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「Journey through the Decade Re-mix」
Journey through the Decade Re-mix(1)

Journey through the Decade Re-mix 第一話:「平成ライダー? 十年早ェよ!」 前編

 ←二次創作はじめました →Journey through the Decade Re-mix 第一話:「平成ライダー? 十年早ェよ!」 後編
「仮面ライダーディケイド」が大好きでした。

 もう二度とテレビで見ることはなかったであろうライダーの復活、
 平成ライダー好きなら一度は夢見るであろうドリームカードの実現、
 やや強引ながらも、本編を噛み砕いて二話でまとめてくれるテンポの良さ。

 09年の冬~夏は日曜朝8時に起きるのが楽しみでしょうがなかったのを今も鮮明に覚えています。

 しかし、メインライターの會川氏の降板を皮切りに、超電王による「原典の作品世界」の登場、
 劇場版だけのはずが、本放送にも昭和ライダーが参戦
 更には「最終回できちんとまとめず、劇場版にラストを持ち越し」など、

「お祭り作品」という意味では間違っていないものの、徐々に「ディケイド」という作品の軸はブレていってしまいました。

 一応09年冬公開の「movie大戦2010」にて完結したものの、やはり第一話を見たときのような「ときめき」は感じられず、どこか違うなぁという印象のまま終わってしまった感が否めませんでした。

 だったら自分の手でなんとかして納得するっきゃない。
 そう思い立って筆を執らせていただきました。


 ……というわけで書き始めた本作ではございますが、ディケイドが完結して三年経過した今も、全く完結する目途が立たず、置き場であったなろうも追い出されてしまいました。
 本掲載時そのままのカタチで転載するという手もあったのですが、書き始めた当初と今とで書き方や考え方が大きく変わってしまった為、色々なところに手を加えさせていただきました。

 一見様にも、既読の方にも面白い、と思ってもらえる作品を目指して。

◆◆◆

 ――ここは、どこ?
 少女・光《ひかり》夏海《なつみ》は、焼け焦げて引き裂かれたドレスを身に纏い、荒涼とした山地の中に立っていた。

 嵐の前の静けさか、物音一つ立ちはしない。だが、周囲の空気が徐々に張り詰めて来ているのだけは分かる。
 ――きゃあ!
 夏海のすぐ後方で、耳を劈《つんざ》く爆音が轟く。彼女は驚いて頭を抱え込み、その場に座り込んだ。
 それが引き金となって連鎖し、数多くの轟音が周囲に轟く。
 轟音の元は爆発だけではない。何十何百……いや、何千もの、幾重に連なる足音。
 目一杯アクセルを回したような猛々しいエンジン音。
 バイク特有の、油臭いにおい。

 夏海が再び顔を上げて周囲を見回すと、今まで見たことも聞いたこともない『異形の集団』が、彼女の視界すべてを支配していた。

 茶色い鎧のような装甲を纏った歩兵のようなもの。
 二足歩行の巨大兵器に乗り、ミサイルを「何か」に向けて乱射するもの。

 空を舞う、洋風のお城と融合したかのような寸胴で巨大なドラゴン。
 凄まじい雄叫びを上げる赤と黒の龍。
 それらと共に自由自在に飛び回る、金色の翼を持った戦士。

 山の向こうからはその山と同じぐらい巨大な、猿を思わせる不可思議な生物。
 その後方から、バイクに乗るもの、乗らないもの。数多くの『異形』が向かってきている。

 誰も彼もが夏海の前を通り過ぎ、その『何か』に向かって突き進む。

 ――一体、どこに向かっているの? 何と戦っているの? あなたたちは……、誰?
 誰に答えを求めてもわからない。だが、一つだけ確かなことがある。
 最初、何千何万ものこの異形の軍勢は、時間の経過と共にその数を減らしつつあった。

