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 ←Journey through the Decade Re-mix 第二話 「超 絶」 A-part  →けいおん! 二次創作「わたしのものはわたしのもの。あなたのものも、わたしのもの?」
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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(1)

Journey through the Decade Re-mix 第二話 「超 絶」 B-part

 ←Journey through the Decade Re-mix 第二話 「超 絶」 A-part  →けいおん! 二次創作「わたしのものはわたしのもの。あなたのものも、わたしのもの?」
 ※本話におけるグロンギ語はネット上の有志によって制作された「グロンギ語変換ツール」にて変換し、執筆いたしました。
 こちらの変換ミスにより、文法的な間違いが含まれている場合もございます。あらかじめご了承くださいませ。


◆◆◆

 多くの人々が仕事を終え、荷物をまとめて家路に着こうかという夕暮れ時。
 山間の地方都市に位置するこの警察署は、出入口に何重もの強固なバリケードを張り、安全装置を外し、いつでも発砲可能にされた拳銃を警官に貸し与え、まるで”何かの襲撃”に備えるかのような、凄まじい厳戒態勢が敷かれていた。
 何故こんな時間に、こんな事態が起こっているのか。騒動の発端は遡ること三十分前。今回の未確認生命体の事件、その捜査会議の会議上で起こった。

「……今回の被害者も職務中の女性警官でした。これで四人目です」
「なぁ、八代」上司らしき男性警察官が、八代の言葉に口を挟む。「未確認が出現すれば、すぐに我々だって出動する。被害者が警官なのはむしろ当然、いや必然じゃないか」
「なら何故”女性警官”だけが殺害されているんです。未確認が私たち”警察官”を殺害の標的に据えているとすれば、男性が一度も襲われないのは不自然です。奴らはこれまで何らかの規則に従って殺害を行ってきました。ですから今回も」
「お前の提唱する”未確認生命体《グロンギ》ゲーム殺人説”、か。だが、やつらにそんな知性があるのか? それに、四号に続く同族を殺す未確認”第十号”……、そいつはお前のルールから外れた行動をしているしな」
「それは……」
 現代に復活してからこれまで、未確認生命体の一団は何らかのルールに倣って人を殺害してきた。それが彼らにとっての様式美なのか、破ってはならない掟なのかは未だ解明されていない。
 だがはっきりしていることが一つある。『彼らはそのルールから外れたことを行わない』ということだ。
 故に、未確認生命体絡みの事件が起きた場合は、こうして署内で様々な議論が交わされる。彼らの持つルールを解明することで未確認の行動を先読みしようというのだ。
 しかし今回は勝手が違う。未確認を殺す未確認、第十号。彼の存在だけが異質なのだ。自分たちの考えは間違っているのか、いないのか――。

「何かの規則に倣って殺す、か。まるでゲームだな。まったく」
 警察官たちが未確認の謎に頭を抱える中、対策班の捜査会議上に入り込んだ門矢士は、ホワイトボードに記載された被害者、死因、殺害現場等の情報に目を通す。
「お、おい君! お茶を淹れてくれるのはいいが……その、こぼれて」
 ホワイトボード上の情報に夢中の士は、コップの中が満杯になったことに気付かず、溢れたお茶が白いテーブルを茶色く染めていた。

