スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←キバの世界・世界観および設定まとめ →ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #6
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


総もくじ  3kaku_s_L.png Journey through the Decade Re-mix
総もくじ  3kaku_s_L.png これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー
もくじ  3kaku_s_L.png 観た映画の感想
もくじ  3kaku_s_L.png 自作のアレな絵
もくじ  3kaku_s_L.png わかめ新聞雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【キバの世界・世界観および設定まとめ】へ
  • 【ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #6】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「二次創作」
ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん

ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #5

 ←キバの世界・世界観および設定まとめ →ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #6
 ――――前回までのあらすじ。
 プリキュアとしてあまりに怠惰に過ごしていたせいで、相方のつぼみに処分されるのではないかと焦りに焦るえりか。
 思い付きで砂漠の使徒に寝返ってみたものの、つぼみの強さは凄まじく、下剋上するどころか逆に『絶対に敵わない』と恐怖感を植え付けられてしまったのでした。


#5 ちょっとマジ!? 二人目のプリキュア、サンシャイン!


 照りつける日差しが人々の水分を奪い、不快な気持ちにさせる初夏の候。
 来海えりかと花咲つぼみは、ファッション部の活動を行うべく、校舎奥の被服室へと向かっていた。
「急いでください、えりか。このままじゃ遅刻……あぁいや、これ以上皆さんを待たせてどうするんです。仮にも部長でしょう」
「だってしょうがないじゃん。今日が活動日だってすっかり忘れてたんだから」
「なんで部長であるあなたが活動日を忘れているんです!」
 今日は週末の第二土曜日。部活動のある生徒以外は学校に縛られることがないと喜び休む神聖な日だ。当然えりかもそれに倣って朝から昼まで、冷房の効いた部屋の中で寝転んでいようと思ったのだが、プリキュアとしての活動(ほぼつぼみに共生されたものであるが)に忙殺されたえりかは、ファッション部部長としての自身の立場と、活動日をすっかり忘れていたのだ。
 今日だってつぼみが家まで来て、無理矢理起こして連れて来なければ、ずっと布団の中に包まっていたことだろう。
 つぼみはこんな体たらくでよく部長が務まるなと溜め息をつき、えりかは彼女に手を引かれつつ、必死に弁解し続けていた。