 ある者は爆発に巻き込まれ、またある者は光線に身を貫かれ、空を翔けし者はその翼をもがれて地に伏し、地を駆ける者はその屍を大地に晒す。

 巨大なドラゴンも猿のような生命体も、二頭の龍も、地に伏したまま、二度と立ち上がることはなかった。

 気付けば、夏海の周りは『異形たち』の屍だらけとなっていた。どうにかしたいが、どうしていいのかわからない。夏海は恐怖に身を震わせ、目に涙を溜める。

 光夏海は爆発の中心部、この集団が向かっていた場所に目を向ける。
 妖しく光り輝き、宙に浮く『何か』がそこにあった。

 不気味な紋章が刻まれたベルトを腹部に巻き付け、一言も言葉を発せず、その場に佇む謎の存在。
 それが一体何なのか。彼が一体何をしたのか。夏海には何も分からない。
 彼女は『それ』を涙目ながらに睨みつけ、呟く。

『ディケイド』――

***

「――ディケイド……、またあの夢。なぜ泣けてしまうんでしょう」
 気がつくと、夏海は机に突っ伏して眠っていた。
 先ほどまで体験していたことは『夢』。そう、夢のはずである。
 だがこれは本当に夢なのだろうか。迫真過ぎる。
 夏海は背筋に寒気を感じ、身を寄せて体を震わせた。

「夏海、夏海」
「ん……。あっ、おじいちゃん」
 そんな夏海に声をかける、ニット帽がよく似合う初老の男性。
 名を『光《ひかり》栄次郎《えいじろう》』といい、彼女の祖父にして、この『光写真館』の館長だ。
 光写真館。郊外の大型スーパーやデパートなどに押され、廃れ気味の商店街の一角に位置する、創業百年(あくまで栄次郎の弁であり、それを裏付ける証拠は存在しない)の由緒正しき写真館だ。
 知名度はそれなりにあるが、携帯電話やデジタルカメラで写真のデータを残せるようになった今日、写真館の必要性は殆ど無くなっており、売り上げは年々減少。「あなたの“真”実を“写”す写真館」との触れ込みで、証明写真を必要とする学生その他を客とし、彼ら家族はなんとか食い繋いでいた。
 栄次郎は夏海に意識がはっきりとあるのを確認し、顔の前で両手を合わせる。
「起きて早々で悪いんだけど、お使いを頼まれてくれないか」
「お使い、ですか?」
「『士君』だよ、士君。現像作業をサボってどこかに行っちゃってさぁ。一人で出来ないことはないんだけど、私も歳で億劫だしね」
「歳だし……、って自分でそれを言いますか。60から先を『めんどくさい』の一言で数えなくなったくせに」
「まぁ、夏海が手伝ってくれれば事足りるんだけど。どう?」
 写真館の看板娘・光夏海は『看板娘』であること以外、この場所ですることが無い。
 いや、正確には“すること”を外に求め、数多くの職場に履歴書を提出したのだが、不採用通知と共に返ってくるばかりで、他にすることが無いのだ。
 他にすることが無いのは認めるが、写真の現像作業には食指が伸びない。そう考えた夏海は、仕方がないかと溜息をついた。
「……わかりました。おじいちゃんがそこまで言うなら、ちょっと行ってきます」
「あぁ、そう」栄次郎はつまらなそうに肩を竦める。「ところで、士君がどこにいるのか分かるのかい」
「どうせいつもの場所でしょう。連れ帰ってきたらお駄賃下さいね」

 祖父の返答を待たずして、玄関に置いておいたオレンジ色のニット帽を被り、見るからに不機嫌そうな顔で外に出る夏海。
 余程不機嫌だったからか。
 彼女は家の前の鏡が不自然にたわみ、不気味な金切り音と共に、自分の姿を“赤い鉄仮面の戦士”が観ていたとは気付かなった。

◆◆◆

 ――門矢《かどや》士《つかさ》。数日前にふらりと写真館にやってきて、そのまま居付いた変な男。
 何考えてるか分からないし。態度はでかいし。そのくせわたしより料理上手いし。
 ほんっと、嫌なヤツ。

