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 ←Journey through the Decade Re-mix 第三話 「第二楽章♪キバの王子」 第二夜 →ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #4
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「二次創作」
ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん

ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #3

 ←Journey through the Decade Re-mix 第三話 「第二楽章♪キバの王子」 第二夜 →ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #4
 ――――前回までのあらすじ。
 プリキュアの服は好きだけと戦うのは嫌だと妖精コフレに嘆願した来海えりか。
 そんな彼女に、コスプレが趣味の自称”キュアブロッサム”、花咲つぼみというお友達ができました。



 どうでもいいですが、「来海《くるみ》」と普通に打っても変換されないため、最近はもっぱら「来海《らいみ》」と打って変換しています。

#3 ファブじゃないっしゅ!

「か、鎌倉から転校してきました……花咲つぼみです。どうぞよろしくお願いいたします」
「はーい、よろしく。花咲の席は……いっちばん後ろの窓際だね。案内するわ」
 ある日の朝。私立・明堂院学園中等部2年B組に転校生・花咲つぼみがやってきた。
 簡単な自己紹介を済ませ、担任の鶴崎先生に連れられて、指定された席に座る。自然な流れで隣に座る少女に一礼するが、そこに居た人物と言うのが――――。
「追試を手伝ってもらった時はさすがにやりすぎかなぁと思ってたけど、マジで転校してくるなんてねぇー、えりかさんもびっくりだ」
「あ、あれっ。この席の隣って、えりか……だったんですか?」
「そぉそ。っていうかさ、あんたまさか、プリキュアとして戦うためにこの街に来て、この学校に転校してきたって言うんじゃないでしょうね?」
「いえ、転校自体は数日前から決まっていましたよ。きっと、隣同士なったのは必然なんです。なんたって、わたしたちは二人で一人のプリキュアなんですからっ」
「ちょっと待ってよ。あたしまだ、OKしたつもりは……」
 握り拳を堅く握ってそう語るつぼみに、えりかは顔の前で無理だよと手を振った。

 その日の放課後。
 荷物をまとめて教室を出ようとするえりかを、妙にニヤついた顔のつぼみが呼び止める。
「えりか、えりかっ、放課後何か用事はありますか? ないですよね、そうですよねっ」
「無いですよね、って……あたし、これから部活なんだけど」
「そうですか、分かりました」返答を聞かぬまま、つぼみは更に続ける。「ですから今日はプリキュアの広報活動をしましょう。いくら強くたって、一人で戦うのには限界がありますからね。いろんな方にえりかの素晴らしい活躍を見せて宣伝しませんと」
 そう語り、目を輝かせて自分の手を握るつぼみに、えりかはやる気無さげに答える。
「ちょっとちょっと、ジョーダンでしょ? そもそもあたしはまだ、プリキュアしての名前すら決めてないんだよ?」
「なら今決めましょうよ。何かありませんか?」
「何かないか、って……急に言われても……」恥ずかしい名前は嫌だ、と腕を組んで暫く悩む。
 その上で手を叩き、「よし、だったら『キュアビューティー』なんてどぉ? あの衣装、チョー可愛くておしゃれだし!」
「キュア、ビューティー……」つぼみは渋い顔をし、首を横に振る。「えりかでビューティー、っていうのは何か、違いませんか? 良くてプリティ、なのでは」
「えぇー? じゃあ、あの衣装青色だしさ、知性の青き泉! キュアアクア! なんてのは?」
「ちっ、知性……」つぼみの口元が笑いで歪む。「えりかは知性って感じじゃありませんよ。強いて言えば……」
「あぁ、もう! 一々口出ししないでくれる!?」言うこと全てを否定され、怒り顔でつぼみに詰め寄る。
「……っていうかつぼみさ、あたしはPR活動をするだなんて一言も言ってないし、そもそもこれから部活なの! だいたい宣伝ってどこに向けてやるのよ! 電気街のオタク相手!?」
 畳み掛ける反論も、つぼみにとっては暖簾に腕押し柳に風。前者二つを聞き流し、残りの一つにさらりと答える。
「誰って、小さな子どもたちですよ。プリキュアの力の源は、清く正しい子どもたちの熱い声援です。近所に幼稚園がありますから、そこで思いっきり宣伝しましょう」
「ふぅん……、要するにロリコンなんだね、プリキュアって」
「ろっ、ロリコンじゃありませんよ! なんて失礼なことを」
 子どもの声援が力になる。ビでよく見る魔法少女ものの定番だが、実際にそういう立場になり、冷静に観ると”ロリコン”以外の何物でもない。
 違うと否定するつぼみだが、そのことに薄々感づいているのか、妙に頬が赤い。えりかは彼女の口に人差し指をちょんと乗せて言葉を封じ、そんなことよりも、と言葉を継いだ。
「今日はあたしに付き合ってよつぼみ。あたしさ、ファッション部の部長さんなんだよ。噂の」
「えっ……あぁ、確かにそんなこと言ってましたね。でもわたし、ファッションにはそこまで興味は」
「カマトトぶっちゃってェ。女の子だもん、ファッションに興味がないわけないでしょ? まぁまぁ。痛いようにも悪いようにもしないから。今日のお昼、あたしと一緒について来て! 被服室だよ被服室」
「嫌だ……って言っても、ダメなんでしょうね、やはり」
「勿論。戦ってるのはあたしなんだし、言いたいこと言ってるだけじゃ、人は育たないし成長しないものだよ。つぼみもプリキュアのトレーナーを目指すんなら、も少しその辺を理解しなくちゃね」
「あなたがわたしに言いますか、それ……」
 これ以上反論しても無駄だろうし、えりかの言うことにも(不本意ながら)一理ある。つぼみは”今日は広報活動は諦めましょう”と項垂れ、意気揚々と進むえりかの後を追った。

