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 ←これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十四年五月号 →Journey through the Decade Re-mix 第四話 「バトル裁判・龍騎ワールド」 第二審
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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(1)

Journey through the Decade Re-mix 第四話 「バトル裁判・龍騎ワールド」 第一審

 ←これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十四年五月号 →Journey through the Decade Re-mix 第四話 「バトル裁判・龍騎ワールド」 第二審
「仮面ライダー龍騎《りゅうき》」。

「仮面ライダー」の名を冠した13の戦士が、己の望みを叶えるべく、凄惨なバトルロイヤルに身を投じるという世界設定。
 それまでの仮面ライダーとしての要素を”破壊”し、メイン視聴者層その他に大きな話題を振り撒きました。
 平成仮面ライダーシリーズが破天荒だ何だと、ライダーを見ないような世間様の間で話題になり始めたのも、この作品がきっかけだったように思います。
 そんな現象を製作サイドが顧みるかのように、「ディケイド」という作品の中でも異彩を放つ、『仮面ライダー裁判制度』を導入した本作、本世界。原作と同等かそれ以上に破天荒な設定と展開に、視聴者に対して強烈な印象を残したのは言うまでもないでしょう。

 そんな龍騎の世界のリミックス。自分の希望というか憶測でしかないのですが、本編を見ていて『あれ?』と思ったことが、これを読んで少しでも軟化されていることを祈るばかりです。


 ――はぁ……、はぁ……、はぁ……っ!
 ――そんなッ、なんでわたしがこんな目に。
 ――ちがう! わたしじゃない! わたしじゃ……ないのに!
 ――こんな、こんな……っ!

 ――――『殺人』なんて!


* 6月 15日 14時 35分 留置所・面会室 *

 とある街の、とある留置所の、とある面会室。三十分だけ面会を許された門矢《かどや》士《つかさ》と小野寺ユウスケは、ガラス張りの面会室の奥で、蒼い顔をし縮こまる夏海に声をかけた。

「しっかし、とうとう殺ったか……。何人だ? その親指で何人の男を手に掛けた」
「士お前ッ、冗談にも程があるぞ!夏海ちゃんがやるわけねぇだろ!」
 そう言って窘めるが、夏海自身は蒼褪めた顔のまま何も答えない。
 士は冗談だと平手を振り、身に纏うスーツの襟をわざとらしく振った。
「ンなことどうだっていい。それに見ろ、この俺の格好を」
「かっこう?」ユウスケは少し考え、手を叩いて唐突に答える。
「あぁ、そうか! なんとかリクルートの……」
 塞ぎ込み、一言も喋らなかった夏海がそこに続く。「わかりました! 紳士服の……」
「違う。全然違う。就職活動はしねぇし、紳士服を売るセールスマンでもねぇ」
「じゃあ、なんなんだよその格好は」
「またホストですか。水商売ですか」
「あぁもう、理解の遅いやつらだ。これ見ろ、これ」
 スーツの内ポケットに入った「名刺」を取り出し、二人に見せる。そこには楷書体の仰々しい文字で、『門矢法律事務所 所長・門矢士』と、にわかには信じがたい文字が躍っていた。

「な、なんじゃこりゃ」
「法律事務所って……一体どこにそんなものを構えてるんです」
「写真館の中に決まってんだろ。まぁ、そんなものはどうでもいい。この世界での俺の役割は『弁護士』だ。誠に不本意だが、俺がこの世界でやるべきことは、お前を無罪にすることのようだ。不本意だがな」
「不本意不本意って言わないでください。仮にも”依頼人”の前ですよ」
「うるせぇなぁ。助かりたきゃ一体何があったか説明してもらうぜ。言われたことや言ったことは一言一句漏らすな。やったことは詳細かつ端的に示せ。曖昧なこと抜かしやがったらその時点で有罪にしてやるからな」
「そんなこと言われても……」
 士の荒っぽいと言葉に苛立ちを覚えつつも、夏海は事情を説明し始める。
 事件のあらましはこうだ。

 6月14日、13時35分。
 大手雑誌社「ATASHI《アタシ》ジャーナル」編集長、桃井《ももい》玲子《れいこ》が殺害された。

 現場は同社2Fの談話室。鍵は掛けられていないものの、事件発生時にそこにいたのは被害者と被告の二人のみ。
 死因は鋭く先の細い”何か”による首筋への一撃。少量の血痕を飛び散らせたものの、悲鳴を上げることすらなく、床に仰向けに突っ伏した状態で発見されたという。

 被害者を刺した直接的な凶器こそ発見されなかったが、夏海は手に”フォーク”を持っており、そこに血痕が付着していたことに加え、”部屋には誰もいなかった”ことから、第一発見者である”光夏海”を容疑者として逮捕・拘束。
 その後、身体検査と長時間の取り調べを受け、現在に至る――。

 夏海の話を聞き終えた士は、つまらなそうにため息をついた。
「なぁるほど。こりゃもう、決まりだな」
「ちょ、ちょっと! 何を言ってるんですか士君! わたし、何もしてません!」
「何もやってねぇって言うやつが、どうして血まみれのフォークなんか持っている」
「編集長さんが出してくれたケーキを食べるためです!それに今説明したじゃないですか、血が付着しているのは”先っぽ”だけ。編集長さんが倒れるとき、飛び散ったものが偶然フォークの先に当たっただけなんです!」
 こっちは有罪か無罪になるかの瀬戸際なのに、なんて人なの。怒りに任せ、士の首筋を狙って笑いのツボを見舞うが、ガラス張りの壁に阻まれて届かない。士は夏海の必死な様子を見、笑いをこらえながら答えた。