 ――あぁ、やっぱり。しかもまた誰かといざこざを起こしてるし。勘弁してよね、ホントに。
 いざこざの理由も分かってる。どうせいつもの「写真」のせいでしょ――。

 十時《ととき》ふれあいパークは、街を離れ、未だ草木の生い茂る森の中に位置する公園だ。
 然程大きくないながらも、森を含めた景観の美しさから、街の人々の憩いの場所となっている。
 写真館の居候・門矢士は、湖のほとりに立ち、優雅に羽を広げる水鳥たちに向かってシャッターを切っていた。すらりと背が高く、凛とした横顔に、端正な顔立ち。いかにも女性にもてそうな男だ。
 そんな彼の元に、二人の男と一人の女がやってくる。皆一様に真っ赤な顔をしており、怒りで唇を不気味に引き攣らせている。
「オィ、コッチムケヤ!」二人のうち、恰幅の良い外国人の男が、士に向かって凄んで吠える。
 彼に続き、隣に立つ柄の悪そうな男も絡んでくる。「お前言ったよなぁ、”あなたのすべてを撮ってやる”って、確かにそう言ったよなぁ?」
二人の陰に隠れていた女性も、冗談じゃないわよと声を荒げる。「本当の自分が見られるからモデルになったって言うのに、言うのに……!」
「ソレガコノ、トンデモ写真カァ!」
 片言の男性が、手にした写真をその場に放る。それらは全て像が激しく歪んでおり、何が写っているのか判別できない。どこをどうやればこんなものが出来上がるのか知らないが、彼らが怒りを露わにするのも頷ける。
 撮影に使用したカメラが悪いという訳ではなく、夏海たちがそれを使えば普通に撮れ、士が別のカメラを使用すれば像は歪む。彼の出自と同じく、意味不明な事柄の一つだ。
 士の隣には「写しん(“心”という言葉をペンで塗り潰した形跡がある)・よろしければ」という立て看板が置いてある。
 ”過去の記憶が無い“とのたまう士にとって、自身の過去を示す唯一の手がかり。それがこの、ピンク色(本人は”マゼンタ”と言って聞かないが)の趣味の悪いトイカメラ。底の部分に「門矢士」と名前が彫られていたことから、夏海たちは彼を“士”と呼ぶようになった。
 夏海たちと初めて出会った時から所持していたが、本人はこれをどこで得たものか、全く答えられなかった。
 故に彼はこうして街に出て、何でもかんでも写真に収めて回っている。写真を撮ることで自分の過去に対する手がかりを得ようとしているのだ。

 放られた写真を目にし、士は肩を落として項垂れる。「あぁ、またダメか」
 士の悪びれない態度に、細身の男の堪忍袋の緒が切れた。「またっておめぇ……、ハナっからまともに撮る気なかったってかぁ? ふざけんなァ!」
 怒りに任せ、腰の入った右ストレートを士に放つ。士はは自身の撮ったヘンテコ写真だけを見つめ、腰を軽く曲げて容易くかわした。
 渾身の右拳をかわされた男は、その勢いのまま湖に落ちて水浸しとなった。
「にゃろう……舐めやがってェエエエエエっ!」
 男は直ぐに水から上がり、士に再び拳を見舞うが、どれもこれも空を切るばかりで全く捉まらない。苛立ちばかりが煮え滾り、辺りに不穏な空気が漂う。

 ――あわわ、とても面倒なことになってきました。わたしがなんとかしないとっ。
 最早黙って見てはいられない。夏海は士の横に立ち、彼のつむじを掴んで無理矢理頭を下げさせた。
「あのっ、あのっ! この度は本当にッ、すみませんでした!」
「なんだよお前。俺は今取り込み中……」
「問答無用! 光家秘伝、『笑いのツボ』ッ!」
 夏海は左手で彼の顔を覆って隙を作ると、摺り足で士の背後に回り込み、彼の首の頸動脈《けいどうみゃく》に思い切り親指を押し込んだ。
「夏ミカン! てめッ……はは、あはははははは、あはっ、はははははははは」