 対策班の捜査会議には警部補以上の肩書がないと参加できない。
 そのため、士は給湯室でお茶汲み担当の女性警官に話を通し、仕事を代わるという名目でこの場所に入り込んだのだ。
「ちょっとあなた、ここは対策班以外立ち入り禁止よ! どこの所属なの?」
「どうだっていいだろう?」八代のことなど意に介さず、空になったやかんを机の上に叩きつけ、声を大にして捲し立てる。
「この俺が、今から、この事件の謎を解いてやるんだからな。何も、かも」
 たかだが巡査に何が。謎を解くだって、そもそもあの横暴な態度は何だ。
 捜査員たちの驚きとどよめきで、会議室が大きくざわめいた。士は彼らを両手で落ち着けと促し、指揮棒でボードを指して話を起こす。
「この事件、被害者は女性警官であること以外に、被害者同士の繋がりや殺害方法などの一致はなかった。それこそが、あんたたち捜査班の盲点だったのさ。
 今回やつらにとって『殺し方』はさして重要な問題ではなかった。未確認たちが重要視していたのは、『殺す順番』だったんだからな」
「殺す”順番”だって?」警部らしき男が勢い任せに机を叩く。
 次いで、中年の刑事の罵声が飛んだ。「出まかせだ、証拠は、証拠はあるのか!」
 士はふふんと鼻を鳴らし、指揮棒を一人目の被害者の、”生年月日”の項目に向けた。
「最初の被害者『青木ミナ』。誕生日は”11月3日”、文化の日、だな。
 そして二人目。『火野レイミ』。誕生日は”7月7日”の七夕。縁起のいいことで。
 さらに、本日早朝に殺害された三人目、『黄瀬サヤカ』。誕生日は”6月5日”。
 最後に先程殺害された四人目。『星空カナミ』。”8月6日”、だ。
 一見何の変哲もないが、こうして並べてみると、”何か”見えてこないか?」
 捜査員たちは生年月日の欄を穴が開くほど見つめ、思案する。そのうち一人が、何かを思いついたように手を挙げた。
「誕生日の末尾……、ですか?」
「流石は未確認の対策本部。よく気づいたな。そう、一人目の誕生日の末尾は”3”。二人目は”7”。三人目は”5”。四人目は”6”。これを繋げて読むと、『3756《みなごろ》……』となる。ここまで来ればあとはもう、分かるだろ?」
「まさかそんな。だったら次は、誕生日の末尾が”4《し》”の女性警官が狙われる、ということか?」
「しかし、そんな子供でも分かるような幼稚な手段をやつらが使うとは到底……」
 そんな馬鹿なと首を傾げる捜査員たちを、士は机を叩いて一喝する。「今までの未確認関連の捜査記録を読ませてもらった。”黒い服を着た人”だけ、”犬を飼っている人”だけ、”服に数字の書かれた人”だけ、ねぇ。俺にとっちゃ今までの事件だって、陳腐で幼稚な規則に倣っているように見えるぜ」
 語呂合わせ。そんなものを合わせるがために奴らは殺人を行ったのか。
 しかし、この巡査の言うことにも一理ある。そもそも、奴らがどうして、どのような規則に従って殺しを行っているのか。彼ら警察には分からない。分かるはずがない。捜査員たちは煮え切らない表情でホワイトボードを見つめ、押し黙った。
 そんな空気を払しょくせんと、対策班の捜査本部長らしき人物が立ち上がり、本部員全員に檄《げき》を飛ばした。
「この巡査の言うことが正しいかどうかは分からない。だが、何も分からずここで頭を抱えているよりはマシだ。すぐに女性署員の誕生日を調べ上げ、末尾が4の者をここに集めろ。警邏中《けいらちゅう》の者も全員呼び戻せ。総力戦だ。未確認共が徒党を組んで理不尽に人の命を奪おうというのなら、ここに誘い出して一網打尽に叩き潰す。以上だ」
 誰かがそう言い出すのを待っていたかのように、捜査員は一斉に立ち上がり、会議室を出て行った。
 はっきり言って、士の推論に信憑性は薄い。だが動き出すには十分の指標を得た。彼らにとってはそれだけでよかったのだ。


 警察署が創設史上類を見ない厳戒態勢を敷き、捜査員が皆出払う中、士はひとり会議室に残る八代刑事に声をかけた。どこか煮え切らない表情を残し、彼の顔を睨み付けている。
「どうした、行かなくていいのか? 他のやつらはもう行っちまったぜ」
「あなたの推理は絶対に成り立たない。やつらが私たち警察官の生年月日を知ることなんて、できるわけがないわ」
「そうか? 殺害の際に、免許証とかを盗み見て、殺し方を思いついたのかも知れねぇ」
「仮にそうだとして、私たち人間と考え方も言語も異なる生物なのよ。やつらが私たちの算用数字の仕組みや、語呂合わせを理解できるとは思えない」
 ――さすがに鋭い、な。
 士は身を翻してにやりと笑うと、八代の反論に対し、当然生まれるべき”疑問”を口にする。
「なら、なんであの時、異論を唱えて間違っていると言わなかった。あんたの言う通り、俺の推理には重大な欠陥がある。簡単に論破できたんじゃないか?」
「悔しいけど、あなたの言うことにも一理あると思ったからよ。可能性を捨て切り、固定観念だけで考えていては、真実には絶対に辿りつけない。それに、あなたは一体何者なのか、まだ聞いてないしね」
「そういうこと、か」士の口元が不気味に吊り上がる。「そうだな、その必要性は大いにある。いいだろう。明朝、”この場所”で思う存分話を聞こうじゃないか」
「明朝……? 待ちなさい、言いたいことがあるなら今すぐここで」
 士は机に置かれていたメモパッドを一枚ちぎり、走り書いて八代刑事に手渡すと、片手をひらひらと振って、会議室を出ようとする。
 冗談じゃないと彼を追う八代を、対策班の刑事が遮った。
「何をやってるんだ八代ォ、緊急配備なんだぞ、ぼさっとしてないでお前も配置につかないか」
「しかし、私はこの男を」
「対策班の上役がこんなところで油売ってちゃ、下の者に示しがつかないだろう。ほら、ほらっ」
「しかし、しかし……!」