「ざまぁねぇなぁ。……まぁ、それは置いといてだ。お前の言うことにはいくつか不自然な箇所がある」
「不自然な?」
「箇所?」
 夏海とユウスケは素っ頓狂な顔で士の言うことをオウム返しに答える。士はネクタイをきちんと締め直し、人差し指で机を軽く叩いた。
「まず一つ。フォークについたっていう夏ミカンの指紋だ。
 お前の指紋は取っ手の端側に集中してたそうだな。そこがまずおかしい。殺意を持って刺したってんなら、取っ手一杯に指紋が付いているはずだろう」
「そうなんですか?」
「何だよ士、そんなこと分かるのか? たかだか指紋だぜ?」
 お前は美人警察官と一緒に、今まで一体何をしていたんだ。士は呆れ顔でユウスケを見、机の上に転がっていた鉛筆を握った。
「刃物ったって”フォーク”だぞ。夏ミカンとはいえ女だ。これで人一人殺すってんなら、こうやって取っ手全体を掌でぎゅっと握りしめて、ぐっと突き立てなきゃ人は殺せん。でなきゃ痛い思いをするだけだ。双方共にな」
「そう、ですね。ぎゅって握った方が、力の入りがよさそうです」
「あぁー、なるほど。あぁいや、知ってた! 知ってたよ!でもさ、その」
 ユウスケの話を無視し、士は更に続ける。「それを前提としてもう一つ。夏ミカンの言っていることが真実かどうかは別として、フォークについている血痕は”先”だけだったな。人が死ぬぐらいまで”刺し込んだ”というのに、”先っぽ”にしか被害者の血がついていないって、あり得ないだろうが」

「あぁっ」
「気付かなかった」
「持っていたものは凶器になり得ない。殺せた可能性はあっても、物的証拠がそれは無理だと物語っている。その上被害者と被疑者は初対面同士だ。動機なんてありゃあしない。こりゃあもう証拠不十分で釈放だぜ。他に何か凶器が見つかれば話は別だが」
「やったな夏海ちゃん!」
 証拠不十分に動機もなし。これでは罪に問えようがない。これを士が警察に説明すれば夏海の釈放は間違いない。ユウスケは士と手を叩いて彼女の無実を喜ぶが、当の本人はガラス張りの壁の先で未だ俯いていた。
「どうした夏ミカン。この俺が無罪にしてやったんだぜ。もっと嬉しそうにしろよ」
「いえ、その。”証拠不十分”だってことは知ってたんです。警察の人が難しい顔して、何度も何度も証言の粗とか凶器のことをずっと訊いてましたし」
「警察もそこまで馬鹿じゃないってことか。しかし、お前が暗い顔をしているのと、何の関係がある」
 士の問いに、夏海は伏し目がちに答える。「刑事さんが言ってたんです。この事件は”証拠・動機不十分”により、通常の裁判“では“解決できない。よって、『仮面ライダー裁判制度』によって、君の罪を第三者に裁いてもらう……、って」
 士とユウスケは互いに顔を見合わせた後、大きく息を吸い、硝子越しの夏海に対し声を上げた。

 ————”仮面ライダー裁判制度”ぉ!?


* 同日 15時 5分 ATASHIジャーナル・正面玄関前 *

「ヒトと獣が共存する世界の次は、仮面ライダーが裁判の道具になる世界か。正直もう、なんでもありって感じだな」
「同感」
 留置所を出た士とユウスケは、夏海の無罪を勝ち取るための証拠固め……、ではなく、”仮面ライダー裁判”という未知の制度の意味を探るべく、事件現場へと足を運んでいた。
 ”仮面ライダー裁判制度”を施行すると決まったせいか、事件発生からまだ一日しか経っていないのにも関わらず、付近に警察の姿は見受けられない。

 話を訊こうにも、人が居ないのではしようがない。士は諦めて警察署にでも行こうかと考え、ここを離れようとしたのだが、ユウスケにスーツの袖を引かれ、止められた。
「なあ士。あれ、どう思う?」
「あれ? 何のことだ」
「あれだよ、あれ。あの、電柱の影の」
 警察官の姿はないが、変な奴はいた。彼らの視線の先、電柱の陰で、二人の男が何か話し合っている。
 一人はヒゲを蓄えた壮年の男性。もう一人は赤色のジャンパーに黒のジーンズを穿いた、やや茶髪の誠実そうな青年。
 何だ何だとしばらく様子を見ていると、青年は突然、ジーンズの尻ポケットから『財布』を取り出し、壮年の男性の掌に納めさせ、両手で彼の手をぎゅっと握った。男性は青年に対して何度かお辞儀をし、申し訳なさそうに去って行く。
「ユウスケ、ありゃあ……」
「あぁ、俺も生で見るのは初めてだ」
 二人は、同時にそのことが何を意味するのかを口にする。
「間違いなく詐……」
「凄ェなぁ、あんなに心の優しい人、初めて見たよ!」
 士は『がくっ』という擬音が目の前に現れん勢いでずっこける。深呼吸をして立ち上がると、ユウスケの頭を思いっきり叩いてまくしたてた。
「馬鹿、あんなもん、詐欺以外の何者でもないだろうが。とっとと捕まえてこい」
「うぇぇっ! なんで俺が?」
「なんでも何もお前クウガだろ。さっさと行け」
「ちぇっ、こういう時だけ……」
 ユウスケは両手の指を地面につき、前足側の膝を立て、「クラウチングスタート」の構えを取り、男性を追って駆けだした。
 その間、士は自身の財布を男性に渡した青年の元に駆け寄り、事情を問い質す。
「おい、お前。そこのお前だよ。何やってんだ」
「え? 僕……?何か用ですか」
「見てたぞ。お前、自分が何したか分かってンのか」
「はぁ……。何をしたんでしょう」
 お金を見ず知らずの人間に渡したというのに、馬鹿みたいに朗らかな言葉に態度。士は訳を聞くのが怖くなったが、今更引っ込めるわけにも行かない。
「何って。あのおじいさん、40年間勤めてた会社から突然リストラされて、金の切れ目は縁の切れ目だって奥さんに逃げられて、毎日毎日借金の取り立てに怯える毎日で、お金に困っていたんですよ。それでお金を貸して欲しいって言ってきたんで貸しただけです。
 あぁでも、近いうちに出世払いで返すからって言ってましたし。借金取りに嗅ぎ付かれると困るから連絡先を聞かないでくれって言うぐらい、切羽詰まっていたし、仕方がないですよ。ははは」

