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 ←ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #5 →これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十四年五月号
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「二次創作」
ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん

ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #6

 ←ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #5 →これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー 平成二十四年五月号
 ――――前回までのあらすじ。
 本来なら春先に出す筈だった活動報告書を出さなかったことで、生徒会長・明堂院いつきからファッション部の廃部を言い渡された来海えりか。
 つぼみの弁明でなんとか廃部は免れたものの、活動報告書の代わりに『部員たちの努力が垣間見えるような作品』を生徒会に提出するよう求められてしまう。えりかは部員たちに助けを求めるも、彼女たちの態度は渋い。
 そんな中街に現れたクモジャキーとデザトリアン。窮地に陥ったキュアマリンと花咲つぼみを救ったのは、妖精ポプリが選び出した二人目のプリキュア・キュアサンシャインだったのでした。


#6 すごい潔癖症です! キュアサンシャイン!

 月の裏側に建てられた砂漠の使徒の前線基地では、キュアサンシャインに敗れたクモジャキーが、己の未熟さと屈辱を払しょくすべく、配下のスナッキーたちと共に、激しい自己鍛錬に精を出していた。
 そんな中幹部の一人・サソリーナが、汗臭さに鼻をつまみつつ足を踏み入れる。
「あぁあ、汗臭いわねぇ。何やってんのよぉん、クモジャキー」
 クモジャキーは手にしたバーベルを放って答える。「鍛錬に決まっているぜよ。ブロッサムにマリン、その上サンシャインとプリキュアは増える一方。対する俺は奴らに負けてばかり……。これでは作戦を任せて下さったサバーク博士に面目が立たん。だからこそ、こうして……」
「んもう、うっとおしいわねぇん」拳を硬く握り、声を大にして力説するクモジャキーに対し、サソリーナは彼のやる気に水を差すかのように、白いフェイスタオルを投げつけた。
「意気込みは結構だけどね、クモジャキー。今からそんなことしたって無駄よ無駄。次の作戦は、あたしが出るんだからぁ」
「何ィ!? 今回の作戦は俺に一任された筈。何故お前がしゃしゃり出て来る」
「意気揚々と出掛けて、ゴーカイに失敗しちゃったからでしょお。ついでに言っとくと、これは博士直々の命令よぉん。既に計画は進行中。ま、あんたはそこで筋トレしながら観てなさぁい。あのこ生意気なサンシャインが倒れる様を……ね」
 クモジャキーが悔しさで歯を軋ませる姿を横目に、サソリーナは口を歪ませ不敵に笑い、訓練施設から去って行った。

◆◆◆

「おはようございます、えりか」
「うん。おはよ、つぼみ。そして、おやすみよー……」
「おやすみ、って……! まだ朝ですよ、起きて下さい、起きて下さいってば!」
 生徒会長・明堂院いつきに『課題の提出』を言い渡されてから三日が経過した。
 怠惰に過ごして来たツケが回り、部員たちからの協力を得られ無かったえりかは、この過酷な作業を一人でこなす事となり、毎日が徹夜の連続であった。
 こうして登校出来ていることすら奇跡に近い。今日も母親に連れ出されなければ、机の上の作業場で夢の中にいただろう。

「ダメですよえりかぁ、お日様が出ている間はしゃっきりしてないと、学業に支障が出るばかりか、プリキュアとしても……」
「手伝ってくれないくせに、プリキュアの仕事だけ押し付ける気?」鋭い目をして、喧嘩腰でえりかが答える。「だったら最初っから手伝ってよ。それにデザトリアンに関しては大丈夫でしょ、サンシャインがなんとかしてくれてる訳だし」
「それは……」
 つぼみは何も言い返せない。否定したいが確かにその通りだ。
 キュアサンシャインが現れてから早五日。デザトリアンの発生ペースは一日一回と増加していたものの、その全てをサンシャインが撃退し、被害を最小限度に留めていた。えりかが落ちこぼれの自分《マリン》なんて必要ないと言うのも頷ける。

「この街には強ぉいプリキュアがいるじゃん。つぼみもあたしみたいなのじゃなく、強い子と一緒にプリキュアすればいいんだよ。分かる?」
「違います! あぁいや、理屈としては違いませんけど……、そうじゃないんです! えりかがプリキュアじゃないと……、そう、ダメなんです!」
「いや、だから……何がダメなのさ」
「それは……」
 二の句を継げずに押し黙るつぼみを見て、えりかは「話は終わり」と頭を垂れた。
「先生が出席取り始めたら、代返宜しくねぇ。んじゃ、おやすみ……」
「あぁっ、まって! 待って下さい、えりかぁぁあ」
 その後、つぼみが何度揺すって声を掛けようとも、えりかが目を覚ます事はなかった。より厳密に言えば、寝たフリのまま起きなかった、と言うべきか――――。

