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 ←ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #3 →Journey through the Decade Re-mix 第三話 「第二楽章♪キバの王子」 第三夜
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「二次創作」
ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん

ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #4

 ←ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #3 →Journey through the Decade Re-mix 第三話 「第二楽章♪キバの王子」 第三夜
――――前回のあらすじ。
 子どもたちの支持を得るべく、幼稚園に宣伝しに行ったつぼみとえりか。
 途中で砂漠の使徒も登場し、見事撃退したキュアマリンでしたが、支持を得るどころか、園児たちに忘れたくても忘れられない、一生のトラウマを残してしまうことになってしまったのでした。


#4 もうダメです……えりかが砂漠の使徒になりました

 青く輝く我らが母星・地球。その隣に寄り添うようにして存在し、太陽の光を借りて輝く衛星・″月″。
 まだ人類が到達したことのないその星の裏側に、秘密組織『砂漠の使徒』の前線基地はあった。
 月の裏側を改造して作られたその基地では、幹部たちと戦闘員・スナッキーたちが、人々の心を枯らし、地球全体をあらゆる意味で『砂漠化』すべく、日夜活動を続けている。

 この日、砂漠の使徒幹部のクモジャキーとサソリーナは、彼らの司令官に呼び出され、三人掛けの古ぼけた簡素なソファだけが置かれた部屋に集められていた。
 別礼がない限り作戦の立案・行動に於いて個々人の独断専行が許されている中での緊急招集だ。善い知らせであるとは到底思えない。
 二人はソファに腰を降ろし、不安げな表情を浮かべ、司令官が来るのを今か今かと待っていた。

 程無くして、部屋に不気味な仮面を被った銀色長髪で背の高い男が入ってきた。彼こそが砂漠の使徒・地球支部の司令官、『サバーク博士』。彼は部下たちが一礼したのを見計らい、休めと一言かけて座らせる。
「サソリーナにクモジャキー、大幹部が二人揃ってしくじるとは大した失態だな。キュアムーンライトが姿を消し、プリキュアとの戦いがなくなって体が鈍ったのかね?」
「体が鈍った? 馬鹿な、俺はキュアムーンライトがいようがいまいが、己に課した修練を怠ったことなど一度もないぜよ」
「事情が変わりましたのよぉんサバーク博士。キュアムーンライトの″後釜″が私たちの邪魔をしているのですわぁん」
 話を聞くうち、サソリーナの弁解の中から『後釜』という単語を聞き取ったサバーク博士は、仮面の中で眉を潜めて言葉を返す。
「後釜、だと? キュアムーンライトは寄る年波と、大学受験の試験勉強でプリキュアを引退した筈だ。奴には親しい友人も殆どいなかったと聞く。そんな環境で、一体誰が、プリキュアの後釜になれるというのだ」
「そんなこと、俺たちに分かる訳ないき」
「存じ上げませんわぁん」
 まぁ当たり前かと、二人の問いに対し溜め息混じりに言葉を返すサバーク博士。
 だが知らないと済ませ、そのまま放って置くわけにも行かない。サバークは語気を荒くし、二人の部下にまくし立てる。
「遊んでいる時間は無いぞ。我らが砂漠の王・デューン様が、近々地球にお出でになるとの連絡が入った。それまでに砂漠化を完了させろまでとは言わんが、プリキュア相手に手も足も出ないと知れたらどうなる」
 サバーク博士はそれ以上は何も言わず、右手の親指を立てて、自らの首の前でさっと引いた。