 するとどうだろう。士はいきなり大声で笑い出したのだ。
 顔は全く笑っていないのに、声を上げての大笑い。傍目から見ると不気味極まりない。

「ごめんなさい。本人も泣き笑いで謝っておりますので。ここはひとつ、どうかひとつ……」
 夏海の嘆願と士の君の悪さを見かね、女性が二人の男に耳打ちをする。「ねぇ……こいつ気持ち悪い。もう帰りましょうよ?」
「アァ、ソウダナ」
「馬鹿野郎、こっちは18万のスーツ台無しにされてんだぞ、引っ込みがつくかって……のォッ!」
 細身の男はそう言って腕を捲るも、隣の大柄の男に首根を掴まれ、強引に引き離された。
何とも言えない顔でその場を離れようとする三人だが、そのうち大柄スキンヘッドの外国人はふと立ち止まり、士に向かって問いかけた。
「……ナズェ、コンナ写真ヲ撮ル? 俺タチヲ怒ラセテ、何ガシタインダ」
 笑いのツボで乱れた呼吸を整え、服装を正して答える。「何で、かって? 決まってんだろ。俺はこの世界のすべてを写したいと思っている。だが、世界が俺に撮られたがってない。それだけだ」
「ソウ……ナノ、カ」
「そうだよ。なんだ、文句でもあるのか」
「イヤ、別ニ」
 大男は分かったような分からないような顔をし、他の二人と共に去って行く。
 いざこざが収まり、士と夏海は近くのベンチに腰掛けた。

「夏ミカン……”笑いのツボ”ってそういう意味じゃねぇだろ! 人を笑い死にさせる気か!」
「まったくもう、どこに居てもすぐ厄介事を起こすんだから! それを諌《いさ》めるわたしと、おじいちゃんの身にもなってください」
「人の話を聞けよ! ンなことはどうだっていいだろうが」
「あなたが人の話を聞いてくださいよ! 何ですか、もう一発、ツボ押しされたいんですか? そうなんですか」
 これ以上喰らってはまずいと判断し、士は何も言わず押し黙った。
 彼がそれ以上何も言ってこないからと、夏海は先ほどから考えていたことを口にする。
「そういえば、今日はどうしたんですか士君」
「どうしたって、何が」
「いや、なんというか、元気がない……みたいな感じがして。いつもの士君なら、もっとこう”不気味な顔でニヤニヤしてる”感じなのに」
「ニヤニヤとは何だ、ニヤニヤとは」士は夏海の言葉に落胆し、頭をくしゃくしゃと掻きながら答える。
「お前の俺に対する印象ってそんななのかよ。確かに、元気がないといえば、元気がない気がする。
あながち間違ってはいないな」
「士君らしくないですね。どうしたんです?」
 意味深な間を取り、息を大きく吐いて言葉を継ぐ。
「『オーロラ』って奴を見たことはあるか、夏ミカン」
「おーろら……。北国で見られる光のカーテンみたいなアレのことですか?」
「そういうキレイなもんじゃあない。仄暗くて気味の悪い色した代物さ。そいつがカメラの前に写り込んで来やがってよ。目の前には何もねぇ。だがレンズ越しに見えるものはオーロラに覆い尽くされている。訳が分からないだろ」
 そこで言葉を一旦切り、大袈裟に息を吐いて「けどよ」と話を続ける。
「本気で気味が悪かったのはその後さ。しばらくカメラ越しに周りを見てたんだが、そしたら白い服に白いマフラーを付けた若い栗色の男が立ってやがったんだ。
何も見えなかったオーロラの中で、そいつの姿だけがくっきりと映るんだ。どう考えたって普通じゃない。取り敢えず撮影の邪魔だと怒鳴りつけたんだが、それに対する答えが意味不明でよ。『ディケイド。今日”この世界”が終わります』……とか何とか。世界? 終わる? それに何だよディケイドって。何もかもさっぱりだ」