「――――と、言う訳なんです。とし子さん、るみこさん、なおみさん。どうか、どうか、どぉかッ、えりかを手伝ってあげてくれないでしょうかッ!」
 余りの惨状を見るに見かねたつぼみは、一度協力を断ったファッション部員三人に頭を下げる。
「花咲さんの気持ちは分かるけどさあ」
「悪いのは全面的にえりかだしねー」
「別にファッション部が無くても、別の部活に入れば良いだけだし」
 床に額を擦り付けてまでの願いだったが、三人の顔は彼女の予想以上に渋い。
「おっしゃる通り、返す言葉も御座いません……。えりかにはわたしの方から、よぉぉぉぉぉっく言って聞かせますから……」
 尚も頭を下げ続けるつぼみに、赤渕眼鏡の少女・るみ子が首を傾げた。
「……って言うか、なんで花咲さんがそんなにお願いしてるわけ? ファッション部の部長はえりかでしょ。頼むんなら本人が頭下げるのが筋ってモノじゃないの?」
「うぐ……くぅ」彼女たちの言うことは的を射ている。そう、えりかさえ折れてくれれば、全てが丸く収まるのだ。
 尤も、へそを曲げたえりかを説得するのが、一番困難であるのだが。

◆◆◆

 その日の放課後。花咲つぼみはどこまでも頑ななえりかを説得すべく、彼女の家・洋品店フェアリードロップへと足を運んだ。
「――――と、言うわけなんです。意地張ってないで謝って手伝ってもらいましょうよ」
「嫌。ぜぇったいに、嫌っ」
 予想していたこととは言え、取り付く島もなく断られるとショックも大きい。えりかとファッション部員たちに出来た溝は、そう簡単に埋まる物ではなさそうだ。
 だが、つぼみも簡単は譲らない。「生徒会長からの課題は、ファッション部員全員でやらなければ解決しない筈です。いくらえりかが凄い作品を作ろうとも、一人でやったものじゃあ……」
「そんなもの、後で『皆で作りました』って言えばいいじゃん。生徒会長は公務で忙しいとかで全然様子見に来ないし、そうやって騙すくらい、訳無いっしゅ」
「強がりは止めにしましょうよ。こんなことして何が楽しいんですか。もう一度謝って、とし子さんたちに協力してもらいましょう。ね、ね?」
「強がりじゃないもん!」堪忍袋の緒が切れたのか、勢い良く机を叩いてえりかが吠えた。
「もぉいい……、もういい! 帰ってよ、つぼみの顔なんか……、当分見たくない!」
「えっ!? そんな、わたしはえりかのことを思って」
「うるさい、うるさい! うるひゃ……、舌噛んだ。とっ、とにかく! 余計な親切小さなお世話なのッ」
「それを言うなら小さな親切余計なお世話……って、そんな言葉ありませんよ」
「あぁあ、んもう! 意味なんかどうだっていいの。出てって! とっとと出てって!」
 えりかの中の何かがぷちんと切れた。彼女の顔は熟れた林檎のように真っ赤に染まり、有無を言わさずつぼみを部屋の中から放り出してしまった。何度戸を叩こうとも返事はない。これ以上粘っても結果は同じだろう。つぼみは抵抗を諦め、彼女の母にさよならを言って来海家を後にした。
「つぼみ、つぼみー! ちょっと待ってくださいですっ」
 落ち込むつぼみに声をかけたのは、押し入れの隅で震えていたコフレ。えりかが作業に没頭した隙を見計らい、窓から脱け出してきたのだ。
「あぁ、コフレ。すみません、力になれなくて……」
「別につぼみが悪いんじゃないです。でも今回ばかりはボクも失望しました。えりかがあんなにも意地悪だったとは」
「意地悪とは……、違うんじゃないでしょうか」コフレの言葉に、つぼみはそっと目を伏せて答える。「えりかだってとっくに分かってる筈です、悪いのは自分だって。けれどこじれにこじれて、自分から謝り辛くなってるだけなんだと思います。
 今わたしたちが何を言っても暖簾に腕押し、糠に釘。意味が無いんですよ」
「だとしたら、そんなユウチョウでいいんですか? そういうこじれは後になればなるほど……」
「えぇ、放っておいても良いことはありません。なんとか、しなくちゃ、ですね」
 退室の際に一枚だけ掴んで持って来たデザイン画を握り締め、つぼみはにこやかに微笑んだ。

◆◆◆

 ――――プリキュア! ゴールドフォルテバースト!
 ――――ほわわわ、わーん……
「きぃぃぃーッ!こ憎たらしいサンシャインめっ、おッ覚えてなさいよぉん!」
 時を同じくし、希望ヶ丘の河川敷では、巨大なデザトリアンを従えたサソリーナとキュアサンシャインが戦いを繰り広げていた。とは言え、駒のデザトリアンを浄化されたサソリーナに勝ち目はなく、彼女はまたハンカチを噛み、弁髪状の長い髪を揺らして逃げていた。

