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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(1)

Journey through the Decade Re-mix 第三話 「第二楽章♪キバの王子」 第一夜

 ←ぐうたら魔法少女伝説来海えりかちゃん #2 →Journey through the Decade Re-mix 第三話 「第二楽章♪キバの王子」 第二夜
仮面ライダーキバ。

 平成20年一月から21年一月の間に放送されていた、平成ライダー作品第九作目。
紅渡』と『紅音也』。
 親子の絆と物語が、22年の時を隔て交錯するという興味深い設定と、ヴァンパイアにコウモリを掛けあわせたキバのデザインの秀逸さに、放送開始前から興味津津だったことを思い出します(そういえば作品設定上は“”ング・オブ・“ヴァ”ンパイアの略称が『キバ』だったみたいですね)。

 二年ぶりに読み返してみると妙な言い回しが多く、読んでいて意味の解らなかった台詞が多すぎたので、今回はその辺を直すのに注力しようかなと。前回程大幅な書き直しはない……はず。


 タペストリーに描かれた新たな絵。
 宵闇に浮かぶ満月、ビルの中にめり込んだ”ドラゴン”。
 門矢士と光夏海は写真館の客間の窓に映った『ビルの中から顔を出す”ドラゴン”』を呆然と仰ぎ見ていた。

「”キャッスルドラン”……、ここは『キバの世界』か」
「キバの世界? きゃっするどらん? っていうか、記憶がないのになんでそんなこと知ってるんですか」
「知るか。知ってるんだから知ってるんだよ」
「”知”っていう字がわたしの頭の中で、”ゲシュタルト崩壊”を起こしそうなんですけど」
「それこそ知ったことか。勝手に起こしてろ」
 “そういう”造形物、デザインなのかと思ったが、良く見るとまばたきをし、鼻ちょうちんを膨らませ、近くを飛ぶ鳥をその大きな口で喰らい、飲み込むことなく吐き出す。あのドラゴンは彫刻でも何でもない。間違いなく生きている。
 だがそんなことより、過去の記憶がないはずの彼が、何故キャッスルドランなどという名前を知っているのか。夏海は人差し指と親指の間に顎に載せ、思案する。
 そうするうちに彼女は、士がまたも妙な格好をしているのに気が付いた。
「……何ですか? その”ホスト”風の格好」
「ホスト……?」黒いタキシードに身を包み、左手には洋梨のような形をし、ピンクと黒の縞模様の入った大きなケース。確かに、一目で何の職業なのか理解出来ない。
「お前なぁ、もっと言い方ってのがあるだろう。それに俺の手に持ってるもの、こいつが見えないのか?」
 士は左手に持った”ケース”をちょいちょいと指差す。そこに収まっているものは『ヴァイオリン』。つまり、彼の職業は。
「バイオリン……、ってことは、バイオリニスト……なんですか?」
「そういうことなんだろ。何をするのかはさっぱりだが。それはそうと夏ミカン。俺もひとつ、気になることがある」
「何です?」
 士は自分の左側面に向き直り、向かいの窓の方を指す。
 夏海の目に映ったのは、写真館前に於いて怪しいステップで踊り狂う謎の男だった。
「あやしい……ですね」
「だろ?」
「あっ、こっちに気がついたみたいです」
「おいおい冗談だろ。向かってくるぞ」
 男も彼らの存在に気がついたのか、8ビートの軽やかなステップを維持しつつ、写真館に入り込む。彼は栄次郎と会釈を交わし、夏海と隣り合う士を左手で軽く突き飛ばすと、夏海の両手を掴み、手の甲に軽く口付けをした。
「ハァイ。美しいお嬢さん、一つ聞きたいことがあるんだけど、いいかな」
「え、え? は……、はい!」
「”マルダムール”って喫茶店、知らないかな? この辺だと聞いてたんだけど。ここは”写真館”って書いてあるし」
「そんな店は知らん。コーヒーが飲みたきゃ別の店に行け」士は面倒臭そうにあしらう。
「えぇ。ここは写真館です。喫茶店じゃありませんよ」
「あぁ、でも。コーヒーならできますよ。飲んでいきますか?」
「ほぉ、ほぉ……」男は夏海の話を聞き、栄次郎の話を半分聞き流し、士を完全に無視すると、タペストリーの前に用意された古めかしいカメラを見つめ、目をきらきらと輝かせる。
「写真館。それは素晴らしい。じゃあ、一枚撮ってもらおうかな。ボクもそろそろ、”お見合い写真”が必要なお年頃、ですしね。あ、店員さん。コーヒーもよろしく頼みますよ」
 夏海は椅子とカメラのセットを、栄次郎はコーヒーを淹れに厨房へと引っ込む。士はこの男の横柄な態度に苛立ち、部屋の隅で彼をじっと睨みつけていた。
 男はこの時初めて、飾られたタペストリーを目にする。満月の夜に映えるキャッスルドランを前に彼は息を呑み、感嘆の声を上げた。
「オォウ……、ビューティフォー、ワンダフォー、グロリアッス! 素晴らしい、素晴らしい絵画ではあーりませんか。ならボクもこれに合わせて着替えよう、かな」
 着替えるも何も、荷物なんて何も持っていないではないか。夏海はカメラをタぺストリーの前にセットしつつ、彼の言動に首を傾げる。