 砂漠の王・デューンと言えば五十数年前、伝説のプリキュア『キュアフラワー』と戦い、彼女を戦闘不能に追い込んだ、砂漠の使徒という組織の事実上の支配者だ。そんな人物を怒らせでもしたらどうなるか。分からない彼らではない。
 サソリーナとクモジャキーは冷や汗を垂らし、怯えて生唾を飲み込んだ。
「とにかくだ、まずはプリキュアを始末しなくては話にならん。早急に何か手を打たねばな。さて、どうしたものか……」
 プリキュアの始末。無くした信頼の回復と溜まった鬱憤を晴らすのに、これ以上のものはない。
 二人はすかさず立ち上がり、顎に指を乗せて思案する博士に向かい我先にと声を上げた。
「その任務、このサソリーナにお任せくださぁい。今度こそ完璧に遂行して見せますわぁん」
「前回こそ遅れを取ったが、もはや俺に遊びはないき。プリキュアの抹殺、このクモジャキーが見事成し遂げて見せるぜよ」
 語気を強めて詰め寄る二人を見つめ、サバーク博士はどうするべきかと思案する。
 そんな中出入口の扉から、腰どころか太股にまでかかりそうな程の青い長髪に、女性と見紛うほどに麗しく、端正な顔立ちの青年が部屋の中に足を踏み入れ、待って下さいと声をかけ、三人の注意を自分に向けさせた。
「美しいほどに残酷なその任務。それ以上に美しいこのボクにこそ素晴らしい。そうは思いませんか? サバーク博士」
「『コブラージャ』。あんた、いつの間にここに」
「お前は招集を受けていなかった筈。今更何の用じゃき」
 コブラージャと呼ばれた青髪の青年は、嫌味たらしげに鼻を鳴らし、無意味にその場でくるりと回った上で二人に言葉を返した。
「”砂風呂エステ”を終えて部屋に戻ろうと廊下を歩いていたら、偶然君たち二人が博士に御叱りを受けて項垂れている所を見かけてねぇ。何かあるんじゃないかと思って来て見ただけさ。それはそうと」
 二人の幹部に嫌味をぶつけたコブラージャは、嫌な顔をして自分を睨みつける二人のことなどお構い無しに、サバーク博士の前で片膝をついて頭を垂れた。
「デューン様を気持ちよく地球に迎え入れるためにも、プリキュアの排除は早急かつ確実に行わなければなりません。無様にもプリキュアに敗れた二人なんかよりも、このボクの方が適任かと思うのですが、いかがでしょうサバーク博士」
「ちょっとコブラージャ、失礼にも程があるわぁん!」
「俺たちは負けたんじゃないき。履き違えられては困るぜよ」
 他の二人を押し退け貶め、自分の株を上げて任務を奪い取ろうとするコブラージャに対し、声を荒げて反論するサソリーナとクモジャキー。
 コブラージャはしたり顔で口を歪ませ「そんなつもりはない」と言うが、それで二人で納得するはずがない。部屋の中に険悪な雰囲気が漂う中、サバーク博士はそれを掻き消すように、やめないかと三人を一喝した。
「お前たちの言い分は分かった。しからば今回の任務、お前に一任しよう。コブラージャ」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいサバーク博士ぇん」
「このままじゃ引っ込みがつかんき。得心の行く理由を教えて欲しいぜよ」
 納得がいかないと、尚もサバーク博士に食い下がる。
 サバーク博士は自分に詰め寄る二人を、手と冷たい視線で引き剥がした上で答える。
「私の与えられた任務を仕損じた。それは変えようのない事実だろう? これはその”罰”だ。二人揃って謹慎でもしているがいい。それが今回お前たちに与える『任務』だ。復唱の要なし。分かったらどこへでも行け」
 これ以上の問答は無用どころか、自分たちの立場すら危うくしてしまうだろう。
 そのことを理解したサソリーナとクモジャキーは、煮え切らない表情のまま借りてきた犬のように項垂れ、黙って部屋を出て行った。

「それでは任せたぞ。方法はお前の好きにするがいい。手早くな」
「かしこまりました。手早くそして、美しく」
 コブラージャはしたり顔で口元を歪ませ、今一度サバーク博士に頭を垂れた。

◆◆◆

 砂漠の使徒が本格的にプリキュアを排除しようと動き出した中、彼らと唯一対抗できる存在であるキュアマリン……来海えりかはというと。

「うしししし。さぁて、ここに取り出しますは何の変哲もないただの食用こんにゃく。こいつを制服越しにつぼみの背中に投げ入れて、つめたーいだの気持ち悪ぅいだの取って取ってだのと、恥じらう姿を思う様激写してやるっしゅ」
 親友・花咲つぼみに嫌がらせを仕掛けようと、眠い目をこすりつつ、校門の塀の前で近所のスーパーで購入した福島県産徳用こんにゃくの封を開けていた。
 時刻は一時限目前のホームルームが始まる少し前。花咲つぼみはファッション部と兼部しているガーデニング部の活動で、早くから学校で花壇に水をやっていた。
 生真面目で早起き癖のついたつぼみはともかく、日々ぐうたらと過ごし遅刻の常習犯のえりかにとって、この早さは驚異的。
 これも全て、歪んだ友情の成せる業なのか。

 つぼみはガーデニング部の部員たちと共に、花壇の前で話し込んでいる。
 えりかは封を破ったこんにゃくを指でつまんで持ち、校舎の裏に隠れて様子を伺い、つぼみが一人になるのを今か今かと待った。
 これを背中に投げ入れたらどんな声を上げるか、どんな反応をするだろうかと笑みを浮かべていたが、花壇の前で花に水を上げるつぼみは、えりかにとって信じられないことを口にした。
 ――――やっぱり……″処分″するしかなさそうですね、『えりか』。
 ――――このまま放って置いても邪魔になるだけですし。
 ――――先輩たちから″芝刈り″を借りてこなくちゃ。あのー、すみませーん。実はですね……。
「しょ、しょしょしょ……、処分!?」
 来海えりかは耳を疑った。親友(と思っているのはえりかだけなのかもしれないが)である自分を、自分のいない所で”処分”しようなどと口にするとは、つぼみの性格からしてとても信じられることではない。
 反面、そうなっては仕方がないと納得もできた。不可抗力ではあるが本来プリキュアになるはずだったつぼみからその資格を奪い、その上自分の都合ばかりを優先させてプリキュアとしての職務にはほとんど興味を示さない。彼女の堪忍袋の緒もとうとう限界なのだろう。