 ”いいことをした”と、笑顔で答える青年の言葉と態度に、『がくっ』という擬音が空に現れそうな勢いで、体勢を崩してずっこける士。
 なんだ、俺の周りは阿呆ばかりなのか? と自問しつつ、苦虫を噛み潰したような顔で彼に再び問いかける。
「いや、いやいやいや。おかしいとは思わないのか? 通りすがりで、金を要求して、連絡先も告げないで、返すアテは出世払いだと? どう考えてもそりゃあ詐欺だろ」
「いやいやいや。そう何もかも疑ってかかっちゃダメですよ。最初っから何もかもに疑ってかかるから争いになるんです。疑い合うより信じ合わなくっちゃ」

「お前、さ。誰かに『馬鹿』って言われたことはないか?」
「会社の先輩に二日にいっぺん……、あぁでも、先週までは毎日だった、かな。って、初対面の人にまで言われたくはないですよ! あなたこそ何なんです」
「おぉい、士ァ」そんな中、先ほどの壮年の男性を捕らえ、二人の前までユウスケが戻ってきた。
「マジで!? この人そんな困っている人だったの? やっべぇ、俺なんて酷いことを」
「お前はいい。もう黙ってろ」
 彼は青年と士の会話を言葉半分に聞いており、自分の行動を恥じてがくりと項垂れる。士は深くため息をついた後、ユウスケに背を向け、その後に続く言葉を全て無視した。
「あのぅ、私はもう帰っても」
「あぁ帰れ。ただし、財布は置いて行けよ」
 士は逃げようとした男性の手から強引に財布を奪い取り、青年に手渡すと、内ポケットの名刺入れから一枚抜き出し、財布と共に彼に手渡した。

「俺は”弁護士の”門矢士。昨日この新聞社で起きた事件の弁護を担当している。俺は名乗ったぞ。で、結局お前はなんなんだ?」
 青年は足早に去ってゆく男性を寂しげな表情で見つめた後、財布を探って名刺を取り出し、士に差し出した。
「あ、あぁ。申し遅れました。僕はシンジ、辰巳《たつみ》シンジです。この雑誌社『ATASHIジャーナル』のカメラマンやってます」

「カメラマン、ねぇ」
「ってことはお前、事件の……」
「はい、”関係者”ってことになりますね。ほらっ」
 青年・辰巳シンジは、自分のジャンパーのポケットの中から、名刺とは違う赤色で『中央に”龍”の紋章の入った』カードケースを取り出した。
「は? だから何なんだ。そのケースに何の意味がある」
 この問いかけに、シンジの方も不思議そうな顔で問い返す。「え? あなた、弁護士なんですよね? 被告の女性の方の」
「あぁ、非常に不愉快で不本意だがな」
「ですからほら。僕、”無罪派”ですし。見えるでしょ? 白色のランプの点滅が」
 先ほど以上にこれ見よがしにデッキを見せつけるシンジ。だが、二人は彼のその行動が何を意味しているのか、さっぱり分からない。

「いやいや、だから。その”カードケース”はなんなんだ」
「何だって……、”仮面ライダー裁判”用の『デッキ』ですよ」
 
「何!? これが? 仮面ライダーの? デッキ……だと?」
「うそ、マジかよっ。これで仮面ライダーに変身するってのか!」
『こんなことも知らないのか』とでも言いたげな表情で二人を見つめるシンジ。
 士は無知だと馬鹿にされたと思い、驚くシンジをきっと睨みつける。
 シンジは申し訳なさそうな表情を浮かべて言葉を付け加えた。「ご、ごめんなさい。いや、その……そういうつもりじゃなかったんです」
「あぁ、あぁ。こいつのことは放っておいてさ。その、”仮面ライダー裁判”のことについて教えてもらえませんか?」
「えぇ……。構いませんよ」
 シンジは『こんな人でも弁護士になれるんだなぁ』と感心し、咳払いを一つすると、士とユウスケに対し、”仮面ライダー裁判”の仕組みについての説明を始めた。

「平たく言うと、物的証拠や証言で立証できなかった凶悪犯罪を、それぞれ”主張”を持った人たちが仮面ライダーに変身して相手と戦い、最後に勝ち残った人の主張が最終的な判決となる裁判のカタチです。
 ライダーには弁護士に検察官、第一発見者に被害者の遺族……、それと関係のない人も数名、総勢“12“人が無作為に選ばれます」