 その時だっただろうか。男の首から顎にかけての部分が、まるで光に乱反射して七色に輝くステンドグラスのようなものに変わったかと思うと、噎せ返るような高笑いと共に、彼は蜘蛛を模した怪物へと変化したのである。
 この怪物こそ光輝く牙を用いて人の命《ライフエナジー》を吸いとり、糧とする闇の一族、ファンガイアだ。
「ねーぇお嬢さん、こうかな? いや、こう? あぁいや、こぉんなあられもない感じもいいかなぁ。どう? どぉ?」
 タペストリーを前にし、様々なポーズを決める蜘蛛のファンガイア。彼がそんな怪物だとは知らなかった写真館の面々は驚きを隠せない。
「そんな、怪人がこんなところにまで……」
「ずいぶん派手な着替えだな。なんなら、俺がもっと涼しくさせてやってもいいぜ」
 夏海は座椅子を持ち上げ彼を威嚇し、士はディケイドライバーのバックルを取り出して、腹部に押し当てた。しかし、どうしたことだろう。夏海の威嚇と士の殺気を受けた蜘蛛のファンガイアは、部屋の隅まで引き下がり、生まれたての小鹿の様に体を震わせているではないか。
「なっ……、なんだよなんだよぅ! ファンガイアだからって追い出すつもりぃ? 何もしてないファンガイアを差別するのは『法』で禁止されてるんだぞぅ!」
「ごちゃごちゃうるせぇ。さっさと選べよ、出ていくか、ここで俺に倒されるか」
 ライドブッカーからディケイドのカードを取り出し、怪人の前で徐《おもむろ》に構える。
 その行動の意味は理解できなくとも、彼の威に圧倒されたファンガイアは、両手を上げて、写真館を出ようと壁伝いに逃げて行く。
「も……、もうこんな店になんか来てやるもんか! 親衛隊に、言いつけてやるぅ!」
「逃がすかよこの野郎ッ」
 彼を追って外に出る士と夏海。彼の目の前に、連れ立った三人の小学生が通りすがる。蜘蛛ファンガイアは嫌らしく笑み、小学生たちの方へと近付いて行く。
「士君見てください、子どもたちが! 変身……そう、レッツ変身です」
「言われなくとも」
子供たちを護るため、士はディケイドに変身しようとした、のだが――。
「あっ、“ちゅーりっひ“だぁ」
「どーしたの?」
「うぇえん、いじめられたよぉ。ファンガイアは人間の店になんか来るなってぇ」
 二人は自身の目と耳を疑った。
 蜘蛛の怪人は子どもたちに襲いかかるどころか、彼らに泣きつき、頭を優しく撫でられ、あからさまに慰められているではないか。
 ファンガイアから事情を訊いた小学生たちは、得物を持ったまま呆然とする士に対し、厳しい口調で言う。
「いけないんだぁ、ママが言ってたよ。ファンガイアさんとは仲良くしなさいって」
「ちゅーりっひをいじめるやつは、ぼくたちがゆるさないぞ! ゆるさないんだぞ!」
 子どもたちの糾弾に対し、「で、でも。みんな、怖くないんですか?」夏海は当然生まれるべき疑問を口にする。小学生たちは当然だよと、満面の笑みを浮かべて答えた。
「こわい? ちゅーりっひはかわいいもん」
「さいしょはちょっとだけこわかったけど、いまはぼくたちの友だちだもん。ねー」
「ねー、ちゅーりっひ。あれやってよぉ」
 蜘蛛のファンガイアは子供の声に答えて頷くと、どこからともなくネズミのパペットを取り出して右手に嵌め、上ずった声で笑いだした。
「ちゅーりっ、ひひひひ」
「ちゅーりっひひひひ」
「ひひひひひひひひ」
 気持ちの悪い笑い声だ。だが、子どもたちはそれに同調し、楽しそうに笑っている。怪しげな光景だが、どことなく和やかだ。
「……どういうこと、なんでしょう」
「俺に聞くな」
「あれ、夏海。さっきのお客さん、帰っちゃったの?」
 二人がなんとも言えない表情でその光景を見つめていると、コーヒーを淹れ終わった栄次郎が玄関から顔を出す。
「あぁいや、そういうわけじゃあ……ないんですけど」
「あいつは化物だぞ。コーヒーも写真を撮る必要もねぇ」
「まあまあ。そう邪険に扱うものじゃあないよ士君。ほぅら、これを見てごらん」
 栄次郎は玄関にかかっていた回覧板を士に手渡す。そこでは人とファンガイアの集いという親睦会の告知が掲載されていた。
 笑顔で腕を組む人とファンガイアの写真が見出しに用いられ、本文には人間が恐れを捨て、ファンガイアと接すること、餌という概念を捨て、人に歩み寄るファンガイアの姿や素晴らしさが、格調高く綴《つづ》られている。
「おいおいおいおい、マジか、マジなのかよ、これ」
「にわかには……信じられませんね」
 人と怪人の共存。絵空事のようなことがこの世界では実現出来ているというのか。
 夏海と士は煮えきらない表情で会報を見つめる。
「とりあえず、街の中でも、見に行くか?」
「そうですね」
「おいおい二人とも、せっかく淹れたこのコーヒー、どうするんだよぉ」
「感謝しろ。この俺が飲んでやる」
「あぁ、あぁ。うがい飲みはやめて」
 案ずるより産むが易し。差し当たって士は辺りを見回し、ぼろぼろになった自転車を見つけると、
 ――ATTACK RIDE 「MACHINE DECADER」
『マシンディケイダー』のカードをドライバーに挿入し、それに乗って街へと繰り出した。
「……犯罪じゃないですか、これ」
「もしそうだとしても誰にも立証できねぇよ。元は自転車だったんだからな」