◆◆◆

 明道院学園中等部・北校舎二階の外れに立つ被服室。ここがえりかの根城、ファッション部の部室だ。他の部員が先に来ているのか、引き戸の曇りガラスに”使用中”の貼り紙が貼られている。
 えりかは手を叩いて合図をし、作業している三人の注意を自分たちの方へと向けさせる。「みんなー! 作業一旦すとーっぷ! 仲間だよ、しんにゅー部員が入ったんだよぉ。うちのクラスの花咲つぼみさん」
「花咲……つぼみです。不束者《ふつつかもの》では御座いますが、どうぞ宜しく……お願いします」
 今までとは打って変わって、恥じらいだらけのこの態度。別に猫を被っている訳ではない。こうして初対面の人と話をするのが、たまらなく苦手なだけなのだ。
 えりかは恥じらうつぼみを横目に見、このままでは埒が明かないと、部員たちを集め、強引に自己
紹介を始めた。
「とりあえず、小豆色で髪の長い子が『なおみ』、眼鏡っ子が『とし子』、ショートヘアーの子がるみ子』だよー。あぁ、名前は覚えなくていいよ。どうせ途中から呼ばれなくなるだろうし」
「何ですか途中からって……失礼ですよ」

「そうよ、そうよ! 花咲さんの言う通り!」
「何よこの『その他大勢』感! 冗談じゃないっての!」
「どうしたのえりか! 誰なのよその子! 何なのよその可愛い子は!?」
 唐突かつ簡単すぎる自己紹介に、怒った三人の部員がえりかを押さえつけ、彼女の脇やうなじをくすぐり回す。
 女の子たちのきゃいきゃいと楽しげ声が部室を包む中、きょとんとしたまま何も出来ずにいるつぼみに、小豆色の髪の少女、なおみが、熱っぽい表情で声をかける。
「ファッション部へようこそ、花咲さん」
 眼鏡のとし子がそこに続く。「分からない事だらけだと思うけど、これはこれで結構楽しい部活だから」
 止めに、ショートヘアのるみ子が更に付け加える。「えりかはちょっとうっとおしいけどねえ」
「うっとおしいとは何よ、うっとおしいとは!」
 三人の挨拶に、つぼみは緊張した面持ちでよろしくお願いしますと会釈する。緊張は解れないが、幾分か笑顔が戻ってきた。
「ところで……、この部活はいったい何をするんですか?」
 つぼみは被服室の周囲を見回し、彼女たちが何をしているのかを問う。その問いに三人の部員たちは一人一人、順番に説明し始める。
「基本的には……、部費で布地を買って、デザイン考えて、ひたすら服を作ってーって感じかな」
「時々アクセとかを買いに校外活動したりとかね。えりかの家のフェアリードロップ。ここの部員はあそこの商品が何でも二割引きだからさー」
「それともう一つ。今は”文化祭”の準備なんかもやってるよ」
「文化祭にファッション部? そこで何をするんです?」
 つぼみの素朴な疑問に、くすぐりから解放されたえりかが、無い胸を叩いて答える。
「よくぞ聞いてくれました。我がファッション部は、秋に行われる学園祭で、”ファッションショー”を行おうとしているのです。しかも、自分たちの自作の衣装で! どう、どう? すごいっしょ? チョーいかすっしょ!?」
 熱っぽく語るえりかを見、つぼみの感嘆の表情を見せる。
「……えりかの事を誤解していました。のほほんと適当にじゃなくて、そんな目標を持って部活の部長さんをやっていたんですね。すごいです!」
「何よ! 失礼ねー。あたしだって、大好きなことには本気出すっての」
 ”その気持ちを少しでもプリキュアにも充ててほしい”と言おうとしたのだが、えりかにA4の用紙と鉛筆を渡されて押し黙る。
「なっ、なんですかこれ」
「つぼみも何か描いてみなよ。せっかくファッション部に入ったんだし」
「描いてみて……と言われましても。わたし、今ここに来たばかりのど素人ですし……、そもそも! まだ入るだなんて一言も言ってませんよ!」
 不安げな顔をして用紙を胸に抱くつぼみに、三人の部員が優しく声をかける。
「大丈夫だよ花咲さん、別に誰も笑わないし」
「まずは描いてみるのが大事なんだし」
「わたし、花咲さん好きですし」
 一人、励ましの言葉とは違う何かが聞こえたが、幻聴だと思って聞き流した。
 三人に励まされ、えりかに描け描けとせがまれたつぼみは、仕方なく机に向かい鉛筆を走らせる。
 それから数分後。つぼみは数点のデザインを上げて部長であるえりかにノートを返した。
「……と、いうわけで何点か描いてみました」
「早ッ、っていうかうまッ! どゆこと、どゆこと!?」
 ただ早いだけではない。即興で描いたとは思えないほど、服としてのデザインも素晴らしく、洋品店の娘であるえりかですら、驚愕に顔を引きつらせてしまう。
 えりかや他の部員たちが驚嘆の声を上げる中、つぼみははにかみながら言葉を紡ぐ。
「お裁縫程度でしたら昔からおばあちゃんに手解きを受けてましたし、デザイン程度なら、昔考えていたものが何個かアイデアのストックがありますし……、ごっ、ごめんなさい! 皆さんのものと違って幼稚なものばかりで」
 自信無さげで恥ずかしそうに縮こまるつぼみだったが、それを見せられたえりかはあまりの出来の良さに、もしかしたら部長の座すら危ういのではないかと思い絶句していた。
「あ……、やっぱりダメ、ですよね。こんなのじゃ」
「う、ううん! いいよ、すごくいい!あんまり上手すぎてなんて言うべきか分からなかっただけ」
「ほ、ホントですか! わたし、すごく嬉しいです」
 ――――あのピンクの派手派手な衣装、本当に自作だったんだ……。
 えりかは参考に見せてあげようとしていた自身のデザイン画を膝の裏に隠して引っ込めた。
 自分に向けられるえりかの怪しげな笑顔が気になるものの、つぼみは被服室で作業を続ける他の部員たちの元へと向かう。
「その縫い方だと元の生地の良さを殺してしまいますっ。ここは……」
「それなんですけど、こちらの花飾りをアクセントに加えてみてはいかがでしょうか」
「あぁ、型紙が少し歪んでいます。ここは、余計な力を入れずにしゃーっと」