「んなこと言ったって仕方ないじゃん。あたし、プリキュアとしてつぼみとずっと一緒に戦ってきてるんだよ? 生活リズム崩れっぱなしなんだよ?」
「確かにそうですが、それとこれとは話が別ですっ」
「別じゃないでしょ何言ってんの! 他にプリキュアやってくれる人なんていないんだしさ、怒ったり文句言ったりばかりじゃなくて、つぼみだって責任取ってよね」
「なんとなく腑に落ちませんが……、弁解はします。仕方がありません」
「そぉそ。いやぁ、つぼみは話が分かるぅ!」
「もう、今回だけですからね」
 つぼみが手伝うと言った途端に上機嫌になって、鼻歌さえ鼻ずさむえりかに対し、つぼみは甘やかしすぎたのではないかとため息をついて項垂れる。
 あぁだこうだと言っているうちに、部室である被服室が見えてきた。部員たちへの弁解を頭の中で必死に考えるつぼみと、彼女に全てを任せて自分はただ傍観しようと考えていたえりかの目に飛び込んできたのは、教室を取り囲む男子女子の軍団と、囲まれてにべもなく項垂れるファッション部員の面々の姿だった。
「うわっ、何コレ!?なおみ、としこ、るみ子、あんたたち、何やったの!」
 えりかの素っ頓狂な声に気付いた三人の部員は、自分たちを囲い込む男女を押し退けてえりかの方へと向かう。
「何やったのって何よ! 全部あんたのせいじゃない、えりか!」
「むしろこっちが聞きたいぐらいよ! “生徒会長“に目ェ付けられるって、相当ヤバいことじゃない!」
「っていうか、部が無くなるかどうかって時に、なんで遅刻してるのよ、あんたは!」
「ごめんごめん謝るって……って! な、『無くなる』!?」
 部員たちの口から発せられた衝撃の一言。あまりのことにえりかは目を見開き、野球のボールが中に入りそうな程大きく口を開けて驚いた。
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってください皆さん。ファッション部がなくなるってどういうことです? というか、この人たちは何なんです?」
「そうよ、そうそう! 訳はともかく理由を言いなさいよ!」
――――それは“ボク”から説明しましょう。花咲つぼみさん、来海えりかさん。
 訳が分からないと驚き戸惑う二人。彼女たちの声に応じるかのように、ファッション部部員を取り囲む男女の中から、白い詰襟の制服を身に纏った人物が顔を出した。
背格好はえりかたちと然程変わらず、首筋辺りまで伸びた、艶のある栗色の髪をし、男にも女にも見える美しく端正な顔立ち。つぼみはその人物の“美しさ”に心を奪われ、えりかはその人物が誰であるかをすぐに理解し、嫌味な顔をして舌を打った。
 白い詰襟の人物は二人に一礼をして微笑む。非常に爽やかな微笑みであった。
「花咲さんは初めまして、でしたよね。ボクは明堂院《みょうどういん》いつき。中等部の生徒会長をしています。どうぞ、お見知りおきを」
「はは、ははは、はいッ! ふつつか者ですが、どうも……」
 いつきに見惚れてどもるつぼみを横目に見、何がそんなにいいのかとつまらなそうな表情を顔に浮かべるえりか。いつきはつぼみと握手を交わした後、爽やかな微笑みから一転、険しくも凛々しい表情を作ってえりかの方へと向き直った。
「そして来海さん。ボクが生徒会の役員たちを連れてここに来た理由。当然、分かっていますよね?」
「なっ、何だって言うのよ。あんたたち生徒会に攻め立てられる理由なんて、何にも思い当たらないんですけどー?」
「あなたにはなくてもこちらにはあります。この書類に……見覚えは?」
 えりかの前にこれ見よがしに出された一枚の書類。「部活動報告書」と書かれたそれを目にしたえりかは、額に汗を滲ませて明後日の方向を向いた。
「なっ、何なのかなぁ、しっ、知らないなあ」
「知らないなら何度だって教えてあげますよ。この部活の活動報告書です。活動内容や部費の使用有無を明記し、ひと月に一回は生徒会に提出してほしいと、春の総会で伝えたはずですよ。教えてください来海さん、何故この部の活動報告書は、四月からずっと白紙になっているのです!?」
 とっくのとうに提出すべき書類が提出されていない。この事態に部長であるえりかよりも先に、彼女の後ろでそれを傍観していたつぼみが声を上げた。
「え、えええ、えりか! なんでそんな重要なことまで忘れてるんですか!」
「そんなのあたしが聞きたいぐらいよ! 何なの!? 部活動報告書って何なのよ!」
「だぁかぁらぁ、なんであなたがそれを知らないんですか! 総会に参加してたんでしょう?」
「あのねぇつぼみ、総会なんてものは、てきとーに相槌打って、てきとーに拍手してりゃあいいの。内容なんていちいち覚えてるわけないでしょ?」
「部長であるあなたがそれを言いますか!? どこまで適当なんですかあなたは!」
 自分たちが攻め立てられていることすら忘れ、生徒会役員たちの目の前で言い争いを始めるつぼみとえりか。このままでは収拾がつかないと考えたいつきは、大きく手を叩いて「いい加減にしてください」と彼女たちを一喝した。
「とにかく。活動報告が提出されていない以上、ファッション部は一切活動していないということになる。何もしないでだらけている部活に部費を与え、部室を貸し与える訳には行きません。ファッション部は今日付けで廃部にさせてもらいます」
「ちょっとちょっと、そりゃあないんじゃない!? いくら生徒会の会長だからって横暴でしょオウボウ!」
「そうです! 全面的にえりかが悪いことは認めますが、だからと言って廃部は酷過ぎます。他の部員の皆さんはどうなるんです?」
 えりかとつぼみの返答に対し、いつきはやれやれと首を横に振った。
「活動報告が出されていない以上、活動していないのと同じ。その主張は通りません。……と言いたいところですが、横暴なのは認めます。このままではボクたち生徒会が悪人になってしまう。ですので、こちらから提案があります」
「ていあん?」
「次の生徒会役員会議は来週の月曜日。それまでに何か、ファッション部として作品を制作し、生徒会に提出してください。勿論、なんでも良いわけではありませんよ。あなたたちの努力が垣間見えるようなものでなければいけません」
 生徒会長であるいつきからすれば、これ以上ない譲歩案だったのだろう。しかし定義を用いず“何か”と曖昧で、かつたかだか一週間程度しかない短すぎる猶予に、えりかは冗談じゃないと声を荒げた。
「いやいや、無茶にもほどがあるでしょ! 一週間でそんなもの出来ないっしょ! っていうか、何作れってのよ何を!」
「それはあなたたちにお任せします。ですが、手抜きは許されませんからね。それでは」
 言いたいことを全て言い終えたいつきは、役員たちを連れて被服室を去っていく。えりかは冗談じゃないと食ってかかったが、生徒会の面々は意に解さなかった。
 役員たちがいなくなって暫くの間、えりかはどうしようと呟きながら、何の考えもなくただ部室の中をぐるぐると回っていたが、自分ひとりじゃどうしようもないと判断し、目に涙を浮かべてつぼみたち部員にすり寄った。
「ねぇ、ねぇねぇねぇ! お願い、一生のお願い! 手伝って!」
「手伝って、と言われましても……」
「元はと言えば、えりかが活動報告書のことを忘れてたからこうなったんでしょ?」
「あたしたちは普通に活動してただけで、何も悪くないし。部がなくなるのは嫌だけど、他に入りたい部もあるしねー」
「そもそもあんなカッコいい生徒会長に盾突くこと自体間違いだと思う」
 助けを乞うて見たものの、余程えりかに部長としての人望がないからか、つぼみを含めファッション部員たちの返答は渋い。まともな答えを得られなかったことに怒ったえりかは、語気を強めて「もういい」と部室の引き戸に手をかける。
「あんたたちがそんなに人でなしだったとは知らなかった! もぉいいもん、自分で蒔いた種ぐらい自分の力だけで刈り取ってやるっしゅ」
「ああっ、ちょっと待ってくださいよ、えりかぁ」
 つぼみは勢いで飛び出したえりかを追ったが、他の部員たちが二人を追うことはなかった。泣きべそをかいて廊下を駆けていくえりかの姿に、何か思うことがあったのかもしれないが――――。