「うげぇ……」
「どうしたんですか士君」
「舌……やけどした」
「自業自得、ですね」

◆◆◆


 “王政”が敷かれ、ファンガイアの王が統治を行う国。士たちが訪れたのは、その王の住まう王都・奏音《カノン》。現代の有名音楽家・ミュージシャン・指揮者などを多数輩出し、種類問わず、世界水準の楽器を生産・販売する、まさに“音楽”の街だ。
 それを象徴するかのように、街の中は多種多様の音楽で溢れかえっている。目覚めと共に華やかなマーチが高らかに流れ、日中は高揚感あるポップスやレゲエなどが、それぞれ競い合うように人々の耳を刺激する。良く言えば賑やかで楽しく、悪く言えば少々喧しいと言ったところか。
 ディケイダーを駆って街を巡る中、夏海は己の常識の範疇を越える光景の連続に圧倒され、士は無感動無表情に、目に留まるもの全てを、トイカメラのレンズの奥に収めて行った。

「くまちゃーん、おすもうしよーよー」
「よぉし、負けないぞぉ」
「くまちゃーん、かたぐるまっ、かたぐるまー」
「よぉしよし。ほぉーらっ」
「うわぁ、たかいたかーい」

「いつもありがとうございます隈城《くましろ》先生」
「隈城先生みたいな逞しい方がいてくださって、園児もわたしたちもみんな大助かりです」
「いえいえ。私も好きでやっていますから」
大きなエプロンを身に纏い、幼稚園の園児たちと戯れる熊のファンガイア。
保育士たちに怖れや気遅れと言ったものはなく、彼もまた一職員として保育士たちと普通に接している。

「好きだ、美代子」
「わたしもよ、洋平さん」
「いやだ、洋平さんったら。どこが唇なのか分からないじゃない」
屋外の喫茶店の一室で、愛を誓い、唇を重ねようとする女性と亀のファンガイア。
「美女と野獣」と言っても差支えの無い怪しげなものだが、本人たちの愛に嘘偽りはない。

「三番、根棲《ネズミ》。ニンポー・分け身のジュツやります!」
「おぉっ、これが『ワ』国に伝わるニンジュツ……って、根棲君、君は元々『三人兄弟』でしょうが!失格」
「兄者、すまない」
「俺たちが未熟なばっかりに」
「いいんだ、弟たちよ。きっとまた、チャンスは必ずやって来る。次は影分身の術だ。分身するタイミングを見誤るなよ」
 ステージを下りた鼠《ネズミ》のファンガイアたちは、会場の隅で肩を並べ、自身らの健闘を称え合う。

「エゼキエラ、ハブママシド、ラガ……」
「違う。もっとこう、言葉に艶を持たせて。……もう一回」
「エゼキエラ、ハブママシド、ラガ・ウェルデガン……」
「うむ、うまく行った様だ。林檎の色が紫に変色している。この感覚を忘れないようにしなさい。じゃあ次はこの壺を……」
 街外れの路地では、蟷螂《かまきり》のファンガイアに呪術のようなものを教わる少女の姿さえある。
 士と夏海の予想以上に、この世界における人間と怪人との垣根は低いらしい。
「とりあえず、どこかで休憩しましょうよ」
「そうだな。少し疲れた。あそこのハンバーガー屋なんてどうだ」
「何でもいいです」
 バイクを停め、何の変哲もないファーストフード店に入り込む。
 何を注文するかとメニューを眺めた際、そこに書かれていた“異様なもの”が、二人の興味を強く引いた。
「ファンガイアのお客様限定・ここでしか味わえないライフエナジー? なんだこいつは」
壁に貼られたメニューを、上から順に夏海が読み上げる。「高揚感が欲しいあなたに”理想に燃える若者”、桃色気分に浸りたい方には”恋に生きる健気な乙女”、涙の味を知りたい玄人には”愛する我が子を失った母親”……。訳が分かりませんね」
 ファンガイア用のサイドメニュー・人間から抽出された”ライフエナジー”。
『人間の生命力』を特殊な製法で缶の中に綴じ込め、ストローで吸い取ってするものらしい。食品と言って良いのか分からない物騒なものだが、一缶六百円前後と意外に安い。
 この世界では、ライフエナジーは国への税金と共に納税を義務付けられており、ファンガイアであれば誰でも配給によって受け取ることが出来るのだ。
 だが、それだけでは満足できないファンガイアも少なからず存在し、禁止されていても人間を襲うファンガイアが多い。そのため、国では献血ならぬ、『献エナジー』者を募り、収集した上で軽食店などで摂れるようにし、犯罪抑止に利用している。賛同者などいるものかと思われがちだが、命を削ってでも金を得たいという人間は腐る程おり、需要者であるファンガイアは数が少なく、その分殆どが富裕層。需要と供給のバランスは、意外にも危なげなく保たれている。
「とんでもない世界だな」
「そうですね。でも、なんだか……」
「なんだよ?」
「わたしは好きですよ、こういう世界」
 人と怪物が争わず、共存出来る世界。
 そんなものが本当に実現出来ているのなら、これほど素晴らしいものはない。夏海はこの世界の様相に触れ、少し感動しているようだった。
 しかし、士の反応は芳しくない。「俺は嫌だね。こんな世界じゃ、俺がすべきこととやらがさっぱりだしな」
 バイオリンを持ち、タキシードを身に纏ってはいるが、こうも平和な世界では、自分がここで成すべきことが全く分からない。拳を振るうだけの理不尽も、喰らいつくべき敵も、この世界には存在し得ないのだ。
「……あれ?」
「どうかしたのか?」
「士君、何か……聞こえませんか?」
 夏海の耳に届いたのは、黒板を爪で引っ掻いたような不協和音。人とファンガイアが共生する平和な街には相応しくない雑音だ。
「これは……、”古いヴァイオリンの弦を無理やり弾いた音”か」
「いや、確かに聞こえてきましたけど、そこまで詳しく分かるものですか?」
「それぐらい当然だ。面白い、様子を見に行ってやるか」
 ――なんで”当然だ”、なんて言い切れるんでしょう。
 夏海はそう思案したが、聞いても無駄だと判断し、口を閉じた。