「いや、でも、その。それにしたっておかしいでしょ。処分、処分って何よ。あたし、そこまでのことやった? プリキュアとして砂漠の使徒を倒しているのはあたしなんだよ? 処分される筋合いはないっての」
 動揺と同時に、沸々と怒りが湧いてきた。えりかはいっそプリキュアに変身して返り討ちにしてやろうかと思ったが、つぼみという人間のことを思い返して身震いを一つ。
 花咲つぼみは幼少の頃から元プリキュアであった祖母の元で修業を重ねてきた努力家であり、どこにでもいる普通の”美”少女である自分とは格闘センスがけた違い。
 その上、複雑骨折治療の際に受けた局部麻酔の影響か、痛覚麻痺で痛みに滅法強く、その際筋肉の下に骨を覆うようにして入ったチタン製の補強用ボルトのせいもあってか、正拳突きで電柱や鉄の扉にヒビを入れられると聞いたことがある。もはや人間業ではない。自分一人で砂漠の使徒と戦ってもらいたい程だ。
 プリキュアに変身して戦ったとしても勝てるかどうか――――。
「えりかー、えりかー。ここにいたですか?」
「うわをう! あ、あぁ、なんだコフレかぁ。脅かさないでよぉ」
「早起きなんかしてどうしたんです? いつもの時間にベッドの中にいないから街中探したんですよっ」
 一人で怯えて取り乱すえりかに声をかけたのは、お供の妖精コフレだった。
 いつものようにえりかを起こそうとベッドに手をかけたところ、彼女の姿がそこになかったことを不審に思ったらしい。
 それは兎も角好都合だ。えりかはふわふわと宙に浮くコフレの首根っこを掴み、目を血走らせてまくし立てた。
「そんなことはどーだっていいから、あれ出してあれ! こっ、こー、こー……、そう、子種!」
「おっ、落ち着くですえりか! それだと意味が全然違っちゃうですっ!」
「この際どうでもいいよ、それよりも早く早く!」
 普段はデザトリアンを前にしても尚渋るというのに、思い切り取り乱して変身させろと嘆願するこの態度。
 コフレは求めに応じてこころの種をえりかに渡し、何があったかと問い掛けた。
「こんな朝からデザトリアンが出たですか? えりかが取り乱すぐらいってことは相当――――」
「ある意味デザトリアンよりも強敵かもね。とにかくサンキュー、コフレ」
 ――――プリキュア! オープンマイハート!
 青色のこころの種をココロパフュームに装填し身体中に吹き掛け、キュアマリンに変身したえりかは、拳を握って気合いを込める。
 しかしそれと同時に彼女は考える。たとえプリキュアに変身したとして、正拳突きで電柱や鉄の扉にヒビを入れるような相手に果たして勝てるのだろうか。
 目を閉じてその場面を想像してみる。何度やり直してシミュレートしても、自分が返り討ちに遭う未来しか弾き出されない。
 堪忍袋の緒が切れたつぼみの実力は未知数だ。勝てる気がしない。怖さのあまり握った拳に汗が溜まり始めた。これはまずい。非常にまずい。
 キュアマリンは目を見開くと同時にガーデニング部の花壇に背を向けた。
「ちょっと、どこに行くんですかマリンー! 学校始まるですよー!」
「適当に考えといてー! そんじゃ」
「てきとうって、結局何なんですかー!? ちょっと、ちょっとぉー」
 コフレの呼び止めにも応じず、マリンは詳しいことを一切伝えないまま、脇目も振らずに走り去ってしまった。