「ふふふーん。おととい来やがれでしゅー」
「覚えてなさいって……、毎日顔を合わせてたら嫌でも覚えると思うんだけどなぁ」
 彼女がプリキュアとして戦いを始めてから早六日。サソリーナは毎日休まずデザトリアンを送り込み、その都度サンシャインに浄化されていた。顔も名前も独特の口調すらもきっちりと覚えている。
 こうなると気になるのはサソリーナの目的だ。幾ら何でも六度負けて、今のままでは勝ち目が無いことくらい、彼女だって理解している筈だ。そこまで愚かな連中だとは思えない。
 サソリーナは今までの戦いを通じて、自分にどんな罠を張っているのだろう。小首を傾げて思案を巡らすサンシャインの胸元に、妖精のポプリが不安げな顔をして飛び込んで来た。
「何でそんな顔してるんでしゅ? 勝てたのが嬉しくないんでしゅか? 街の平和も、こころの大樹も護れたのに、どうして」
 その問いに、それは違うと首を振る。「そりゃあ勝てたのは嬉しいよ。でも、あのサソリーナが何か仕掛けてくると思うと、気が気でなくて」
「なぁんだ、そんなことでしゅか」ポプリは安堵の溜め息を漏らして彼女の周囲を何度か回る。「どんな敵が相手でもサンシャインは負けないでしゅよ。だってサンシャインはどんなプリキュアより強くて、何より可愛いんでしゅからー」
「か、可愛い……!」サンシャインの頬がだらしなく緩む。「そうだね……、あぁいや、そうよね! 私、すっごく可愛いものね! 平気、平気!」
「そうでしゅ。万事オッケー問題無しでしゅ!」
 浮かんだ疑問を脳裏に追いやり、二人して朗らかに笑う。
 一方で、彼女たちから逃げ延びたサソリーナは、苦い表情を浮かべ、街の暗がりを肩を怒らせ駆けていた。
「くぅぅーッ! 生意気な黄色ッ、憎たらしい小娘めッ! ぜっっっったいに、痛い目見せてやるんだからぁん!」
 ――――おうおう。こりゃまたずいぶん荒れとるのう、サソリーナ。
 路地裏の暗がりから、サソリーナを呼び止める声がする。修練を終えて地球に戻ってきたクモジャキーだ。
「誰かと思えばクモジャキーじゃない。何の用? っていうかアンタ汗臭さ過ぎよぉん。早く着替えてらっしゃいな」
「むむ。何を言うか、特訓の為についた傷は男の勲章。流れ出る汗は男の香水ぜよ。女のお前にはそれが分からんと見える。可愛そうになぁ」
「言い得て妙だけど、臭いものは臭いの。っていうか何しに来たのよ。アンタの出撃命令は取り消された筈でしょおん?」
「無論、不甲斐ないお前を叱咤する為に決まってるぜよ。ここ数日の体たらくは何だ。キュアサンシャインを倒すどころか、デザトリアンをこころの大樹の肥やしになるばかり。しかもその行いを反省せず、同じことを何度も繰り返している。こんなことをして、何になると言うのか! 答えるぜよサソリーナ」
 クモジャキーからすれば当然の疑問だ。断腸の思いで出撃を譲ったと言うのに、何故なのか。今にも殴りかかって来そうな彼に対し、サソリーナは鼻で笑ってこう答えた。
「安心なさいなクモジャキー。負けるのも作戦の内。けど……それももう終わり。キュアサンシャインの弱点はもう特定済みなの。後はガンガン攻めるだけよぉん」
「馬鹿な。大目玉を喰らわんが為の屁理屈に決まってるぜよ」
 額に何層もの皺を寄せるクモジャキーを、サソリーナは鼻で笑ってあしらう。「ま、どう思おうがアンタの勝手。アタシの言葉が嘘かどうか、明日ハッキリさせてあげるわぁん」
 言って高笑いをし、サソリーナは裏路地から姿を消した。

◆◆◆

「はぁ……ハァーッ……。できた、出来た、ようやく……」
 来海えりかが、生徒会長・明堂院いつきより課題提出の命を受けてから一週間、及びキュアサンシャインが希望ヶ丘に現れてから七日。
 絶対に不可能だと思われた件の課題は、一週間の徹夜とそこに費やした情念(主にいつきの横暴に対するもの)の力で、奇跡的に完成に漕ぎ着けた。最終日である今日は体調不良を理由に学校を休み、碌に食事もせず作業に没頭。自分でもよく出来たと己を褒めたくなる。
 とはいえ、時刻は既に午後三時を回っており、生徒会役員会議が始まるまで時間がない。
「って、何よもう三時!? ヤバいでしょマズいっしょアリエナイっしょ! あぁあもう、なんで教えてくれなったのよ、つぼ……」
 つぼみ、と言いかけて押し黙る。そうだ。彼女は昨日自身が追っ払ってしまったではないか。
 今日は迎えにさえ来てくれなかった。かの一件が元で、遂につぼみにまで見捨てられてしまったのだ。
 心の中で黒い靄《もや》が渦を巻く。嫌な感情が湧き上がってくる。このままではいけない。軽く顔を洗って髪を整え、強引に制服に袖を通した。
 学校までは遠いが、作品は完成しているし、走れば何とか間に合う距離にある。えりかは日々の自分の怠慢さを恨みつつ、息を切らせ、一心不乱に駆け出した。

 ――――おーっ、ほっほっほ! キュアサンシャイン、今日がアンタの最後よぉん、最期なのよぉおん!
 ――――きゃーッ! いやー! ぬるぬるー! べっとべとぉー! 汚い危ない半端じゃなーい!
 ――――何してるでしゅサンシャイン! 逃げてないで戦うでしゅぅううう!