◆◆◆

 街から少し離れた場所にある、赤色の屋根に白い壁の西洋風の屋敷。
 階段を登って二階の奥、埃を被った工房のような場所に、『彼』はいた。
 栗色と茶色が混ざり合ったような頭髪に、大人と並び立って、その肩程くらいの小さな背丈。まだあどけなさの残る幼い顔立ち。それでいて、醸す雰囲気は如何ともし難い謎の少年。
 少年は弦の腐りかけた古いヴァイオリンを、筋張った弓で無理やり弾くと、そこから奏でられる雑音という名の音色を聞き、落胆の溜息を漏らした。
「やっぱり、……ダメか」
「『ポーン』と『ナイト』に新しいのを作ってもらえよ。なんでそこまでこのヴァイオリンに拘る? 耳障りな音を響かせるだけじゃないか。ぎぃぎぃ、ぎーぎー」
「ぼくはこれがいいからやってるの。余計な口を挟むなよ、キバット」
 少年に話しかける”もの”がいる。人語を理解し饒舌に喋る、平べったくも愛らしい”コウモリ”の形をした浮遊体だ。コウモリは彼の演奏を嫌がり苦言を呈すも、少年は聞き入れず、彼を右手で軽くあしらう。
 それでも尚、コウモリは少年に食い下がる。「今回の演奏は”即位式”における大切な儀式なんだぞ。お前の我が儘にいつまでも付き合ってられるか。ふざけんのもいい加減にしろよ、ワタル」
 平べったいコウモリは、“ワタル”の行動を強く非難するも、彼は哀しそうな顔をしたまま口を結び、一言も口にしない。
「まったくよぉ、なんなんだよ。”王になる”ことの、どこが不満なんだ」
 不満、という言葉に反応し、ワタルはオウム返しに答える「不満? 別にそんなものないよ。ぼくの力不足ってだけだろう。ヴァイオリニストとしても、王としても……」
「馬鹿野郎、こちとら、お前がよちよち歩きの赤子の時からの付き合いなんだ。行方不明の”親父”目指して、血の滲《にじ》むような練習重ねてたのも、だからこそそんじょそこらの”プロ”も舌を巻くぐらいのウデを持ってることだって知ってんだ。
 即位式の大切な儀式の中でわざとド下手な演奏かませば、国民からの信頼はガタ落ち。責任を取るだのなんだのと屁理屈捏ねて、”王”の座を降りようってんだろ」
「……」ワタルは苦虫を噛み潰したかのような表情をし、コウモリを睨み付けたまま何も言おうとしない。
「やっぱり図星か。お前の考えぐらいお見通しなんだよ。子どもじゃあるまいし、駄々ばかり捏ねてんじゃねぇ」
「ぼくは子どもだ。子どもが駄々を捏ねて何が悪い!」
「開き直るな! あぁ言えばこう言う、こう言えばあぁ言う! ガキの癖して屁理屈だけは一丁前だなお前は」
「今ガキって言ったね。ぼくは大人じゃないって、キバットも認めているじゃないか」
「あッ! ……あぁもううるさい! そういう問題じゃねぇって、何度言えば分かるんだ!」

 平べったいコウモリ“キバット”と、ワタル少年が口論を繰り返す中、音の発信源を突き止めた士と夏海は、屋敷の外から彼らの様子を眺めていた。
「何だ何だ、雑音の次は罵詈雑言か。何にしても穏やかじゃねぇな」
「いつまでも眺めてないで、止めさせましょうよ」
「面倒臭ェな。腕力に物を言わせても良いが……、この際だ、音には音で対抗してやるか」
 士はケースからヴァイオリンを取り出すと、それを右肩に乗せて構え、演奏を始めた。
 音楽に興味のない者も、荒んだ心の者も、ヘッドフォンで外界の音を遮断している者でさえも、つい立ち止まって聞き入ってしまうほど、美しい音色だった。