「弁護士検事に関係者、それに加え”関係ない人間”までも、か?」
「公平性の問題です。裁判の性質上、無罪有罪のどちらかで、参加者の主張が偏ることがよくあって、双方の主張や感情に左右されない一般人を審理に加えることで、法の公平性を保っているんです。まぁ、バトルが機能しなくならないようにするための意味合いの方が強いんですが」
「成る程……」シンジの言葉、士は一つ一つ頭の中で反芻する。
「そこそこ合理的だな。だが、肝心のライダーたちがどこにも見当たらん。奴らは一体どこで戦っているんだ?」
「ああ。それはですね……」
 瞬間、歯や頭が痛くなるような金切り音が周囲に響く。驚いて周囲を見回した士は、その音が洋品店の”ショーウインドウ”から響いてくることに気付いた。
 よく見ると、水溜りに石を投げ入れて生じた波紋のように、店内に飾られた服がぐちゃぐちゃに歪んでいる。何だこれはと首を傾げる士に対し、シンジは彼の右肩に手を触れて答える。
「あそこがライダーたちの戦場です。
 あれは『ミラーワールド』。鏡の中にある”もう一つの空間”ですよ。陪審員はライダーは変身資格を得るだけでなく、あの世界へ行き来できる力も手に出来るんです」
 鏡の中の世界。ファンタジーやメルヘンにしかないようなものが、本当に実在するというのか。
 開いた口が塞がらないユウスケを放っておき、士はだいたいわかったと話を進める。
「とんでもねぇ”世界”だ。ついていけんな」
「なら、試してみますか?」
「ためす?」
「習うより慣れろ、つてことですよ。それにこの金切り音、陪審員に対する戦闘参加への呼び掛けなんです。ミラーワールドへ行かない限り、ずっと耳に残って困ったことになりますよ」
「確かにな。やらないでどうのこうの言っていても格好が悪い。それで、俺はどうすればいいんだ?」
「難しいことはありません。鏡の前にデッキを構えて、”変身”と呟くだけです。そうしたらカードデッキを装着するベルトが現れて、それを……って、あれ?」
 ――変身
 ――KAMEN RIDE 「DECADE」!!
 士はシンジの言葉と手ほどきを無視し、ポケットからディケイドライバーを取りだして、さっさとディケイドに変身してしまった。
「おぅ、これでいいのか?」
 士の突拍子もない行動に、シンジは大きく口を開けて呆ける。
「驚いた。前回の裁判で破損したデッキの代わりに新しいものがあてがわれるとは聞いていたけど、変身の仕方すら違うなんて。じゃあ、僕も」
 ――変身ッ
 驚いてばかりいられないと、赤色のカードデッキをこれ見よがしに鏡の前に掲げる。
 鏡の中から変身ベルト、『Vバックル』が彼の腹部に現れ、巻き付いた。
 続けざまにデッキをVバックルに挿入。シンジの両側部から赤色の『騎士』の像が現れ、彼の体をすっぽりと覆う。
 赤き体に白銀の鎧を纏い、ミラーモンスター『無双龍《むそうりゅう》ドラグレッダー』の力を宿したライダー、”仮面ライダー龍騎”へと姿を変えた。

「仮面ライダー……”龍騎”か」
「あれ? 龍騎のことは知ってるんですね。裁判制度については知らないようでしたけど」
「あぁ、なんとなく、な」

「まぁそれはそれとして。行きましょう士さん」
「行くって、どこにだよ」
「もちろん、”鏡の中”です。ささ、どうぞ」
「おい馬鹿、勝手に押すなって、わわ、わわわっ!」
 龍騎の背中を押されたディケイドは、まるで“吸い込まれる”かのように、鏡の中へとその姿を消した。
 一人残されたユウスケは、目の前で起こった怪異に、目をきらきらと輝かせて驚く。
「おぉっ! すっげー! 本当に鏡の中に入っちゃったよ! よぉっし、俺もーっ! 変身!」
 同じ仮面ライダーなら俺だって。ユウスケはクウガに変身し、勢いよく鏡に向かって飛び込んだ。
……のだが、鏡の中に入ることは叶わず、クウガは鏡を突き抜け、洋品店の中に勢いよく飛びこんでしまった。
「わっ、わっ! わー!!」
「強盗! 強盗だァーッ!」
「変質者! 赤い変質者よォーッ!」
「あぁ、ごご、ごめんなさい! わ、悪気はなかったんですぅ! いや、あのそのっ、警察だけは、警察だけは勘弁してください! ねっ、ねっ……ねぇっ!!」
 どうやらこの世界では、”陪審員”として公的に認められている、仮面ライダーにしかミラーワールドへの侵入権限は許可されていないらしい。

 そんな外界の状況を知ってか知らずか、ディケイドと龍騎は、視界全てが『乱反射する鏡』に支配された空間へ足を踏み入れていた。
「……ずいぶんと殺風景な場所だな。で、このピザ屋のバイクみたいな乗り物はなんだ?」
 目の前に停められている、鈍く銀色に輝く屋根つきのバイクを訝しげな顔で見つめ、龍騎に問いかける。
「まだここはミラーワールドじゃありませんよ。ここはその玄関口。『ライドシューター』は、ライダーをミラーワールドに送る専用のバイクです」
「なるほど、ね。しかし気に入らねぇな。なんというか……、ダサい」
「まぁまぁ。一度乗ってミラーワールドに着きさえすれば、以降はこれを介さないで直接ミラーワールドに入れますし、そこまで気にすることでは」
「嫌だね、こんな乗り心地の悪そうなバイクなんざ。そうだな……」
 ――ATTACK RIDE 「MACHINE DECADER」
 ディケイドは『マシンディケイダー』のカードをバックルに装填。紋章がライドシューターを通り抜け、いつもの『趣味の悪い』バイクに姿を変えた。
「ば、バイクまで……変わっちゃうんですか」
「ま、そういうことだ。シンジ、道案内、よろしく頼むぜ」
「は、はい」
 龍騎は小首を傾げ、”これが新型かあ”と二三度呟き、ベルトの側端の窪みを座席のベルトに固定し、エンジンを始動する。
 あとは自動操縦だ。エンジンもブレーキもこのバイクにはついていない。上下左右前後、光の乱反射する鏡の世界を、ライドシューターが駆けて行く。ディケイドはアクセルを目一杯回し、ライドシューターの後を追っていった。


※ 同日 15時 20分 ミラーワールド・エリアGH-9 ※

 看板に書かれた文字も、右から左に流れていく文字のスクロールも、風の流れや木々の動きさえも、何もかも全てが逆転した不思議な世界。
 生き物らしい生き物が一切生育しないこの世界で、一人の少女の有罪無罪を決定する戦いが、密やかに繰り広げられている。