「だから言ったろ?『なんで異論を唱えなかった』、とな」
 引っ張られていく八代を横目に、士はそっと警察署を後にした。

◆◆◆

 翌日明朝。八代刑事は捜査員たちの目を盗んでパトカーを走らせ、士に指定されていた『灯溶山《ひときやま》』の中腹に流れる河原へとやってきた。
 先んじて河原に到着し、大きな岩に腰掛けていた士は八代の姿を見込むと共に、尻を軽くはたいて立ち上がる。
「思ったより早かったな。どんな言い訳使ったんだ?」
「どうだっていいでしょ。そんなことより門矢巡査、あなたがあんな見当外れな推理を行った訳、いい加減話してくれるわよね?」
「勿論だ。こいつを見な」
 士は八代に山周辺の地図を手渡す。彼が書き込んだのか、その地図には灯溶山を中心とし、四方に十字の印が付けられている。
 八代は印のある場所を見て目を疑った。二見町の倉庫に、三池トンネル。そして残りの二つ。どれもこれも、これまでの事件で女性警官が未確認に殺された場所だ。
「……これは?」
「今回の事件で女性警官が殺害された場所さ。灯溶山を等間隔の位置で東西南北に囲んでいる。奴らが次に狙う場所は……ここ以外にあり得ない」
 士は不敵に微笑み、自身の足元を指差す。何故そんな話が飛び出すのか、その根拠とは何か。八代は戸惑う。
 そんな中、彼らの背後の林から何者かが顔を出す。八代に頼まれて付き添ったユウスケだ。
「この山がどうしたって言うんだ?」
「ふん、なるほど。お前も来たのか」士は面白くなさそうな顔で話を続ける。
「あの山に”未確認《グロンギ》の遺跡”があることは知ってるよな? 何かの拍子で殆どのグロンギが目覚めちまった。……そうだろう?」
 睨むばかりで何も話さないユウスケに代わり、八代が答える。「そうよ。ある考古学者の一団が調査を行った際、誤って遺跡の棺を開け、グロンギ達を蘇らせた。でもそれは警察関係者の中でのトップシークレットの筈。何故あなたが」
「そんなことはどうでもいい。だが、それで全てのグロンギが目覚めた訳じゃ無かった。やつらはあそこに眠る『究極の闇』とやらを復活させる為、遺跡から等間隔の場所で、戦うリントの女性――、つまり”女性警官”を殺害して供物とする、普段と違う複雑なルールのゲゲル……、『ゲーム』をしていたらしい」
 長々と話す士に対し、ユウスケは待てよと話を遮る。
「ずいぶんと奴らについて詳しいじゃねぇか、もしかしてお前、奴らのお仲間か?」
「一緒にするなよ。俺は、『聞いただけ』だ」
「”聞いた”……、ですって?」
「あぁ、聞いた。あの未確認、九号からな」


 話は先日夕方、警察が到着する前の三池トンネル内にまで遡る。
 ディケイドが第九号を圧倒し、鮮やかに仕留めて見せたあの時だ。
 トンネルの外で蹴り倒す少し前、ディケイドはかの牛頭の首を絞め、脅しをかけていた。

 ――ボダゲソ《言え》、ロブデビザバンザ《目的は何だ》。
 ――ギスバブゴダダセ《知るかクソッタレ》ザセグシャデスバジョ《誰が喋るかよ》ブダダシジャガセ《くたばりやがれ》!
 ――ババラゴロギロ《仲間思いも》ベボボグザガ《結構だが》、ギボヂゾザスゾゾン《命張る程の》ガギデバ《相手か》?
 ゴラゲン《お前の》ブヂゾギレデギスンパ《首を絞めているのは》ジザシデザ《左手だ》。ビビグゼジャバギンザゼ《利き腕じゃないんだぜ》!