 話し終えた士は、疲れたからとだらしなくベンチに体を預ける。ぼやくだけぼやいて気が済んだのだろうか、先程より心なし顔つきが晴れやかだ。
 しかし、逆に夏海の態度は明らかに変わっていた。目を見開き、動揺で体を震わせている。
「ディケイド……! その男の人は、本当にその名前を口にしたんですか? それに“終わる”って……」
「ああ、そうだが」怪訝そうな顔で夏海を見る。「お前、何か知ってるのかよ。ディケイドとやらを」
「知りません! そんなの、絶対に!」
「それで隠しているつもりか? あからさまに“知ってます”って顔しやがって。何かあるなら今話せ、すぐ話せ。早くしろ」
「だから……、わたしは、何も、知りません!」
「うわ、おっ……おぉっ!?」
 勢い余って、士をベンチから突き落とす。彼にしてみれば、単に興味本位の質問でしかなかった。なのにこの仕打ちは何だ。ふざけるなよと拳を握る士だが、自らを抱いて身を震わせる夏海の姿を目にし、怒りは急速に冷めて行った。
 夏海の心境の変化を察したのか、士はそれ以上何も問わず、ただ彼女の肩を抱き寄せた。
「妙に嫌な風が吹く。今日の撮影は終いだ、とっととじいさんのところに帰ろうぜ」
「そう……ですね」
 士に肩を抱かれたからか、もしくはこれ以上言及されずに済んだからなのか。夏海の体の震えは止まっていた。
 怯えていたが故に気付かなかったが、確かに妙な北風だ。夏海はそうですねと言葉を返し、ベンチからゆっくりと腰を上げる。
 不意に、二人の上を何かが通り過ぎた。一瞬遅れて風が舞い、周囲の草木を四方に散らせる。
 最初は鳥か何かだと思った。次に、季節外れの春一番かと考えた。だが暫くしてそのどちらでもないと思い知る。一時遅れて彼らが空で目にした物の正体は、翼の生えた巨大な「魚」だったのだ。

 異変は、既に始まっていた。
 空間が歪んでいる。
 いや、「歪んでいる」という表現は不適切かもしれない。ベンチの中心部から士と夏海の間を引き裂くかのように、何か湾曲した『壁』が幾重にも連なっているのだ。
 壁は地平線の向こう、いや、もっと先まで連なっているように見える。何かと思い、手で触れてみた温かくも冷たくもないが、通り抜けることは出来ないらしい。
 通れないのならば割ってやると叩いてみた。叩いたという“感触”はあるが、痛みはない。湾曲した空間が少し歪むだけで、『壁』自体はまったくの無傷だ。
 士も、オーロラを隔てて別の空間にいる夏海も、訳が分からず困惑してしまう。何せ今の今まで一緒にいたのだから。
「士君ッ、士君!」
「夏海……!? これは一体どういうことなんだ!」
「わた、わたしが知ってるわけないじゃないですか!」
 不可思議な壁だが、かろうじて声だけは届くようだ。
 異常事態だが、自分の声が届く。士の声が聞こえる。それだけで少し安心できた。
 しかし、彼女たちに起きた怪異はこれだけでは終わらない。

「士君……どうなってるんですか? なんで……夜なんかに」
「夜? 何を馬鹿な、まだ昼の三時過ぎだぞ……って、何ッ」

 夏海に言われ、目線を空に向ける。陽の光は何処へと失せ、空は漆黒の闇に支配されていた。真ん丸い満月の妖しい光だけが街を照らし出している。
 不安になって左手の時計を見る。針は午後三時を指していた。少なくとも満月の出るような時間じゃない。
 何がどうなっているのだ。立て続けに起こる怪異のせいで、考えをまとめるだけの時間がない。
勿論それは、それは夏海の側も同じであった。