「この、音は……」
「へェ、すげぇじゃん。いい音響かせてやがんなぁ」
 美しい音色に反応し、ワタルは屋敷の窓から外を覗く。彼は美しい音色でヴァイオリンを弾く士が気になり、屋敷から姿を現す。
「あ、出てきましたね」
「ガキ、か。あの耳障りな雑音も納得、だな」
「でも士君、ヴァイオリンなんて習ってましたか?」
「はッ、俺に苦手なものはない。写真を撮ること以外は、な」
「……ごめんなさい、全然意味がわかりません」
「ねぇ」二人の話を遮るように、ワタルが短く呟く。「何をしてるの? 用が無いんなら、出て行ってほしいんだけど」
「俺様の素晴らしい演奏を前に、何だその態度は。聴き逃げは良くないな、どけと言うなら相応の金を……」
「子どもからお金巻き上げて、あなたそれでも大人ですか!」
 夏海は調子に乗った士を止めるべく、彼の首筋に笑いのツボを押し込む。士はげらげらと笑いながら地面に突っ伏した。
 倒れたままの士を尻目に、今度は夏海がワタルの前に立つ。「ごめんなさい。このお兄さん……変な人なんです」
 夏海はワタルを気遣い、彼の肩にそっと触れる。何がいけなかったのか、ワタルは夏海を突き飛ばし、冷たい目で彼女を睨み付けた。
「触らないでよ。お姉さん、”人間”なんでしょう」
「な、なんなんですか。わたし、何か悪いことしました!?」
 彼の行動が理解できず、困惑する夏海。そこで笑いのツボから解放された士が起き上がり、ワタルに問いかける。
「お前、”ファンガイア”、だな」
「だったら何? 怖いんならとっと逃げたら? 別に取って喰いはしないよ」
 ワタルは嫌味たらしく口元を歪ませる。その周囲に限り、ステンドグラスが光で乱反射するかのような、絢爛な輝きを発していた。人間に化身したファンガイアの特徴だ。
 動揺しているのか、怒りを覚えたのかは分からない。だが士は、それがどうしたと話を続ける。
「人かファンガイアかなんかどうだっていい。だがな、子どもは大人に対してその、口の利き方ってもんがあるだろう」
「……何が分かるんだよ。何も知らないくせに」
「そりゃそうだ。悩みなんてもんは、自分から言わなきゃ誰にも分かってもらえない。影を見せてカッコ付けようとしているらしいが、そんなもんただの逃げなんだよ」
「あなたに言ったところで何の意味もない。見ず知らずのあなたなんかにはね」
「ほらこれだ。どうしてそう決め付ける。お前はまだ何もしちゃいないだろ。そういう文句は、何かした奴にしか許されねぇんだぜ」
 互いが互いを睨みつけ、双方一歩も退こうとしない。
 どちらも妥協する気が無く、永遠に続くかと思われた睨み合いは、意外な形で決することとなる。
 ――きゃあああああああああああああッ!
 絹を裂くような女の悲鳴が、彼らの耳を遮り、二人の戦意を削いだのだ。
 届いた声の大きさからして、この周囲で発せられたものと見て間違いないだろう。
「士君! 聞きましたか今の!? この子と睨み合ってる場合じゃあ」
「聞いてるよ。ボウズ、この話は後だ。そこを動くなよ」
 二人はヘルメットを被り直してバイクのエンジンを回し、悲鳴のした方へと向かう。
 ワタルは、走り去るマシンディケイダーのテールランプを、ただ無表情に見つめていた。

◆◆◆

「逃げても無駄だ、観念しろ」
「この先は既に包囲した。貴様に逃げ道はない」
 赤く点滅する回転灯と四方八方に鳴り響くサイレンの中、女は目の前に何があろうが、誰がいようとも構わず、街の中を駆け巡る。
 青白く光る警棒のようなものを持った複数のファンガイアが、彼女を追って街中を駆ける。
 あっと言う間に包囲網が敷かれ、女はカップルや家族連れで賑わう、海沿い広場の中に追い遣られた。
 包囲の中から野太い”棍棒”を持ち、ライオンにも似た姿のファンガイアが迫る。どうにもできずその場に座り込む女に、ライオンの怪人は無慈悲に棍棒を振り下ろす。
 しかし、渾身の一撃が女の脳天を割ることはなかった。その寸前、士の操縦するマシンディケイダーに突き飛ばされ、近くのビルに叩きつけられてしまったからだ。

「やりましたね……じゃないですよ! 危ないじゃないですか」
「問題ない。女に当てないよう、角度には気を配った」
「いや、いや。そうじゃなくて! わたし! わたしが」
「そう思うんならサッサとどけよ。怪我しても知らねぇぜ」
 夏海を逃がし、ヘルメットを脱いで己の周囲を改めて見やる。
 無防備無抵抗の女を取り囲む化け物たちの図。誰がどう見ても、悪いのは徒党を組んだファンガイアの方だ。士は女に逃げろと促し、隊長格らしきライオンの怪物と向かい合う。
「……何のつもりだ人間! 俺が王族防衛隊隊長、『ルーク』だと知っての狼藉《ろうぜき》かッ」
「何が人とファンガイアは仲良くだよ。王族のおエラいさんが何してやがる」
 ファンガイアは苦々しげな表情を浮かべ、言葉を接ぐ。「この女は”掟”に背いた。生かしておく道理はない。俺を轢いたことは不問にしてやる。死にたくなければそこをどけ!」
「……上から目線に、その姿勢。気に食わねェ、いや、気に入らねぇ」