「奴らの行う”ゲゲル”にとって、『究極の闇』の復活は何よりも大切だった。そいつはグロンギの中でもっとも強大な力を持った存在。
 奴に勝負を挑んで打ち倒し、その莫大な力を受け継ぐことこそがゲゲルの真の目的。だから奴らも躍起になってるんだよ。自分たちだけ蘇っても、『究極の闇』が蘇らない限り、ゲゲルをやる意味がないからな」

 ――”聞いた?”
 ただの人間にグロンギの言葉が理解出来る訳がない。しかし今はひとまず横に置き、八代はそこから必然的に生まれる疑問を口にする。
「じゃあ……あの、『37564《みなごろし》』っていうのは」
「あぁ。ありゃあ”嘘”。誕生日の末尾が偶然重なってたしよ、警察の目を署に向けさせるのに利用させてもらったのさ。これで、他の女性警官はここに近付くことはない。八代刑事、『あんた以外は』」
「なん……ですって?」
 ――彼は何を考えているの? 私に何をしようとしているの?
 八代は士の底知れなさに恐怖を感じ一歩後ろに下がるが、士は逃がさないとばかりに彼女の肩を掴み、話を続ける。
「ここで五人目を殺せば、『究極の闇』が復活する、ってことらしい。さて、と。
 ――ゼデボギデ《出て来いよ》、ビデスンザソグ《来てるんだろ》!」
 士は川辺の先、いや林の奥まで聞こえるような大声で叫んだ。
 日本語ではない。これは未確認生命体《グロンギ》たちの言語だ。
 その声に触発されたか、元から出てくるつもりだったのか、川の中から一人、林の木々からもう一人、合わせて二体のグロンギが彼らの前に現れた。
「ゲゲルゾ《ゲゲルを》、ザジレスゾ《始めるぞ》」
「ゾボダダバグ《その戦う》ゴンバ《女の》、リント!《リントを》ゾボソゲダ《殺せば》、ゴパシザ《終わりだ》!」
 二人のグロンギに対し、士は物怖じせずに言い返す。「ゴブソグバボドザ《ご苦労なことだ》。ボンバギロ《今回も》ズダシガバシバ《二人掛かりか》」

「嘘でしょ……。言語学者が解析出来なかったあいつらの言葉を、いとも容易く……」
「そんなことより、危ないぜ、下がっててくれあねさん」
「下がるのはお前もだよ、どいてな」
 魚の未確認・十一号は鎌を手に水から上がり、女の未確認・十二号は林から降りて、八代を囲ってにじり寄る。 ユウスケは八代を護るべくグロンギたちの前に立ちふさがるが、士は立つユウスケを押しのけ、彼女と向かい合った。
「待て、何すんだよ!」
「お前には関係ない。最後の詰めだ」

「……悪いね」士は八代と向かい合ったその瞬間、肩、肘、腕、手、拳と、最短距離を通った無駄のない動きで右ストレートを放ち、八代の鼻先めがけて正確にそれを叩き込んだ。
 八代はその場に倒れ込んで膝をつく。幸い大事には至らなかったが、鼻を傷つけ、鼻血をぽたぽたと河原の石に滴らせていた。
「てめぇ……、なにしやがるッ! 喧嘩売ってやがるのかッ!」
「うるせぇなぁ。もっと周りに目を向けたらどうだ」
「周り……だと?」
 敬愛する”あねさん”を傷つけられて激昂し、士の胸倉を掴みにかかる。だが、士はユウスケの両腕を強引に引き剥がすと、彼の目をグロンギの方へ向けさせた。
 どういう訳か、あれほど八代に対して殺意を威圧を向けていた二体のグロンギは、何もせず呆然と体を震わせている。
「リントボ《リントの》……ヂガバガセダ《血が流れた》」
「バンドギグボドザ《何と言うことだ》……ゲギバス《聖なる》ゲゲルザ《ゲゲルは》、ギママギギダ《失敗した》!」
 何に対してあれほどまでに震え、何に落胆しているのか。士は困惑する二人の前に立ち、事の次第を説明し始める。
「昨日、俺は警察の資料を見たって言ってたよな。ついでに”死因”についても目を通させてもらったぜ。四件の犯行のうち、二件が”絞殺”、一件が”毒殺”、さらにもう一件が”凍死”……だったんだってな。
 妙だと思わないか? 何故こんな面倒な殺し方をする必要がある。殺しの数を競い合うような連中のやることにしちゃあ、無駄に丁寧過ぎるとは思わないか?
 丁寧で当然だ。一滴の血も流させずに、女性警官を灯溶山の等間隔の場所で殺し、供物とする。それがこの”聖なるゲゲル《ゲギバスゲゲル》”最大のルールだったんだからな。
 だが、それも失敗だ。何せ……ヂガ《血が》バガセヂラダダン、ザバザバ《流れちまったんだからな》!」

