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 ←Journey through the Decade Re-mix 第一話:「平成ライダー? 十年早ェよ!」 前編 →何もかも唐突ですんません
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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(1)

Journey through the Decade Re-mix 第一話:「平成ライダー? 十年早ェよ!」 後編

 ←Journey through the Decade Re-mix 第一話:「平成ライダー? 十年早ェよ!」 前編 →何もかも唐突ですんません
 よぉ!
 今日はテレビ朝日開局五十周年!
 つまり、五十回目の誕生日ってわけだ。おめでとう!

 君たちのお父さんやお母さんが生まれる前からテレビは始まっていたんだ。

 平成仮面ライダーも放送十周年。
 みんなも応援よろしくな!

 ――仮面ライダーディケイド 第二話(09年初回放送時のみ)より。


 カードをバックルに装填して閉じる。
 彼の周りに数人の「戦士」の像が現れ、彼の体に重なる。
 バックルの中から数枚のカードが飛び出し、顔に突き刺さった。

 彼の体がピンク、いや「マゼンタ」に染まる。
「異形」の中の異形。「破壊者」の中の破壊者。「悪魔」の中の悪魔。
『仮面ライダーディケイド』がこの世界に顕現した瞬間だった。

「あれが……、ディケイド――」
 不思議と、恐怖は感じなかった。迫り来る死の恐怖で感覚が麻痺していたからか、悪魔に変身しているのが士だからなのか。それは分からない。
 ディケイドは自身と夏海とを隔てるオーロラに手を突っ込み、強引にそれを引き裂いた。
これまで微動だにしなかったそれは、音を立て、まるで軟い紙のように容易く千切れる。

 障害を下したディケイドは、夏海を囲う蛹の一団に割って入った。
 ディケイドは拳を固く握り、体重を乗せた右ストレートで蛹の顔に打ち込み、左足を軸にした回し蹴で横っ面を叩き、振って来た腕を引き千切って奴らの腹に突き刺す。

 堅い外殻の中で嫌な音が響き、緑色の血液を流して四散。
 頑強そうなのは見た目だけ。こいつらはただの雑兵かとディケイドは認識する。
「相手にならねぇな。次はお前がかかってこいよ」
 蛹たちを取り仕切る成虫は、ディケイドの強さを本能で脅威と認識し、背中の羽を振るわせると、一瞬でその場から「逃げ去った」。
 いや、「逃げ去った」という表現は不適切だろう。
 成虫が視覚できなくなった瞬間、ディケイドの体が左右に大きく揺れ始めたのだ。敵の姿は見えない、だが間違いなく彼は『怪物の攻撃を受けている』。

「何だこりゃあ……痛てェぞこの野郎!」
 夏海を巻き込まないために一旦距離を取るが、攻撃しようにも敵が視認できないのではどうしようもない。
 だがそこで、ディケイドの脳裏に何かが映る。クナイ一本で虫たちを裂く、一本角の赤き鎧を纏いし異形の姿だ。
 気が付くと、ディケイドの右手には「カブトムシを模した」仮面の戦士が描かれたカードが握られていた。
「使え、ってことか。いいだろう。やってやろうじゃねぇか」
 ディケイドはそのカードをバックルに装填し、両手で閉じる。
 ――KAMEN RIDE 「KABUTO」
 バックルから音声が響くと同時に、彼の体を多数の「六面体の何か」が包む。
 包まれ切る共に、デイケイドはカードに描かれていた「カブトムシを模した仮面の異形」、『仮面ライダーカブト』に姿を変えていた。
「調子に乗るなよ虫野郎、ぶっ潰してやるぜ」
 ――ATTACK RIDE 「CLOOK UP」
 更にもう一枚カードを装填。「クロックアップ」という音声と共に、飛び散る瓦礫、驚きに顔を引きつらせる夏海、速くて見えなかった怪物の姿、その何もかもスローモーションに変わる。
 これこそが仮面ライダーカブトの能力、「クロックアップ」だ。体内に流る『タキオン粒子』を放出させ、自身を除いた周囲の『時間』の流れを遅くさせているのだ。