 ――CLEAR VENT
 ――STRIKE VENT
「悪いね刑事さん。うちの会社としてはさ、そこの編集長さんが死んでくれて大助かりなわけなのよ。だから、あの女の子を有罪にする理由がないの。わかる?」
「そもそも、凶器、犯行現場の状況、容疑者と被害者の関係。どこから見ても、彼女が殺人を犯すはずがないでしょう。まったく、警察はどこまでズサンな捜査をしているのですか」

 とあるビルの地下駐車場内。
 カニを模したオレンジのライダーは、高圧的で嫌味な口調、カメレオンを模した緑色のライダー「ベルデ」と、若々しく張りのある声、ホワイトタイガーを模した白のライダー「タイガ」に襲われ、敗北寸前の危機を迎えている。
 ”無罪派”である彼ら二人は、被告の有罪を主張するライダー「シザース」を、徒党を組んで始末しようとしていたのだ。
「わ、わわ、分かった。君たちの言い分はよおぉく分かった。
だからその、ほら。認める、認めるよ負けぐらい。ほらよ、デッキも……」
 シザースは立て膝になり自分のデッキを取り外して、二人の眼前に掲げた。
「そうそう。物分かりがよくて助かるよ刑事さん」
「ズサンな上に度胸もないとは……。国家権力の腐敗も甚だしい。誠に遺憾です」
 シザースが差し出したデッキ目指してじりじりと迫る。勝ちを確信した二人のライダーは武器を収め、デッキを受け取ろうと手を伸ばしたのだが、
「へ、へへ……、今だッ!」
 それ故に、シザースがデッキをベルトから取り外す瞬間、彼が『二枚のカードを抜き取って、掌に隠した』ことに気付けなかった。

 ――ADVENT
 ――STRIKE VENT
 シザースは彼らが反応するよりも早く、カニの鋏のような形の召喚器『シザースバイザー』に二枚のカードを装填。契約モンスター『ボルキャンサー』がベルデの背後から現れ、彼を羽交い絞めにして動きを封じ、自分は専用武装『シザースピンチ』を構え、タイガのカードデッキを刺し貫いた。

「しま……っ!」
 ――うわ、ああああああああっ!!
 カードデッキを刺し貫かれ、変身前の人間の姿に戻ってしまったタイガ。彼の目の前の『空間』にヒビが入り、不気味な大穴が開いた。
 砕けて生じた穴の中には、『縦横無尽に鏡が張り巡らされた』あの空間が見える。彼はひとり、その穴の中に吸い込まれていった。
「さぁて、と。もう一体。ボルちゃん、今日も御苦労様っとぉ」
 シザースは消えた青年など気にも留めず、羽交い絞めになっているベルデのデッキを奪い取って、粉々に握り潰す。変身は解け、中から紫のスーツを着た壮年の男性が現れた。

「き、貴様ァ……なんて卑怯な……っ!」
「ひきょう? はは、はははは。二人で徒党を組んでたくせに何言ってやがる。それにこちとら、ヒキョウもラッキョウも大好物だってんだい。はっはっはっは」
「貴様……ぁ、それでも、国家権力かァァァアッ」
 男性は怒りに唇を震わせ、恨みの言葉を叫びながら、次元の裂け目から先の空間へと飛ばされていった。
 龍騎とディケイドがミラーワールドに到着したのはそれより少し前だ。
 彼らは地下駐車場の連絡口に陣取り、戦いの一部始終を眺めていた。
「……成る程。あれがライダーバトルか。
 しかし、いいのか? 負けたやつら、あの鏡の外に吸い出されてったようだが」
「あぁ、それについては心配ありません。彼らは”ベント”されただけですから」
「ベント?」
「ミラーワールドにおいてライダーが『デッキを壊されたり』、
『許容以上のダメージを負った』際に起きる現象です。
 ライダーの姿を保てなくなり、ミラーワールドから強制排除されるんですよ。平たく言えば、裁判員としての権利を無くす、ということでしょうか。
 あぁ、人体への影響はありませんから。安心していいですよ」

「至れり尽くせりだな、おぉ」ディケイドは楽しげに口笛を鳴らす。「しかしあのカニ野郎……、残しておくと後々厄介だな。今のうちに倒しておくか」
「待ってください。あなた確か、裁判は初めてなんじゃあ」
「裁判は初めてだが、戦い《こっち》のほうは本職だ。軽くたたんでやらぁ」
 ディケイドは後ろ手を平に振ってシザースに向かい歩を進めるが、彼らの間を、一台のライドシューターが遮った。
 ライドシューターのシャッターが開き、中から新たなライダーが姿を現す。
 漆黒のマントを身に纏い、白銀の剣を腰に差した”コウモリ”の戦士、『仮面ライダーナイト』だ。
「人がせっかく息巻いているときになんだ。邪魔だってんだよ」
 出鼻を挫かれる格好となったディケイドは、文句を言おうと近付くも、ナイトは彼を無視し、シザースの元へと歩を進める。
「なんだ。わざわざ俺に倒されに来たってか? 相手になるぜ」
「……」
 ナイトはシザースの軽口を無視し、腰に差した剣型の召喚機『ダークバイザー』を構え、相手より先に胸を袈裟に斬りつけた。
「ちょ、ちょっと待てよ、待てって」
 予想外の事態にシザースは両手で制止を求めるも、ナイトは止まらない。シザースの両手を払いのけて一撃。相手の攻撃をかわし、すれ違いざまに一撃。
 体制を崩し、背を向けたところに一撃。召喚機を落とし、拾おうと手を地面に伸ばしたところにさらに一撃。
 あっという間に刀傷だらけとなり、シザーズは無様に地面に倒れ込んでしまう。
 旗色悪しと判断したシザーズは、後ろ手で地を掻き、少しでも遠くへ逃げようとする。建物の壁まで追い詰められ、これ以上先に進めないと分かっていながらも。
「わ、わ、わ、分かった。もう何も言わない! 権利もいらない! 無罪! 無罪でいいから! ごめん! 許して! おねがい!」
 反撃の手立てを失ったシザースは、頭を地面に擦りつけ許しを請うが、ナイトは意に介さない。
「すまんな。俺は『判決』には興味がない」
 ナイトは茫然と座り込むシザースの首根を掴んで持ち上げ、彼のデッキからカードを全て抜き取ると、ダークバイザーの剣先でシザースのデッキに風穴を開ける。
 シザースは「ベント」され、叫び声を上げる暇すらなくこの場所から消え失せた。