 二体のグロンギを指差し、彼らの言葉で思い切り言い放つ。未確認二人よりも先に、ユウスケが当惑した顔で士に問う。
「お前……一体何のためにこんなことを」
「余計な犠牲を払わずに、このしょうもないゲゲルを終わらせただけだ。後はやつらを始末するだけ、だ」

「ゴボセ《おのれ》…… ダザゼザグラガンゾ《ただでは済まさんぞ》、リント!」
「ビガラボヂゼ《お前の血で》ザバダゾ《墓場を》ゴレデジャス《染めてやる》!」

「そりゃあこっちのセリフだ。来いよ化け物共」
 ――変身ッ!
 ――KAMEN RIDE 「DECADE」!!
 士はドライバーのバックルを腹部に押し当て、ディケイドに変身。
 二体のグロンギは手持ちの剣や鞭を構え、ディケイドを取り囲む。しかし鞭は軌道を読まれて容易くかわされ、剣はライドブッカー・ソードモードで軽く受け流され、代わりにディケイドの反撃を喰って林の中に吹き飛ばされてしまった。
 ライダーと怪人の違い。いや、それ以上に技量自体の差なのか。十二号はその一撃で爆炎と共に四散し、傷口の浅い魚の未確認・十一号は、旗色悪しと逃げ出した。
「逃げたか。放っておく訳には……行かないよな」
 ディケイドは面倒だと息を吐き、ライドブッカーについた埃を払う。逃げたグロンギを追うべく林の中に足を踏み入れるが、彼の無防備な背中に手痛い一発を与える者が居た。この世界の仮面ライダー、『クウガ』だ。

「さっきの仕返しか!? 選りによってこんな時に!」他に何の謂れがある。そう思っていたのだが、クウガからの返しは予想の範疇を超えていた。
「とうとう……とうとう見つけたぞ、姉ちゃんの、仇ぃぃぃぃいいいいいッ!」言うと同時にクウガの拳がディケイドの胸を打つ。体がくの字に折れ、一瞬意識を失ったが、歯を食い縛って凌いだ。
「何が仇だふざけやがって。お前の姉貴なんざ知らねぇよ人違いだ」
「ふざけてんのはお前だ! その仕草、気味の悪い顔! あの時見た顔そのまんまじゃねぇか! 答えろ、なんで姉ちゃんを殺した! グロンギでもないお前が、なんでなんだよ!」
「知らねぇよ何の話だ……、うおッ」
 ――『仇』。クウガはディケイドのことをそう吐き捨てる。
 勿論、そんなもの身に覚えがない。過去の記憶が無いので、やっていた可能性は否定できないが、そう決め付けられて終わるのは癪だ。
 故にディケイドは知らないと弁明するが、最愛の女性である八代刑事を理不尽に傷つけ、そのせいで激しく激昂するクウガが、それを聞き入れる筈もなかった。

 先の一発で視界が霞む。一撃が大砲の一発に匹敵する程の重々しい拳。周囲の空気を裂く程に素早い、手刀ならぬ、”足刀”。この世界の仮面ライダー・クウガ。とても手加減して戦えるような相手ではない。
 ディケイドは人二人分程の距離を取り、面倒臭そうに後ろ手で頭を掻いた。「しょうがねぇな。買ってやるよ、この喧嘩。てめぇが売ったんだ、死んだって文句言うなよな!」
 ライドブッカーをベルト右腰に収め、両手を擦り合わせて拳を鳴らす。クウガはそれを戦いの合図と取り、ディケイドの懐に飛び込んだ。
 仮面ライダーディケイド対仮面ライダークウガ。邪魔の入らぬ一対一の勝負が始まった。

◆◆◆

 ――待て、このまま逃がすか……!
 ――まだやるのか。どうせ死ぬしかないんだ、そこで寝てろよ。
 ――今更退けるか! お前だけは絶対に……俺が、倒す!
 ――しつこいねェ。そんなに死にたきゃ、勝手にしろよ。