 ディケイドは腰に付けたライドブッカーを取り外し、「取っ手」を引き出すと、走りながらそれを軽く振る。
瞬間、ライドブッカーの中から「刃」が飛び出す。カードを収納する「ブックモード」から、攻撃用の「ソードモード」に形状を変えたのだ。
 よく見ると、怪物たちは数体に増えていた。どこかで仲間を呼んだのだろうか。
 皆一様に飛び掛かってきていたが、大した問題ではない。
 ディケイドは一切足を止めずに、強く大地を踏み込んで腰をひねり、流れるような動きで虫たち全てを斬り裂いた。
 虫の異形はこの世のものとは思えない、醜悪な呻き声を上げ、緑色の爆炎とともに四散した。
「士君、あぶな……あ、あ、あれ?」
 その様子を見ていた夏海は、困惑する他なかった。
 抵抗できないまま攻撃を受け続けていたというのに、次の瞬間には、緑の爆炎と共に怪物たちは消滅していたのだから。
 常人にこの空間で起きた出来事は知覚できないらしい。
 しかし当の本人、ディケイドは自分を襲う怪物のことよりも、自身が無意識のうちに「このカード」を選んでいたことに困惑していた。
「なんで今、俺……このカードを選んだんだ?」
 ――これが何かは解らない。だが「なんとかなる」という確信はあった。
 ――相手が”ワーム”だったからか。……ワーム? なんだそれは。あの化け物のことか?
 ――なんで俺はそんなことを知っている? いや、”知っていた”のか?あぁ、もう!

 ディケイドは後頭部を後ろ手で叩き、首を軽く振る。面倒だ、小難しいことは後にするかと考えを打ち切った。
 差し当たって今、自分がすべきことは何か。取り敢えずあの家――、光写真館に戻ることか。
 街がこんな状態なんだ。写真館が無事であるという保証はない。とはいえ、徒歩や競歩。走っていくのでは時間が掛かり過ぎる。
「とりあえずバイク……いや、出来れば車が欲しいな。あぁ、でも俺、二輪の免許は持ってても四輪のは無かったな。ま、この状況で免許だなんだと言ってられねェだろうが」
 瓦礫まみれになった周囲を見回す。彼の目に、横転したまま前輪が虚しく空回る大型の二輪車を留まる。
「NINJA KAWASAKI GPZ900R」と車体に刻まれている。数年程前に生産されなくなった、割と古い型の二輪車だ。
 丁度いい。これを足に使おうとバイクを起こす。しかし、あちこち傷だらけで、エンジンは既に尽きかけており、今一度走らせるには力不足のようだ。この状況から考えると無理もない。
「はてさて、どうしたものかねぇ」
 どうにかできないかと、ライドブッカーの中を探る。その中で何か心に引っかかりを感じ、一枚のカードを抜き出した。
 引き抜いたカードには「ディケイドの顔のような模様が描かれたバイク」が刻まれている。
 駄目で元々。そのカードをバックルに装填して閉じた。
 ――ATTACK RIDE 「MACHINE DECADER」
 起こしたバイクを「自身の顔を模した」”紋章”が通り抜ける。
 ディケイドがカードの力で別の戦士に変身したように、このバイクも「カードに描かれた通り」の姿、“マシンディケイダー”に変わっていた。
 バイクに跨ってエンジンを駆けてみる。勢いの良いエンジン音が周囲に響いた。
「至れり尽くせりだな。夏海、夏海! お前も乗れよ」
「えっ、わたしもですか?」
「俺はそれでも構わないがな、ここで一体何しようってんだ?」
「それは……」
「なら、つべこべ言わずに乗れよ。爺さんが待ってる」
 ディケイドは困惑する夏海を強引に助手席に乗せ、写真館に向けて走り出した。