 遠方で人々の悲鳴が轟く。そこで夏海が目にしたものは、空飛ぶ“牙”に首筋を刺され、硝子のように透明になって倒れ行く人々の姿だった。
 同時に、動植物の形を取り、ステンドグラスのように光り輝く怪物たちが徒党を組んで向かってくる。
 目的は分からないが、敵であることは間違いないだろう。
「ひあ……あぁあ……、きゃあああっ!」
「夏海、夏海ーッ! 」
 謎の怪物の出現でパニックになった夏海は、悲鳴を上げながらその場から走り去る。
 同時に夏海の姿は別の壁――『光のオーロラ』に呑まれ、姿を消してしまった。
「どういうことだ。一体、どういうことなんだッ! くそッ、くそォッ!」

 次々に起こる謎の現象に、柄にもなく狼狽する士。
 そんな中、何者かの足音が聞こえてくる。こんな異常な状況下でありながら、そこはまったく乱れがない。このような状況下で、余裕たっぷりなそれを不審に思った士は、聞こえてくる方向に顔を向けた。

「お前……何者だ」
「初めまして。……いや、”久し振り”と言うべきでしょうか。———”ディケイド”」

 白い服に白いマフラーを付けた栗色の若い男。眼前に立つのは士がカメラのレンズ越しに見た青年その人だ。
「説明してもらおうか。これは一体何なんだ。一体何が起こっている」
「……」
 青年は何も答えず、ただ人差し指で天を指す。それに釣られ、士は漆黒に染まった夜空を見上げる。
 星はない。だが代わりに、本来あるべきではないものが視界に飛び込んできた。
 青く輝く美しい我らが人類の母星、『地球』の姿だ。
「地球が何だって……う、うぉっ!」
 彼が見た地球は九つに分裂し、そのうちの一つが目掛けて落ちてくる。身構えてどうなるものでもないが、とりあえず顔を護るように両腕を組む。
 落ちてきた”地球”は”先”が地面につくかつかないかの所で動きを止めた。
「安心してください。これはイメージ、本当に地球がぶつかってくる訳ではありません」
「脅かすな馬鹿野郎。答えろ、何が目的なんだ」
「目的、ですか」青年は士を見て少し考えると、「強いて言えば、探し物……ですかね。あなたの『バックル』と『カード』はどこです」
「バックル? カード? 悪いがクレジットカードは作らない主義だ。あぁ、テレホンカードなら持ってるぞ。度数切れのやつでよければくれてやる」
「そうですか」
 士の言葉に興味がないのか、相手にしないだけなのか、青年は表情を変えず、淡々と話を続ける。
「無いなら仕方ありません。ですがこの状況、善くするのも悪くするのもあなた次第ですよ、ディケイド」
「だから、その”ディケイド”ってのは何なんだ。状況が何だってんなら、まずはこうなった経緯でも説明しろ」
「それは――」
 瞬間、士はまたもあの『オーロラ』に取り込まれた。
 海、山、田舎町、都会。酔いを起こしそうなほど目まぐるしく変わる周囲の景色。青年はその中で姿を消した。

「おい、待てよ。話はまだ途中――」
 青年の姿が消えたと同時に、士は自分が先程と同じ湖の前に戻っていると気付く。
 周囲を見回すが、そこに夏海の姿は無く、悲鳴も怪人も何処にも居ない。
「まずは夏ミカンを探すところから始めろってことか。全く、無駄な手間掛けさせやがって」
 やれやれと首を振る士の目に、公園の看板らしきものが留まる。書いてある事柄に違和があったのだ。
「久慈川《くじかわ》ふれあいパーク……? 待てよ、ここは十時ふれあいパークだった筈じゃ」
 見る限り、違うところは何もない。違っているとすれば名前だけだ。
 これは一体、どういうことなのか。

◆◆◆

「はぁ、はぁ、はぁ……」
 その頃、夏海は縦横無尽に展開する謎のオーロラを巡り、行く先々で出会う『怪物』から逃げ続けていた。
 ステンドグラスの怪人の後に出会ったのは、色鮮やかで人型機械のような怪物。鏡の中に潜み、逃げ惑う人々をそこに引きずり込んで喰らっていた。
 その次は全身灰色で、体の至る所から触手を伸ばす怪人。夏海も襲われかけたが、突如現れた「背に翼の生えた異形」との戦いによって見逃され、事なきを得た。
 そして今、襲われていない人々の集落に身を寄せたのだが、そこにいた人たちは夏海らを助けるどころか、USBメモリのようなものを自身の体に挿し、怪物となって彼女たちに襲いかかってきた。彼らもまた怪物の一味だったのだ。
 そのうちの一体が夏海を押し倒し、彼女の細い首を掴む。もうだめかと思ったその時、オーロラによって怪物は消え去り、別の世界へと移動した。