◆◆◆

 時を同じくし、サバーク博士よりプリキュア抹殺の命を受けた砂漠の使徒の大幹部・コブラージャは、戦闘員スナッキーを複数引き連れ、希望が丘の駅前ロータリーへと足を運んでいた。
 何が気に召さないのか、コブラージャは青筋が立つほどの怒り顔で辺りを見回しては、取り巻きのスナッキーたちに殴る蹴るの暴行を加えている。
 このまま殴られっぱなしではたまらない。スナッキーの一人が「何故そんなにお怒りなのですか」と問う。常人にはキーキーと猿のような鳴き声を立てているようにしか聞こえないが、砂漠の使徒には言葉として理解できているらしい。
 コブラージャはその程度の機微も理解できないのか、と鼻を鳴らしてその質問に答える。
「そんなもの決まっているだろう。ボクは世界で一番、いいや宇宙で一番美しい存在のはずだ。なのにこれはなんだ。何故誰も寄って来ない。何故ボクの美しさになびかない! こんなことがあっていいはずがない! そうだろう!?」
 怒りの理由を問うたスナッキーは心の中で「またそれか」と溜め息を吐き、通勤ラッシュのピークを過ぎたこの時間帯では、それも仕方のないことではないでしょうか。と言葉を返した。
 しかし、コブラージャは納得がいかないと言わんばかりに、スナッキーの頭に拳骨を叩き込んだ。
「そんなことは分かっている! だからこそ、ボクは声を大にして言っているんだよ! 通勤ラッシュのピーク? 人の行き交いが少ない時間帯だぁ? そんなものは言い訳にすらならない! 何故ならボクはッ、誰よりも美しいからッ!」
 (どこにカメラがあるのか知らないが)キメ角度の斜め45度を取り、歯の浮くような台詞を並べ立てるコブラージャ。スナッキーたちはよくそこまで自分に自信が持てるなと目を細めて呆れのため息を漏らした。
「馬鹿者共、何をしている。誰もいないならお前たちのやることは一つだろう」
 と言われても、スナッキーたちには何をすべきか分からない。
 自分たちにどうしろと言うのだと誰もが首を傾げる中、コブラージャは一番前に立っていたスナッキーの尻を蹴り付けた。
「鈍感にも程があるぞ貴様らッ、ここに人を集めろということに決まっているだろう! ボクの美しさを知らないまま生きているだなんて罪だ、罰だ、あぁいや万死に値する! さっさと連れてくるんだ!」
 一体何を考えているんだ。そんな無茶苦茶な。そんな集め方をした人々に讃美されて嬉しいのか? スナッキーたちの中でひそひそ話が飛び交うが、コブラージャはそれらを一喝し、さっさと行けと平手を振った。
 眉間に皺を寄せてスナッキーたちに指示を飛ばすコブラージャ。しかし彼はスナッキーたちを動かすのに夢中になるあまり、自分の背後に対する警戒をおろそかにしていた。
 ――――どいてどいて、どいてーッ!
 それは大きな過ちであり、コブラージャ痛恨のミスでもあった。背後への警戒を怠ったあまり、自分に向かって何者が突っ込んで来ていること気付かず突き飛ばされ、美しい放物線を描いて吹き飛び、駅前の『燃えないゴミ』の収集箱の中に顔を突っ込んでしまうことと相成ったのだ。
「あぁあ、ごめんなさい。まさかこんな時間に駅前に人がいるとは思わなくって、坂を思いっきり走ってたら止まれなくなっちゃってー」
「ぼ、ボクの美しい顔が……ポリエステルやビニールまみれ! 許さん、許さんぞ! どこのどいつだ、誰がやった!」
 今まで以上に眉間に皺を寄せ、血管が浮き出て見えるほどに目を血走らせて、声のする方に顔を向けるコブラージャ。
 しかし悪いと思って彼に頭を下げていたのは、意外な人物だった。
「え、何? そんな親の仇を見るような目で見られたら、あたし……」
 コブラージャが驚かないはずがない。彼の目の前で頭を下げているのは、抹殺のターゲットなるキュアマリンその人なのだから。
「ふふ、ふはーっはっはっは! まさかそっちからのこのこやってくるとはッ! 飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのこと! キュアマリンとやら、貴様の命! 砂漠の使徒の大幹部・コブラージャ様が貰い受けるッ」
「えっ、マジ? マジであんた砂漠の使徒なのぉ!? っていうかこんの面倒な時に何出て来てんのよぉ! あたしは忙しいの、抹殺なら後にしてくれないかなぁ!」
 逃げるので忙しいというのに何なんだと、顔を引きつらせ怒りを露にするキュアマリン。
 そんなこと知るかとコブラージャを押し退けその場から去ろうとするが、彼配下のスナッキーたちがマリンを取り囲んだ。
「後にしてくれと言われ、はいそうですかと行くわけがないだろう。仇敵プリキュア、美しいボクの腕の中で、美しく散るがいいッ」
 これはまずい、非常にまずい。この雑兵共がどうこうという問題ではない。
 プリキュアである自分が砂漠の使徒と戦えば、花咲つぼみは間違いなく、それを嗅ぎつけここにやってくるだろう。砂漠の使徒を撃退するついでに自分を処分する……なんてこともあり得なくはない。
 プリティでキュアキュアな超戦士な自分は状況をどう切り抜けるべきか。キュアマリンは腕を組んで目を閉じ思案する。
 そんな中彼女はあることに気付く。自分を取り囲むこいつらは何だ。砂漠の使徒の戦闘員か。それにしてもなんて数だ。自分一人にこの数は多過ぎるのではないか。
 ――――いや、ちょっと待ってよ。この数、この数! いいじゃん、すごくいいじゃん!
 ――――つぼみは格闘技の達人であたしよりもずっと強いけど、この数を相手にすればさすがのつぼみだって……。
 ――――ふふふ。ふふふのふ。
 キュアマリンは目を見開いて振り向くと、凛とした表情でコブラージャの前まで歩み寄り、彼の目の前で膝をつき手をつき頭を下げた。
「あたしの負けっしゅ! どうか、どーか部下に加えてつかぁさい、ブラジャー様」
「ブラジャー!? いや、それよりもどういうつもりだ、何を考えているッ」
「どうもこうもそうもないっしゅ。あたしの力じゃ砂漠の使徒になんて勝てっこないし、馬鹿やって派手に散るよりも、部下になった方が楽しそうだし、ねっ、ねっ!?」
 あまりにも予想外の展開にコブラージャは思わず己の耳を疑った。しかし彼は同時にこうも考える。
 確かに彼女の言う通りだ。自分たちの対の存在であるプリキュア。倒すべき相手であることは間違いない。しかし、そんな相手が自ら部下になりたいと言って来ている。これはむしろチャンスなのではないかと。
 コブラージャは得意げな表情を顔に浮かべ、頭を下げ続けるマリンに顔を上げろと促した。
「えっ、何? 仲間にしてくれるの?」
「何が望みだ。タダで砂漠の使徒に仲間入りするなど、裏に何か魂胆が無って然るべきだろう!」
「別にィ。何もないけど」
「嘘をつくな。理由もなしにプリキュアが寝返るものか。言え、目的は何だ。何なのだ」
 マリンは少し困ったような顔を見せ、いたずらっぽく笑って言葉を返す。
「だったら……、”世界一”美しいブラジャー様に惚れ込んで……ってのは、ダメかなっ」
 先の会話の中でコブラージャが自画自賛していることを思い出し、彼の手を握り笑顔を浮かべて言い寄るマリン。
 コブラージャはマリンの手を握り返すと、その通りだと言って高笑いを一つした。
「そうだ、そうだとも。ボクは美しい、この世の誰よりもな! なかなか見込みがありそうじゃないか。いいだろう、ボク直属の部下として働くことを許可する」
「マジすか!? きゃっほー、ありがとう超絶美しいブラジャー様」
「許可はするが、ボクの名前はブラジャーではない、コブラージャだ。上司の名前ぐらいきちんと覚えろッ」
 これは落ちたなと、マリンはコブラージャから見えない角度で目を細めて口元を歪ませた。その上で笑顔を作って振り返り、手を揉んで腰の低さをアピールしつつ話を切り出す。
「ところでそのぉ、コブラジャー様。襲いたいところがあるんですけどぉ」
「何だ、早速仕事か? 熱心で結構結構。して、襲いたいところとは何だ」
「あそこですぅコブラジャー様ぁ」
 うしししし、と下品な笑いを上げつつ、マリンは岡の上にある”私立明堂院学園”に向けて右手の人差し指を突き立てた。