◆◆◆

「士君……今、一体、どこに向かってるんですか?」
「どこも何も、家だろ。写真館。他に行くところなんてあるか」
「それはそうですけど、士君、どこに写真館があるか分かるんですか?」
「だいたい、な」
「だいたいって何ですか、“だいたい”って」
 夏海を背に乗せ、見知らぬ街道をひた走る。
 怪物たちが街を蹂躙した結果だろう。人々の姿どころか、その気配すら感じられない。路上に残る大きなヒビや、正面から何かに追突して大破した乗用車などから、被害の凄惨さが見て取れる。
 夏海は恐怖に身を震わせていた。この街の凄惨な様相にではない。自身に背中を見せてバイクを運転しているこの「戦士」に対してだ。
「何震えてンだ。ハンドルが取られちまうだろ」
「ご、ごめんなさい」
 そんな中、オーロラの壁がディケイドたちの元を通り過ぎた。
 日が高く、昼時だったはずのそれは夕焼け色に染まり、街の破壊はより大規模なものになっている。
「……あれ? ここは……どこですか!?」
「またどこか別の場所に移動しちまった、ってか? 妙だな」
「ずいぶんと淡泊ですね……」
「ビビってたって何にもならないだろ。慣れろ」
「それより士君、前、前!」
 道端に数人の人が倒れている。外国人の大男、軽薄そうな小柄の男、煌びやかに着飾った女性。先程写真のことで諍《いさか》いを起こしたあの三人だ。士が撮ったあの写真を握り締めて倒れている。
「大変です、急いで助けないと」
「止めとけ」降りようとする夏海の肩を、ディケイドは掴んで止める。「もう手遅れだ」
 言われ、改めて三人を見る。彼らの顔からは生気が全く感じられず、ぴくりとも動かない。彼らは既に事切れていた。
「……」夏海はそれ以上何も言わなかった。出来ることなど何も無いと分かったからだ。
 ディケイドは事切れた三人に一瞥をくれると、ハンドルに掛ける力を強め、その場から走り去ろうとする。
 だが、その時。突如、大男の体が『砂になって』崩れ落ちた。他の二人も、周囲の屍も同様だ。
「きゃっ……、いやッ!」
 物陰から何か「触手」のようなものが伸び、夏海の体に巻きつく。謎の触手に絡め取られ、夏海は地面を何度か転がった。
「おい、夏海、どうしたッ」
 バイクを急停止させ、後ろを振り返る。ディケイドの目に映ったのは「全身灰色の怪人」の軍団だ。絡め取ったまま人質にするあたり、直ぐに殺す気は無さそうだが、放っておく訳には行かない。
「”オルフェノク”、か。そうはさせねェぞ」
 オルフェノク。無意識のうちに口にした怪物の名前。
 考えるのは後回しにし、ディケイドはライドブッカーを開いてカードを取り出した。
 ――KAMEN RIDE 「FAIZ」
 取り出したカードをバックルに装填。ギリシャ文字のΦ《ファイ》を模した顔、全身に“赤いエネルギーライン”が駆け巡る戦士、『仮面ライダー555《ファイズ》』に姿を変えた。
 ――ATTACK RIDE「AUTO BAZIN」
 そして、もう一枚。マシンディケイダーの車体を「Φ」の紋章が通り過ぎる。
 ただのバイクがマシンディケイダーに変わったのと同様に、それはバイク型可変ビークル「オートバジン」へと姿を変えた。
 オートバジンはバイク態から一転。人型に変形して飛翔し、前輪に仕込まれていたガトリング砲でオルフェノクたちを威嚇する。
 夏海を絡め取る触手が解けた瞬間、バジンは彼女を抱えて飛び、物陰に着地して身を隠す。怒り狂って襲い来るオルフェノクの軍団を横目に、ディケイドは夏海の元へと駆け寄った。
「そこで待ってろ、夏ミカン」
 夏海に物陰に隠れるよう指示し、隣に立つオートバジンの右肩からハンドルを引き抜く。
 柄の先から赤く光る刀身が生成され、”ファイズエッジ”と呼ばれる両刃の剣となった。
「来なよ灰色共。軽く揉んでやるぜ」
 一斉にディケイドに飛びかかるオルフェノク達。彼は冷静にそれらをかわし、軽くいなすと、まるでプロボクサーが相手の勢いを借りて放つカウンターのように、オルフェノクを袈裟《けさ》に斬り落とす。
 斬られたオルフェノクは、皆一様に赤い”Φ”のマークを浮かび上がらせ、砂となって消滅した。