「花咲さん、すごーい! 本当にファッション部の活動は初めてなの?」
「部活の部長っていうよりも、本当のプロみたい!」
「せっかくだし、花咲さん……いやつぼみちゃんがここの部長になっちゃいなよ!」
「そ、そんな……わたしはそんな器では」
 今日入部したばかりのつぼみが、皆の注目の的となり羨望の眼差しを向けられている。
 対して自分はどうだ。ないがしろにされているどころか、存在すら忘れられていないか? 誘ったのは自分なのにこの物悲しさはなんだ、なんなのだ。このままではまずい、絶対にまずい。
 部員三人に囲まれ、楽しげな笑顔を浮かべるつぼみを傍から見つめ、えりかは未だかつて体験したことのない危機感に苛まれ、部屋の隅で一人怯えていた。

◆◆◆

「いやぁわたし、嬉しいです。てっきり来てくれないものだと思ってましたから」
「い、いやあ。気が向いたから、ね」
「さっ、ここでしっかり宣伝しましょう! プリティでキュアキュアな超戦士・キュアマリンのこと」
 そして、次の日。先日アレほど嫌だ嫌だと言っていたのにも関わらず、彼女と共に近所の幼稚園へとやってきた来海えりか。
 自分の勝手な言い分に従って部活に来てくれたことに対する礼になるのだろうが、部員達から羨望の眼差しを向けられたつぼみに取り入ろうという魂胆の方が強いのだろう。
 しかしちょっと待ってほしい。
「ねぇつぼみ。『きゅあまりん』って何よ」
「あなたのプリキュアとしての名前ですよ。昨日は結局決まらず終いでしたから……仮決めということで」
「……で、そう名付けた理由は?」
「わたしのイメージです」
「人の案さんざん却下しといてイメージって何よ、イメージって!」
 憤慨するえりかの頭を押さえ付け、つぼみは「そんなことより」と強引に話を変える。
「いいですか、えりか。相手は小さな男の子女の子です。無暗に怒ったりしないようにしてくださいね。わたしたちはおねーちゃんなんですから」
「はいはい。つぼみはいちいち心配性だよね。壊すほど石橋叩いてどうすんのよ」
「別に、そんなことは……」
「あ、いや。ちょっと待って」今度はえりかは話を遮って園内の一室を指差し、つぼみの注意をそちらに向ける。

 ――――きゃーっ! 嫌あああ!
 絹を裂くような悲鳴が園舎にこだまする。見ると、長い黒髪をゴムで纏め、赤縁の眼鏡をかけた先生らしき若い女性が、腰を抜かして園児たちに囲まれていた。
 そのうち、取り分け威勢の良い園児たちが声を上げる。「やったやったー! ノリコ先生がびっくり箱見て腰抜かしたー」
「これだから先生いじめるの、やめられないんだよなー」
 囃《はや》し立てる声に続き、それらを非難する声も上がる。「ヒロくんたち、ノリコ先生いじめるのやめてあげなよぉー。かわいそーだよー」
「いいじゃんよー。どんなにいじめても怒らないし、いい声で泣くんだぜえ」
「誰も困らないもんなー」
「でも、いけないことはいけないんだよー」
「うっせー、だったらお前もいじめてやろうかーうらー」
「きゃーいやー! 助けてー」
 十数人の園児たちに”いじめられ”、何も出来ずに泣いている。えりかと、彼女に言われてそれを見たつぼみは、不安げな表情でその様子を遠巻きに見ていた。
「……宣伝だ何だって前に、まずこれどうにかしなきゃいけないんじゃないの? ヤバいでしょこれ」
「ノリコ先生……まだ保育士さんやってたんですね」
「何? あの先生、つぼみの知り合い?」
「わたしのお母さんの友達です。子どもが好きでこの仕事をやっているらしいんですけど、気が弱くて叱るのが苦手な人で……。
 でも、これはいい機会です。ノリコ先生といじわるな園児たち。キュアマリンが両方共更生させれば、子どものみならず大人の支持もゲットできちゃいますよ」
「ちょっ、ちょっと待ってよ……」
 つぼみの言葉に、そこまでやるのと不満を漏らす。とはいえ、自主的に参加した以上、面倒だと抜けるのはあまりにも自分勝手すぎる。
 えりかは仕方なく「わかりましたよ」と呟き、やる気なく手を平に振った。
「しかしさぁ、出来るのかなぁ、あたしに」
「わたしがバックアップします。大丈夫ですよっ。ささ、行きましょう」
「ふぁーい」
 ――――バックアップします、かあ。
 ――――正直なところ、それが一番不安なんだけどなぁ。
 不満を喉元で押し留め、えりかはつぼみの後に続いて園内へと足を踏み入れた。