◆◆◆

 私立・明堂院学園中等部2年B組。
 花咲つぼみは窓際最後列の席に座り、担任の鶴崎先生のホーム・ルームにおけるお小言を聞き流しつつ、窓の外をぼぉっと見つめていた。
「ホームルームの時間になっても来ないなんて、えりか……今日は一体どうしたんでしょう」
 遅刻は頻繁にするものの、欠席は滅多にしないえりかだ。何かあったのではないかと嫌な予感が頭をよぎる。しかしそれも、校門を破ってガーデニング部の花壇に押し入るスナッキーたちの姿を見るまでだった。
「なっ、なんなんですかあれはッ」
「どうしたんだ花咲ぃ、下ばかり見て。えりかでも見つけたかー?」
「えっ、あっ、えぇと……」
 鶴崎の問いかけに、つぼみは上手く言葉を継げずどもってしまう。
 一大事であるが、彼女たちにそれを告げたとしてもいたずらに混乱させてしまうだけだ。
 つぼみは悩みに悩んだ末、左手を押さえつつ立ち上がり、鶴崎に頭を下げてこう言った。
「すみません先生、左手に埋め込んだボルトから出血してしまったので、保健室に行ってきます」
「しゅ、出血!? 大丈夫か花咲! なんなら救急車を」
「いえ、保健室で十分ですから。ではッ」
 本当にそれでいいのかと心配する鶴崎の言葉を無視し、つぼみは左手を押さえて足早に教室を出て行った。