 自分たちに襲いかかってきたオルフェノクの一団は倒した。しかし、危機はまだ脱していない。
 足元、いや頭上から沢山の火球弾が降り注ぐ。遠方に視線を移すと、『恐ろしく巨大な妖怪』の一団がこちらに向かって来ていた。
「まったく、息つく暇もないな……」
「ファイズ」のカードをライドブッカーに戻し、代わりに「鬼」のような形相のカードを装填する。
 ――KAMEN RIDE「HI-BI-KI」
 ディケイドは紫の炎に包まれ、紫色を基調とし、”鬼”の姿をした戦士に変わる。
 妖怪・魔化魍《まかもう》を清める仮面ライダー『響鬼《ヒビキ》』だ。
 ――ATTACK RIDE 「ONGEKI-BOU REKKA」
 ベルトの背面に二本の棒が現れた。双方共、先の部分に鬼の顔を模した赤石が取り付けられている。
 ディケイドはそれを握り締め、襲い来る妖怪たちに向かい力強く振り抜く。棒の先の霊石に炎が灯り、火球弾となって接触した怪物の体を吹き飛ばす。
「結構面白いな。ほらよっ、あらよっ、と。たァまやー。かァぎやー、ってね」
 面白がり、火球弾を妖怪たちに向けて大量に投げつける。大軍勢だった怪物の一団は派手な爆発と共に一斉に消滅していった。
 だがそれが全てというわけではなかった。爆炎を隠れ蓑にし、人と同じぐらいの所謂「化け猫」が数体、ディケイドに飛びかかってきたのだ。
 奇襲のためかディケイドは対応できず、両足に左腕を封じられてしまう。
「じゃれついてんじゃねぇぞくそッ、丸焼きにしてやる」
 ――ATTACK RIDE 「O-NI-BI」
 カードの装填と同時に、能面のようだった顔の下部分が割れ、刺々しい牙の生えた口が開く。
 ディケイドの口から放たれた紫色の炎は、化け猫を火達磨にし、ひび割れた土塊へと変えさせた。
「あぁ、ああ。熱ちぃ熱ちぃ。痕にならなきゃ良いが……」
 あまりに至近距離だったせいか、自身の右腕も少し焼いてしまい、左手で患部を優しく擦る。
 無事を確認し、今まで物陰に隠れていた夏海が駆けてきた。
「大丈夫ですか、士君」
「あんな奴らに負けるかってんだ。しっかし、どうやって戻るんだ?」
「そんなこと、わたしに言われても」
「えっと、こう……。カードを入れた時はバックルを引っ張ってたわけだし、逆に引っ張ってやれば何とか、なるか?」
 カードを入れた時と逆の順序でバックルを開く。「響鬼」と「ディケイド」のカードが飛び出し、ピンク色の鎧は虚空に消える。伸長されたベルトはバックルの中に収納され、士の掌に収まった。
「おぉ。やってみるもんだな。さて、帰るぞ、夏ミカン」
「でも、ここ。また別の場所みたいですよ。どうやって……」
「走りながら追々考えていくさ。後ろに乗れ、夏ミカン」