◆◆◆

 時を同じくし、園内裏の洗い場の前。
 女性保育士”ノリコ先生”は、他の職員に後を任せ、子どもたちのいたずらで汚れたエプロンを黙々と洗っていた。
 水に消え行く汚れを見、愚痴や駄目な自分への苛立ちが、喉の奥から自然と溢れ出る。
「はあぁ……、子どもを満足に叱ることすらできない。私、向いてないのかなぁ、この仕事……」
 こんな自分を変えたいとは思うものの、子どもたちの泣き顔を想像すると、どうにも本腰を入れてしかる気になれない。
 故に子どもがつけあがると言う悪循環に、彼女は諦めの溜め息を吐いた。
 ――――ふっふっふ、いい感じにこころの花が萎れているぜよ!
「誰……? 誰なのッ!?」
 ノリコ先生の煤けた背中の後ろから聞こえてくる、荒々しい男の声。
 気配を感じて振り返った彼女の前には、燃えるように赤い癖毛長髪に小麦色に焼けた肌、侍のような羽織(しかし下は黒のズボン)を身に纏い、筋骨隆々の雄々しき体の男が立っていた。
 男は腰に差した剣を、見せつけるように彼女の目の前で抜いて見せる。
「俺は砂漠の使徒の大幹部、クモジャキー! 育児疲れで萎れに萎れたこころの花、この俺がいただくぜよ」
「いや、別に育児で悩んでるわけじゃ……」
 ————こころの花よ、出てくるぜよーッ!!
 ————きゃー! いやあぁー!
 クモジャキーは有無を言わさず、彼女の中から六角柱の水晶を抜き取り、その先についた球だけを外して放る。
「さぁてと、手頃なものは……と、あのぬいぐるみが良さそうぜよ。デザトリアンの、おでましぜよーッ」
 水晶を手に辺りを見回し、洗い場に無造作に置かれていた”恐竜のぬいぐるみ”に目を付けたクモジャキー。彼はその中に水晶を突っ込み、恐竜のぬいぐるみを数メートルほどの大きさの”デザトリアン”へと変貌させた。
「さぁ行けデザトリアン! 育児が面倒だと言うのなら、その根幹! 育てるべき子どもたちを片っ端から排除するぜよッ」
 ————キョーリュー! コワイゾー! ツヨイゾー!

「いいですか、えりか。次にあのヒロ君って子が何かしたら……、マリンに変身して、優しく、やさーしく諭してあげるんですよ。厳しすぎは逆効果ですからね」
「あいあい、わかってますよーっと」
 一方、つぼみとえりかは、ノリコ先生の知り合いであり、彼女に紹介されての”ボランティア”との名目で入園許可を取り、引き戸の前で段取りを示し合わせていた。
 えりかはそんなに細かく言わなくても分かるとぼやくも、生真面目なつぼみは「こんな時だからこそ、丁寧な段取りが必要なんです」と聞く耳を持たない。
 しかし、二人の話し合いも、慌てて空からやって来たコフレによって遮られた。
「つぼみー、えりか−! 出たです、デザトリアンですぅー! こころの花を奪われたのはノリコ先生ですっ」
「あんた一体今までどこに……って、デザトリアン!?」
「これは……、プリキュアの名を貶めようとする砂漠の使徒の策略に違いありません! わたし、堪忍袋の緒が……切れました!」
「いやいや、まだそうと決まったわけじゃあ……」
 デザトリアンが来たというだけで飛躍した解釈をし、一人で盛り上がるつぼみ。えりかがそれは違うと諫めるも、心に火の点いた彼女は止められない。

 ————キョーリュー! ワルイゴハイネガー! ワルイゴハユルサナイゾー!
 そうなるのを待っていたかのように、えりかたちの前に縫いぐるみのデザトリアンが襲来。
 縫いぐるみの背後では、鉄棒が曲げられて波打ち、ジャングルジムがただの鉄パイプと化している。これ以上進撃させる訳には行かない。
「でっか! ってかやばいよこれ! このままじゃ園児たちがピンチピンチっ」
「ですね。宣伝だの何だのは後回しです。えりか、急いで変身を」
「わかってるって」
 ————邪魔はさせないき、プリキュアッ!
 変身すべくココロパフュームを構えた瞬間、彼女たちの前に先のクモジャキーが現れた。
 その佇まいと言動から、二人は自分たちの味方でないことを即座に認識する。
「ちょっと、空気読んでよ! 子どもたちが危ないの、ヤバいでしょ? 分かるでしょ? マズイっしょ?」
「ふん、そんなことは知ったことじゃあないき。俺に取って大切なのは血沸き肉踊る、命をかけた真剣勝負のみ。キュアムーンライトが居なくなって久しい今、俺の渇きを癒すことが出来るのは、そいつとの一対一の死合いだけ。 どちらぜよ、 ”キュアムーンライト”の後釜のプリキュアというのは!」
 二人にそう問いかけ、彼女たちに人差し指を突き立てるクモジャキー。つぼみは以前現れた幹部の一人・サソリーナから話を聞かずにここまで来たのかと、彼の猪突猛進ぶりに呆れを感じた。
 とはいえ、勝負がしたいと言うのは本当だろう。闘いにかける情熱が、気迫が違う。
 かといって、デザトリアンを放っておくわけにはいかない。つぼみは諦め、凛とした表情を作って言った。
「分かりました。プリキュアは……」
「この子! このピンクの子です! あたしじゃないです」
「はい、そうですわたし……って、えっ、えぇーッ!?」
「自分ではなく隣の子」と言おうとしたつぼみだったが、あろうことかえりかはつぼみを指して「彼女だ」と述べ、踵を返したのだ。
 つぼみは離れようとするえりかの襟首を掴み、その場にしゃがみ込ませて耳打ちする。
「ちょ、ちょっと……! 何を言ってるんですかえりか、わたしは」
「役割分担よ、役割分担。デザトリアンはプリキュアであるあたしにしか倒せないんだし、二人を同時に相手出来ないっしょ。
 あたしたちは二人で一人のプリキュアなんでしょ? デザトリアンはあたしがなんとかするから、あのキン肉マッチョマンをしっかり引き留めておいてよね、つぼみ!」
「ちょ、ちょっと……えりか! 待ってくださいッ」
 つぼみの制止を振り切り、えりからデザトリアンの方へと向かう。待ってと声を上げるが、同時に、園児たちを守るためには、その方が合理的であると気付く。
 つぼみは覚悟を決めて腹を括り、険しい表情を作ってクモジャキーと向かい合った。
「いいでしょう。では……キュアムーンライトの遺志を受け継ぐこのわたしがお相手します。ですが、ここでは子どもたちに被害が及びます。場所を移してはもらえませんか?」
「勝負をするのならどこでやったって文句は言わんき。案内するぜよ」
 つぼみの言葉に従い、律儀に幼稚園から場所を移すクモジャキー。
 勝てる見込みなど何も無い。不安もあった。しかしそれすらも、今はどうでもよかった。
 意思を受け継いだ訳でも、そもそもプリキュアですらないのに、対峙しても尚気付かないのか。今のつぼみには、敵の恐ろしさよりも、彼は本当は阿呆なんじゃないかいう疑問が気になってしょうがなかった。