 取るものも取らずに、早足で現場に駆け付けたつぼみが見たものは、悪びれることなく花壇を踏み荒らすスナッキーの一団と、彼らに襲われて力なく横たわるコフレの姿であった。
 直ぐ様コフレを抱き抱えたつぼみは、患部を優しく摩りつつ大丈夫ですかと声をかける。
「砂漠の使徒……いや、マリンが、マリンがぁ……」
「マリン? マリンの身に何かあったのですか?」
 つぼみがどうしたんだと聞くより早く気を失ってしまうコフレ。えりかの身に何があったかとコフレの体を激しく揺する彼女の前に、スナッキーたちを掻き分けて何者かが姿を見せた。
「あーっはっはっはっは! 誘いに乗ってまんまと現れたわねつぼみぃ! あんたの命は砂漠の使徒ブラブラジャー様一の子分、来海えり……あぁいや、″エーリカ・えりイカ″様が頂戴するっしゅ!」
「は……ぁ?」
 これにはつぼみも絶句する他なかった。目の前に立っているのは誰だ。コスチュームの白い部分を墨汁か何かで黒く塗り潰し、目が隠れる程度の仮面をつけてはいるが、その声その姿は紛れもなくキュアマリンその人だ。
 それが何故、砂漠の使徒の部下となり、子分たちと共に花壇を踏み荒らしているというのか。
「タチの悪い冗談はやめてください。そこはガーデニング部の皆さんが手塩にかけて育てた花壇なんですよ!」
「これが冗談言ってる顔に見える? あたしは本気よ、マジ本気! 処分なんかされてたまるもんですか。あんたがその気だってんなら、そうなる前にあたしがけちょんけちょんにしてやるっしゅ」
「処分って……、一体何のことですか! わけがわかりません!」
 つぼみは覚えがないと身振り手振りで弁解するが、マリンは何を言うかと人差し指を彼女の顔に突き立てた。
「うるさい、うるさーい! 兎に角、今日という今日は年貢の納め時よつぼみ! スナッキーたち、やっちゃってー!」
 マリンの声に従い、猿のような鳴き声を上げてつぼみに飛びかかるスナッキーの一団。
 訳が分からないが、とりあえず逃げられないことだけ理解したつぼみは、襲い来るスナッキーたちを蹴り飛ばして引き剥がすと、制服を脱ぎ捨て、プリキュアの衣装に着替えて大見得を切った。
「何が何だか存じませんが、来ると言うなら拒みはしません。かかってきなさい!」
 威勢のいい声で平手を構え、スナッキーたちを迎え撃たんとするつぼみ。
 いくら強いと言えど、この数の前では成す術もないだろう。
 そう考え含み笑いを浮かべるマリンだったが、実際に彼女の目に映った光景は、一団全てをたった一人で叩きのめし、平気な顔をして立っているつぼみの姿であった。
「スナッキーは全て片付けました。マリン……、いいえ、エーリカ・えりイカ。次はあなたの番です!」
 朱色の長い髪を翻し、マリンに人差し指を突き立てるつぼみ。
 疲れた様子など微塵も見せず、失望と怒りに満ちた目でこちらを見つめている。今更謝った所で無駄であろう。
 これはまずい。実にまずい。恐怖に駆られて後ずさるマリンの鳩尾に、一瞬で間を詰めたつぼみの右拳が深々と突きささった。
「うをおっ……強烈ッ、まじで強烈ぅ……」
「プリキュアでなくとも、砂漠の使徒を倒すのが私の務め。それがたとえ、元・プリキュアだったとしても!」
 つぼみの猛攻は止まらない。鳩尾を叩かれくの字に折れたマリンの顎に、アッパーカットを入れて浮き上がらせ、浮き上がった顔に右足の回し蹴りを見舞って蹴り飛ばし、マリンが起き上がろうとする所を狙い両の拳の連打、連打、連打。
 マリンは反撃する暇すら与えられず、力なく仰向けに倒れ込んでしまう。
 その上でつぼみはマリンの上に馬乗りをし、彼女の顔にさらに拳を叩き込んで行く。
「ちょ、ちょちょ! タンマ、まじでタンマ! やめて、やめて、とめて!」
「プリキュアでありながら、砂漠の使徒に魂を売った相手のことなんて知りません!」
「いやそらそうだけど、あたしヤバいから! 死んじゃうから!」
「聞きたくありません、聞きたくもありません!」
 マリンの制止をことごとく無視し、その代わり彼女の顔に両の拳を浴びせる。
 骨折固定用ボルトに包まれたつぼみの拳は、仮にもプリキュアの力に加護されているマリンの顔を、あっという間に真っ赤に腫らしていった。
 このままでは本当にどうにかなってしまう。マリンは無視されようが断られようが、それでもなお必死にやめてほしいとつぼみに嘆願し続けた。
 そんな中マリンは、殴られ続ける自分の頬に、滴のようなものが垂れて来ていることに気付く。
 なんだこれはと改めてつぼみの顔を見込む。自分に負けず劣らず赤い顔をしており、跡がつくほど涙を流して鼻水をすすっていた。
「なんで……なんで、砂漠の使徒なんかの部下になっちゃうんですか……。私たち、二人で一人のプリキュアだって、友達だって言ってくれたじゃないですか……それが、なんで……」
 花咲つぼみは泣いていた。いくら敵側に回ったとはいえ、大切な友達と戦ってまともでいられるわけがなかったのだ。
 つぼみの拳の重さは、それ即ち彼女の悲しみそのもの。プリキュアにも効いて当然なのだ。
 だからこそマリンは疑問に思う。そこまで自分のことを考えてくれている人間が、どうして”処分”なんてことを思い立ったのか。おかしい、おかしいぞ。
 浮かんだ疑問は瞬く間に彼女の頭の中で膨張し、口を突いて漏れ出した。
「何よ、何勝手なこと言ってくれちゃってんのさつぼみ! そーゆーこと言う人が、なんであたしを”処分”しようだなんて言うわけ!?」
「しょ、処分!? 誰がいつ、そんな物騒なことを言ったんですか!」
「誰も何もアンタでしょあんた! 今日の朝、花壇の前で! 忘れた、とは言わせないよ!」
「いや、だから。そんなこと一言も言ってませんよ。マリンこそ、何の話をしているんです」
 話が全く噛み合わない。自分は元より、つぼみも嘘をついている風には見えない。これは一体どういうことなのか。
 マリンがこの矛盾に頭を抱えている中、つぼみは何かを思い出したようにぽんと手を叩いた。
「そういえば。マリン、あなたさっき今朝の”花壇の前”で、処分って言葉を聞いたと、そう言ってましたよね」
「そうよ。それが何だってのよ」
「それってもしかして。あの”花”のことだったんじゃないですか?」
「花ァ? 一体何のことよ」
「ほら、あれです。花壇の端っこにある……」
 どういうことだと首を傾げるマリンに対し、つぼみはまだ踏み荒らされていない、花壇の端っこを見る様促す。
 そこでは、今にも萎れそうなほど弱った、筒のような形をした白い花がちょこんと咲いている。
 しかし、これだけ見せられてもマリンには何が何だか分からない。
「あれが何だって言うのよ」
「あの花の名前は”エリカ“・ホワイトディライト。手違いで日陰に植えてしまったので、移し替えをしたかったんですけど、もうどこにもスペースがなくて……。このまま萎れさせてしまうくらいなら、ってことで”処分”しよう、みたいな話なら、確かにあの時していましたけど……」
「は……花の話ぃ!?」
 花咲つぼみが”処分”しようと考えていたのは、自分ではなく、自分と同じ名前の”花”。
 予想の斜め上を行く展開に、マリンは思わず目を点にし、大口を開いて仰天してしまった。
 そして同時にこうも考える。
 ――――つまり、何? あたしは花と自分の名前を勘違いしてて、たったそれだけのことでつぼみを裏切って砂漠の使徒側についちゃったってこと?
 ――――何よそれ。馬鹿以外の何物でもないじゃん! アホすぎるにも程があるじゃんあたし!
 ――――どぉしよ、どうしよう……。あたしの勘違いでつぼみにマジ泣きされちゃったよぉ、つぼみに殴り殺されちゃうよぉ……。