 河川敷から叫び声が聞こえた。驚いてそちらに目を向けると、キュアサンシャインがサソリーナ率いるデザトリアンと、所狭しと戦っている。
 それだけならここ数日定番の出来事だ。しかし今日は勝手が違う。ミキサー車の牽引タンクのような顔のデザトリアンは、サンシャインの体を泥で汚し、彼女はなすすべ無く逃げ回っているではないか。
「ふっふーん。予想以上の効き目じゃなぁい。潔癖症もここまで来ると憐れなものねぇ。さぁデザトリアン、もっともっとあいつを汚くしておやり!」

「ちょっと……なんなのよあれは! やられてんじゃん、あたしよりずーっと強いはずのサンシャインが、何で泣きべそかいて逃げ回ってんのよ!?」
 えりかは気が気でなかった。曲がりなりにもプリキュアである自分が、この一週間好き勝手出来たのは、キュアサンシャインがべらぼうに強かったからだ。
 しかし彼女が敵わないとなるとどうなる。戦力にはならないが自分だってプリキュアだ。戦いを断るわけには行かなくなってしまう。
「えりか! こんなところに居たですか!」
「うぐ……」厄介な奴が来たと肩を竦める。デザトリアンの気配を感じて、コフレがここまでやってきたのだ。
 コフレは苦戦するサンシャインたちを指差し、えりかの耳元で叫ぶ。「あれが見えないんですか!? サンシャインがピンチなんですよ、同じプリキュアが加勢しないでどーするですか!」
 前髪を引っ張って視界を固定させんとするコフレに、えりかは首を振って抵抗する。「行ったって無駄に決まってんでしょうが! あたしはあの子と違って弱いんだし」
「最初から無理とか無駄とか決めつけるなです! 勝負は時と場合の運、やってみなきゃ分からないじゃないですか!」
「運に頼る時点で望み薄じゃない! あたしはこれを生徒会に持ってかなきゃ行けないの、はーなーしーてー」
「そんな勝手は許さないですぅう」
 えりかはコフレを引き剥がさんと彼の頬を掴み、逆にコフレも彼女の頬を掴んで取っ組み合う。
 引き剥がすので手一杯だったせいか、えりかは自身の作品を入れた紙袋が、土手を滑ってデザトリアンたちの元へ落ちたことに気付かなかった。
 ――――ドーロドロドロー! ゼンブゼーンブヨゴシチャウゾー! ドロロロー!
「あ……」
 そして、彼女が紙袋の所在に気付いた瞬間、それはデザトリアンに踏み潰されてしまった。この日の河川敷は先日の雨のせいでぬかるんでおり、踏まれた衣類は泥と圧で凄まじいことになっているだろう。それは、遠くから見ていたえりかにもよく分かった。
「あっ、あぁあ……あたしの……かだ、課題……」
 目に見えて取り乱している。当然だろう。いくらなんでもと憐れに思い、コフレは戦慄くえりかを励ますべく近付くが、彼女に頭を鷲掴みにされた上、尻の中に無理矢理手を突っ込まれた。
「あひぃ……っ!? なな、な! 何をするんですかえりか! ひひ、ひあぁっ」
「種ェ……種を出せ出せ、出しなさーい! もう許さない、あぁもう許せない! 種種種ェ!」
「い、いだだ……、プリキュアの種は、おっ、お尻からはッ、出ないですぅぅう」
「うっさい! つべこべ言わずに出す! ほら出す! すぐに出すぅ!」
 尻をほじくられ、叫びとも喘ぎとも付かぬ声を上げるコフレ。その衝撃からか、彼の胸のブローチからプリキュアの種が飛び出した。
「なんだ、やっぱり出るんじゃん。使わせてもらうよ、コフレ」
「いた、た……もうお婿に行けないですぅ……」尻をさすりつつ、えりかに問う。「今の今まで敵わないって言ってたのに、それでも行くですか?」
「勝てるとか負けるとかじゃないの。あいつだけは絶対に許せない! 細かいことは、あいつぶん殴ってから考える!」
 ――――プリキュア! オープンマイハート!
 溢れる激情をパフュームに込め、キュアマリンに変身。土手を一気に駆け降りて、デザトリアンに渾身の飛び蹴りを見舞った。