 ――変身
 ――KAMEN RIDE 「DECADE」!
 バックルを腹部に押し当て、ディケイドのカードを挿入。十つの虚像に包まれて、『仮面ライダーディケイド』へと姿を変える。
 ライオンのファンガイア・新鋭隊長の”ルーク”はそれを反抗の合図と見なし、ライドブッカーを構えるディケイドに向かい、棍棒を振るう。
 振り下ろされた衝撃で地面が少し沈んだが、その重さ故、動きは目視でかわしきれるほどに遅い。
「おいおい、そんなもんかよ。同列に語るのも何だが、前の世界の狼の化け物のほうがずっと強くて、凄まじく恐ろしかったぜ」
 棍棒の一撃一撃を丁寧にかわしつつ、左拳とライドブッカーの刃を、ルークの体に交互に打ち込んで行く。
 両肩両膝を痛め、脇腹を抉られたルークは、ディケイドに土下座するような形で地に伏した。
「馬鹿な、馬鹿なッ! この……俺がッ」
「相手が悪かったな。化け物はおとなしく住処に帰れ」
 立ち上がれないルークの背に、無慈悲に刃を振り下ろす。誰もがルークの最期かと、息を呑んだ……その時。
 ――待て待てーい! キバットバット三世様のお通りだぁーい!
「なっ……、なんだ! 何なんだッ」
 ディケイドに蹴りをぶつける平べったいコウモリ。ワタルの傍らに居た”キバット”だ。
 この闖入者に驚いたのはディケイドではなく、意外にもルークの方であった。
「キバットバット三世……! 何故貴様がここに」
「よォよォ、イカす格好してんじゃねぇの、子猫ちゃん」キバットはルークを小馬鹿にしたような態度で言う。「ここに来た目的なんざ一つだけだ。あんたらの王子様が”退け”、って言ってんの」
「”王子”……、ここに来られているのか!?」
 何故ここにと訝しむルークをよそに、歓声を浴びて、一人の少年が広場の外からやって来た。
 ”ワタル”少年、その人だ。彼はこの世界の、この国の”王子”だったのだ。
 王子・ワタルはルークを見下ろし、子供らしからぬ冷徹な表情を見せる。「ここはひとまず退くんだ。後はぼくに任せて休め」
「王子……。どうかご自愛くださいませ。自ら戦線に赴くのは、あなたのすべき事ではございませぬ」
「その体で、その姿で、よくもそんなことが言えたものだな。いいかルーク。お前の身はお前一人だけのものじゃない。お前はこの国にとって優秀な人材、ぼくの大切な部下なんだ。何故それが分からない」
 国の世継ぎが、防衛隊隊長である自分の代わりに戦うと言う。側近として、そのような勝手を許すことは出来ない。
 だがこれはその世継ぎ、直々の命令だ。反論してどうこうと言うものでもない。ルークは駆け付けた他のファンガイアに連れられて、悔しそうに広場を出て行った。
 ディケイドとワタル、そして彼の供であるキバットが、互いが互いを見つめ、睨み合う。
「……全身ピンクに黒縞、オーラパワーのマスクマン。”キバーラ”の情報通りだぜ」
 その言い方が気に障ったのか、ディケイドは待てよと声を上げる。「そこのコウモリ。俺のこれはピンクじゃねぇ、”マゼンタ”だ」
 ワタルは彼の言葉を無視し、吐き捨てるように言う。
「話は聞いているぞディケイド。この世界を破壊せんとする……悪魔!」
「仇の次は悪魔かよ……。メイヨキソンで訴えンぞ」
「問答無用、この世界はお前なんかには渡さない! キバット!」
「おうよ! キバって、行くぜっ!」
 ――がぶッ!
 ワタルの声に応じ、キバットは彼の左手の甲に噛みつく。彼の首から頬までに”乱反射するステンドグラス”のような模様が現れたと思うと、腹部には幾重もの鎖が絡まり、赤く輝くベルトへと変化した。

 ――変身。
 キバットをベルト状の装飾物の”止まり木”のようなものに止まらせる。
 ワタルの体は何かの波長と共に銀色に包まれ、それが弾けて消えると、全身が人の血を連想させるかのような紅《くれない》に染まる。
 王子・ワタルは、“ジャック・オ・ランタン”にコウモリを掛け合わせたような不気味な顔、全身を縛り付ける拘束の鎖に身を包んだ『ヴァンパイア』の戦士、”仮面ライダーキバ”へと姿を変えた。

「成る程、お前がこの世界の仮面ライダー、『キバ』ってわけか」
 記憶にあるわけではないが、どこか『知っている』不可思議な感覚。
 気味が悪いが、だからと言ってどうと言うことも無い。ディケイドはそれを頭の片隅に放り、目の前のライダーをただ睨み付けていた。
「さぁて、と。遊んでやるからかかってきな、ボウズ」
 ライドブッカーの峰についた埃を拭って腰に納め、腰を落とし、両腕を広げて襲い来るキバを迎え撃つ。
 間合いを詰めてディケイドと組み合い、徒手空拳での殴り合いに持ち込むキバ。力、反応速度、瞬発力。両者共に互角であり、譲る気などまるでない。
 拳同士の争いの中、ディケイドは隙をついて腰のブッカーをガンモードに変えて抜き、銃弾を撃ち込んで距離を取る。
 尤もキバにも目立ったダメージは無く、直ぐに反撃の体制を整えていた。
「ぺっぺっ。あんにゃろ、俺の口ン中に鉛玉をぶっ放しやがった。この落とし前、どうつけてくれるんだァ、ワタル」
「決まってる。銃には銃だ。来い、“バッシャー”」
「オーケー、いっちょうかましてやりますか!」
 ――バッシャー、マグナム!

 キバはベルト左腰に装填された『緑色のホイッスル』を抜き出し、キバットの口に咥えさせる。
 同時にラッパの高らかな音が鳴り響き、彼の左手に緑色の鮮やかな『彫刻』が握られた。

◆◆◆

 その少し前、王の居城”キャッスルドラン”内部では、従者と思しき三種の怪物が、何かを探して大広間の中を忙しなく動き回っていた。
 一体は青の毛並みの“狼男”。
 もう一体は背が低く、あどけなさを残した緑の”半漁人”。
 更にもう一体は、大柄巨漢紫色の”フランケンシュタイン”だ。

 そのうち、狼男の怪物は疲れた顔で溜め息をつく。「”即位式”の話を持ち出すとすぐこれだ。王子、何処におられるのだ、王子!」
「仕方が無いんじゃないの、ガルル。彼はまだ子どもだよ」緑の半魚人が狼男・ガルルに向かって言う。
「何を世迷い言を。108歳の『子ども』が知ったような口を聞くな」
「……話の腰を折らないでくれる? 本人が望んでないのに継がせた所で、今日みたいに逃げ出すのがオチ。『陛下』不在で逸る気持ちも分かるけどさ、少し落ち着いた方がいいんじゃないの」
「バッシャー……、お前は楽観的すぎる。あのお方の御威光が薄れかけ今、国民全てを纏める王の存在は何より急務。そしてそれは、ファンガイアとヒトとの間に生まれた陛下の嫡子・ワタル王子以外にあり得ない」
「だからァ、それが焦りすぎだと言ってるの。あのワタル王子だよ? 陛下の息子だってだけじゃ、纏まりなんか出来っこないって」
「まだ言うか、聞き分けの無いガキめ!」
「そっちこそ、分からず屋で堅物のダメオヤジ!」
 言い争いの末に取っ組み合いとなる二人の化け物。一人残った紫の大男は、「ふたりとも、おーちーつーけー」彼らを宥めるべく詰め寄るも、
「貴様には関係ない、黙っていろ!」
「ドッガは黙っててよ! 今僕はこの分からず屋と話してるんだから!」
「うー。あー、おー……」
 喧嘩をしていながらも、妙に息の合った返答をされ、何も出来ずに縮こまってしまった。