◆◆◆

「あぁもう……、ああもう、あぁもう! とし子もるみこもなおみも、あんな人でなしだとは思わなかった! いいじゃん、ちょっとくらい協力してくれたって! 部がなくなるかどうかって瀬戸際なんだよ!?」
 その日の放課後。部員の誰からも協力を得られなかったえりかは、彼女たちへの恨み節を呟きながら、唯一追いかけて来てくれたつぼみと共に家路を急いでいた。
「気持ちは分かりますがえりか、それはあなたがいい加減だったのが原因なのでは……」
「いい加減なのは認めるよ、でもさでもさ、そうなったのもプリキュア始めたからでしょ!?」
「責任を転嫁しないでください。あなたがプリキュアになる前から、活動報告書の話は出ていたんじゃないですか」
 他の部員よりは軟化しているが、つぼみの態度も渋い。親友(だとえりかが一方的に思っているだけなのだが)に裏切られて落ち込む中、追い打ちをかけるかのようにえりかの鞄から妖精のコフレが飛び出した。
「つぼみの言う通りですっ。学業部活と両立できなくて何がプリキュアですか」
「あのねぇ」コフレの言葉でえりかの堪忍袋もとうとう切れた。「あんたがそれを言う? 言っちゃう!? はっきり言っておきますけどね、あたしは別になりたくてプリキュアになったんじゃないんだよ。あんたが! あたしとつぼみを間違えて! ココロパフュームを渡しちゃうからこうなったんでしょ!? つぼみや他の子たちに言われるのはしょうがないにしても、あんたにだけは言われたくないッ」
「それはそうですけど……、ボクたちは無理を強いたつもりはないですっ。むしろ、それに順応できないえりかに問題があるんですッ」
「あぁーッ、とうとう言ったね、一番言っちゃいけないこと言ったー! さっきから言ってるでしょ、戦ってるのはあたしなの、あんたたちじゃなくてあたし! やめてやる! プリキュアなんて、あんたたちとの付き合いだって、全部全部、ぜぇーんぶ!」
 えりかは顔を紅潮させ、変身アイテム・ココロパフュームを投げ捨てて走り去る。コフレは「待って」と彼女を追うが、つぼみに尻尾を引かれて止められる。
「えりかもえりかですが、無理をさせていた私たちにも責任はあります。少しだけそっとしておいてあげませんか?」
「むむむ、つぼみは甘いですっ。砂漠の使徒は待ってはくれないんですよ、その時の気分でプリキュアをやめられちゃあ世界が……」
「でも、えりかは望んでプリキュアになったんじゃないんですよ」ココロパフュームを拾い上げ、物憂げな顔でつぼみが言う。「私と違って、えりかは偶然あなたに選ばれてなっただけ。嫌々やらされてやめたくなるのは当然じゃないですか」
「うう、う……」
 自身の過失と己の身勝手さに気付き、つぼみの胸元に収まって項垂れるコフレ。彼女はそんなコフレの頭を優しく撫でながら言う。「落ち込まないでください。コフレの言うことだって間違いじゃありません。後でえりかに会って話し合いましょう。ね?」
「そう、ですよね……」
 つぼみの言葉にどこか煮え切らない表情で頷くコフレ。彼女の言っていることは決して間違いではないし、自分がえりかに多くを求め過ぎていたのも理解した。だが、彼女が反省したとして、その後もプリキュアとなって戦ってくれるだろうか。コフレにはそれが気掛かりでしようがなかった。
 しかしそんな不安も、何の前触れもなしに空から現れた、巨大なスイカの化物によって、頭の片隅に追いやられることになった。
 つぼみはコフレを抱き締めたまま横に飛び、寸での所で敵の体当たりをかわす。怪物の背後から男の野太い笑い声が上がった。「ふはははは、見付けたぜよキュアブロッサム。以前の借り、ここでしっかり返させてもらうぜよ!」
「あなたは……、砂漠の使徒の『クモジャキー』! こんな時にッ」
「貴様たちの都合など知ったことじゃあないき。デザトリアン、奴をぺしゃんこにするぜよ!」
――――スイーッカッカッカー!
 スイカのデザトリアンは求めに応じ、雄叫びを上げてつぼみに襲い掛かる。つぼみはコフレを遠ざけ、キュアブロッサムの衣装で立ち向かうも、スイカの皮は彼女の予想以上に厚くて硬く、プリキュアでない彼女には手の出しようが無い。
「こん……のぉ!」つぼみの飛び回し蹴りがデザトリアンの眼を突いた。しかし化物は怯む気配すら見せず、逆に彼女の体を掴んで締め上げ始めた。
「うく……ううっ!」締め上げられて苦しげな息を漏らすつぼみ。押そうが引こうがデザトリアンの手は全く緩まない。
「ははは、他愛ない。デザトリアン、そのままキュアブロッサムをミンチにしてしまうぜよ!」
 つぼみを握るスイカの腕に、更に力が強まって行く。骨の上を鉄製のボルトで覆った彼女の体も、耐えきれず軋む音を立て始めた。