「はっ……はぁ……、はァ……!」
 クウガとディケイドが拳を合わせる一時間程前。光夏海は奇妙な夢で目を覚まし、写真館の受付で机を枕に眠っていたことに気付く。士が帰ってくるのを待って、そのまま夜になってしまったのだろう。栄次郎が気を利かせてくれたのか、背に暖かそうな毛布が掛けられている。
 だが、彼女が見た夢は、掛けられた毛布の暖かさを掻き消す程に冷たく、恐ろしいものだった。

 彼女が見た夢、異形の軍団の大敗北には続きがある。
 ディケイドによって倒され、立ち上がることのなかった異形たち。その中で一人だけ立ち上がり、彼に戦いを挑んだ者が居たのだ。
 赤き瞳に金の角の異形は周囲の死骸を糧として吸収し、漆黒の鎧に黒き瞳を宿した怪物へと姿を変え、ディケイドに襲いかかる。彼らは五分と五分、拮抗する戦いの中、渾身の右拳が衝突し、膨大な爆炎と共に周囲の景色を一変させる。彼女の夢の中での意識は、ここで途切れた。

 体を起こし、写真館の中を見回る。
 祖父の栄次郎は寝室で就寝中。士が普段ベッド代わりに使っているソファには、まだ早朝でありながら、そこにいるべき者の姿は見受けられなかった。

 妙な胸騒ぎがする。不安になって写真館の外に出た。
 朝はまだ早い。路上には早朝のジョギングに勤しむ人や、朝のラッシュを避けて車を走らすサラリーマンぐらいしか見受けられない。
 だが、そこに決定的な『違和感』を見込んだ。世界の崩壊の時見られた『不可思議なオーロラ』が、灯溶山の山頂付近に発生しているという事実だ。
 この胸騒ぎは、偶然でも気のせいでもなかったのだ。

「この世界にも『滅びの現象』が……、そんな、そんな筈が!」
 ――小難しく考えるのは後にしよう。今はあそこに行かなくちゃ。だって、そこには士君が居る筈だから――。
 夏海は意を決し、灯溶山に向かって駆けて行く。自分に何が出来るかは分からない。やってから考える。そう、自分自身に言い聞かせながら。

◆◆◆

「お前さぁ……いい加減諦めたらどうだ?」
「黙れ、黙れ黙れ黙れッ」
「意地張ったところで何も良いこと無いぜ。……しょうがねェ奴だよ、まったく」

 ディケイドとクウガの熾烈な戦いは、灯溶山廃寺の境内に場所を移し、今も尚続いていた。
 クウガが青の力を発すれば、ディケイドはライドブッカー・ソードモードで応戦。緑のクウガになって弓を放てば、ディケイドはガンモードでそれを容易く撃ち落す。
 二人の実力は完全に拮抗していた。

 そんな中、林の中に逃げたはずの十一号が二人の前に現れ、飛びかかった。ライダー同士で争っている今なら勝機があると踏んだのだろう。
 しかし、奇襲を読んでいたディケイドに攻撃を難なくかわされ、隙だらけのところ、クウガの封印エネルギーが込められた飛び蹴りを背中にもらってしまう。
 封印エネルギーが背中を伝って腹部に達し、ベルトらしき装飾を割った上で粉々に砕け散った。

 ――超変身ッ!
 十一号の残した鎌を奪い、またもあの言葉を口にするクウガ。同時に彼の体表が紫色に変化し、持っていた鎌は紫色の鋭利な剣、『タイタンソード』へと変質する。
 頑強な鎧に身を包んだ頑強な紫のクウガ、『タイタンフォーム』だ。
「まだ隠し玉を残してやがったか。なら、こっちもいくぜ」
 ――ATTACK RIDE 「SLASH」
 ディケイドは新たなカードをドライバーに装填。ライドブッカーの切れ味をより強化する「スラッシュ」のカードだ。
 二人のライダーが剣を構え、真正面に対峙する。まだ何も起きてはいないが、周囲に空気が張り詰めるかのような不気味な緊張感が漂う。
 先に動いたのはクウガだ。鎧を纏ったことで敏捷性は失われたが、それを犠牲に得た腕力はかなりのもの。ディケイドは寸でのところでかわしたが、彼の背にあった石灯篭が袈裟に切れて崩れ落ちる。

「なんつう馬鹿力……だが、いい気になるなよッ」
 初撃をかわし、即座にライドブッカーで反撃するディケイド。クウガは体勢をやや崩すも、その鎧の前にダメージは皆無だった。
 ディケイドはクウガの剣戟を避け続けて隙を窺い、クウガはそれを受けつつ強引に自身の一発を押し通そうとする。彼らの力は完全に拮抗していた。