「おーおー。派手にやってくれるじゃないの。いきなりで悪いが、次はあんたが消える番だ」
 ディケイドの姿を認識したナイトは、先ほど奪ったカードをデッキの中にしまい込み、胸の前で剣を構える。考えていることは同じらしい。
「そっちがその気ならしょうがねぇ。いいぜ、相手をしてやるから、かかってきなよ」

「ちょっと……待ってください士さん」だが、そんな二人の間に割って入るものがいる。今や双方の知り合いとなってしまった仮面ライダー龍騎だ。
 彼はナイトの変身者の声に聞き覚えがあるらしく、警戒心無くコウモリの戦士の元へと駆け寄った。
「その声……まさか、”レンさん”ですか?」
「……シンジ。そうか、お前が第一発見者だった、な……」

 ”レンさん”。
 龍騎――辰巳シンジの親しげな口調からして、敵ではないらしい。龍騎は力を借りたいと手を差し出すが、どういうわけか、ナイトはそれをさっと振り払った。
「……悪いが、俺は判決には興味がない。他をあたってくれ」
「そんな……! いや、待ってください。あなたなんで、デッキにランプが灯っていないんですッ」
 ライダー裁判に参加する仮面ライダーたちは皆一様に、デッキや額の「ランプ」が”白”か”黒”に点滅するようになっている。
 白が”無罪”で黒が”有罪”。眼前の相手ががどちらについているのか、言葉を介さずとも理解出来るようにとの配慮だ。
 だが、ナイトのデッキや額のシグナルにはどちらの色も灯っていない。ライダー裁判に参加している以上、白か黒かどちらかに灯っている筈なのだ。
 ナイトはその事に口を閉ざし、目の前に立つ龍騎を押しのけ、そのまま振り向かずに答えた。
「お前に話すつもりはない。それよりも、そこの弁護士。お前が噂の”新しい”仮面ライダーか」

「らしいな」ディケイドは埃を払うように手を軽く叩き合わせ、自信ありげに言葉を返した。
「カードの仕組みも、あんたらのとは全然違っているがな」
「仕組みも……? 何だかよく分からんが俺もまだやられるわけにはいかない。気の毒だが倒させてもらうぞ、弁護士」
「面白ぇ。やれるもんならやってみな。シンジ、ちょっと離れてなッ」
「で、でも……」
「いいから。こいつの事情は俺が聞いといてやるからよ、っと」

 ――変身
 ――KAMEN RIDE 『KIVA』
 ライドブッカーからカードを取り出し、ドライバーに装填。
 笛の音が周囲に響き渡り、ディケイドの体が銀色の膜に包まれて、『仮面ライダーキバ』へと姿を変えた。
「目には目を。歯に歯を。こうもりにはコウモリ、ってね」
「すごい……、あの状態から更に姿が変わるなんて」

「なるほど、それが新型の能力というわけか」
「そういうこと。四の五の言わずにかかってきな。俺がたっぷりと料理してやるぜ」
 立てた親指を下に向けてナイトを挑発し、距離を駐車場の奥へと駆けて行く。
 ディケイドを追って、ナイトも駐車場の奥へと足を踏み入れるが、彼の姿はどこにもない。見失ったかと立ち止まり、周囲を見回すナイトの頭上から、ディケイドの拳が飛んできた。
「ぐぅ……うっ!」
「なかなかコウモリらしいだろ。頭に血が上ってしょうがないがな」
 天井にぶらさがって背後を取り、体を捻って相手の攻撃をかわしつつ、死角を突いての、パンチの応酬でナイトを圧倒する。
 頭上を陣取られてしまっては、自慢の剣も、頭上目掛けてでは十分な威力を発揮できないのだ。
「なめるなよ、そんな小技でやられるものかッ」
 だがナイトもやられているばかりではない。ディケイドの現れる位置を予測し、ダークバイザーで彼の胸部を突き刺した。たまらず、ディケイドはバランスを崩して地に伏してしまう。
「くぅ……っ。やるじゃねぇの。面白ェ。剣には剣だ」

 ――FORM RIDE 『KIVA-GARULU』
 ディケイドは別のカードをドライバーに装填。狼の遠吠えが周囲に響き渡ると共に、魔皇剣「ガルルセイバー」を扱う青のキバ、『ガルルフォーム』へと姿を変えた。
 ディケイドはバックルから飛び出したガルルセイバーを左手で構え、文字通りナイトに飛びかかった。
 正攻法では剣の扱いに長けたナイトには敵わない。
 だが、攻撃をかわし、すれ違いざまに体をひねっての斬撃、右腕の鋭い爪での引っ掻きなど、野性味溢れた先の読めない攻撃は、ナイトにとっては脅威に他ならない。
「剣戟《けんげき》ってぇのは、形式ばってりゃ勝てるってもんじゃないんだぜ。分かったかこうもり野郎」
「どうだかな。ならばこいつでどうだ」
 ――SWORD VENT
 ナイトはデッキからカードを取り出し、バイザーにセット。電子音と共に、ナイトの手に槍のように長尺な得物、『ウィングランサー』が出現した。
 ナイトは縦横無尽に動き回るディケイドに対し、ダークバイザーでガルルセイバーを受け止め、その隙にウィングランサーで彼の胸部を突き刺す。ディケイドは弧を描いて、場内に停められている乗用車のフロントまで吹き飛ばされ、右胸がぽっかりと窪んだ。
「痛ッてェ! 馬鹿でけぇ得物なんか出しやがって。だったらこいつだ」
 ――FORM RIDE 『KIVA-DOGGA』
 紫色の縁取りのカードをドライバーに挿入。
 鈍い鐘の音が鳴り響き、魔皇槌《つち》「ドッガハンマー」を扱う紫のキバ《ドッガフォーム》へとフォームチェンジした。
「そぉら、そらそらそぉらッ!」
 威勢の良い掛け声と共に、力に任せてドッガハンマーを振り回す。ナイトの攻撃も数発当たるも、ドッガの頑健な鎧は中にダメージを通さない。
 その上、槌が直撃したウィングランサーは先がぐにゃりと曲がり、獲物としては意味を成さないものに変えられてしまった。