 彼女の頭に血が上り、熟れたトマトのように真っ赤に染まる。このまま何も出来ず潰されてしまうのか。つぼみが諦めかけたその時、どういう訳かスイカのデザトリアンは、バランスを崩して大きく転んでしまった。
 スイカの体に手足を付けただけのデザトリアンは、自分で体勢を立て直すことが出来ず、駄々をこねる子どものように手足をばたつかせる。その拍子に拘束から脱け出せたつぼみは、どうしたことだと辺りを見回す。
 壁に頭をぶつけ、尻を突き出して必死に額を押さえるえりかの姿がそこにあった。
「えりか!? 私たちのことが嫌いになったんじゃ」
「そりゃあそうよ、大嫌い!」えりかは額の傷口を押さえつつ立ち上がる。「けどあんなの放っといて、あたしの課題作りの邪魔になるのはもっと迷惑なの。しゃーないなぁ。つぼみ、ココロパフューム、早く!」
「はいっ!」
 えりかはつぼみが投げて寄越したパフュームを受け取ると、額を流れる血を拭って、真向かいに立つコフレに言う。
「あんたも話聞いてたでしょ? 種出して種!」
「ええっ……、でも、僕は……」
「あぁーっ、もうッ」煮え切らない態度のコフレに業を煮やしたえりかは、彼の胸ぐらを掴んで激しく振る。「それはそれ、これはこれ! あんたのお小言は後で聞くから、ほら、さっさと!」
「あう、あ……。わわ、分かりました!」
「そぉそ、それでいいの」
 ――プリキュア! オープンマイハート!
 コフレの胸の宝石から飛び出した『プリキュアの種』をパフュームにセット。中に詰まった光の粒子を身体中に吹き付け、来海えりかは一瞬のうちにキュアマリンへの変身を遂げる。
「こぉなったら、ちゃっちゃと終わらせちゃうよ! かかってきなさーい、デザトリアン!」
「ぬうっ……、現れたかキュアマリン!」マリンの登場にクモジャキーは顔をしかめ、苛立った様子で言う。「貴様などお呼びじゃないき。デザトリアン! まずは邪魔な青色から叩き潰すぜよ!」
 ――――スーイカッカー!
 目標をつぼみからマリンに変え、彼女の頭上から襲い掛かるデザトリアン。その勢いから受けきれないと即座に理解したマリンは、飛び退きつつスイカの皮に蹴りを入れ、デザトリアンを転ばせつつ距離を取る。
 つぼみよりは幾分か強いマリンの蹴りでも、スイカの厚い皮を破ることは敵わなかった。デザトリアンは直ぐに起き上がり、元々細い目を更に細めて、人間の言葉でマリンに言う。
――――チクショー、ナニガ”放射能汚染”ダ、ナニガ”危険な果物”ダ! ウチノスイカハヤスクテウマクテアンゼンナンダゾ! ホーシャノーダッテカンケイナカッタンダゾ!
――――ナノニナンデ! ナンデイマサラ”汚染されていました”ダナンテイウンダヨ! ショーバイアガッタリナンダヨ! くにノセイダ! オレタチヲタスケテクレナイクニノセイダ! スイーッカッカッカァ!
 両の拳を豪快に振り回しつつ、涙ながらにそう語るスイカのデザトリアン。マリンはその一つ一つをかわしつつ、「可哀想だとは思うけど」と言い返す。
「だからって暴力に訴えるのはよくないよ。他にいくらでもやりようあるじゃない! 畜産業に切り替えたりとか、その畑でスイカじゃなくてメロン作ったりとか!」
「それじゃあ解決策になってませんよマリン!」
「とにかく、言い訳は後で聞いてあげるから、今はとっとと倒されちゃいなさーい! おいで、あたしのスイカ包丁!」
「マリンタクトは包丁じゃないですーッ」
「あぁーっ、もう! うるさいうるさい!」
――――プリキュア! 半月八個斬り!
 つぼみとコフレの突っ込みに苛立ったマリンは、目元に皺を寄せてマリンタクトを呼び出すと、浄化のエネルギーを穂先に集め、スイカ割りの要領でデザトリアンに斬りかかった。
 キュアマリンの少ない力を一点に集中して放つ一撃だ。ダゲキハ無理でも刃なら行ける筈。タクトを振るマリンも、それを見守るつぼみたちもそう思っていた。
「……あ、あれ?」
 だが、スイカデザトリアンの皮の厚さは、一点集中の光の刃すら通さなかった。あまりの強度にタクトの刃は叩き折れ、同時に受けたデザトリアンの張り手により、マリンは桃色ノースリーブのキャミソール姿になって吹き飛んだ。
「な、なによこれェ……、反則じゃん、こんなの絶対反則じゃん……」
体を起こして敵を見つめ、(プリキュアとして自分が相当弱いことも忘れ)えりかは震える声でそう呟く。
 力を失ってにっちもさっちも行かない中、デザトリアンがぶんぶんと右腕を振り回してえりかに迫る。プリキュアである彼女が敵わない以上、力のないつぼみやコフレにはどうしようもない。
 クモジャキーが声高々に笑う中、スイカの化物にされた人物の悲痛な叫びと共に、デザトリアンの右拳がえりかへと降り下ろされた。