「やめて……。やめてください! 二人が、これ以上二人が戦ったら!」
 そこに、『不可思議なオーロラ』を見て、不安を感じ取った夏海が現れた。廃寺にこだまする斬撃音その他を聞き取って、ここに彼らがいることを感じ取ったのだろう。
 二人のライダーの戦いによって、山を覆うオーロラの層がますます厚くなっている。
彼らのせいなのかは分からないが、困惑する夏海の不安を煽るには十分すぎる”異常現象”だ。
 夏海は戦いを止めるよう必死に叫ぶも、目の前の相手を倒すので手一杯な二人は、彼女の呼び掛けに応じるどころか、気付くことすら出来なかった。

 そう、彼らは「戦いに夢中になっていた」。故に、廃寺の階段下に『茶色いコートに身を包んだ壮年の男性』がいることになど、知る由も無かった。

 ――ディケイド、これが始まりだ。
 コートの男性がそう呟くと共に、ディケイドとクウガの体を、あの”オーロラ”が通り過ぎる。

 クウガはこれは何だと困惑し、ディケイドはまた別の世界に連れて行かれたのかと首を傾げる。
 結論から述べると、彼らの疑念や疑問は全くの杞憂であった。彼らはどこにも移動していないし、何も変わってはいない。

「兄貴《アニキ》ぃ……、ここにもいるよ、ライダーが」
「地獄はどこまで行っても地獄ってことか。……行くぜ、”相棒”」
 いつの間にか、異様な『負のオーラ』を漂わす二体のバッタを模した「仮面ライダー」が、廃寺の境内に立っていたことを除いて。

「なんだ? なんだ! これもお前の罠かッ」
「冗談じゃねぇ、あんなやつら知らねぇよ」
 茶色のバッタはクウガに、緑色のバッタはディケイドに襲いかかる。
 右腕にジャッキを装備し、両の拳だけで戦う茶色のバッタ、パンチホッパー。
 右足にジャッキを装備し、己の足のみで戦う緑色のバッタ、キックホッパー。
 瓜二つの姿をし、共に徒手空拳ながらも、戦い方はまったくの真逆である。

 これまで武器を用いて戦っていたディケイドとクウガは、素早い徒手空拳に苦戦を強いられる。
 特に、敏捷性を失ったタイタンフォームでは、パンチホッパーに一太刀も浴びせることが出来ないでいた。
「くそォ……調子に乗るなよバッタ野郎ッ、超変身!」
 クウガはタイタンソードを投げ捨て、青のクウガに超変身。打撃力こそ落ちるが、敏捷性で相手に立ち向かおうと考えたのだろう。
 超近距離戦ゆえ、ロッドは使わず、己の拳のみで相手に立ち向かうクウガ。結果は彼の読み通り。今までなすがままだった茶バッタの攻撃に対応できるようになり、自身の拳を奴の胸に打ち込んだ。
 ディケイドも武器での戦いに見切りをつけ、徒手空拳での戦いに移る。足技は手技の三倍の威力があるというが、逆に手技は足技よりも素早く放てるという利点がある。
 緑バッタの足技を腕で軽くいなしながら、自身の拳を相手に叩き込む。挑みかかられた時こそ苦戦していた二人のライダーだったが、落ち着きを取り戻し、丁寧に対応できるようになった今、この闖入者《ちんにゅうしゃ》たちは彼らの敵ではなかった。

「……らぁッ! どうだ、この茶色バッタ!」
「ちくしょう! こいつ……ッ」
 互角の殴り合いを行い、クウガは遂にパンチホッパーに片膝をつかせる。彼は肩で息をするパンチホッパーを見下し、鼻で笑う。

「貴様ァ、今相棒を笑ったなァ? ……俺も、笑ってもらおうか!」
 それがいけなかった。緑のバッタ・キックホッパーが、“相棒”を鼻で笑うクウガに激昂したのだ。
 彼は対峙するディケイドを突き飛ばしてクウガの元へ向かい、背後から蹴りを一撃見舞った。不意を突かれ、廃寺の中へと吹き飛ばされる。