 そんな中、城内に彼ら宛の”通信”が入る。通信といっても、電話など機械を介してではなく、広間中央の大テーブルに並べられた、数枚のタロットカードに依るものだ。
 光輝く一枚のカードを手にし、念を込める。そこに本来描かれていた絵柄が失せ、変身して互いに拳をぶつけ合う二体のライダーを映したものへと変化する。
 この国では治安維持の為、呪術めいた力で精製された「センサー」が、街中に人知れず張り巡らされている。センサーが察知した情報は、警備本部を兼ねる居城・キャッスルドランの大広間と、現場から最も近い親衛隊屯所に送られ、事件の規模に応じて隊員が派遣されることとなっている。
 士たちの戦いは直ぐ様センサーに関知され、ガルルたちの知るところとなったのだ。
 王子が得体の知れない怪物と戦う姿を見、ガルルは低い唸り声を上げて目を伏せた。
「何をやってるんだ王子は……、親衛隊! 親衛隊は何をしている!?」
「……今さっき連絡が入ったよ。大隊長のルークが、あのピンクの化物にぼこぼこにされたんだってさ」
「あのルークが……! 直ちに他支部に増援を掛けろ」
「了解。なら一人、連れて行って欲しい新人が居るんだけど」
「新人?」
「ほら、最近入って来た奴が居たじゃない、『ミカクニン部族』だとか名乗った男の子。どれくらいの腕前か、見て見たくない?」
「それは……そうだが」
 未経験の素人をいきなりそんな現場に、とガルルが渋る中、場内に高らかなトランペットの音が響き渡る。それと同時に、バッシャーの体が光り輝き、拳銃のような武器に変化した。
「あっ……、僕、王子に呼ばれたみたい。二人とも、後はよろしくね」
 そのまま光となって姿を消すバッシャー。
 残されたガルルは気が気では無かった。自分たちが“呼ばれる”程の相手だ。相当の手練れに違いない。まだ幼いワタルは大丈夫だろうか。

「バッシャー、行って、らっ、しゃい。……あぁ、俺もー、行くの、か?」
「当たり前だ」
 椅子に座って休もうとするドッガを強引に引っ張り、彼らもまたキャッスルドランから出て行った。

◆◆◆

 周囲に響き渡る緑色の波動とトランペットの美しい音色。キバの前に、銃口に”フィン”のついた緑色の銃が現れる。それを握った瞬間、何かの力がキバの体に流れ込み、左肩と左腕を中心に緑色に染まる。
 半魚人・マーマン族の力をその身に宿した緑のキバ、『バッシャーフォーム』の登場だ。

「お返しだピンク野郎、こいつを喰らいな!」
 バッシャーマグナムの引き金を引く。周囲の水分を吸収したと思しき水甲弾が飛び出した。
 ディケイドもガンモードで応戦するが、弾の大きな水甲弾と真正面で防がれる。
「ずいぶんと便利そうな武器持ってんじゃないの。こりゃあ逃げだ……って!」
 分が悪いと、ディケイドはキバに背を向け距離を取ろうとするが、何故か足が全く動かない。
 よく見ると、自分の足元が、泉のようなものへ姿を変えている。
 この泉、見た目は清らかだが、人一人楽々沈め切るだけの水深があり、そう簡単には抜け出せない“底なし沼”となっていた。
 これがキバ・バッシャーフォームの持つ能力だと理解したのは、足を取られて転び、背中を思い切り撃ち抜かれた後であった。
「ったく、しなくてもいいドジを踏んじまったなァおい。あのガキめ、ケツを蹴り上げなきゃ分からんと見える。だったらよ……」

 ――変身
 ――KAMEN RIDE 『KUUGA』!
 無様な格好で撃ち抜かれたことが余程腹に据え兼ねたのか、新たなカードをバックルに装填。
 バックルが激しく光り、ディケイドの足、腕、胴が顔が、別の何かに変質した。
 この姿は、人々の笑顔を護るために戦うライダー『クウガ』だ。

 これが『ディケイド』という仮面ライダー、その最大の特徴だ。
 ライダーカードをバックルに装填することで、別の仮面ライダーへと二段変身を遂げる。
 今の彼はディケイドでありながら、クウガの持つ能力全てを行使出来るのだ。