 自分と同じように逃げ惑う人々は多かった。しかし一緒に世界を巡る中でその数は徐々に減って行き、気が付くと夏海ひとりになっていた。皆『怪物』たちに命を奪われたのだ。

 夏海はまだ焼け落ちて新しい廃墟の中に身を寄せる。ここも怪物に襲われたのだろう、崩れた建物の中に千切れた腕や事切れた人々の姿が見える。
 立ち上る黒煙や、鼻を突く血の匂いから逃れるため、廃墟の中を更に奥へと進む。無情にも廃墟の最奥部は、通り抜けることのできないオーロラで塞がれていた。
 諦め、元来た道を戻ろうとした夏海は、後の世界の運命を大きく変えることになる、とてもちっぽけで、とても恐ろしいものを見つけることとなった。
「嘘……ッ、なんでこれが、こんなところに!」
 廃墟の中、瓦礫の下に挟み込まれていた、白いバックルとカードホルダー。
 爆発の影響か、いや、それ以外の事象によるものなのか、バックルはあちこちに亀裂が入り、今にも砕けそうなほど損傷していた。

 白い小さなバックル。
 そこに描かれた「DECADE」と言う文字と、九つの紋章。
 間違えようがなかった。
「そんな! あれはただの夢、夢の筈なのに!」
 最初はただの夢だと思っていた。
 しかし『夢』と割り切れないような事象が『現実』に起こっている。もしかしたら自分の夢も現実のものとなってしまうのかもしれない。
 そんなこと絶対にさせたくない。させるわけにはいかない。

 幸い、それらは今にも砕けてしまいそうな程損傷している。いっそこのまま壊してしまうべきか。夏海はバックルとホルダーを瓦礫の中から引きずり出し、勢いをつけて地面に叩き付けようとする。

 ――夏海、夏海! 返事をしろ!夏海ーっ!
「その声……、士君!?」

 夏海を止めたのは士の一言だった。運が良いのか悪いのか、行き止まりとなっていたオーロラの先は、
士が迷い込んだ世界と繋がっていたのだ。
 彼の声を聞いた瞬間、夏海の腕からはその勢いがなくなっていた。バックルとホルダーを手にしたまま、駆け寄ってオーロラ越しに士の名を叫ぶ。
「無事だったんですね」
「無事って状況かよ、これ」
 こんな状況なのに、いやこんな状況だからか、士は無事を喜ぶ夏海に憎まれ口を叩く。
 だが、それもそこまでだった。彼女の背後に見える何かを目にし、驚愕に顔を引き攣らせてしまう。
「どうしたんですか。士君」
「なつ……夏ミカン、後ろ、後ろ……」

 士が自分を見て唖然としている。いや、自分の後ろを指差して唖然としている。夏海はからかっているんですかと、怪訝そうな顔で振り返る。
 そこにいたのは光夏海その人だった。顔も服装も、逃げる途中でついた服の汚れすらも、大きな鏡で自分を見た時の様に全く同じだ。鏡と違うのは、それらが“反転”していないことだけか。
 ――わたしは今ここにいる。じゃあこれは、一体何?
目の前の「わたし」がにやりと笑う。その瞬間、背後の夏海が蝋のように溶け出し、中から虫を象ったかのような『怪物』が現れた。
 次いで、物陰から緑色の蛹《サナギ》のような生き物が涌く。夏海の視界を虫の化け物たちが覆い尽くした。