 傍から見ると実に馬鹿らしい話だが、彼女自身にとっては切実な問題だ。
 こんな馬鹿馬鹿しい理由で、倒すべき相手の部下になった上、つぼみが大事に育てていた花壇を踏み荒らしてしまったのだ。いたずらで許されるようなことではない。
 やってしまったものは仕方がない。マリンはこの行為をどう誤魔化すべきか、冷や汗を垂らして思案を巡らせる。
 いくら考えど妙案は浮かばない。万事休すかと目を伏せたマリンの耳に、キザで嫌味たらしい青年の声が届いた。
「何をしているエーリカ・えりイカ! ただの民間人ごときに遅れを取るとは、美しくないぞッ! 貴様それでもボクの部下か!」
 声の主は、マリン直属の上司・コブラージャ。
 自ら襲撃する場所を指定しておきながら、マリンがいつまでたっても戻って来ないことに、業を煮やして見に来たのだろう。
 コブラージャはマリンの上で馬乗りになるつぼみを引き剥がすと、マリンの前髪を掴んで持ち上げ、自分の顔の方へと引き寄せた。
「お前がここを襲いたいと言ったから任せたのに、このザマはなんだ! 貸し与えたスナッキーたちがみんな倒されているじゃあないか! ワケはともかく理由を言えッ! どういうことだ」
 握った前髪を上下に激しく振り、マリンに対し激しい追及を行うコブラージャ。
 しかしどうしたことだろう。痛みを伴う程激しい追及を受けているのにも関わらず、マリンは口元を歪ませ、不気味に笑い始めたのだ。
 何がおかしいと、握り手に力を込めるコブラージャに対し、マリンは両手にエネルギーを集めて、彼の腹部に叩きつけた。
 マリンは、吹き飛ばされて壁に激突するコブラージャを睨みつけると、被っていた仮面を外して放り投げ、コスチュームに塗りたくった墨汁を落とし、彼に向けて人差し指をびしっと突き立てた。
「ふふ、ふふふのふ。まんまとハマったわねブラブラジャー。あたしの”幹部誘き寄せ大作戦”に!」
「誘き寄せ……大作戦!? どういうことだ、エーリカ・えりイカ!」
「そうですマリン、作戦って……一体」
「えっ!? あぁ、うん……それは」
 そんなもの、自分にだって分かるものか言いたかったが、彼らを前にしてそんなことが言えるはずがない。マリンは目線を忙しなく動かしつつ、どもりながら答えた。
「そそ、そうよ! 全部あたしの計算どーり! ちまちまデザトリアンを狩ってるだけじゃあ、いつまでたっても戦いは終わらないかんね、仲間になるってうそぶいて、幹部のあんたを引きずりだそうって考えたのさ!」
「なんだと……! 全部お前の、計算通りだったっていうのかッ!?」
 騙され乗せられ、挙句部下を無駄にしてしまったことに悔しがり、憤慨して地団駄を踏むコブラージャ。マリンはそんな彼を尻目に、コブラージャに蹴飛ばされてうずくまるつぼみに肩を貸して起き上がらせた。
「つぼみ、大丈夫? ごめんね、すぐに言いだせなくて……」
「平気です。そんなことより、マリンの立てた作戦に気付けなかっただなんて……私はプリキュア失格ですね」
「いいっていいって。そんなことはさ」
 ”むしろ謝りたいのはこっちの方だ”という言葉を喉元でなんとか押し留め、つぼみから見えない角度で小さくガッツポーズをするマリン。
 その上でつぼみの隣に立ち、それよりもとコブラージャの方を指差した。
「まずはあいつを倒さなきゃでしょ。一緒に行くよ、つぼみ!」
「そう……ですね! やりましょう、マリン!」
 互いに頷き、地団駄を踏むコブラージャに向かって走り出すマリンとつぼみ。
 コブラージャの方もそれに気付き、身構えようとするが、彼が両手を十字に組むよりも早く、二人の少女の鉄拳がコブラージャの腹筋を貫き、彼の体をくの字に折った。
「マリンを利用して花壇を踏み荒らすなんて……私、堪忍袋の緒が、切れました! 覚悟しなさい、砂漠の使徒幹部・ブラブラジャー!」
「誰がブラブラジャーだ! ボクの名前はコブラージャ……」
 弁解など一切聞かず、体勢を立て直そうとするコブラージャの左の頬に、体重の乗ったつぼみの鉄拳が入る。
 その反動で右側に捻じれたコブラージャの体に、右側に立つマリンの回し蹴りが決まる。コブラージャの体が空中で二三度回転し、受け身を取ることもままならず、地面に叩きつけられた。
「おのれ……! 舐めるなよプリキュアぁ!」
 不意打ちだのまぐれだのと自分に言い聞かせ、起き上がってプリキュアに向かい来るコブラージャ。
 まだやるかと拳を握るマリンに対し、つぼみは手出し無用と言って彼女の前に立った。
「ボクの美しき一撃を喰らって沈めェ、プリキュアぁああッ」
「それは無理です」
 勢い任せに殴りかかるコブラージャの拳を見切り、首の動きだけでそれをかわすと、つぼみはすれ違い様に自分の拳を正面から勢いよく叩き込んだ。
 コブラージャは防御することすら出来ずに、その一撃をまともに喰らい、コンクリートの壁をハンマーで叩いたような音と、多量の鼻血を散らせて仰向けに倒れ込んでしまう。
 みっともなく鼻血を垂らし、信じられない、そんな馬鹿なと呟いたまま立ち上がろうとしないコブラージャを眼下にし、つぼみは背後に立つマリンに今です、と叫ぶ。
 マリンは、つぼみの一撃で立ち上がることすらままならないコブラージャに同情しつつ、マリンタクトを呼び出して構えた。
「あんたにゃ恨みもないし、むしろ同情するけど……これでトドメよ!」
 ――――プリキュア! ストレンジスラーッシュ!
 マリンタクトの先にエネルギーを集め、大の字になって起き上がれないコブラージャを斬り裂こうと飛び掛かるマリン。こんなところで倒されてたまるかと奮起したコブラージャは、花壇の土を握りしめてマリンの顔に放った。
「ちょっ、何これ!? 何も見えないッ!」
 砂の目潰しを食らい、軌道の狂ったタクトの刃は、コブラージャに当たることなく、花壇を囲う煉瓦に突き刺さる。
 必死になってタクトを引き抜こうとするマリンを尻目に、起き上がって体勢を立て直したコブラージャは、鼻の頭を押さえつつマリンに人差し指を突き立てた。
「キュアマリン……、それに暴力コスプレ少女! 貴様らの顔は覚えたぞ。いつか必ず復讐してやる! もう一度言う! 必ず、復讐してやるからな! 覚えていろ!」