「マシンディケイダー」に戻すべく、士は今一度カードホルダー・ライドブッカーの中を探る。カード自体はすぐに見つかったが、ブッカーの中に何ともし難い違和感を感じた。
 さっきドライバーから抜き出した「響鬼」のカードに目をやる。カード内の”絵柄”は、何の前触れも無しに消滅していた。
「おかしいな。さっきまで何ともなかったんだが……」
まさかと思い、他のカードも取り出して目を通す。どれもこれも、ぼやけたシルエットだけの漠然としたものとなり、「力」を感じ取ることは出来なかった。
「どういうことだ? 力が……何も読み取れない」
 ――それは、あなたがかつて『全てを失った』からだ。
 戸惑う士の耳に届いた謎の声。栗色の髪の青年のものだ。
「え……? きゃっ」
「ん、なんだ」
 光のオーロラに取り囲まれ、周囲の風景がまた変わる。
 視界全てを漆黒の闇が覆い尽くし、至る所で点のような小さな星々が輝く。その中心に位置するのは「地球」だ。士と夏海は、宇宙と形容すべき場所に“立っていた”。
「な、なんなんでしょう、これ」
「知らん。だが、これは……」
 あの男の仕業だろう、と言いかけて言葉を飲み込む。面識のない夏海に説明しても、理解できるとは思えなかったからだ。
 ――宇宙、ですよ。あなたたちの良く知る……ね。
 何者かがこちらに向かって歩いてくる。士は夏海に自分の背後に隠れろと目配せする。
彼らの眼前に現れたのは、件の栗色の髪の青年だった。
 青年は身構える士たちに対し、穏やかな口調で言う。「こちらから何かするつもりはありません。どうか怯えないで頂きたい」
「怯える? 馬鹿言うな。誰がお前みたいなアヒル唇の優男なんかに」
「……酷い言われ様ですね。まぁ、いいでしょう。それよりも、何か――思い出しましたか?」
「戦い方だけだ。さぁ、今度は逃がさねぇぞ。今この世界で何が起こっているのか、きちんと説明してもらおうか」
「そうですね……、では、こちらを」
 青年は人差し指を自らの頭上に掲げる。
 それまで一つだった地球が「九つ」に増えている。先程見せられた映像と同じものだ。
「答えになってねぇぞ。さっきと同じだろうが」
「本当にそうですか? もう少し、見ていてください」
「何?」
 その時だ。
 九つの地球は一様かつ一斉に分裂を始めた。一つが二つに。二つが四つに。四つが八つに。空は、「地球」で埋め尽くされた。
 驚きで声が出ない二人を尻目に、青年は静かに事の次第を説明し始める。
「――九つの世界に9人の”仮面ライダー”が生まれました。それらは独立していて、決して交わることのない「世界」でした。そう、これまでは。
 ある日突然、”世界”は分裂と増殖を始めました。この”九つの世界”を基調とし、性格も、変身までの経緯も全く異なる、けれど「全く同じの」”仮面ライダー”が生まれ、彼らはその中で”新たな世界”を形作っていったのです。
 ですが、増えすぎた世界は存在する為の均衡を保てなくなりました。世界同士が発する「引力」によって引き付け合い、双方共に喰い潰し合って消滅するという最悪の結果を生んだのです。
 ……いいえ。正確には”生むはず”、でした。僕と僕の仲間たちはこの世界崩壊の原因を調査し、その過程で世界の崩壊を防ぐ方法を見つけたのです。それは――」
「それは、何だ?」
「……」青年はそこで躊躇い、一度口籠る。とっとと話せと睨みつけるが、青年の態度は変わらない。
 やがて、何かを決したように首を横に振った。
「止めておきましょう。”もしもの時”のために、ね」
「もしもの時、か。ずいぶんと気に障る言い方だな。俺に何か恨みでもあるのか」
「恨み……? 別にそういう訳ではありませんが」青年は親指に顎先を乗せて何かを思案し、言葉を継ぐ。
「あなたが「あのこと」を悔いており、かつこの危機を本気で救いたいと思うなら、是非ともやっていただきたいことがあります」
「あのこと? 悔いている? 何の話だ」
 青年は“あのこと”には全く触れず、勝手に話を進める。「あなたにはこの数多の世界を巡る力が備わっています。その力で世界崩壊の中核となる『九つの世界』を旅していただきたいのです。宜しいですね?」
「いいもくそもあるか。自分ばかり言葉を並べ立てるんじゃねえ。お前は何で、世界の崩壊とは何だ。何故そんな大層なものを俺に背負わせる。少しはこちらの質問に答えろ」
 勢いで捲し立てる士の言葉に、青年は顔に薄い笑みを浮かべて返す。
「創造は”破壊”からしか生まれませんからね。”気の毒”ですが。それに、時間が無いんですよ。あなたの質問に一つ一つ答える時間など」
「だから、その癇に障る物言いをやめろ。何故答えられない」
「まず一つに、僕自身もこの現象の全貌を理解し切れていないこと。そしてもう一つは、もう間も無く、あなたとの“交信”が切れる為です」
「交信が……切れる?」
「僕と僕の仲間たちには世界を渡る力はありません。出来るとすれば、せいぜい『あなたの存在を察知し、遥か遠くからあなたに呼び掛ける』程度。崩壊し掛けた世界を救うなんて不可能です。
 今ここにいる僕は、話すことはできても、触れることができない”幻影”です。『繋がり』が切れてしまえば、話をすることさえ叶わない。故に、こうしてあなたに“お願い”しているんですよ」