◆◆◆

「あわ、あわわわ……あわ」
「ぬァんでそんなに逃げ腰なんでしゅか! いつものサンシャインならあんな奴、ちょちょいのちょいでやっつけちゃうはずなのに!」
「だってだって、だってぇ……、ヌメヌメでイヤぁな泥を吐くんだよ!? 」
「やる前からそんなでどうするでしゅ! 逃げてばっかで一回も攻撃を当ててないじゃないでしゅか!」
「ダメだよぅ、無理だよぉ……だって、だってェ」
「だってもヘッタクレも……おぉぉお!?」
 言い終わらないうちにデザトリアンの巨大な拳が振り下ろされる。言い争いに終始していたサンシャインに、今更バリアを張る余裕は無い。
 最早これまでかと目を閉じたその時、 キュアマリンの飛び蹴りによって、拳の軌道は大きく逸れた。
「あ……あれ? どうして、私……」
 倒れたまま起き上がらないデザトリアンを尻目に、サンシャインの首根を掴んで激しく振る。とは言え、彼女の方が背が高い為、その姿は親に物をねだる駄々っ子のようにしか見えなかったのだが。
「ちょっとあんた! なんでこんなヤツに負けてんのよ、プリキュアでしょ!? こんなヤツとっとと倒しちゃってよ! じゃないと……」
「あたしが楽出来ないでしょ」という言葉を遮り、サンシャインは「無理だよ」と言い返す。
「絶対に無理。だって、だってェ……」
 ――――口から吐く泥で、とっても可愛いこのお洋服を汚してくるんだよぉ!?
「は……あぁ!?」
 開いた口が塞がらない。余りのことに継ぐべき言葉が見付からなかった。
 ――ムシスルナー! ドロドロドロー!
 そんなことお構いなしだと言うように、デザトリアンの攻撃は続く。飛んできた拳と放たれた泥で我に帰ったマリンは、サンシャインとポプリを抱え、堤防の高台へと跳んだ。
 彼女たちを追わんとデザトリアンも土手を駆ける。しかしその巨体とそれに見合わぬ短足では上り坂を駆け上がることが出来ず、横転して川の中に落ちてしまう。
 マリンに抱き抱えられたサンシャインは、顔を真っ赤にし、消え入りそうな声で呟く。
「私、プリキュアが好き。可愛いお洋服を着られて、敵を倒して皆から尊敬されて、それでいて女の子らしくいられるのがとっても嬉しかったの。けど……、可愛くなきゃ、こんな汚れたお洋服じゃ……、プリキュアである資格なんてない!」

 ――――アホかあんたはわああああッ!
 もう我慢出来ない。マリンはサンシャインの鳩尾に抉り込むような右ストレートを叩き込み、彼女を地面に押し倒す。気が動転して戸惑うサンシャインに乗り、襟首を掴んで今一度アホかと叫んだ。
「このバカ、大バカ! 何がお洋服汚れちゃうよ、何ァがプリキュアになる資格が無いよ! あたしに言わせりゃあね、可愛い女の子は誰だってプリキュアになれるの! 服の汚れが何よ、あんたがエロ可愛いことには何の関わりも無いじゃない!」
「かッ……可愛い? この」“僕が”、と言う言葉を喉元で押し留め、「私が」と付け加える。
 マリンは小さく頷くと、サンシャインの体に両手の平に向けた。
「それにほら、こんなもの洗えば一発で消えるじゃない!」
 手の平から繋ぎ技・マリンシュートを放つ。サンシャインの汚れは一瞬で洗い流され、綺麗さっぱり無くなった。
「ドロドロが……こんなにも容易く……」
「あんたがなんで潔癖症気取ってんのかは知らないけどさ、一応プリキュアなんだしさァ、もっと頼り甲斐のあるとこ見せてよね。分かった!?」
「えぇ、解ったわ」サンシャインは頬をほんのりと赤く染め、「私が間違ってた……。これからも一緒に戦って下さいね、センパイ」
「は……あぁ!?」
 丸く収まったかと思いきや、更に意味不明な展開に発展し、開いた口が塞がらないマリン。
「センパイって何よセンパイって。この街にはあんたがいるじゃない、あたしはもう引退するのっ」
「またまたァ、そんなご冗談を」マリンの言うことに嘘はないが、サンシャインはまともに取り合ってくれない。
 どうすればいいのかと思い悩むマリンの眼前に、デザトリアンの泥弾が飛ぶ。咄嗟に水の障壁を張って難を逃れるが、この一撃で彼女の堪忍袋がとうとう切れた。
「あぁもう……あーもー、あーもー、あぁ、もう! うざったい! 一気に片付けてやるっしゅ! サンシャイン! あんたもぼけーっと見てないで手ぇ貸して!」
「はいっ、喜んで!」マリンの申し出に、サンシャインは目を輝かせて快諾するが、「でも、一体何をするんですか?」
「そんなのはやりながら考える! フォローお願いね!」
「えぇっ、ちょっと……ちょっとォ!」
 ――――マリーン、タクトッ!
 タクトを呼び出し、自身の力を目一杯引き出したマリンは、サンシャインの制止を振り切り、夕陽を背負って跳び上がる。このまま真一文字にデザトリアンを斬り裂くつもりなのだろう。
 怒りに任せて飛び出したマリンには、当然策など無い。サンシャインにもそれは分かっていた。
 無策で突っ込んだマリンに対し、自分がすべき事とは何か。答えはすぐに見付かった。
 彼女は武器・シャイニータンバリンを呼び出して天に掲げ、発生した金色の向日葵をマリンとデザトリアンとの間に割り込ませた。