 そこに映る光景を見たくないがために、コフレとつぼみ、当事者のえりかでさえも両手で顔を覆う。とてつもなく重く硬い何かが、”どこか”に当たった音はした。しかしどういう訳か、何かを押し潰したような凄惨な音は何一つ響いてこない。
 それを最初に不審に思ったのは、今まさに潰されんとしているえりか本人だ。拳が降り下ろされて尚『生きている』感覚があると気付いたえりかは、なんでそうなるのかと顔を上げて前を見る。
 人ひとり覆えるほど大きな、『向日葵《ひまわり》』を模した輝く光の盾と、それに劣らず眩しく輝く、長い髪を両端で二つに纏めた少女の姿がそこにあった。
 黄を基調とし、腹部の大きく開いた露出度の高い衣装を纏った少女は、えりかの方へ顔を向けて微笑んだ。「危なかったね。けど、もう大丈夫よ。こんな奴、私がさくっと倒しちゃうから」
「あ、ありがとう……、あなたは、だあれ?」
 少女は向日葵の盾でデザトリアンを撥ね飛ばすと、改めて振り返り、両の手で花を形作って高らかに叫ぶ。
「私は――――」
――――陽の光浴びる……一輪の花! キュア・サンシャイン!
「キュア……」つぼみとコフレは大口を開けて驚く。
「サンシャインんんんん!?」えりかは眼前のプリキュアを無視し、コフレの頭を掴んで上下に激しく振った。「どういうことなの、どぉいうことなの!? なんであたし以外にもプリキュアがいるのよ、砂漠の使徒とやりあえるのはあたしだけなんじゃなかったの!?」
「そんなこと、僕に言われても……も」
 蒼い顔になるほど締め上げても、コフレからは何の答えも返って来ない。つぼみが「やめてください」と割って入るが、えりかの怒りは収まる気配がない。
「えぇっ、ちょっと、あのぅ……」華々しく登場した自分を気にも留めず、内輪で言い争うえりかたちを見、サンシャインは二の句を継げずに戸惑ってしまう。
「キュアサンシャインだか何だか知らんが、俺とデザトリアンの邪魔をする奴は絶対に許さんぜよ!」
 その隙を狙い、彼女の背後からクモジャキーが飛び掛かって来る。背中越しに彼の気配を感じ取ったサンシャインは、振り返らず首の動きだけでクモジャキーの拳をかわし、振り切った右腕を掴んで一本背負いの要領で叩き付けた。
「勝ち目が無いから奇襲とは、悪役らしいやり方ね。でも無駄よ。貴方の荒々しい我流の拳法じゃ、私の光は掻き消せやしないわ」
「何をォ! 俺の拳を愚弄して、生きていられると思うなァ!」
 激昂し、力任せに拳を振るうクモジャキーを、サンシャインは怯えることなく冷静にかわしていく。それだけでも十二分に凄まじいが、最も驚くべくは、彼女はその場を殆ど動かず、腰の動きとしなやかな腕捌きだけでクモジャキーの攻撃を防いでいるという事実だ。
 相手の攻撃に逆らうことなく、柳の枝のように受け流す。彼女の流麗な動きに圧倒され、三人は継ぐべき言葉を持てずに呆けていた。
 辛うじて我に返り、サンシャインの動きに思い当たる節を見付けたつぼみは、しゃがみこんで呆けたままのえりかに声を掛ける。
「えりか、えりか! 見ましたか、見てますよね!?」
「あー、見た見た。凄いねー、あの衣装。あんなにお腹開けちゃって……、ちゃんとパンツ穿いてんのかなぁ」
「そうじゃありませんよ、彼女の動きですよ動き! あれは恐らく『明道院流・造園《ゾーン》』……」
「造園!? 知っているですかつぼみ!」
「えぇ、昔おばあちゃんから聞いたことがあります。合気道の名門、明道院家にて編み出されたとされる構え……。敵のどのような攻撃にも対応出来、その一切をやりこめられる動きを生み出すんです。そして、一旦攻めに転じれば、相手に反撃の暇を与えない、まさに攻防一体の構えなんです」
「詳しいねぇつぼみ」えりかは裏返った声で言う。「でもさ、攻めも守りも完璧ってのは流石に……」
「ならば、あれを見てください」
 その証拠にと、えりかの目を再びサンシャインの方へ向けさせる。相手の動きを見切り、守りから攻めに転じたサンシャインが、一方的に攻め続けているではないか。
 殴打を避け、伸び切った腕を横目に正拳付き。蹴りを流して大振りになった所に素早い回し蹴り。
彼女の美しく無駄のない体捌きに、クモジャキーは成す術が無かった。
「……認めるぜよ、今の俺はお前よりも弱い……。だが、次に会った時は、時こそは! 貴様を地面に這いつくばらせてから覚悟するきに、キュアサンシャイン!」
 大層な捨て台詞を残してクモジャキーは去って行く。人々を怪物に変える砂漠の使徒は消えた。
しかし、彼が先刻作り出したスイカの化物は何も処理されずに残っている。
――――スーイカッカッカー!
 体を起こしたデザトリアンが、サンシャインに向かって駆けてくる。美しき向日葵の乙女は何の策も弄せず、化物と真正面から向き合った。
「何をやってるんですかサンシャイン! 逃げてください!」
「そーだよ! でなきゃさっきの盾出しなってー!」
 つぼみとえりかの忠告に「大丈夫」と頷き、凛とした表情で平手を構えるサンシャイン。スイカの巨体が彼女を押し潰さんと飛び掛かってきた。
――――はぁああっ!
 気合一閃。サンシャインは地を強く踏み締め、雑念全てを頭の片隅に追いやって、襲い掛かるスイカに右手を振り下ろす。
 サンシャイン渾身の手刀を喰ったデザトリアンは、彼女と背中合わせになった刹那、縦に真一文字に斬り裂かれ、地に伏した。
 あまりのことにつぼみが息を呑む中、サンシャインは最後の仕上げねと胸のブローチから金色に輝く「タンバリン」を取り出して掲げた。
――――シャイニータンバリン!
――――花よ、舞い踊れ! プリキュア、ゴールドフォルテ・バースト!
 掛け声に応じ、タンバリンから向日葵型の無数の光が飛び出して、真っ二つになったデザトリアンの体にまとわりついていく。
 光はハーフサイズになったスイカをご丁寧にくっつけると、そのまま凄まじい圧を掛け始めた。
――――スイー……カッ、カカ……カッカー!
 向日葵に押し潰されたデザトリアンは、悲痛な声で断末魔を上げると、金色の輝きを放ちつつ破裂。周囲にスイカの果肉と皮を散らせて消え去った。