「お願い。お願い……か」士は鼻を鳴らし、嘲るように笑い出した。「まっぴら御免だね。世界が崩壊しようが何だろうが、俺には協力する義理も道理もない。それより何より、お前のことが気に食わない」
 感情のままに怒りをぶつける士に対し、青年は呆れ顔で両手を平に振った。
「あなたは事の重大さを全く分かっていないようだ。よく見ていてください。このまま”世界”が増えるとどうなるか――」

 青年は人差し指を上に伸ばし、士たちも釣られてそちらを見上げる。
 増え行く地球の一つが、隣接する地球を『引力』で吸い寄せ、どちらも粉々になって消滅する。
 同じことが宇宙の至る所で起こった。銀河の星々のように増え続けた地球が、あっという間に土塊に変わった。

 だが、それだけでは終わらない。
 衝突によって生じた膨大なエネルギーは行き場を無くし、その場に留まり、益々膨れ上がる。エネルギー同士は互いに吸い付き、融合して一つの集合体となった。
 何物をも呑み込み無に帰す悪魔の天体――ブラックホール、だ。
 ブラックホールは地球だけでなく、それらを包括する銀河をも飲み込み、際限なく肥大化して行く。
 宇宙は、超新星爆発が起こる以前の、『無』へ還った。

 見終え、唖然とする士に対し、青年はどうですかと声を掛ける。「これでも、関係無いなどと仰りますか?」
 士は苦虫を噛み潰したかのような顔をし、更に鋭い目付きで睨みつける。「あぁ関係無いね。ンなもんはてめぇのマヤカシに過ぎない。脅そうったってそうは行かねェぞ」
 ここまで言われても表情一つ変えない青年に対し、語気を強めて話を続ける。「そんなことよりもお前にゃ言うべきことがあるだろう。俺は一体何だ、どうして曖昧にぼかそうとする。何を隠してやがるんだ」
「しつこいですね」鼻息荒く詰め寄る士に対し、青年は冷めた目付きで彼を見据える。「今ここで僕がそれを語ったとして、あなたはそれに満足出来るんですか?」
「どういうことだよ」
「本当の自分は、己自身の力で勝ち取ってこそ価値がある。世界を救う気が無いのならそれでも構いません。ですが断言しましょう、あなたの正体――、そのヒントはこれらの世界にあります。
 僕のことがお嫌いなんでしょう? ならば自分の力で見つけてみては如何ですか?」
「そりゃそうだ……って、体よく話をはぐらかすな! おい、待て、おい!」
 士の返答を待たずして、青年の姿が遠くなる。彼の言う「限界」が来たのだろう。
 遠くなったのは彼の姿だけでは無い。士と夏海の意識も徐々に薄れ、糸の切れた人形のように地に伏した。