◆◆◆

 ————ドォーシテダレモワカッテクレナイノー? ワタシハエンジタチヲアイシテイルノニー!
「うわおっ、やばいよ、やばいよ! 子どもたちが……」
 時既に遅し。恐竜のぬいぐるみのデザトリアンは、不気味な声を上げながら園舎の中に手を突っ込んでいた。
「あーんあーん、恐いよぉ、ノリコ先生助けてぇ」
「ヒロくん、こんなときだけ先生に頼るのズルいよぉ」
「恐いもんはこわいんだよー! たすけてー」
 恐怖に怯え、泣き叫ぶ子どもたちの声がこだまする。
「大変です大変ですーっ! デザトリアンの足を止めなきゃですっ」
「そういうのはあんたの仕事でしょコフレ! ほら、さっさと行く!」
「ボっ、ボクですかっ!? や、やぁあいデザトリアンッ! こっち、こっちですっ!」
 腑に落ちないが、仕方が無い。コフレはえりかに従い、縫いぐるみの注意を引くべく飛ぶ。
 コフレがデザトリアンの目の前を飛び回って注意を引き付けている間に、えりかは入り口の引き戸に手をかけた。
「さっきまであんなにやんちゃだったのに、ゲンキンな子だねホント」
「えっ……、おねーちゃん、だぁれ?」
「あたしはえりか、来海えりか。あんたたちを助けに……きて……んんんっ」
 子どもたちを助けようと引き戸を引くも、先の一発で扉はひしゃけており、腕が一本入るくらいの隙間を開けるのが精一杯。
 いくら待っても助けに来ないえりかを見、園児たちの脳裏を不安が過る。
「どうしたのさお姉ちゃん、俺たちを助けてくれるんじゃないのかよ!?」
「そうしたいのはやまやま……だけどッ、こっちにも色々とつごーってのがある……のっ」
 いくら力を込めようと、ひしゃけた扉は微動だにしない。えりかは引き戸を開けるのを諦め、デザトリアンの注意を引くコフレの元へと駆け寄った。
「コフレ、コフレ! こころの種出して、早く!」
「ひぃひぃ……こっ、子どもたちのことはいいんですかぁえりかァ」
「事情が変わったの。プリキュアに変身しなきゃいけないんだから、急いでよ」
「あぁもう……、プリキュアの種、いっくですぅー!」
「よぉおし、プリキュア! オープンまいは……ああっ!」
 コフレが産み落としたこころの種を受け取り、パフュームにセット。後は体に吹き掛ければ良いのだが、
 ————キョーリュー!
「こっ、ココロパフュームが、幼稚園の中に飛んでっちゃったですっ」
 今まさに吹き掛けようとした瞬間、デザトリアンはえりかに向け、太く大きな腕を振るったのだ。
 大振りな上そこまで素早くなかったことが幸いし、怪我なくかわせたものの、えりかの手を離れたココロパフュームは、引き戸の隙間から教室内へと消えた。
「ちょっと、ウソでしょっ!? これじゃあ中に入って取りに行けないじゃん! なんとかしてコフレ」
「隙間が絶妙すぎて、ボクでも中に入れないですっ」
「あわわ、どうしよ……、どうしよう!」
 このままではプリキュアに変身できない。襲い来るデザトリアンに対しても無力だ。
 どうすればいいかと思案を巡らせる中、開かない引き戸の奥で縮こまって震える園児たちの姿が映る。
 えりかはそうだこれだと声を上げ、引き戸の中に自分の手を強引に突っ込んだ。
「そこの園児たちー、そう、君たち、君たちー! ”ココロパフューム”とってー! おねがいー」
「こころぱふゅーむー? 四人組の歌手のひとー?」
「違う違う、こう、掌ぐらいの大きさで、しゅーってやるやつ、しゅーって。取ってきてお願い」
「えぇっと……。おねーちゃん、これー?」
 彼女の呼びかけに応じ、三つ編みの少女がそれらしきものを手にし、腕だけを突っ込んでいるえりかに手渡す。
 えりかは握り心地を確かめると、それがなんであるかを見ないまま、自分の服に向かって吹きつけた。
「よおっし、オープンマイハー……ひゃあっ! 水出たよ水! ちょっと何これ! おもちゃの水鉄砲じゃん! うあぁ、制服の胸元に……なにこれ、醤油!?」
「あっ、それ今日のお昼に入れたの。ノリコ先生を驚かせるためにー」
 ココロパフュームだと思って胸元に吹き付けたそれは、中に醤油の入った”おもちゃの水鉄砲”であった。制服の赤いリボンは醤油で真っ黒に染まり、それを伝って制服の方にまでぽたぽたと垂れている。
 えりかは怒りに任せてそれを放ると、水鉄砲を持ってきた少女に当たり散らした。
「なんてことすんのよ! クリーニングに出さなきゃいけないじゃんこれー! 制服だよ、制服なんだよ!?」
「お、怒らないよでぉ……」
 園児たちが間違えるのも無理はない。教室に飛んだココロパフュームは、彼らの玩具箱に混ざっている。えりかの抽象的な説明だけで、数ある玩具の中からパフュームを選別するのは、幼い園児たちには難しすぎるのだ。
「あぁあ、この忙しい時にもう! 誰か、誰か! 他には、他にはいないのォ!?」
「おねーちゃーん、パス! 」
 そんな中、率先してノリコ先生をいじめていた”ヒロ君”が、えりかに向かって”何か”を投げつけた。今度こそ当たりであってほしいとそれを握り、それを胸元に吹き付ける。
