制度も悪くない。
 だが、その原動力である飯を制限すると言うのが納得いかねぇ。ランクの高い奴だけがいい飯を食える? そんなもの糞くらえだ。誰もが上手い飯を食って、良い仕事をする。それが会社のあるべき姿だろう」

「……」出会ってまだ数分と経たない奴に、何故そこまで言われなければならない。シオリは心の中で腹を立てるが、口に出すことはしない。気に食わないが、彼の言葉には共感を覚えていたからだ。

「でも、そんなことどうやって……」
「お前は今まで何を聞いてたんだよ。食堂の在り方を変えるのは料理人だろうが。質問する前に少しは自分のアタマで考えろって……おぉ?」
 士のお小言を掻き消すかのように、厨房にけたたましいサイレンが鳴り響く。あの時、街中のスーパーの前で聞いたものと同じだ。となれば、答えは一つしかない。
「……アンデッドだな」
「えぇ」と、シオリが頷く。「うちの会社はアンデッド退治が本業だもの、奴らがいつどこで発生しても分かるよう、社内中どこでても鳴るようになってるの」
「成る程、そりゃあ耳障りだ」
 この食堂を変えることもそうだが、アンデッドの出現も見過ごせない。士は金庫の扉を指で軽く叩いて思案を巡らせると、唐突に踵を返してこう言った。
「こんなにうるさくちゃ、ろくに仕事も出来やしねぇ。ちょっと出てくる」
「出てくるって、どこに行くつもりですかチーフ」
「消してくるんだよ、この耳障りなサイレンをな」
 そう言って踵を返す士だが、シオリに襟首を掴まれ、「待ちなさいよ」と止められた。
「口実作って逃げ出そうとしてるんじゃないでしょうね。ふざけた真似も大概にしなさいよ。第一、ただの人間がアンデッドと戦える訳ないじゃない」
「ただの人間なら、な。陽が落ちる迄には戻る。信じろよ、曲がりなりにも俺ァお前たちのチーフなんだぜ」
「無理よ、まだ知り合ってから五分と経ってないのに……」
「それだけありゃ十分だ。俺はもう行くぜ。じゃあな」
「あっ、あぁ……」
 シオリの言葉を遮って、士は厨房の扉を開け放す。二人はそれを見ていることしか出来なかった。

◆◆◆

 BOARD内に響き渡るサイレンの音、音、音。アンデッド出現の報は真っ先に社長室へと届けられ、場所の特定が行われる。位置が特定させるや否や、社長はサクヤとムツキを部屋に寄越した。
「菱形サクヤ、黒葉ムツキ。両名参りました」
 サクヤが礼をし、ムツキが後に続く。社長は携帯機器の電源を入れると、そこから発せられる赤外線を向かいの壁に放ち、市街の地図を映し出させた。
「アンデッドはF地区を南に向かい、天王寺銀行本局を目指して進行中。一人で迎撃可能だろうが、今回はムツキの研修も兼ね、レンゲルの変身も承認する。
 初めての実戦だ。貴様に掛けられている期待も、護るべきものも大きい。決して気を抜くな」
 神妙な顔でそう告げる社長を前にして、黒葉ムツキは自信満々に鼻を鳴らす。
「心配は無用です。桐生隊長の後任に僕を選んだその判断が正しかったと証明して見せます。誰もが唸る成果と共にね」
「……何故そういう結論になる」
 調子に乗ったその言動に、サクヤが呆れ顔で口を挟む。
「お前に求められているのはミスを犯さないことであって、手柄を立てることじゃない。浮かれるのは結構だが、任務を履き違えるな」
「分かっていますサクヤ先輩。そっちこそ、余計な発言は慎んで下さいよ。任務中なんですから」
「喧嘩売ってるのかお前は!」
「止さないか」声を荒げるサクヤを、社長が叫びに凄みを加えて御す。「仲間割れしている場合か、私は仕事をしろと言った筈だぞ。お前たちは何だ。私の面子を潰したいのか? そうなのか?」

「……」一喝されて我に帰り、申し訳無いと頭を垂れる二人の男。彼らの争いが止んだのを見計らい、社長が再び檄を飛ばす。
「直ちに現場に急行し、物的人的被害を出さず速やかにアンデッドを駆逐。奪われた金を取り戻せ。ちゃんと聞いたか? 理解したか? 三度目は無いぞ、復唱の要無し」
「は……はいっ!」
「菱形、黒葉両名、出動します」
 凄まれて竦み上がった二人、は、一礼だけして足早に社長室を後にする。
 向かう先は社内地下にある車庫だ。それぞれ専用バイクである「グリンクローバー」、「レッドランバス」に颯爽と跨がり、力強くエンジンを噴かすと、目標のエリアへと走り去っていった。

 だが二人は気付かなかった。遠方の物陰から自分たちを見つめる、怪しげな男の影に。

「桐生隊長の負傷で成り上がっただけのくせに偉そうに。サクヤ先輩だって、あんなこと言わなくたっていいじゃないか。見てろよ。俺がいいカッコ見せて、先輩もムツキも社長も見返してやる!」
 男は予め用意しておいた青色のバイク、「ブルースペイダー」にエンジンに乗り、そっと二人の後を追って行った。
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