◆◆◆

 ――夏海! 士君! こんなところで寝てると風邪を引くよ。ほら、起きて、起きて!
「うぅむ……ん?」
「ここって……、写真館の、中?」
 気がつくと、夏海と士は「光写真館」の中で眠っていた。青年との会話の後、写真館の中に飛ばされたのだろうか。
 あれからかなりの時間が経っていたのだろう。外は既に日も落ち掛けた夕暮れ時になっていた。
 士は体を起こして今まで起こったことを頭の中で反芻する。だが、あの場所で気を失ってから、それ以降の記憶がない。
「あそこで倒れて、ここで寝ていて……、そこに至るまでの過程がさっぱりだ。こうもすっぽり抜けがあると気持ち悪いな」
「……でも。さすがにさっきの話はくらいは覚えてますよね?」
「あぁ? あぁ……」士は後頭部を軽く摩り、いけ好かないアヒル口の男の顔と言葉を思い返す。
「さすがにな。俺が”九つの世界を旅しないと”世界が消滅するんだろう。世界同士が食い潰し合って、ブラックホールとなるとかなんとか。そういう無駄に大仰な話だった。
 あいつの言い成りになるのは癪だが、他に選択肢もねぇ。俺の記憶の手がかりも、本来いるべき世界とやらも、旅の中で見つかるかもしれない……、しな」
「そう……ですか」夏海は目を伏せて思い悩んだ末に、凛とした表情を作って答える「なら……、わたしも士君の旅について行きます」
「この流れでどうしてそうなる。夏ミカンは写真館で爺さんと一緒に大人しくしてろ」
「士君だけだとアテにならないし、不安ですから。さっきだって”世界の崩壊なんて、俺には関係無い“って言ってましたし。それに……」
「何だ」
 夏海が士の旅に同行する理由。その理由は「不安」にある。だが、今口にした不安とは別のものだ。
 あの青年は「世界の崩壊の理由」及び、「士の出自」については一切口を閉ざし、以降触れようともしなかった。だが夏海には、彼が何を言おうとしていたのか、何故口籠ったのか、なんとなく察しがついていた。
 ――士君が、「ディケイド」がその原因になったんじゃないでしょうか。
 ――そして、それを士君が思い出すと、何か良くないことが起こる。
 ――だから彼は、あえてぼかしたままにしておいた――。

 そうなった時、士を止められるのは自分しかいない。
 根拠はないが、夢のような光景が実際に起こるのであれば、自分も何かしなければいけない。そう考えたのだろう。
 だが、彼に面と向かって本当のことを言い出せなかった。怖いのだ。
 士が本当に「世界の破壊者」だったとしたら。自分たちの世界を消し去ろうとする「悪魔」だとしたら――。
 そんな不安を覆い被せて隠すように、いつもの調子で言葉を続ける。
「そう……、それに! これを機にうちの借金を踏み倒すつもりかも。フィルムの現像代とか全部合わせて、えぇっと」
 手元の電卓で勘定を始めた夏海に対し、士は面倒臭いと溜息を吐いた。「あー、あー。それはもういい、やめろ。分かった、分かった。しかし、仮に旅をするとして、一番肝心なことを聞いてないぞ。
 あいつめ。俺に”九つの世界を旅しろ”と言ったくせに、”どうやって世界を巡るのか”は説明しないまま行っちまった。人を煽るだけ煽って放置って、どういう神経してるんだ?」
「そんなの……士君が聞き逃しただけなんじゃないですか?」
「聞き逃すわけないだろ。俺が聞いた中には、少なくともそんな話はなかった」
 ”気絶していて聞いていませんでした”とは口が裂けても言えない。特にこの夏海には。
 彼は単に夏海に対して意地を張っているだけだった。
 とは言え、事態は彼らが思っている以上に深刻だ。栗色の髪の青年曰く、世界の崩壊を防ぐには、士たちがそれらの世界に旅立たなければならない。その方法が分からず仕舞いとなれば、崩壊現象を指を咥えて見ている他無くなってしまう。
 暫く経って、漸く事の重大さが飲み込めた二人に対し、栄次郎は気の抜けた声で彼らに言う。
「お取り込み中悪いんだけど、ちょっと手伝ってくれないかなぁ。この紐……、いや上のタペストリーかな? 重くって私の力だけじゃどうにもならなくってさあ」