「しまったッ」
「さぁて、どっこいしょォっと」
 ディケイドはよろけるナイトの体を槌で容赦なく叩く。
 ダークバイザーではこの攻撃を受けきることは敵わず、ナイトはなすがまま右に左に引っ叩かれ、息を切らせて地に膝をついた。
「王蛇とリュウガが出て来ないと聞いて油断していた……、だが、負けん!」
 ――TRICK VENT
 ナイトは手で足で地面を叩いて蹴って立ち上がり、カードをバイザーに装填。
 瞬間、ナイトの姿が三つに増え、それぞれがディケイドに襲い掛かった。圧倒的な装甲と力に、数で対抗しようというのだ。
 数で圧したところでドッガの装甲を打ち貫けなどしないことは百も承知だ。
 とはいえ、ディケイドも中身は人間。一対複数、しかもこの頑強な鎧と槌を操り続けて、疲労しない訳がない。事実、ディケイドの動きは徐々にキレがなくなり、鈍くなってきていた。
「くそ……ッ、なんつー重たい鎧にハンマーだよ。ワタルのやつ、小さい体でよくこんなもんを振り回せたもんだ。
 けど、残念だったな。そういうの、こっちにもあるぜッ」
 ――ATTACK RIDE 「ILLUSION」
 バックルからドッガのカードを取り出し、ディケイドの姿に戻ると、今度は『イリュージョン』のカードを挿入。眼前のナイト宜しくディケイドの数も三体に増え、それぞれがライドブッカーを構えて、ナイトに襲いかかる。
 ソードモードでの鍔迫《つばぜ》り合いに、ガンモードでの牽制《けんせい》。徒手空拳による三種三様のディケイドの攻撃に、ナイトの分身たちは手立てなく消え去った。

「手こずらせやがって。これで文句ねぇだろ。俺の勝ちだ」
「次元が違う……。こんなライダーがいていいのかッ! くそっ、まだ脱落するわけにはいかないというのに……」
 突っ伏したまま仮面の中で歯噛みし、ナイトは悔しさにアスファルトを叩く。
「なんだかよく知らねぇが、あんたも訳ありらしいな。イイワケがあるんならベントした後でじっくり聞いてやるぜ」
 分身をディケイドはライドブッカー・ソードモードを構え、
地に伏したナイトの元へじりじりと近寄る。
 五歩、四歩、三歩、二歩、一歩。十分に近付き、カードデッキ目掛け、無慈悲に刃を振り下ろす。

 ――SHOOT VENT
 それで勝負は決した筈だった。しかし、視界の外から放たれた堅く重い一撃が邪魔し、ディケイドは駐車場の端まで吹き飛ばされてしまう。
「なんだッ! 何が起こったッ!」
 あまりのことに怒ることすら忘れ、周囲を見回す。ディケイドの眼前、駐車場の入り口に、緑一色に銀の装甲で縁取られた新たな異形が、抱えるほど大きなロケットランチャーを構えて立っていた。。
 機械的な外装からは想像しがたいが、”牛”を模したライダー、「ゾルダ」である。

「私が立件した以上、この案件は『有罪』以外有り得ない。どこの馬の骨だか知らないが、私の邪魔はしないでくれたまえ、弁護士君」
「ちょ、ちょっと待て! そんな物騒なもんを抱えて何やってんだッ!」
 ゾルダの怒涛のミサイル攻撃を掻い潜り、思案する。

 立件? 有罪? ……”検事”ってやつか。
 いや、待てよ。こいつにしろさっきのこうもり野郎にしろ、なんで俺のことを弁護士だと分かったんだ?
 あの検事は答えてくれそうにないし、となれば。
「おい、こうもり野郎!」ディケイドは近くで踞っているナイトに声をかけるが、彼の姿はどこにもない。ゾルダといざこざを起こしている間、一足先に立ち去ったのだろうか。

「あッ! あの野郎、逃げやがったなッ! 馬鹿にしやがってあの野郎……」
「どこを見ている弁護士、貴様の相手はこの私だ!」
 ――SHOOT VENT
 先の大砲による一撃がディケイドに炸裂する。倒されはしなかったが、爆発で駐車場の壁に叩きつけられ、一時的に呼吸が止まってしまう。
 ゾルダの手がカードデッキに伸び、別の一枚を引き抜いた。もう一発喰らってはまずい。ここから離れんと体を捻るが、息が詰まり、起き上がることすら叶わなかった。

「先ずは貴様からだ弁護士、彼女が依頼人だったことをせいぜい悔やむがよい!」
 ――STRIKE VENT
 二撃目が放たれんとしたその時、ゾルダの背後を火球弾が襲った。
 吹き飛ばされ、横倒しに転がるゾルダを尻目に、龍騎は心配そうな表情を浮かべ、ディケイドの元に駆け寄った。
「士さん! 大丈夫ですか!?」
「シンジか! いいとこに来た!」
「あなたたちが戦っている最中、駐車場に検事さんが入って行きましたから……。それはそうと、レンさんはどこに」
「細かい話は後だ。とにかく逃げるぞッ」