「うぉおっ!? 何何!? 何なのよこれ!」
 金色の向日葵を潜り抜ける。マリン自身は何ともなかったのだが、マリンタクトの穂先が金色のエネルギー全てを取り込み、デザトリアンすら越える、とてつもなく巨大な刃と化した。
「わかんない……、なんだかよくわかんないけど、このままやってやるっしゅ!」
 ――――プリキュア! オーサンシャインスラァァァアッシュ!
 青と金。二色のエネルギー交わる刃を真一文字に振るう。デザトリアンは金色の光を放って消滅し、余波で川の水がモーゼの十戒の如く真っ二つに引き裂かれた。
「ちょっと……、ちょっとォ! どういうことなのよぉん!」自分が勝つと信じて疑わなかったサソリーナは、白目を剥いて顎が外れんばかりに口を開く。
「こんなの嘘、マヤカシに違いないわァん! アタシの一週間の苦労が、徹夜までして考えた作戦が……! 何でよ、何でアタシが負けるのよォん!?」
 怒りで地団駄を踏むサソリーナに、サンシャインが凛とした表情で答える。「プリキュアの力を甘く見たようね、サソリーナ。私たちは……」
「あぁもう! まどろっこしい!」サンシャインの言葉を強引に遮り、マリンが口を出す。「あたしたちは強い。あんたは弱い! 他に理由なんか無いでしょうが。何なの、まだやる気? 海より深いあたしの心も、今日は暴風波浪警報発令中よ!」
「く、うう……」言葉の意味は分からないが、今のサソリーナにマリンたちを倒す術は無いことだけは確かだ。「今日の所はアタシの負けにしといてあげるわぁん。けど、次に会った時は完膚無きまでに叩きのめしてやるから、覚悟しておきなさぁい!」
 捨て台詞を残し、跳んで逃げ去るサソリーナ。サンシャインは逃げるなと喚き立て、その場でたたらを踏むマリンの、後ろからそっと抱き締めた。
「ありがとうキュアマリン。あなたのお陰で、私は……」
「気にしないで。あたしは課題滅茶苦茶にした奴にお仕置きしただけだしさ」
「課題……?」
「そうそう課題。提出しないと……」
 ――――あっ、あぁぁぁぁあッ!
 思い出すと同時に、眼前にあの洋服が留まる。デザトリアンに踏み潰され、服としての体裁を失った布の塊だ。
 土手から街の方へと首を向ける。今の時刻は三時半、生徒会役員会議は既に始まっている。
「まずい……まずいまずいまずいィ!!」
「ちょ、ちょっとマリン……」
 呼び止める声に応じぬまま、布の塊を抱えて走り出すマリン。独り残されたサンシャインは呆けた顔で走り去るマリンを見つめていた。
「……って、何をしてるでしゅかサンシャイン!」そんな彼女にポプリが突っ込みを入れる。「『せーとかい』のお仕事、まだ終わってなかったはずでしゅよ!」
「生徒会……あっ、あぁ!」