 士と夏海がどうすれば良いのかと思案を巡らせる中、栄次郎は一人、壁に掛けられたタペストリーの紐と格闘していた。いくら引っ張れども、タペストリーは一向に下がる気配を見せない。
 最初は無視していた士と夏海だったが、黙りこくって唸っていても打開策が見つからなかったこともあり、気晴らしにと紐を引っ張ることにした。
「よし、じゃみんなで掛け声を合わせて行くよ。せーの、一、二の……」
 ――ほいっと。
 三人で掛け声を合わせて上げようとする栄次郎の意に反し、士は右腕に力を込め、勢い良く引っ張った。
 タペストリーは一気に下がったが、その結果、栄次郎は前のめりに転倒してしまう。
「痛てて……。いやはや、ひどいな士君」
「ちゃんと垂れ幕は下がってきただろう。文句言うなよ」
「酷い。これは酷過ぎます士君。笑いの」
「あぁ、待て待て。俺が悪かった。悪かったからそれはやめろ」
 士と夏海がじゃれ合っている中、栄次郎は一人、タペストリーに描かれた絵に違和感を覚える。
「おかしいなぁ。このタペストリー。まだ何も絵を入れていなかったはずなんだが……」
 栄次郎のこの一言が気になった二人は、改めてタペストリーに映る「絵」を見込む。

 田舎町なのだろうか。
 ふもとの町から、どこかの山に向かう数台のパトカーの絵が印象的だ。
 しかし、士と夏海が感じた違和感はそこではない。
 二人が気になったのは、『絵自体が少し光を発している』かのように見えたことと、絵が下りてきた瞬間、それまで夕焼けだったはずの空模様が一転、「心地よい日差しの差し込む」”朝方”になっていたことだった。
 何か思うところがあったのか、士は写真館から外に出て周囲を見回す。
「……やっぱり、か」
 外の様子が違う。
 今まで居た光写真館は『街中の商店街』。その外れにぽつんと立つ建物だったはずだ。
 しかし今はどうだ。眼前に映る場所から商店街が失せ、田舎町の公道になっており、その先をパトカーが通り過ぎて行く。行く先は、秋色に紅葉した「山の中」。
 少なくとも、自分たちのいた街とは全く別の場所であることには違いない。

 ――警邏《けいら》中の各移動に連絡。二見町の二番倉庫にて『未確認生命体』の出現を確認。
 ――事件現場の指揮は警視庁の未確認生命体対策本部員が担当する。
 ――現場にて対応する署員は、本部員の指示に従い、未確認の接近に注意。
 ――以上、警視庁。

 士の感じた違和感はもう一つあった。
 耳元でノイズ交じりの音声が聞こえる。気になって自分の姿をよく見ると、いつも首から下げているトイカメラに加え、『無線』まで加わっていた。
 それどころではない。帽子。服装。靴までもが『警察官』のそれに変わってしまっている。
 これは一体どういうことか。いや、考えるまでもないか。
『世界を巡る』。その言葉の意味が少しだけ理解できたような気がした。

 だとすれば、ここは一体何の世界だ。自分の中にある感覚に問いかける。
 自分は「世界の破壊者」だ。その記憶はないが、怪人たちと戦った時のように、体が何かを覚えているかもしれないと考えたからだ。
『未確認生命体』。先ほど無線で流れていたその言葉が士の頭を過る。その言葉を軸にして、頭の中で思案を巡らせた。
 ――そうか、なるほど。
 これまでに起こった事象、その全てを総括し、結論を導き出す。
「――『クウガ』の……世界、か」

◆◆◆

 ◎次回、「Journey through the Decade Re-mix」!

 ――『巡査・門矢 士』。”この世界”で俺に与えられた”役割”らしい。

 ――仮面ライダークウガ。状況に合わせてフォームチェンジ。周囲の物体を武器に出来る――か。よく出来ていやがる。

 ――ここは本当に”別の世界”なんでしょうか?
 ――どうだろうねぇ。んん、おい夏海。テレビ見てごらん、テレビ。

 ――未確認生命体7号確認。“ユウスケ”、聞こえる?

 ――どういうことだよそれ、まさか、俺の代わりに戦わせようっていうのか!?

 ――兄貴《アニキ》ぃ……、ここにもいるよ、ライダーが。
 ――地獄はどこまで行っても地獄ってこと、か。行くぜ、”相棒”。

 ――愚かなリントの末裔よ。もう遅い。この世界を『究極の闇』が覆い尽くすッ!!

 ――通りすがりの、仮面ライダーだ。……覚えておけ。

 第二話「 超 絶 」に、ご期待ください。
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