 捨て台詞を吐くだけ吐いたコブラージャは、マリンたちの目にも止まらぬ速さで、何処へと消え去った。彼が如何にして、どこへと消えたのか。今の彼女たちにはさっぱり分からない。
 コブラージャが逃げたのを見届け、一気に緊張の糸が切れたのか、マリンは大きく息を吐いて変身を解き、その場に座り込んでしまう。
 つぼみは、えりかが地面に倒れ込む前に、彼女を抱き止め引き寄せた。
「大丈夫ですか? えりか……」
「へーきよ平気。なんともないって。それよりも……、さ。ごめんね、つぼみ」
「どうしてえりかが謝るんです? 謝りたいのは私の方だというのに」
「いや、だから。いいって言ってるじゃん。っていうか謝らないでよ、もう!」
 えりかのおかしな態度に首を傾げつつも、彼女が無事なことを喜び、つぼみは安堵の溜め息を漏らした。
「さぁてと。一時間目も始まっちゃったし、教室に行かなくちゃ。ホントはあんまり行きたくないけど……」
「それはちょっ、……やめておいた方がいいんじゃ」
「えぇーっ。どうしてよ? 何かまずいことでもあるの?」
 こんなことがあってもなお、登校すると言っているのにも関わらず、それはやめた方がいいと、えりかを止めようとするつぼみ。
 どうしてそうなるんだと問うえりかに対し、つぼみは怯えた目で彼女の顔を見て、何かを伝えようとするが、喉元でそれを飲み込み、なんでもありませんと背を向けた。
「ちょ、ちょっと、何よ今の思わせぶりな顔は! あたしの何が問題だってのよ」
「い、いいえ……別に何も。ささ、早く保健室に行きましょう」
「その驚き様。保健室より病院の方がいいんじゃないの? ねぇ、ねぇっ!?」
 自分でやったこともあり、つぼみにはとても言い出せなかった。
 熟れた林檎のように頬を腫らし、パンダの顔の黒い模様のように、目元に大きく青胆を浮かべたみっともない姿ともなれば……。

◆◆◆

「あのさぁーつぼみ。あんたさっき言ったよねぇ。あたしに”謝りたいって”」
「えぇ、言いました。あの時は本当に申し訳ないことを……」
「だったら何よ! なんなのよ! なんであたしが、花壇の片づけをやらなきゃいけないわけ!?」

 その日の放課後。
 つぼみの口添えで、結局教室へは行かずに保健室に行き、顔の治療を受けたえりかは(異常とも言えるほど滅茶苦茶に腫らしていたため、説明するだけで大変苦労したと言う)、つぼみの監視下の中で、自らが徒党を組んで荒らしたガーデニング部の花壇の片付けをさせられていた。
 敵であるスナッキーたちの力を借りることなどできるはずもなく、えりか一人での作業のため、下校時刻を当に過ぎ、夕暮れ時を過ぎても尚、片付けは遅々として進まなかった。
 えりかはどうしてこうなったんだとぼやき、周りの物に当たり散らすが、つぼみに「自業自得です」と指摘されて押し黙る。真実を教えたわけではないし、結果的に作戦であったと納得されたのだが、それで花壇を踏み荒らした事実が消えるわけではない。
 贖罪を兼ねて仕方なく、えりかは腫らした顔で、片付けを行っていると言うわけだ。時々通る人の目が、くすくすという笑い声が、鋭い棘となって、彼女の心に突き刺さる。
 そんな中、えりかの目に一輪の花が留まる。今回の騒動の発端となった白い花”エリカ・ディライト”だ。こいつのせいで酷い目に遭ったのかと、えりかは花壇の隅っこにちょこんと咲くそれを、憎らしげに見つめた。
「どうしたんですかえりか。もしかして、その花が気に入ったんですか?」
「まさか。あたしはこいつのせいで……」
「こいつのせい? それは一体どういう」
「あぁ、いや! いやいや! ないない、それはない」
「そんなこと言わないでくださいよー。やってみるとすごく楽しいんですから。あぁそうだ! これを機にえりかも……」
「いい! もういい! お花は当分こりごりーッ!」
 片付けを放り出して逃げ出すえりかに、それを追って駆け出すつぼみ。
 白から桃色に変わり始めた、エリカ・ディライトの花は、そんな彼女たちを見て笑うかのように、風に吹かれ、穏やかに揺れていた。


※※※

 本話より「Twitter上の友人」にではなく、「小説家になろう」掲載用に書き始めました。故にこれまでより話がとっ散らかっていない……はず。

 今考えるとこの辺の話を書いていた時が、内容的に一番調子に乗っていた気がする。つぼみファン、えりかファン、コブラージャファンの皆様、申し訳ございません。
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