「よぉし、今度こそ! おーぷんまいはー……ひゃっ、ひゃああっ!? 何ソレ何これ!?」
 ヒロ君が放ったそれもココロパフュームではなく、胸元に向けて吹き付けたそれは、醤油で染みたリボンを瞬く間に凍らせてしまう。
 何だと思って手に取ったものをまじまじと見つめると、そこには”這う虫用! ダイナミック氷殺君”との表記がなされている。要するにパフュームではなく”殺虫剤”だ。
「くあーっ! なんでこんなものが幼稚園にィ!? あたしのリボンが、リボンがぁあああ」
「しゅーってやるんだからこれだろー? 先生もよくこれで台所のあいつを倒すしぃ」
「違ぁう! こんの馬鹿ぁ! っていうかなんでこんなものが普通に置いてあるわけ!? 火の元で使うと引火しちゃう危険な殺虫剤でしょこれ! 早いとこ製品会社に送り返さなくちゃでしょ!」
「あぁあん、こわいよぉ」
 自分の制服を汚され、鬼のような形相でヒロ君に当たり散らすえりか。その様子に当人はおろか、怯えて部屋の隅で縮こまっている子どもたちも泣きだしてしまった。
「ごっ、ごめんね……あたしもそんなつもりじゃあ……あぁもう! 誰か、誰か! 早く取ってきて! あたしのココロパフューム!」
「泣きたいのはこっちなのに」という言葉を喉元で押し留め、ココロパフュームを持ってくるよう園児たちに嘆願するえりか。
 そんな中、やや茶かかった髪の少女がえりかに”何か”を手渡した。
「おねーちゃん! はいこれ、ぱふゅーむ!」
 目に涙をいっぱいにためている少女を見て、はっと我に還るえりか。彼女たちだって怖いんだ、自分の助けを待っている。自分だけ自棄になって腐っているわけにはいかない。
「三度目の正直! 今度こそッ、プリキュア! オープンマイハートッ……」
 万感の思いを込め、それを吹き付け、変身の言葉を口ずさむ。薔薇のフローラルで心地よい香りが彼女の鼻孔をくすぐり、彼女の心を天国へと誘う。
「はぁあ、なんて心地の良い香り……癒されるぅ……。って! あぁ……もう! ファブじゃないっしゅ!」
 彼女が手にし、胸元に吹き付けたのはココロパフュームではなく、かの消臭芳香剤。
 ”吹き付ける”、”良い香りがする”という点では共通しているが、片や人の体に吹き付けるもの、片や部屋の壁や物に吹き付け、嫌な臭いを消すためのもの。用法の時点で間違っている。
 えりかは「やってられるか」と叫んで芳香剤を叩きつけ、盲目にコフレを追うデザトリアンに向かって声をかけた。
「やぁーいやぁーい! こンののろまー! 悔しかったらこっちまで来てみなぁー!」
「ちょっ、えりか! 何をするつもりですっ!? 」
 コフレの問いに答えず、えりかは引き戸の先に向けて声を張り上げる。「みんなー、部屋の奥に固まって伏せてー!」
「ふせて? って……うわあああああああああああっ!」
 えりかの言葉に反応し、身を寄せ合って固まり合う園児たち。
 彼らは知らない。せっかく引き離したはずのデザトリアンが、えりかの誘いによってこちらに近付いて来ていることを。
 デザトリアンは右腕を横薙ぎに振る。えりかは屈んでそれをかわすが、かわされて空を切った怪物の右腕は、開き切らない引き戸に当たり、めきめきと嫌な音を立ててそれを壊して吹き飛ばした。
「うわあああああん、こわいよぉお、助けてぇえ」
 何の前触れもなく起こったそれを目の当たりにし、園児たちは恐怖と困惑で大混乱。
 誰も彼もが大粒の涙を流し、枯れそうなほどの大声を上げて泣き出してしまう。
「ちゃんす! これでココロパフュームが取りに行ける! えぇっと……おもちゃ箱おもちゃ箱」
 こんなことを仕掛けた当人は、子どもたちの鳴き声の大合唱などどこ吹く風。引き戸がなくなった教室に入り込み、おもちゃ箱の中に落ちたというココロパフュームを漁り始めた。
 コフレはあまりのことに言葉が継げなかったものの、なんとか自分を奮い立たせ、おもちゃ箱の中を引っ掻き回すえりかの頬をつねる。
「なんてことをするですえりか! 子どもたちを何だと思ってるんですッ」
「だぁかぁらぁ伏せてって言ったじゃん。それに、みんな無事なんだから問題無しっしょ!」
「結果がどうあれ、子どもたちを危険に晒すやり方が良くないって言ってるんですっ!」
 誰一人怪我を負わずに済んだ、自分の足でココロパフュームを取りに行けるようになった。結果的にはそれが最良の手立てだったが、一歩間違えば護るべき子どもたちを傷つけてしまうところでもあった。
 怒られて然るべきだったが、「そういうのは後」と自分にまとわりつくコフレを振り払い、おもちゃ箱の中に隠れていたパフュームを取り出して構える。
「先生のくせに、よくもみんなを泣かせてくれたわね! あたしがぼっこぼこに叩きのめしてやるっしゅ!」
 泣いていた園児のうち数人が声を上げる。「全部おねーちゃんのせいじゃん」
「うるさいなぁもう!」
 ————プリキュア! オープンマイハート!