「これで、おしまい。なんとかなって……本当によかった」
 六角錘型の水晶を手に、ほっと溜め息を着くサンシャイン。こころの花は萎れてはいるが枯れてはいない。水晶内に閉じ込められた人間は無事のようだ。
「さて、と。こころの花を持ち主に返してあげなくちゃ。ポプリ、お願いね」
「りょーかいでしゅ!」
 サンシャインの求めに応じ、彼女の胸のブローチから一筋の光が飛び出す。黄色の閃光は一瞬で形を成し、コフレによく似た姿となった。
『ポプリ』と名乗る妖精の登場に、その姿に見覚えのあったコフレが、目をひん剥いて声を上げる。
「ポプリ!? なんでポプリがここにいるですっ! プリキュア探しは“僕が”こころの大樹から託された、大切なお仕事なのに!」
 コフレの問いに、ポプリは偉そうに反り返って答える。「そのこころの大樹から頼まれたんでしゅ。プリキュアにする女の子を間違えるよーじゃ信用に足りましぇん。コフレのお仕事はポプリが引き継ぎましゅ。ポプリが選んださいきょーのプリキュア、キュアサンシャインが、砂漠の使徒をちょちょいっとやっつけちゃうでしゅ!」
「横暴な……、ポプリの助けなんて必要ないです!」
「そんなこと言って、コフレのパートナーさんは何をしたでしゅ? ろーへーは死なず、ただ消え去るのみ・でしゅ」
「あぁ言えばこう言う、こう言えばあぁ言う……もぉう!」
 白い顔を真っ赤にして怒り狂うコフレに対し、パートナーのえりかは「落ち着きなって」と肩を叩いた。
「こう言ってるんだし、プリキュアはサンシャインに任せようよ。あたしもそろそろ後釜がほしいと思ってた所だしさぁ」
「なんてことを言うですか! プリキュアは人々の夢を護る聖なる戦士なんですよ!? ダメに決まってるですっ!」
「でもさ、あたしって実際役に立ってないし、デキる人がいるんならやらない方がいいんだよ、きっと。適材適所って言葉、知ってる?」
「そんな言葉で済ませちゃダメですーッ!」
 後輩に当たる舌足らず妖精のポプリに馬鹿にされ、パートナーであるえりかには辞めてもいいよと言葉を返され、コフレの堪忍袋の緒もとうとう切れた。えりかの頭に乗っかると、怒りに任せて彼女の髪を無理矢理引き抜いていく。