 前方は言わずものがな、後方はオーロラの壁に阻まれて逃げ場がない。
 夏海の姿をしていた成虫の異形が、肥大化した右腕を振って来た。咄嗟に身を屈めてかわし、その体勢のまま壁伝いに横に逃げる。
 だがそれも長くは続かなかった。取り囲んでいた蛹の一人が夏海を捕らえ、これ以上逃げられなくしたのだ。
オーロラの先にいる士にはどうすることもできない。
 目の前で人が襲われているのに何も出来ない自分が、壁を叩いて悔しさを紛らわすことしかできない自分が、空しくてしょうがなかった。

「ちきしょう、こんなもんなのか! 世界が終わるっていうのは……」
 腹に据えかね溢れ出た不満と怒りと苛立ちが、言葉となって口から出る。
 ふと、士は夏海の手に目をやる。彼女は何か持っている。白い『バックル』に『カードのホルダー』だ。
 ――ちょっと待て。あのいけ好かない栗色の男は何と言っていた?
 ――『あなたの”バックル”と”カード”はどこです』なんて抜かしてたな。
 ――バックルにカード……、あれが、そうなのか?
 ――分からん。何も分からんが――
 青年とのやりとりを思い返し、士は何かを悟る。蛹たちに取り囲まれた夏海に対し、彼は大声を張り上げた。

「夏海! それを渡せ!」
「それって、まさか……、でも、これはッ」
 夏海は士に言及され、バックルとホルダーの存在を思い出す。そうだ、これは危険なものだ。消し去らなければならない。
 だが、士はそれを求めている。その眼に迷いがない。何か考えがあってのことだろう。
 しかし、これを彼に渡してよいものか。今まさに殺されそうな中であっても、夏海は躊躇い隠せない。
 思い悩む夏海に、士は真っ直ぐな瞳でさらに叫ぶ。

「世界を救ってやる。……たぶん」
「たぶ……ん!?」
 実に士らしい言葉だ。命の危機にさらされているにも関わらず、ふっと笑いが零れ出る。
 本当に世界を救えるのかどうか疑わしい。そもそも、そんな力、彼にあるのだろうか。
 でも、だからこそ。逆に夏海は士を信じてみようという気になった。
 ――きっと、大丈夫。士君なら信じられる。夢の中のあいつとは違う。きっと違う。

 夏海は唇を噛み締めて頷き、手にしたバックルとカードホルダーを彼に向かって放る。
 それら二つは何も通さないはずのオーロラの壁を突き抜け、士のいる世界へと無事譲渡された。

 士は古ぼけ、亀裂の入った白いバックルを腹部に押し当てた。バックルからベルトが伸長され、彼の体に巻き付く。
 カードホルダーを開く。開けてすぐに飛び込んできたのは、ピンク色の体表に黒い縞模様、緑の複眼。仮面の異形の戦士だった。
 この顔には見覚えがあった。どこで見たのかは分からない。姿だけが士の脳裏に焼き付いているのだ。
「覚悟しろよ虫野郎、こうなりゃとことんやってやる」
 そのカードを引き抜いて目の前に掲げる士。
 自分の体に力が満ち満ちて行くのが分かる。これなら行ける。
 士は腹の底から声という声を引っ張り出して叫んだ。

 ――変身ッ!
 ――KAMEN RIDE 「DECADE」!!
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~ Comment ~

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おひさしぶりです。『小説家になろう』でユーザー登録させていただいていた、氷雲しょういちです。
懐かしいなぁ、と思いつつ拝見。
アメブロでやっていますが、こちらのブログとpixivの作品をうちのサイト内のブックマークで登録させていただいてもよろしいでしょうか。
許可が出てから、つけさせていただきます。

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NoTitle 

氷雲しょういちさんこちらでははじめまして。

こちらともブログとも別口でのコメントを希望されていたようなのですが、自分がアメブロの会員でないこととその他要因が重なってしまったので、こちらの方で返信させていただきます。

こちらとしてはどちらも構いませんですよ。お好きにやっちゃってください。そちらの方に届いているとよいのですが……。

ではでは。
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