◆◆◆

 息を弾ませ、外履きのまま廊下を駆ける少女が一人。来海えりかは今、猛烈に焦っていた。
 なんとか間に合ったはいいが、肝心の提出すべき洋服は、デザトリアンとの戦いの最中、見るも無惨な状態に変えられてしまったからだ。
 こんな状態で提出したとして、あの鬼のような生徒会長が許してくれるとは到底思えない。やがて足も止まり、急いでも無駄だと俯《うつむ》いてしまう。
「アホくさ。今更焦ったってどうにもならないって言うのに……何やってんだろ、あたし」
 口ではそう言いつつも、足は歩みを止めず、ファッション部を目指して進む。あれだけ言って仲違いしたと言うのに、まだ彼女たちを頼るのか。なんというロクデナシだろう。えりかは自分の情けなさを省みて自嘲気味に笑い、頬を一筋の涙が伝った。
 これまでファッション部”だった”教室の前で足が止まる。生徒会に看板を外され、ただの被服室に戻っていることだろう。
 自分は今ここで何をしているのか。謝って許しを乞うのか? これまで散々猶予を貰っていたのだ、詫びた所で火に油を注ぐだけだ。
 ドアの取っ手を握る。だがそれを開け放すだけの勇気がない。帰りたい、このまま何処かへ逃げ去りたい。けれどそうも言っていられない。
 意を決して取っ手に力を込めたその瞬間、ドアはえりかとは別の力によって開け放された。
「うえ……えっ!?」不意を突かれて前のめりに転ぶ。そんなえりかを受け止めたのは、ドアを開けた張本人、ファッション部部員のとし子であった。
「えりか……、あんた何やってんの」
「とっ、とと……とし子! いや、あの、その」
 予想外の展開に二の句を継げず戸惑う。顔を引きつらせて何も言えないえりかを、とし子たちファッション部員は呆れ顔で出迎える。
「また遅刻……。生徒会の人たち、もう帰っちゃったよ?」
「え、えぇっ……! ってことは、やっぱり、ファッション部は……」
 今にも泣きそうな顔をするえりかに対し、部員たちは穏やかな表情でこう言った。
「泣かないの。部が本当に無くなってるのなら、わたしたちがここにいる訳ないでしょう?」
「……へ?」鳩が豆鉄砲を食ったような顔をし、改めて被服室の引き戸を見遣る。えりか自身がかつて描いた「ファッション部」の看板は、変わらずそこに掛けられていた。
「えっ、えっ!? これって……どういうこと!?」
「どうもこうも、決まってるでしょ」一度えりかから視線を外し、微笑み混じりに言葉を継ぐ。「続けてもいいってさ、ファッション部!」
 次いで、眼鏡に黒長髪のるみ子がそれに続く。「生徒会長が来てないからって渋ってたけど、押し通してあげたんだから。感謝しなさいよね」
 最後に、なおみがえりかの肩を叩いて言う。「でも、えりかが本当に感謝しなきゃいけないのは花咲さんなんじゃない? あんなに心配されて……羨ましいったらありゃしない」
 ファッション部の存続、無理に押し通した、つぼみに感謝しなくてはならない。単語の羅列ばかりで全く訳が分からない。
 畳み掛ける三人を手で御し、えりかは彼女たちに待ったをかけた。「わけわかんないよ。なんで部を続けてもいいの? なんであたしがつぼみに感謝しなくちゃいけないわけ?」
「鈍いわねぇ、えりかって」とし子が不敵に鼻を鳴らす。「こういうことよ、こーゆーことっ」
 戸惑うえりかの眼前に、一着のワンピースをさっと掲げる。えりかの目が大きく見開かれ、同時にあっと驚きの声が飛んだ。
「これ……、あたしがデザインしたワンピース! 一人で時間も無いから、没にしてゴミ箱に捨ててたのに!」
「何を今更。あんただってもう分かってるんじゃないの? 花咲さんがそれを持ってきて、わたしたちに見せてくれたのよ」
 とし子の言葉にるみ子が続く。「どーしようもなくだらしないけど、デザインセンスだけは本物だしねー。あれだけ頼み込まれちゃ受けない訳には行かないっしょ」
 かのデザイン画を差しだし、なおみがそれらを執り纏める。「えりかに愛想を尽かす気持ちは分かります。けれど、お洋服作りへの情熱までは反故にしてません。皆さんだって、えりかのそういう所に惹かれたんじゃないんですか? 許してあげてとは言いません。けれど、今回だけは助けていただけないでしょうか……だって。
 あんた、どこまで花咲さんに信頼されてんのよ。フツーの友だちじゃこんなことしないって。もしかして、普通のカンケーじゃないの?」
「そう、だったんだ……」
 事情を全て聞き終えたえりかは、とし子たちと顔を合わせられず、その場に立ったまま項垂れる。
 何もかも自分が悪いのに、つぼみの口添えがあったとは言え、力を合わせてやり遂げ、部を存続させてくれた。なのに自分は何をした? 彼女たちにそっぽを向いて謝ることもせず、一人で殻に閉じ籠っていただけじゃないか。今更どんな顔をし、何と言って良いのか分からなくなったのだ。
 借りてきた子犬のように項垂れ、何も言わずに立ち尽くすえりかを見て、部員の三人は彼女に言う。
「何よ何よ、えりからしくないじゃん。私たちに先に作られちゃって僻《ヒガ》んでんのぉ?」
「わたしたちだってファッション部員なんだから。あんたのお荷物じゃないんだからねっ」
「えりかと花咲さん。二人の仲良しぶりが見られなくなるのは嫌だしさぁ」
 誰もえりかを責めようとはせず、いつも通りに接してくれる。もう限界だ。心の奥底から込み上げる激情が、涙となって目元を伝う。
 ――――心の友よぉぉぉぉおおお!
 溢れんばかりの涙を流し、鼻声混じりの叫びと共に三人の胸の中に飛び込んだ。
「ちょっ!? 何するのよえりか!」
「喜びを全身で表現するとは。愛《う》いやつめ、このこのッ」
「うわっ、凄い鼻水……。せめて鼻水くらいは拭いといてよ、ハンカチ貸してあげるから」
 三人もえりかの肩を抱き、一つの輪となった。えりかは友達の大切さを改めて理解し、三人とも和解出来て、すべてが丸く収まる……筈だった。
「……あれ? そういえば、つぼみはどうしたの?」
「花咲さん? 花咲さんなら確か……」
「あの場に居なかった生徒会長に許可を求めに出てったんじゃない? 別にそこまですることないのに、律儀だよねー」
「ふーん……」
早くつぼみに会いたい。彼女たちと自分との橋渡しをしてくれたつぼみにお礼を言いたい。そうした言葉を胸に抱いたまま、今は部員たちの胸にそっと顔を埋めた。