 ――FINAL VENT
 銃型召喚機「マグナバイザー」に、『牛の顔の紋章』が入ったカードをマガジンスロットに挿入。
 地面の下から契約モンスター『マグナギガ』が現れ、ゾルダは自身のバイザーを背中に接続。
 瞬間、マグナギガの両腕両足胸部についた砲門が全て解放され、エネルギーがモンスターの周囲に満ち満ちてゆく。

「やばいやばいやばい。ありゃあどうみてもヤバい」
「士さんどうするんです!このままじゃ」
「分かってる。シンジ、俺に掴まってろ!」

 ――ATTACK RIDE 「INVISIBLE」

 マグナギガの砲門を全てを解放して放つ必殺技、「エンドオブワールド」発動の瞬間、ディケイドは『インビジブル』のカードをドライバーに装填。
 二人の体はまるで空気に溶けるかのように虚空に消え、発射された重火器によって、地下駐車場は縦断爆撃後の廃墟へと変貌させた。
 自慢の一発を逃げ場のない空間で、容易くかわされた。ゾルダは狼狽しつつもマグナギガを戻し、廃墟の中に立ち入り、その周囲を見渡す。

「この状況で、逃げられた? 馬鹿な、そんなことがあってたまるか。やつらめ、一体どこ……にッ!?」
 だが、ここでゾルダも予想し得ない事態が起こった。
 何者かが、背後から腹部を貫き、自分のカードデッキに風穴を開けたのだ。
 ライダーとしての姿を維持できなくなり、人の姿に戻ったゾルダに対し、彼の後ろに立つライダーは言う。
「――すみませんねェ。あなたに暴れられると、張り合いがなくてバトルがつまらなくなるんですよ。申し訳ありませんが、ここでリタイアです」
「貴様……何者だッ!」
「そうですねェ。私は――」
 ――うっ、わああああああああっ!
 検察官・ゾルダは、彼の素性を聞く前に、空間の割れ目に吸い込まれ、この世界から『ベント』された。
「おやおや。ずいぶんとせっかちな。……私以外にもあれほどまでに予測不可能なライダーがいるとは。ふぅむ」

『青色の仮面ライダー』は顎に手を乗せて何かを思案すると、冷徹な仮面の下でにやりと笑い、廃墟となった地下駐車場を後にした。

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~ Comment ~

またまたお久しぶりです 

ご無沙汰してました。

前回の感想では新規に改訂した箇所を間違えてしまってすいません。
どうも最近物忘れが激しくて・・・日頃もっと頭を使わないとダメですね。
前回もそうですが、各ライダー固有のアクションがあるのは良いですね
さて、今日はちょっと調子が悪いので感想はここまで。
そうそう、ご返信は、ゆっくりでも当方はいっこうにかまいませんよー!

では誤字などを纏めておきます。

>だが、肝心のライダーたちが[どこに]見当たらん。
[どこにも]
>あの世界[を]行き来できる力も
ミラーワールド内なら自由に移動できるので、そういう意味では合っていますがこの場合[へ]が
適切だと思います。
>デッキ[の、]額の
[や]
>ナイトは[その事に]口を閉ざし
[その質問に対して]とした方が適切だと思います。
>目の前に立つ龍騎を押しのけ、[]振り向かずに答えた。
[そのまま]が欲しいです。
>埃を払うように手を軽く[叩き]
参考までに[たたき合わせ]とするのもありだと思います。
>ナイトの手に槍のように長尺な得物、『ウィングランサー』が[握られた。]
主語が「ナイトの手」か「ウイングランサー」なのかまぎらわしいので、
[出現した]などとした方が良いと思います。
>[]右胸はくぼみ、きれいな弧を描いて、場内に停められている乗用車のフロントまで吹き飛ばされたディケイド。
ここは主語のディケイドが出てくるのが遅いので[ナイトの攻撃によって]と入れると収まりが良くなると思います。
もしくは「ディケイドはきれいな孤を描いて(中略)まで吹き飛ばされ、その右胸にはくぼみが出来ていた。」などと
文を書き換えるというのはどうでしょう?
>漏れ出たガソリン[が]引火し、爆発に巻き込まれる
[に]とした方が「が」の連続を避けられて良いのではないでしょうか?
ちなみに軽く調べただけですが、実際には自動車は衝撃ではめったにらしいですね。
まあ特撮では、こういう場合爆発は欲しくなりますけどw
日本損害保険協会 自動車火災における自動車の燃焼性状
ttp://www.sonpo.or.jp/archive/publish/bousai/jiho/pdf/no_227/yj22736.pdf
交通事故相談ナビ 交通事故に関するよくある質問
ttp://kotsujiko.houritu-soudan.com/chiebukuro_1491765769.html
>[その]頑健な鎧は中にダメージを通さない。
[ドッガフォームの]とした方がより分かりやすくなると思います。
>彼女が依頼人だったことをせいぜい[拒む]がよい
[悔やむ]ではないでしょうか?
もしくは「依頼された時点で拒んでおくべきだったな!」
>[彼の]契約モンスター『マグナギガ』が現れ、ゾルダは自身のバイザーを背中に接続。
代名詞がごちゃごちゃなので[]内は削除を推奨します。
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まとめtyaiました【Journey through the Decade Re-mix 第四話 「バトル裁判・龍騎ワールド」 第一審】

「仮面ライダー龍騎《りゅうき》」。「仮面ライダー」の名を冠した13の戦士が、己の望みを叶えるべく、凄惨なバトルロイヤルに身を投じるという世界設定。 それまでの仮面ライダーとしての要素を”破壊”し、メイン視聴者層その他に大きな話題を振り撒きました。 平成仮...
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