 園児たちに悪態を突かれつつも、えりかはココロパフュームを自分の体に吹き掛け、”キュアマリン”へと変身。
 縫いぐるみのデザトリアンに体重の乗ったドロップキックを浴びせ、運動場へと引き離す。
「だいたいあんたねぇ、生徒たちが可愛いから叱れないって、先生としてどうなのよ!
 いいことをしたら褒める、悪いことをしたらいけないって叱る! それが愛でしょ先生でしょ! そんな弱虫に子どもたちの先生を名乗る資格なんてないっしゅ!」
 ————集まれ、花のパワー! マリーンッ、タクトッ!
 胸の前で右手を構え、フラワータクト改め、「マリンタクト」を構える。
 縫いぐるみが砂ぼこりを巻き上げつつ飛び掛かってきた。マリンは相手の力に逆らわず(実際逆らえる程の力がないのだが)、切っ先に集めた浄化の力で、襲い来る縫いぐるみの足を斬り捨てる。
 ――――ウゴー! ギゴー! ガゴー! グルウォォォォォッ!
 身の丈に見合った恐ろしい雄叫びを上げ、それでもなお腕の力だけで園舎を目指して進む。
「あぁ、もう! 大人しく……しなさいっての!」
 マリンはデザトリアンの頭に飛び乗り、縫いぐるみの脳天にタクトを突き刺した。切っ先は釦で出来た右目を貫き、仕込まれていた綿が運動場に飛散する。
「よっしゃ、一気に決めるよ!」
 ————プリキュア! フォルティッシモブレーイク!
 これを勝機と見、そのままありったけのエネルギーをタクトに込める。
 恐竜の頭は、圧の掛かり過ぎた風船のように破裂し、残る胴体はこころの花の入った水晶を残し、まるで煙のように蒸発して行った。
「にゃっ。これであたしの勝ちっしゅ」
「あぁあ、なんてことを……! 愛と希望を与えるプリキュアが、子どもたちにトラウマ植えつけてどうするですっ」
「他にやり方無かったでしょうが。片付けられたんだし、いちいちケチつけないでくれるぅ?」
「くうぅ……。やるにしたってやり方を考えてほしいって言ってるんですっ」
 マリンの言い分は尤もだが、コフレの言い分も無視できない。何せ――――。
「ひぃああああ、恐竜の頭が、あたまが……」
「たすけてー! こわいよ、こわいよー」
「あたしたちもばらばらにされちゃうー!」
「ままー! ぱぱー! ぼくはここだよー、むかえにきてぇえええええ」
 あまりに凄惨な光景を目の当たりにした園児たちは、落ちつくどころか先程以上に声を上げて泣いている。キュアマリンとデザトリアンの戦いは、幼稚園児たちに必要以上のトラウマを与えてしまったのだ。
「子どもたちに夢やキボーを振りまくプリキュアが、ゼツボーを撒き散らしてどうするんですかっ!」
「いいじゃん別に。最近はまほーしょーじょだって絶望を振りまくひっどい時代なんだしさあ」
「いや、だからこそプリキュアは希望を振りまかないといけないんですっ! まったくマリンはいつもいつもいつも!」
 ————あたしだって精一杯頑張ってるのになあ。不公平じゃない? これって。
 コフレのお小言を聞き流しつつ、マリンは自分の複雑な境遇に溜め息をついた。