「なんだ、こいつ……。別の何かに変わりやがった!」
「姿が変わっただけだ、怯むなキバット」
「どうかな? とも、限らないぜ」
 気合いで泉から抜け出しだディケイドは、バッシャーマグナムの水甲弾を弾かずに突貫し、奴の頬に右の強打を叩き込む。想定外の展開に、キバはよろけて片膝をついた。
 ――どうだ効くだろう。なにせ、この俺ですら手こずったんだからな。
 ディケイドは、無感情なクウガの仮面の中でにたりと笑った。
「けーっ、なんだよあいつ。変身した途端にいきなり強くなりやがった。赤はスピードもパワーも通常の三倍というが、ありゃあ本当だなオイ」
「それはキバットの好きなアニメの話だろ」
「しっかし、どうすんだ?」
「攻め方を変えるだけさ。出てこい、ドッガ!」
「おうよ。いくぜぃ、『ドッガハンマー』!」
 ベルトの左側部から紫色のホイッスルを引き抜き、バックルのキバットに吹かせる。
 紫色の波動と共に飛んできた紫の槌《つち》。それを手にしたキバの体には紫色に鈍く輝く鎧が生成され、槌の大きさもキバの肩ぐらいまで伸長された。
 圧倒的腕力と頑健な鎧。人造人間・フランケン族の力をその身に宿した紫のキバ、
『ドッガフォーム』だ。
 振り回して扱う分、動き自体は容易く見切れるが、人の胴回りぐらいの大きさの得物を目の前で振り回されては、間合いで劣る”赤のクウガ”には、手の出しようがない。
「あぁもう、うっとおしいな。こなくそッ……てて、痛てえッ、硬てェっ」
 意を決して懐に潜り込み、拳による一撃を見舞う。だが、紫のキバには蚊ほども効かず、逆にディケイドの方が拳を痛めてしまう始末。
 装甲が凹む程の反撃を喰い、両膝をつくディケイド。無慈悲にもそこに振り下ろされるドッガハンマー。
「ちくしょう……なら、これだッ」
 ――FORM RIDE 「KUUGA TITAN」
 相手の攻撃を受ける寸前、別のカードをドライバーに装填。クウガの複眼が紫色になり、白銀の鎧を纏った姿へと変化する。力と防御能力に長ける紫のクウガ・『タイタンフォーム』だ。
 彼が今使用したのは「フォームライド」といい。ライダーの形態変化を完全に再現できるカードだ。
 紫のクウガへと変身したディケイドは、槌をその堅牢な鎧で難なく受け止め、逆に鎧越しに自身の拳を叩き込み、ハンマーを奪い取った。
 奪われたドッガハンマーは、クウガのモーフィングパワーによって、”タイタンソード”に変わる。高い腕力と切れ味抜群のタイタンソードは、ドッガフォームの堅固な鎧に刀傷を刻み込んだ。
「おいおいおいおい、マジかよォ。ドッガの鎧に刀傷なんて、俺様生まれて初めての経験だぜ」
 いかなる攻撃をも寄せ付けないはずのドッガが手傷を負う。予想外の事態に狼狽するキバットだが、ワタルはそれが何だと言わんばかりに、左腰から青色のホイッスルを引き抜いた。
「焦るなよ。”当たらなければどうということはない”んだろ?」
「そりゃそうだ……って、うぐぐ!『ガルルセイバー』!」
 青のホイッスルを有無を言わさず咥えさせ、吹かす。キバ複眼と体表は右肩を中心にして真っ青に染まり、魔剣・ガルルセイバーが彼の右腕に装備された。
 敏捷性に優れた野生の力。狼男《ウルフェン》族の力を宿した青のキバ、『ガルルフォーム』だ。
 キバ・ガルルフォームは堅牢かつ剛腕のタイタンフォームに対し、目にも止まらぬスピードで翻弄する。ガルルセイバーによる剣戟《けんげき》と、左手の鋭い鉤爪による、予測のつかない変則的な攻撃。
 ただ素早いだけなら、動きを読んでカウンターを見舞うことも出来よう。だが、野性味溢れたガルルフォームの動きを正確に見切ることは、今のディケイドには到底無理な話であった。
「あぁ、もう、めんどくせぇ!青色にゃあ青色だ」
 ――FORM RIDE 『KUUGA DORAGON』
 ディケイドはタイタンソードとなったドッガを放り、”ドラゴンフォーム”のカードをバックルに装填。青のクウガとなったディケイドは、広場の手すりの一部を強引に引き抜き、”ドラゴンロッド”に変化させて構える。
 力には力。速さには速さ。先の読めない変則的な動きを売りとするキバ・ガルルフォームだったが、単純な素早さや判断能力では青のクウガに分があった。全ての攻撃は空を切り、逆に反撃を喰って地に伏した。

「うう、そんな……」
「マジかよ、ワタルが、キバが……手も足も出ねぇとは」
「さぁ、て。聞き分けのないボウズにはたァんとお仕置きしてやらんとな」
 手の内を全て晒してキバフォームへと戻り、起き上がることすら適わない。
 満足気に笑い、ドラゴンロッドを構え、じりじりと近付くディケイド。
 杖の先が一瞬キバの顔を掠め、彼の眼前に――

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~ Comment ~

NoTitle 

お久しぶりです!
キバ1
これからは、もっと時間を造り方に上達してやる・・・と、それは置いて
おいて、今回の感想です。
>左手には洋梨のような形をし、ピンクと黒の縞模様の入った大きなケース。
自分も良くやってしまいますが、「し、」で区切るのはオススメできません。
左手にはピンクと黒の縞模様の入った、洋梨型の大きなケース。
などとしたらどうでしょうか?
>燕尾服というのか、タキシードと言うべきか。
直前の文と関係が断絶しています。
あと、その二つの主な違いはネクタイと格式の差らしいです。
>あのお方の御威光が薄れかけ[]今
[た]
>弾の大きな水甲弾と真正面で防がれる。
サイズの大きな水甲弾に真正面から防がれる
とした方がすっきりしした表現になると思います。
> 彼が今使用したのは「フォームライド」といい[。]
[、]

キバは未見ですが、この作品で多様なファンガイアたちが楽しく
暮らしている姿は読んでいてこちらも楽しくなれました。
それでは、また。
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まとめtyaiました【Journey through the Decade Re-mix 第三話 「第二楽章♪キバの王子」 第一夜 】

仮面ライダーキバ。 平成20年一月から21年一月の間に放送されていた、平成ライダー作品第九作目。『紅渡』と『紅音也』。 親子の絆と物語が、22年の時を隔て交錯するという興味深い設定と、ヴァンパイアにコウモリを掛けあわせたキバのデザインの秀逸さに、放送開始前か...
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