◆◆◆

 えりかがファッション部部員たちとの絆を取り戻していた一方で、花咲つぼみは行方の知れない生徒会長を探し、校内を必死になって駆け回っていた。
 職員室を含む校内全ての教室を二周したが、生徒会長はどこにも居ない。もしやサボったのか? いや、職務に真摯《しんし》に取り組む彼に限ってそんなことは――――、などと言った正邪渦巻く葛藤を抱きつつ、南校舎三階のとある廊下に差し掛かったところで、小休止にと壁に寄り掛かる。
 眼前の光景に、彼女が不可思議な違和感を見込んだのはその時だ。
 廊下の窓が開き、薄い桃色のカーテンが風に舞って揺れている。それだけなら何の問題も無いのだが、窓の取っ手付近に『五つの小さな穴』が開いているともなると話は別だ。
 よくよく見るとおかしいことだらけだ。穴の周囲にはひび割れが一つも無い。力づくで穴を開けたのなら、周りに亀裂があって然るべきだ。
そもそも何故穴を開ける必要があったのか。そういえばこの時間帯、この付近の窓は施錠されてしまうと聞いた。だから穴を開けて校舎に入ってきたというのか? 入りたければ校舎の入り口から直接入れば良いではないか。それどころかここは三階。侵入経路としては不自然極まりない。
 考えれば考えるほど謎は深まるばかり。どうしてこんな……と頭を悩ますつぼみの耳に、妙な物音が届いた。
 南校舎三階には、文科系の部活ですら使用している教室は無い。この時間帯には生徒はおろか教師ですら殆ど立ち入らない場所の筈だ。それでもやってくる奇特な者が居る可能性だって否定できないが、不自然な窓の件もあって困惑していたつぼみは、好奇心に負け、音のする方向――フロア奥の女子トイレ内に足を踏み入れる。

 ――――いやぁ、なんとか定例会までには間に合ったあ。
 ――――全く、サンシャインは大事なところで抜けてるでしゅね。そんなのでよくこのがっこーの『せーとかいちょー』が務まるものでしゅ。
 ――――面目ない。その分仕事で返すから許してって。ね?
 薄暗いトイレの中で、一瞬だけ目映い光が輝いた。光の中から現れたのは明堂院学院中等部の生徒会長・明堂院いつき。“彼女”こそが、向日葵のプリキュア・サンシャインだったのだ。
 誰の目にもつかないと高を括り、三階のこの場所を選んだいつきだったが、今回ばかりは間と運が悪過ぎた。物音を察して探りに来たつぼみに、変身を解くまで全てを見られてしまったのだ。

「あ、あ……あぁ……」驚きのあまり、つぼみは目を見開いたまま声が出ない。
 彼女の口から漏れ出す声で、いつきは誰かに観られたことと、その重大さを瞬時に理解した。
「は……花咲さん!? どうしてこんな……っていうか、今のを……」
 まさか見たのかと詰め寄り、必死な表情でつぼみの肩を掴む。いつきに体を触られ、漸く我に返ったつぼみは、ほぼ反射的に彼女の頬に左裏拳を喰らわせた。
咄嗟に顔を左に捩じって衝撃をいなすも、何故そうなるのか、いつきには理解が及ばない。「どうしたの花咲さん、ボク……なんで今殴られたんだい!?」
「あ、う、あ……」つぼみの頬が、いや顔全体が熟れたトマトのように紅潮して行く。頭の先から湯気が出るんじゃないかという程まで赤くなったその時、彼女はいつきを突き飛ばし、大声で叫んだ。
――――へ、へ、へ……ヘンタァァァァァァァァァァァイ!!

 在校生の来海えりかたちと、つい一週間前に知り合ったばかりの花咲つぼみとでは、明堂院いつきという人物の情報に、ある決定的な齟齬がある。
「彼女」は家のとある事情から、“女子”でありながら、男子の制服(に近いもの)を着用している、所謂「男装の麗人」である。それは在校生周知の事実であり、その上で同性に告白されることも日常茶飯事だ。
 だが、転校してこの方、生徒会と関わりを持たなかったつぼみはその事実を知らない。生徒会長・明堂院いつきは「容姿端麗な美男子」という認識しか持っていないのだ。
 そんな“彼”が「プリキュア」として活動し、あまつさえ“女の子の様に”振る舞っている。何も知らぬつぼみからすれば、今の行動は「才色兼備頭脳明晰な美男子なのに、女の子のフリをして女装を楽しむ変態」という風にしか見えなかったのだ。

「変態! 変態! あぁあ……きゃああああああああああッ!」
「ヘンタイ!? 違う、違うんだ花咲さん! ボクは……ボクはぁああああああッ!」
 あまりのことに感情を抑え切れず、凄まじい速さで廊下を抜け、階段を駆け下りる。
 いつき渾身の叫び声も、今のつぼみには全く届かなかった。


※※※

 これまでのお話は『小説家になろう』当時に掲載したものの加筆修正版でしたが、本話より完全新規掲載になります。
 はい、そうです。本話を以てストックが完全に無くなりました。現時点で次話の掲載目途が一切立っておりません。この先どうなるんだろう……。

 やまだかつて、いつき/サンシャインがこんな扱いになるハトプリ二次創作があったであろうか。いや、深く潜れば幾らだってあるんだろうけど。終盤の2~30行はノリノリで書いてました。

 単なるギャグ二次創作なのに、共闘部分で少しでもかっこいい! と思えるような部分を書いてしまって自己嫌悪。
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まとめtyaiました【ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #6】

 ――――前回までのあらすじ。 本来なら春先に出す筈だった活動報告書を出さなかったことで、生徒会長・明堂院いつきからファッション部の廃部を言い渡された来海えりか。 つぼみの弁明でなんとか廃部は免れたものの、活動報告書の代わりに『部員たちの努力が垣間見え...
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