◆◆◆

「貴様……どうみてもただの人間にしては、なかなかやるき。名前は?」
「花咲つぼみ……、キュアブロッサムです」
 一方、幼稚園近隣の河原では、(いつの間にか)キュアブロッサムの衣装に着替えたつぼみと、砂漠の使徒の幹部・クモジャキーとの死闘が続いていた。
 武器を一切使わない徒手空拳の猛攻に、つぼみは目や腹に青痣《アザ》を作ってふら付いており、いつ意識を失ってもいいほどに疲弊していたが、対するクモジャキーもまた、肩で息をするほどに弱っている。
「この俺に汗をかかせるとは……。ここで倒してしまうのは惜しい。キュアブロッサム、今日の勝負は預ける。もっともっと強くなって、俺の前に現れるぜよ!」
 つぼみがもっと強くなると確信を持ったクモジャキーは、踵を返し捨て台詞を残して去って行く。
 結局、自分がプリキュアではないという誤解は、最後まで解けないままであった。
「は……はふぅ……。た、助かりました……」
 張り詰めていた緊張が一気に解け、力なくその場に座り込む。人外の敵を相手にし、よくもここまで持ったなぁと、途切れそうな意識を繋ぎ止めつつ、自分で自分を褒めていた。
「つぼみー、大丈夫ー?」
「つぼみ、砂漠の使徒相手によく頑張ったですっ」
 そんなつぼみを優しく抱きとめ、膝に乗せる者がいる。デザトリアン騒動で幼稚園にいられなくなったえりかとコフレだ。つぼみは嬉しそうに笑みをこぼし、右手の親指を立てて答える。
「はい、なんとか……。手強い相手でした。全身に”ボルト”を埋め込んで、体そのものを強化していなかったら、あぁ、考えるだけでも恐ろしい」
「は、ァ!?」唐突に語られた衝撃発言に、えりかが声を荒げる。「あの後そんなことしてたの!?
やりすぎじゃない!?」
「でも、そのおかげでわたしは生きてます。後悔はしてません」
「そりゃあ……そうだけど」
 プリキュアとしてみんなを護るために、いや、力が無くてもここまでやるのか。
 えりかはつぼみの”戦士”としての覚悟と行動力に、感心を通り越して呆れてしまった。
「それより、ノリコ先生はどうなりました?」
「うん? あぁ……無事よ無事。まっ、このスーパー美少女来海えりかちゃんにかかれば、あんなデザトリアンお茶の子さいっさい!」
 鼻息荒く自身の手柄を自慢するえりかに対し、コフレが待ったと物申す。
「宣伝するどころか子どもたちにトラウマ植えつけたくせによく言うですっ」
「うるさいうるさい!」
「トラウマ……って、どういうことですか?」
「あ、あぁー……。そう言うことは後々! あたしも疲れちゃったし、今日は休もうよ! ね? ね!」
 つぼみの問いを封殺し、彼女に肩を貸して起き上がらせるえりか。
 陽が落ち始め、夕刻へと変わる頃。夕陽に照らされた自分たちの影が、とてもとても長く見える。
 自分はもう一人じゃない。プリキュアにはなれなかったけど、こうして支えてくれる仲間がいる。つぼみにとってはそれが何よりも嬉しかった。
「ありがとうございます、えりか」
「何よ急に。褒めたって何も出ないよ」
「お礼を言いたいから言ったんです。それだけです」
「ふぅん。なんだかよく分からないけど、どういたしまして」
「はいっ」
 つぼみは自分に肩を貸し、少し頬を赤らめて答える自分の相棒を見て微笑んだ。

◆◆◆

「こらー、ヒロ君! るみちゃんをいじめちゃだめでしょ! 女の子をいじめる悪い子は、”キュアマリンみたいになっちゃう”わよ」
「あわわ……ごっ、ごめんなさいノリコ先生、ごめんなさああい」
「分かればいいのよ、分かれば」

「えぇっと、これはその……どういうことなんですか」
 戦いを終え、幼稚園へと戻ってきたつぼみが目の当たりにしたのは、”キュアマリンみたいになる”という脅し文句を用い、園児を叱りつけるノリコ先生と、その言葉に本気で怯え、彼女の言うことにきちんと従う幼稚園児たちの姿だった。
 スーパー美少女戦士・キュアマリンの戦いぶりは、子どもたちにとって相当なトラウマなのだろう。
「なんなんですかこれはっ! なんでこんなことになってるんです!」
「さ、さぁあー。あたしにも何が何だか」
「えりかのせいですっ。えりかが子どもたちに教育上よろしくないことをし続けたせいで……」
「わー! わーわーわー! やめて、やめてったらコフレェ!」
「えりかっ! あっ、あなたは……いたいけな子どもたちになんてことを」
「だぁかぁらぁ! 不可抗力なんだって! あたしのせいじゃないっしゅ!」
「今日という今日は……! わたし、堪忍袋の緒が、切れましたッ!」
「ちょ、ちょちょっ、やめて! ゆるして! つぼみーっ!」

 美少女戦士キュアマリンこと、来海えりか。そしてその相棒花咲つぼみ(自称・キュアブロッサム)。戦いはまだ始まったばかり。彼女たちが客観的にヒーローヒロインに見える日は果たして来るのであろうか。
 重ね重ねになるが、戦いは未だ始まったばかりである。


※※※


 かの有名な「サバじゃねぇ!」な回。どこをどう料理していいのか分からなくなって、結局直ってるような直ってないような。

 花咲つぼみって、いったいどんなキャラだったんだろう。


 なお、小説家になろう掲載当時は「骨の中にボルトを仕込んだ」うえに「局所麻酔で痛覚も遮断している」という設定があり、より「キック・アス」っぽい展開だったのですが、流石に何日も麻酔は持続しないだろと思い直し、今回カットしました。これ以上人間じゃなくなるとつぼみが可愛そう。
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まとめtyaiました【ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #3】

 ――――前回までのあらすじ。 プリキュアの服は好きだけと戦うのは嫌だと妖精コフレに嘆願した来海えりか。 そんな彼女に、コスプレが趣味の自称”キュアブロッサム”、花咲つぼみというお友達ができました。 どうでもいいですが、「来海《くるみ》」と普通に打って...
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