「ちょっ!? 痛い、痛いっての! やめて止めてやめてってば!」
「もう怒ったです! 反省したってやめないですぅ!」
「コフレ! お気持ちはよぉく分かりますが、流石にそれはやめてあげてくださいッ!」
 激情に駆られたコフレを止めるべく、つぼみが二人の間に割って入るが、彼の勢いは止まらない。
 サンシャインは敵が居なくなって尚争うえりかたちに溜め息を漏らし、やめてくださいと駆け寄る。
 彼女はこの時、三つのミスを侵した。一つは先刻倒したスイカの化物が、破裂して消え去った際に『果肉』と言う名の置き土産を周囲に撒き散らせていたこと。もう一つは、えりかたちを宥めようとする余り、足下への注意を怠っていたこと。そして彼女が履いていた靴が、地面への接地面積の少ない編み上げのブーツだったということだ。
 ここまで要因が重なれば、あとはもう必然である。サンシャインは飛び散っていたスイカの果肉に足を滑らせ、真っ赤に染まった水溜まりと唇を重ねてしまった。
 飛び散る水飛沫と音に気付き、つぼみも彼女の方に目をやる。きらびやかな金色が、スイカの果肉にまみれてピンク色に染まっていた。
「あっちゃー、やっちゃった。スイカの汁ってなっかなか取れないんだよねぇ」
「ちょっと、失礼ですよ。すみません、サンシャイン……」
 服の汚れを心配するえりかと、そんな彼女をたしなめるつぼみ。だが服を汚した当人は、起き上がって自分の姿を省みるなり、目を見開いて顔の色を蒼く染めた。
「きっ……いいい、いい……」
「紀伊? みかんでも食べたいの?」
「きいい……、いい……」
――――きぃやああああああッ!
 どういうわけか、何故そうなったのか、傍目に見ていたえりかたちには分からない。キュアサンシャインは感情の昂《たかぶ》るがままに奇声を上げ、地べたをのた打ち回り出したのだ。服の汚れは全身に広がり、その度に悲痛な叫びは勢いを増していく。
 これが二三度続いた後、完全に錯乱状態に陥ったサンシャインは、プリキュアの力で辺りを滅茶苦茶にしつつ跳び回り、街の向こうへと消えた。
 ポプリは彼女の豹変に動揺しながらも、慌ててサンシャインの後を追う。「あう、あぁあ……、待って、待ってくだしゃい、サンシャインーッ!」
 砂漠の使徒が捨て台詞を残して街を去り、それを追い払ったプリキュアも、奇声を発して去って行く。
 後には、訳が分からず呆けたまま遠くを見つめる二人と一匹だけが残された。
「なんだったんですかね、あれ……」
「なんだったんだんでしょうね……本当に」
「どーでもいいけど、このスケスケワンピ、いつになったら戻るの……はくちゅ!」