 ――Rider Jamp
 ――Rider Jamp
 緑のバッタはその上で、バックルに備えられたアイテム、『ホッパーゼクター』の付け根を動かす。
彼の右足に、ジャッキを通じてエネルギーが満ち満ちる。
 片膝をついていたパンチホッパーは、その様子を見て彼が何をするのかを理解し、同じく、ベルトのゼクターの付け根を動かす。ジャッキを通じ、右腕にエネルギーが集束して行く。
 刹那、二人は早朝の太陽を背に高く跳ぶ。太陽を背にした二人に、クウガの目が一瞬眩んだ。

 ――Rider Kick
 ――Rider Punch
 ホッパーコンビ必殺のライダーキックと、ライダーパンチだ。
 まず、パンチホッパーの拳が深々とクウガの胸部に突き刺さる。
「ぐあぁ……、あ!」
「おいおい、こんなので倒れてくれるなよ。”地獄”はまだまだこれからだぜ」
 続いてキックホッパーの両足蹴りがクウガを襲う。強烈無比なその一撃は、クウガを地表に叩きつけた上で、地面に亀裂が走るほどの威力を誇った。

 しかも、それだけでは終わらない。
 キックホッパーの右足のジャッキがぐぐっと曲がり、さらに空中に飛び上がった。彼の得意技、キックの”連撃”だ。
 これほどの威力を持った飛び蹴りを何発も喰らえば、それこそ命に関わる。無駄だと分かっていても、クウガは胸の前で両腕を身構えた。
 だが、その一撃は不発に終わる。戦うべき相手を失い、暇を持て余したディケイドが、ガンモードでキックホッパーを撃ち落としたからだ。
「俺を無視して遊んでんじゃねぇよ。お前ら、どこから来た?」
「言っただろう。”地獄”、からだ」
「ディケイド、お前も……来いッ」
 ――わけがわからない。
 ディケイドは頭を軽く掻きながら、二体のバッタを迎え撃とうとしたのだが、彼らと自分を隔てるようにして張られたオーロラに阻まれる。
 オーロラの先に何かが見える。ぐにゃぐにゃと歪みながらではあるが、幾多の異形の戦士たちが、爆炎の中で熾烈な争いを繰り広げている様相が映っていた。
 それを見た緑バッタは、仮面の下で楽しげに口元を歪ませる。「もう”時間”か。行くぜ相棒、また別の”地獄”が待っている」
「あぁ。兄貴となら、どこまでも」
 二人のバッタは”争い”目掛け、オーロラの中へと飛び込んだ。同時に、ディケイドと二人の間に立っていたそれは、音もなくさらさらと消えて行く。
 異界の闖入者との戦いは、煮え切らない気持ちを残しながら静かに幕を下ろした。
 しかし、それでもクウガは止まらない。赤の姿に戻り、ディケイドに強烈な拳を打ち込んだ。「お前……、なんで俺を助けた!」
 ディケイドはクウガの拳を軽く受け止め、彼の右腕をぐいと捩じる。「あれがそういう風に見えたんなら、こんな阿呆みたいな戦いは終わりにしようぜ。俺もそうだし、お前だっていい加減疲れてきただろ」
「疲れた、だァ? 人の姉ちゃん殺しておいて、そんな理由で逃げんのか、ふざけんじゃねぇ!」激情に任せてディケイドの横っ腹を蹴り付け、強引に距離を取る。
「だから……、そりゃあお前の勘違いだろう。俺はそんなもの知らん」
「そんなもの!? そんなものだとォ! てめぇええええええッ!」
「あぁくそッ、この……分からず屋がァぁああああああッ!」
 言って聞かぬ馬鹿ならば、力ずくで分からせてやるしかない。ディケイドは拳を握り、飛び掛かるクウガを迎え撃つ。
 二人の拳は――。
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NoTitle 

やっと見つけた・・・

お久しぶりです。以前一回だけ感想を書いた超OKAMA です。

いきなりディケイドリミックスが消えていた時には驚きましたが、こちらで読めると言うことが分かり見つけました。

これからも楽しみにしてます(^-^)/

NoTitle 

超OKAMAさんこちらでははじめまして。

一応活動報告等で予告はしていましたが、やっぱり唐突でしたね。失礼しました。
残しておいても結局は消滅するし……と先走ってしました。

すこーしずつ修正を加えておりますので、掲載スピードはなろう時代と変わらず遅いですが、その分ゆるりとお待ちくださればと。

では、では。

NoTitle 

 原作のアレンジでディケイドの凶悪性とクウガとの因縁が強調されているのが良いです。

"地獄"の意味が明かされる時は来るのか?続き、楽しみにしてます!
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