・次回、『すごい潔癖症です! キュアサンシャイン!』に続きます。


※※※

 のっけから不謹慎ネタで書いている方が不安になってきました。
 造園と書いてゾーンって、いやはやさすがに苦しい気がする。
 前回(四話)掲載から八か月経って書いた話なので、前回までとはノリがだいぶ違います。あの時(平成二十三年春先)のテンションを思い出しながら、何か間違ったような気がしないでもない。

 僅か五話でサンシャインが出てくる理由についてですが、元々長々と続けるような話ではなく、残り二十話あるかないかくらいの予定なので、出し惜しみするくらいなら……、
 というか、純粋につぼみとえりかだけで回せる話のネタが無くなってきたからでした。笑えるネタを詰め込めるだけ詰め込むのは結構苦しいです。
スポンサーサイト
総もくじ 3kaku_s_L.png Journey through the Decade Re-mix
総もくじ 3kaku_s_L.png これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー
総もくじ  3kaku_s_L.png Journey through the Decade Re-mix
総もくじ  3kaku_s_L.png これから観に行く上で全く役に立たない映画レビュー
もくじ  3kaku_s_L.png 観た映画の感想
もくじ  3kaku_s_L.png 自作のアレな絵
もくじ  3kaku_s_L.png わかめ新聞雑記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【キバの世界・世界観および設定まとめ】へ
  • 【ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #6】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【キバの世界・世界観および設定まとめ】へ
  • 【ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #6】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。